特集 2018年9月8日

アイドルの話はプロレスの話に翻訳できるか ~文化にも通訳が必要だ~

アイドルの話はプロレスの話に翻訳できるか

冒頭でもご紹介したが、集まっていただいたのはこちらのお三方。
左からプロレス話者 玉置標本さん、筆者、アイドル話者 こぢこぢさん(顔出しふわっとNGのため鼻眼鏡でご登場くださっております)、通訳 大坪ケムタさん
左からプロレス話者 玉置標本さん、筆者、アイドル話者 こぢこぢさん(顔出しふわっとNGのため鼻眼鏡でご登場くださっております)、通訳 大坪ケムタさん
アイドルは坂道まわりを注力して追っているこぢこぢさんと、玉置さんはプロレスを雑誌を中心に文字で楽しんでいるファン(そういうファンがいるのか!)。

まずはアイドルの話をプロレスの話に通訳するところからお願いしていこう。
道合同オーディション終了。約13万人から38人合格。倍率3400倍。
坂道のグループはいま乃木坂46と欅坂46とけやき坂46があって、合同オーディションが行われました。その倍率がすごく高かった。いま48とかのほうは数千人から数名が選ばれるという倍率です。

オタクたちは選ばれた38人から誰はうち(のグループ)に欲しいとかそういう話で盛り上がってます。
「欅坂」と「けやき坂」があるんですか!?
通常、こんな感じで趣味の会話というのは前提が分からないと終了してしまいがちなのだが、今回は違う……!
通常、こんな感じで趣味の会話というのは前提が分からないと終了してしまいがちなのだが、今回は違う……!
全盛期の全女の入門テストみたいなものですかね……? 入ってきた子を極悪同盟に入れるかクラッシュギャルズの付き人にさせるかみたいな。
現代の話に例えると新日本のほうが近いかな。全国から人が来るという意味では。昔はオーディションよりも紹介や直接弟子入り志願が多かったから。80年代くらいからプロレスもいわゆるオーディションというシステムがちゃんとしてきたんです。
アイドル語「道合同オーディション終了。約13万人から38人合格。倍率3400倍」

プロレス語「新日本プロレス入門テストに全国から応募が」
昔は入り方が雑でしたよねプロレスは。メキシコでたまたま知り合ったとか。
入り方の話でいうと、最近の坂道とか、AKBとかもそうですけど元地下アイドルというパターンが増えてきましたよね。下積みをしてメジャーに向かうという。

中学生くらいで地下アイドルをやってある程度スキルがついたところでやめて、大きなグループに合格するっていう。
学生プロレスやインディー団体からメジャーに入るみたいな話が。
これ、普通だったら「『欅坂』と『けやき坂』があるんですか!?」で終わる会話だったのではないか。

自分の国の言葉もわかる通訳の存在によって「全盛期の全女の入門テストみたいなものですかね……?」と止まることなくむしろ自分ごとのようにプロレス側が考出すという展開。

これだ! これが見たかったんだ!

推しメンの卒業をともに悲しめる日がやってきた

欅坂46、今泉佑唯卒業(推しメンの卒業)
この子も地下アイドル出身者です。欅坂では初の卒業メンバーになりました。
推しが卒業するというとすごく悲しいことなんだろうなくらいはさすがに通訳前からわかりますね。
プロレスでいうところの誰にあたるんだろうなあ。下からあがってきて人気があって。翻訳難しいですね! ピタッとはまるのがあるときもちいいんだよなあ。
今回の卒業は、芸能界の引退とは違って芸能活動自体は続けるみたいです。
じゃあプロレスでも「引退」ではなくて「退団」ですかね。
志田?
ああそうですね志田光とか……。
ちなみに志田選手はこちらの記事</a>でライターおおたさんにプロレスを教えてくださった方……!
ちなみに志田選手(写真左)はこちらの記事でライターおおたさんにプロレスを教えてくださった方……!
あとはうまくいって欲しいという意味では紫雷イオかな…インディー団体でデビューしてメジャー団体という共通点もある。
アイドル語「欅坂46、今泉佑唯卒業」

