きっかけは飲み会締めのパノラマ写真
発端は友人たちとの飲み会の直後。初対面同士が多かったということもあり、誰かが記念に写真を撮ろうと言い出した。するとひとりが専用のカメラを持ってるからということで、パノラマ写真を撮ることになったのです。
「みんな写りますよ」
「ポーズどうする?」
「せっかくだしみんなそれぞれで!」
「えっ、あっ、わー、わーわわわわ」
パチリ!
おっ、いい感じ!しかし、よくもまぁ見事にみんなバラバラのポージング。そのままの人もいるけど、ポーズをとる人はひとりとして被っていない(狙ったものを除けば)。「ナイフ使い感すごいね」とか、「なんでザビエルっぽいんだよ」とか、そのあとSNSでも内輪でひとしきり盛り上がりました。それから数日経って、じわりじわりと気になってくる。そもそもなぜみんな、こんなポーズをとったのか…?
聞いてみたら意外とあったポーズの理由
気になりだしたら止まらない、という訳でさっそく聞いてみた。すると、みんなそれぞれのポーズには理由があって、実はカテゴリーに当てはめられることが分かったので、そのネーミングとともに紹介していきたいと思います。
地元の友人S、ナイフ使いかと思ったが…。
S「なんやったか…動かずにインパクトのあるものを考えたんやけど」
私「ナイフ使いかな?と思ってたわ」
S「あぁ、そうか!ウルトラマンや」
私「はぁ~!なるほど!」
ウルトラマンはいつの世代も子どもたちのヒーローだ、憧れには王道的だと言える。
ただ、彼とウルトラマンはもうちょっと関係が深い。実は、Sと私は同じバイト先でヒーローショーのアクターをやっていたことがある。そこで彼は円谷の施設にも応援へ行っていて、遅刻したアクターの穴を埋めて褒められた、という話をしていたのだ。もしかしたらそんなこともあって、ことさら憧れに近づいたのかもしれない。
まぁ、ふつうにバッターだよね(右が話を聞いた友人F)。
F「大谷だ、確か大谷選手だよ」
私「あ~!当時活躍がニュースになってたよね」
F「そう、だから二刀流だーって言って真似したんだ」
私「でも俺ならまず思い浮かばないよ、野球少年だったとか?」
F「野球少年だったよ、でも今ポーズとれって言われて大谷はやらないと思うけど」
昔の子どもたちの憧れといえば、野球選手。
野球少年はみなプロ野球選手に憧れる。自分は野球の詳しいルールも知らないレベルで運動音痴だが、きっとそうだろう。そういうことにしてほしい。Fは大谷選手の活躍がなければしないと言ったけど、思わず取ってしまったポーズに野球少年だった過去が関係していることは間違いない。
ちなみになぜ隣の女性も同じポーズをしているかというと、そこは単にノリっぽかった。なんて、ちょっと他人行儀な書き方をしてみたけど、こちらの方はデイリーの記事でもイラストを描いている新里さんです。
この立ち振舞、強者感がすごいんだよなー。友人Tに話を聞きます。
T「ポーズ?意味なんてないですよ!」
私「嘘だー、けっこうユニークですよこれ」
T「うーん、あー、そうか。私はアニソン歌手の水木一郎アニキを尊敬していて」
私「お!なるほど!なるほど!」
T「手を前に出して勢いのあるポーズが好きなんですよね」
私「完全にそれじゃないですか~!!」
水木一郎アニキ、めちゃくちゃ手を前に突き出してはりました。(Google画像検索よりキャプチャ)
水木一郎が好きで、手を突き出すポーズをとっているから自分もやった、見事なまでの模範回答じゃないか。そんな答えがすぐに出てこなかったということは、記憶の奥底に仕舞っていてすっかり無意識にやっていたということなのでしょう。革グローブを着用しようものなら、「まさに」という感じ(と思ったけど上の写真でアニキはしてなかった)。
ほかに気になるポーズを取っていた二人にも聞いてみたところ、「ノリ」という回答。
カポエイラ好きとザビエル好きかと思ったら、何もないとのことでした。
「かっこいいポーズ」をお願いした訳でもないので、そりゃそうか。
それにしても意外なまでに、かっこいいポーズのルーツにはその人それぞれの憧れが反映されていると分かった。ウルトラマンだったり、野球選手だったり、アニソン歌手だったり、大げさに言えば、その人が影響を受けたものがちょっとだけ分かる気すらしている。
ちなみに私のかっこいいポーズは、「映画『マトリックス・リローデッド』でコリン・チャウがキアヌ・リーヴスと対峙したときにとったカンフー的構えからの手招き挑発」です。
ではでは、引き続きほかの人にも聞いてみよう!
