特集 2018年11月7日

年間ライブ300本の弾き語りシンガー、その収支は?

エクセルで収支を管理するシンガー

アマチュアにも関わらず、年間300本のライブをこなす弾き語りシンガーがいる。時には地方への遠征もあるという。交通費は自腹なのか? ぶっちゃけ、収支はどうなっているのか? ふだん、あまり知る機会がないライブハウスでの活動事情について教えてもらった。

ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!

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ミスIDのファイナリストに選ばれて本数が激増

彼女のライブを観るために向かったのは下北沢。

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街のあちこちにストリートミュージシャンの姿も

今回取材したのは工藤萌さん。青山学院大学に通う大学生で、「工藤ちゃん」というミュージシャンネームで活動している。
 

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愛用するハミングバードとともに

驚くのは出演するライブの本数だ。2016年は約400本、2017年は約280本、そして今年は10月末の時点で200本ちょい。そのほとんどは「声がかかったものに出ている」とのこと。

当初のライブ本数は月2、3回程度。しかし、ミスID2016のファイナリストに選ばれてから、声がかかる数が格段に増えたそうだ。

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今日の出演はライブハウス「ちょ美ひげ」

 

お昼は青山学院大学の学園祭のステージにも立っている。

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地下の入り口

このように1日に2ステージをこなすことも珍しくない。

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入場料は2000円でドリンクは別料金

料金的には相場だが、出演者にはいくらぐらい入るのだろうか。

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ピンクが好きなので持参したマイクもご覧の通り


チェキやCDなどの物販は貴重な収入源

出番は3組中のトリ。「初めましての方も半分以上いると思いますが、工藤ちゃんと申します」という挨拶とともにライブが始まった。

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客の数は15人ぐらい

5歳からピアノを習い始め、中1の時に結成したバンドではキーボードを担当。現在のように弾き語りスタイルで舞台に立つようになったのは大学1年生の頃だという。2回留年して大学6年生。

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シンガーとしてのキャリアは約5年
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手作りのフードが並ぶ珍しいライブハウス

ステージが終わると物販タイム。これらの売り上げは彼女にとって貴重な収入源だ。

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酒好きなのを知っているファンからは氷結の差し入れ

2ショットのチェキ300円、CDアルバム2400円、特製Tシャツ3500円。物販コーナーはファンとの交流の場でもある。

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お土産をもらって喜ぶ工藤ちゃん
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グッズを運ぶキャリーケースもピンク

この日の収支はいかほどだろうか。後日、場所を改めてインタビューをした。


先のライブ出演での収入は1万8000円

お呼びしたのは都内のファミレス。「好きなものを飲んでください」と言うと、少し迷った末にメガハイボールを注文。非常によい。僕もそれに乗っかった。

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お金の話は聞きづらいので、ほろ酔いぐらいがちょうどいい

「こないだのライブの物販では9600円の売り上げがありました。それに、8400円のチケットバックを足した金額が収入ですね」

もちろん、グッズの制作費や移動の交通費もかかるため、これが丸々利益というわけではない。

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スケジュールはGoogleカレンダーで管理

10月のライブは約30本。居酒屋のアルバイトもしているが、この状況ではなかなか入れないそうだ。

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差し入れのお酒がステージ上にババっと並ぶことも

「ライブハウスへの出演条件は、ノルマを払う、出演料を払う、固定のギャラをもらう、チケットを売った枚数によってキックバックをもらうなど、いろんなパターンがあります。私は最近では、原則として集客数に応じてバックをもらえる条件でしか出ていませんね」


今年9月は約25万円の利益が出た

彼女が面白いのはエクセルで月ごとの収支を管理している点だ。こちらも快く見せてくれた。

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今年9月の収支表

出演料と物販の合計は約34万円。ボイトレやチェキのフィルム代などの支出が約8万円。つまり、この月は約25万円の利益が出ている。毎日のようにバイトを入れるのと、ほぼ同じような金額だ。

「この月はかなりいい方で、平均すると15〜20万円ぐらいのプラスですね」

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新松戸は「安定」の箱らしい

「地方遠征も以前は交通費が自腹でも行っていましたが、さすがにキツいので今は交通費を出してくれるものしか行きません」

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自宅には大量のTシャツ在庫

「特にTシャツは持ち歩くのが大変なので、売れてくれると本当に嬉しいです」

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バンドバージョンでの出演もある

チケットとドリンクがセットになっている理由

「ライブハウスは飲食店としての営業なので、チケットは必ずドリンクとセットになっている」というライブハウス雑学も聞けた。

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チェキの収入が5万円を超えた月も

1枚300円でも、数が積もればこのような金額になる。

「とはいえ、ギターの修理代やTシャツの制作費がたくさんかかった月は赤字になることもあります」

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キャプション

なお、春からはITベンチャー企業への就職が決まっており、現在のようなペースでライブを行うことはできなくなる。

「でも、ライブをやめるつもりはありません。とりあえず、職場の様子を見ながら続けていきたいと思っています」

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差し入れの花はドライフラワーに

物販が好調ならそこそこの利益が出る

結論から言えば、月に30本のペースでライブを行うと、結構な額の黒字になる。しかし、支出が重なった月は赤字になることもある。好きな音楽のみで生計を立てるのはなかなか難しそうだが、様々なライブハウスから引っ張りだこの弾き語りシンガーの収支事情はそこそこよいものだった。
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5年の歴史を振り返るご本人のツイート

<取材協力>

工藤ちゃん

https://twitter.com/traum_katze

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