プロレス語「紫雷イオ、スターダム退団」
今泉さんという方は若いんですかね?
多分……20歳いかないくらい?
推しの人でも年齢はちゃんとは覚えていないんですね、意外……!
そう……ですね。あんまり気にはしないですね。誕生日は盛大に祝います。(※通常ファンの方々は年齢もちゃんと覚えてるそうです!)
紳士か。プロレスも年齢って気にしないですか?
プロレスも年齢は気にしないですね。それよりも入門順が大事です。
イメージ通りだ! しびれるなあ。
外野として立ち会ってはっとしたのだが、今回は別々のクラスタの間をつなごうという企画なだけにみんなすごく自分の趣味について丁寧に語ってくれる。

そういうこと、実はあまりないのではないか。すべてが興味深い。

願いを込めての通訳

欅坂46、志田愛佳長期休業。文春砲の影響も。(推しメンの文春砲)
一推しはこっちなんです。初期から完全に推してたんですけど……。

体調崩して休業しているときに地元のちょっとやんちゃ系の男の子たちとお祭りに行っちゃったよという記事が出まして。プリクラが流出したりというのも。
なお、乃木坂で一推しだった伊藤万理華さんも先日卒業されたとのことです…。泣ける
なお、乃木坂で一推しだった伊藤万理華さんも先日卒業されたとのことです…。これは泣ける
これは翻訳解りやすいですね。棚橋が刺されたやつですね。プロレス界随一の男女スキャンダル!

いまトップ選手の棚橋弘至がまだ若手のころに恋愛のいざこざで女性に刺されて刺されたまま病院に行ったという。
背中の筋肉厚かったんで助かって、プロレスファンは湧きました。
男女関係のスキャンダルだったので当時は逆風にもなったんですが、ばん回してトップレスラーになりました。志田さんも頑張ってほしい、という願いも込めての翻訳です。
アイドル語「欅坂46 志田愛佳長期休業。文春砲の影響も」

プロレス語「棚橋弘至、女性関係のスキャンダルで逆風」
翻訳に優しさが注入されるという初めてのパターンが出た。

大坪さんは通訳者として登場していただいてはいるが、言い換えればアイドルとプロレスがどちらも好きで詳しい人なのである。他人事ではないのだ。

ここで攻守交替。続いてプロレスの話をアイドルの話に翻訳していくターンに入ろう。

カルチャーにある「共通言語」

新日本、G1で100年に一人の逸材、棚橋が優勝。1.4東京ドームに向けて、再び主役に躍り出る。
G1というのは新日本プロレスの最大の大会で総当たり戦のことです。
これはAKBで行くとわかりやすいのかなあ。G1をAKBの総選挙として。
オカダ・カズチカがプッシュされてたんですけれども、ここへきて棚橋が優勝というのが!
ちょっとびっくりはしたかなというのはありましたからね。

AKB総選挙で指原が2年連続で1位を獲って。そのあとで渡辺麻友が獲ってそのままいくかなと思ったら次の年また指原が取り返したときに近いかな。
プロレス語「新日本、G1で100年に一人の逸材、棚橋が優勝」

アイドル語「2015年AKB総選挙で指原が首位奪還」
あ~~、なるほど。
これは私にもわかりやすいです!
プロレスにもアイドルにも詳しくない筆者だが、棚橋弘至選手くらい有名だと名前も顔もわかるし、AKBの主要なメンバーの名前や総選挙が盛り上がることも知っている。

カルチャーにも翻訳せずともわかる共通言語みたいなものはある。

なんてためになるんだ今日は

スターダムの紫雷イオがとうとうWWEに挑戦。
WWEはアメリカの一番大きな団体ですね。そこに挑戦…というかスカウトされたという。
これも悩みますね……。WWEというのはアイドルにとって何になるのか。一つ上の壁に行くってことだと思うんですが。

平手友梨奈がこんど映画に主演する、でいいのかというとそうじゃない気もするしなあ……。

BABYMETALでいいのかな……。もともとはさくら学院っていうアミューズのアイドルグループの一員だったんです。中学三年生で卒業するアイドルっていう。BABYMETALはそのなかの部活、軽音部じゃなくて「重音部」という設定だったんですよね。

半分冗談ではじめたらブレイクしてレディー・ガガの前座に呼ばれて海外でも大ヒットして。それと近いかな。最近はアイドルと呼ぶとそれだけで怒られがちなんですけど。
プロレス語「スターダムの紫雷イオがとうとうWWEに挑戦」