かっこいいポーズとルーツを教えて
身近なところで妹から。 後ろがボケているのは、時空が歪んでるのではなく散らかってて恥ずかしいから。
妹「ヴィジュアル系バンド!おもに『Dir en grey』かな~」
私「あぁ、分かるわ、俺も聴いてたから分かる…」
あのキャラクターですな!
私「碇ゲンドウ!エヴァンゲリオンですか?」
Mさん「そうです、こう睨みを利かせて考えてる感じ」
頬杖をついて遠くを見つめる。
私「えー、分かるような分からんような」
Mさん「モデルですよ、よくファッション誌に載ってそうな」
私「あ、なるほど。俺が男だからピンと来なかったんだろうな」
以前「
推しひらがな」を聞いた、友人の韓国人の諸(ジェ)さん。
「武富士」という新境地
場所を移して、知人のオフィスにやってきた。
お邪魔しまーす。
Gさんの「かっこいいポーズ」。
私「それは?」
Gさん「格闘家がよくやってるポーズです」
私「ファイティングポーズじゃなくて!?」
Gさん「よくやってません?」
ガヤ「成功したラーメン屋もよくやってる」
私「じゃあ成功者タイプにしときましょう」
Mさんの「かっこいいポーズ」。
私「え~なんだそれ…て、天使?」
Mさん「違います!武富士です!」
私「あぁ…武富士!新しいな~それ!」
20代くらいの人だと知らないかもしれないので補足すると、武富士は消費者金融の会社で、そのCMの内容がえらくかっこいい音楽に合わせて女性ダンサーたちがえらくかっこよく踊るということで有名。「武富士」と聞けば、まずCMを思い浮かべる人が大半だろう。今調べると事業名はなくなってしまったみたいだけど。
私「一応確認なんですが、本気でかっこいいと思ってるんですか?」
Mさん「思ってますよ!」
なんでかっこいいかと聞かれると、「もうこれってかっこいいだろとしか言えない」とのことでした。理屈じゃあねぇ、かっこいいってそういうことだ。確かに。
オフィスの社長が通りがかったので聞いてみた。
社長「ポーズ?僕はいろいろありますよ」
私「いいですね!ぜひ教えてください」
これと、これと、これと…これ。
私「ぜんぶ自転車じゃないですか!!」
社長「かっこいいのは僕の自転車ですからね」
妙に離れた感じなのはのちほど説明します。左が大塚さん、右が渋江さん。
私「これは?」
大塚さん「ヒーローです!」
私「あ~、戦隊モノとかですね!」
大塚さん「なにかのレッドだった気がします」
私「渋江さん、あなたこれ、さすがにふざけてるでしょう」
渋江さん「違います!はにわ(埴輪)です」
私「埴輪…!!そうか埴輪か~!!」
渋江さん「埴輪ってかっこいいんですよ。あの曲線美と人の温かみを感じるなんとも言えないぬくもり。やさしさすら感じてしまうはにわのような存在になりたいのです。そして、はにわを通じて過去のことを未来の人に伝えようとした古の人たちの思いが感じられて、僕も未来の人に何かを伝えられる大人になりたい。はにわからそんなパワーを得られるのです。埴輪ってかっこいい」
私「うん」
ポーズ以前に聞く相手が濃くなってきたところで、そろそろ切り上げたい。
かっこいいポーズも十人十色。ここで写真付きで紹介したほかに、「仮面ライダーの変身」「ジョジョ立ち」「プラトーン」あたりの有名どころから、「ロックマンZEROの立ち姿」「空母の戦闘機誘導員」と調べてみないと分からないもの、「横向き右手ピースを右目の横で」という言葉では状態がいまいち把握しきれないものもあった(のちに映画『銀魂2』のポスターのポーズ的なものだと分かった。調べてみて!)。
