いろんな意味でアツい工房
トップの写真も、取っ手が刀の柄だったりとものすごいインパクトなのだが、私が初めて彼に会ったときにカウンター食らったバッグがあるので見て欲しい。
規格外のインパクト。どこから鑑賞すべきか。
しかも蓋を開けたら虎が出た。一休さんを呼んでこい。
どうだこの衝撃。皆さんも、これで私と同位置からの認識スタートということになったと思う。ではまた話を進める。
この日はお盆前で、例の酷暑であった。高速バスで東京湾を渡り、袖ヶ浦のターミナルで降りると、その方が車で迎えに来てくださった。挨拶もそこそこに乗り込むと、また目に飛び込んで来るのは畳だ。
滑らなそうだし理にかなっている。落ち着いて心静かに走れそう。
ここにも畳。本当はもっと畳があちらこちらにあしらわれていた。
なんという畳への愛、こだわりか。千葉はネズミの国だと思っていたが、畳の国でもあるのか。
とかなんとか思いつつ、田園地帯をしばらく走ると「株式会社 畳deCo物」の作業場兼倉庫に到着した。
人の作業場を見るのってなんて楽しいんだろう。
おお、さすがの畳チェア。気持ち良さそう(実際気持ち良かった)。
畳ハンモック!めっちゃ平らで乗るとき怖かったが、乗ってしまえば空飛ぶ畳!あはは!
そしてこのハンモッキングしてる私の後ろにいらっしゃるのが、畳deCo物 代表の飯島義紹さんである。眼光鋭く畳をしつらえるが、話せば気さくなお兄さんである。今日はよろしくお願いします。
さて、さっそく畳の作り方を見せていただけますまいか。
いいですよ、と1枚30kgはある畳床(たたみとこ)を取り出す。ちなみにこの下の木の作業土台はもう誰も作ってないそうだ。
この畳床に、い草と糸で編んだ畳表(たたみおもて)をきっちり美麗に張っていくのが、畳職人の腕の見せ所なのだ。ちなみに畳床自体は、「床屋(とこや)」さんが藁で製造したものを仕入れて使うのだそうだ。
畳の大きさや形を変えるのに、畳床をこういう専用の包丁でザクザク切って行くという。す、すごい作業…
切って行くと藁がほつれそうなものだが、1回でズバッと切ればほつれないとか。手を入れるほどにバラけてくるという。何事も無駄な手は増やさないに限る(ほつれたら自分で縫って留めるそうです。壮大なほつれ止め…)。
畳表を床に仮留め。
もう片方を少し浮かせて、あえてたわませて張る。
こうすることで、最後に畳床をまっすぐにしたときに、ビシッと張れるのだそうだ。考えるだけ
で気持ちいい。
機械で縫うことも多いそうだが、今回は手で縫い上げてもらう。
これですよ、畳屋さんと聞いてイメージするシーン。間近で見られて感激だ。長い針って、どうにも職人らしさを感じる。
機械縫いだと簡単な縫い方になるそうだが、手縫いでは「パチーン!」という音で、きっちりと締め上げたという合図になるのだという。丈夫で長持ちするらしい。
ピッチリ。
畳の縁(へり)は、普段は機械で縫っているという。やおら飯島さんが棚の奥から引っ張り出してきたのは、畳用ミシンだ。昭和50年代の機械で、とても丈夫なのだそう。
ザ・無骨。
専用レールをセット。このレール、20万円ですって!
なんとも壮大なミシンである。
当たり前だが、縫えてるなぁ。自分が小さくなったみたいな感覚だ。
1枚仕上げるのに、1時間もかからないくらい。機械だと、20分くらいで終えてしまうそう。
意外な速さな気もするが、1度に何枚も受注するだろうことを考えると、それもそうか。
「今はどこも機械ですね。ボタン押して終わり。田舎とか、狭い都内の畳屋さんとかでは手縫いでやってたりするけど。」
畳の世界も、我々が知らないだけで多くの変遷があったのだ。
畳の縁も、変遷があった。このファンシー柄、どこで使うねんと思ったら保育園で需要があるんだって!
飯島さんは、高校を出た後の11年間は畳材料の会社に在籍。しかし「本物の畳」を作りたいとの思いから畳職人の道を志し、4年前に独立。
同時に、畳での自由な表現を求めて、小物製作も開始する。「ないものは作れ」の精神で。そうだ、ないものは作ればいいのだ。何でもやるのだ。
畳でどこまでいけちゃうのか
さて、そろそろ畳雑貨をいろいろと見せていただこう。最高にカブいてるやつ、見せてください!
雑貨類は、この足踏みミシンから生まれる。畳と同じ精度で作られる。
ヴィトンかと見まごう畳トランク。
倉庫の奥から、予想通りすごいのがたくさん出て来た。
1ページトップのトランク、蓋を開けるといきなりこれだ。鳥好きの私にはこれが一番ヒットでした。しかし鳥グッズの範疇でいいのかこれ。
本物の手裏剣が封じ込められた問題作。銃刀法案件大丈夫かこれ!
これはどちらかといえばカワイイ系かと思ったけど、使われている畳縁が迷彩柄なのよ。こんな縁あるのね!
あとこれはぜひ見てって。「どうだ明るくなったろう」的なトランク!これも割と好みだ。
作者曰く「古いお札が使われずにひっそりあるのはもったいないので、こういう形で生かしてやりたい」
Apple Watch のバンドも畳で作る!だって、無いから!
すごいベルト!お腹の上をヒョウがしゃなりしゃなり歩いてるって感じ。
完成度高いよなぁ...ちなみに特にアパレルの修行はしてないそうです。
スニーカーも畳で作る!だって、そこに無いから!でもまだ試作なので、硬くてすごく痛いとのことでした。再来年に間に合え!
どの雑貨も、精巧な作りに裏打ちされてのものだからか、見た目が派手な一方で、ある種の静けさ、まとまりを感じる。そこは畳の効力でもあるのだろうか。
自分には飯島さんのような技術はないが、「ないものは作れ」というところにものすごく共感するものであります。なんだかまた楽しくなってきました。何か作りたくなってきました。
飯島さんの小物や雑貨は、他にもたくさん生まれ続けています。
以下公式サイトをぜひチェックしてみてください。
すげぇものを見せていただきありがとうございました!(右は商談にいらしてたNさん)