アイドル語「BABYMETAL海外でも大ヒット、各国のフェスに出演」
BABYMETALは知ってます! アイドルの部活設定の活動だったとは。なんだ今日は全部ためになるな。
個人的にはそこから同様にWWEから声がかかってる里村がどうするのかも気になってます。
プロレス側からたたみかけてトピックが。
プロレス側からたたみかけてトピックが。

リスペクトされるレスラーとリスペクトされるアイドル

同様にWWEから声がかかってる里村がどうするのか
仙女(仙台女子プロレス)の里村明衣子ですね。女子プロレス界の横綱です。
仙女は小さな団体だからこの人がいなくなると立ち行かなくなるかもしれない。本人にはWWEに行きたい気持ちはすごくあると思うんですよ。でも抜けちゃうと。
女子プロレスはレベルでいえば日本がずば抜けてるんですよね。「JOSHI」って英語で通じるくらい。

海外でも里村はすごくリスペクトされてるんです。そういう意味で、里村はハロプロに近いかなと。
里村明衣子選手→リスペクトされてる→アイドルでいうところのハロプロという通訳におしよせるなるほど感!
里村明衣子選手→リスペクトされてる→アイドルでいうところのハロプロという通訳におしよせるなるほど感!
ハロプロはリスペクトされてますね。
規模はいまではAKBや坂道にとどかないかもしれないけど、アイドルとして圧倒的にリスペクトされてる。里村明衣子は元℃-uteの鈴木愛理みたいな感じかなと。
鈴木愛理がどこから声がかかる思うとしっくりきますか?
うーん、やっぱりハリウッドに当たるのかなあ。
プロレス語「WWEから仙女の里村に声がかかる」

アイドル語「ハリウッドから鈴木愛理に声がかかる」
外野としては、もうただ「ほほう」とひげをなぜるのが楽しすぎるという状況だ。次で最後です!

無理かと思ったものも無事に訳された

東スポの内藤哲也へのファミレスインタビューがすごい
これはプロレスファンがみんな好きなやつなんですけども、東スポの記者がレスラーの内藤哲也にファミレスに呼びだされて内藤が一言いいたいことを語るという連載記事があるんですよ。

内藤が毎回最後食い逃げするんですが、記者の方がすごくおもしろく記事にするという。
内藤と記者が同期なんですよね。そういう信頼関係があるんでしょうね。ずっと見てるから。
でもさすがにこれ、アイドルに同じような話ないですよね……。
番記者じゃないんですけど、似たような感覚はアイドルもありますよ。ももクロとライターの小島和宏さんとか。ちなみに小島さんは元「週刊プロレス」の方ですね。坂道系だと西廣智一さんとか。信頼されているライターの方がいますよね。
あ、いますね!
プロレス語「東スポの内藤哲也へのファミレスインタビューがすごい」

アイドル語「小島和宏さんのももいろクローバーZのインタビューは信頼できる」
はまった……! 納得の会場
はまった……! 納得の会場
プロレスとアイドル、どちらも華やかな業界だ。翻訳によって派手と派手がぶつかり合ってもうてんこもりもてんこもりである。

共感のために文化も翻訳を! とかかげて始めたが、結果的に同席の私としては一つのトピックで二度楽しめる豪華版みたいなありがたい様相であった。

話し合って分かりあって豪華。これが世界の平和ではないか。

人はもっと濃い趣味の話を聞いていい

大坪さん、玉置さんコンビは以前ライターの斎藤充博さんがはじめてプロレスを見に行く記事の案内役もしていた

この記事、はじめてプロレスに行く記事なのだが結果としてプロレスが大好きな大坪さんと玉置さんを見る内容になっていてすごくいい。

何かを好きな人の好きだという話を、私たちは自分には知識がないからと聞くのを遠慮しているのではないか。でも聞けば喜んで話してくれるし面白いことがほとんどだ。

知識のハードルを下げて説明してもらえるという意味で、「通訳」という状況設定は思った以上に機能したと思う。

またやろう。

今度はもっと遠く離れたカルチャーをつなげられないだろうか。盆栽とプリキュアとか、両方お好きなかたどなたかお願いできませんか。
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