国が変われば「かっこいいポーズ」も変わる
そして最後に、フランス人の友人から「かっこいいポーズ」を教えてもらったので紹介したい。これが日本人とはまた違った発想でおもしろかったのだ。
以前、諸さんと同じく「
推しひらがな」について聞かせてもらったダミアンさんから。
ダミアンさん「かっこいいポーズですか…」
私「はい。あります?」
ダミアンさん「すぐ思い浮かんでいるものがありますが、日本語で言いづらい…」
私「お、おもしろそう」
ダミアンさん「というか、フランス語でも言いづらいです」
私「!?」
ダミアンさん「眉と関係あって」
私「!!?」
そして最終的にダミアンさんからわざわざ休日のお風呂上がりに撮って送ってきてくれた、優しさ染み入る写真がこちらです。
眉をふつうの状態から上げる!下げる!上げる!
かっこいいポーズをする若かりし頃のダミアンさん、イケメンだ!
あぁ…あぁー!なるほど。なんというか、「なんだい?」みたいな、「ちょっとおどけてみようか?」みたいな、うわこれ確かに説明しづらいな。でも分かる、イメージは受け取れた。ところで、若かりし頃のダミアンさん、両手に華っぷりにスクールカーストの上位っぽさある。場所はだれかの家だけど。
ダミアンさんいわく、このように片眉だと完璧だそうです。うん、これで理解も完璧だ。
かっこいいポーズをまとめると…
改めてポーズを羅列すると、こんな感じ。
・特撮(ウルトラマン)
・スポーツ選手(大谷翔平選手)
・歌手(水木一郎)
・バンドマン(ヴィジュアル系バンド)
・アニメキャラ(碇ゲンドウ)
・モデル、俳優
・成功者(事業家、サッカー選手)
・CM(武富士)
・趣味(愛機といっしょ)
・遺物(はにわ)、というかはにわ。
こうして眺めてみると、「現実~創作」「メジャー~マニアック」という指標で分かれている気がする。
かなりの独断と偏見で、四象限分析とやらであらわしてみる。
うん、どうだ。なんか分かるかと思ったが、状況はサッパリだ。とくに意味はなかった気がする。すんません下げてくださいー!…とりあえず言いたいことは、近くの人をつかまえて「かっこいいポーズ」をとってもらってほしい。遠回しにその人の趣向は掴めるでしょう(でも理由も伝えないとたぶん嫌がられるのですぐにネタバラシしましょう)。
だれでもかっこいいポーズのひとつやふたつ持っている
いろんな人に聞いてみて、かっこいいポーズから憧れを探ること自体も大変おもしろかったのだけど、それ以上に「誰にでもある」という事実が驚きだった。ひとりくらい「ない」と言う人がいてもおかしくないのですが、みんなふしぎなまでに持ってるのよね…。
ちなみに、私のかっこいいポーズは「映画『マトリックス・リローデッド』でジェット・リーがキアヌ・リーヴスと対峙したときにとったカンフー的構えからの手招き挑発」と書いたのですが、さっき調べてみたら「映画『マトリックス』でローレンス・フィッシュバーンとの修行シーンでキアヌ・リーヴスが取った構え」との間違えだったことをお詫びして訂正いたします。
大塚さん(何かのレッド)と渋江さん(はにわ)の距離感の理由は、帰りの電車の発車時刻まで時間がなくて「ホームでやる電車から撮ってください」ということになったから。最後ちょっと追いかけてくれてるのが正直うれしい。