特集 2018年7月30日

アルコールだけが飲み会か~牛乳編~

そうそう、こういうこと
そうそう、こういうこと
「今度飲みに行きましょ」「今日は飲んじゃおうかな…」

こういった場合の「飲む」は往々にして飲酒を指している。お酒を飲むのは確かに楽しい。でも苦手なひとだっている、果たして飲むのはアルコールだけでいいのか。

そう、例えば牛乳とか。
埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画)

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魂が牛乳でお酌をしろと言っている

お酒以外で飲みを…そう考えたとき天啓のように思い浮かんだのが牛乳パックでお酌をする人々の姿だった。見たい。直感に従おう、その光景を絶対に実現させるのだ。

居酒屋で牛乳を飲む。そんな切なる願いを受け入れてくれたのが渋谷の「はし田屋」である。
昼は話題の親子丼の店、夜は鶏料理の居酒屋、そしてロケにも柔軟なのだ
昼は話題の親子丼の店、夜は鶏料理の居酒屋、そしてロケにも柔軟なのだ
何人か招いて牛乳飲みを開いた。
左がライター江ノ島さん、右が筆者。真ん中にあじわい便り
左がライター江ノ島さん、右が筆者。真ん中にあじわい便り
江ノ島さんは牛乳をたくさん飲めるよう、ここに来るまでに銭湯に寄って仕上げてきてくれたらしい。筆者はそれを聞いて静かに感動してしまった、いい会にしよう。

さっそく本日撮影係のウェブマスター林さんにも牛乳を注ぐ。
…!そう!この光景!先生、この光景です
…!そう!この光景!先生、この光景です
林「あっ、もうホントちょっとだけでいいんで!」
林「あっ、もうホントちょっとだけでいいんで!」
夢にまで見たその瞬間、”ビールを飲めないひとが最初の乾杯用だけに注いでもらうあのセリフ”でストップがかかった。そう、何を隠そう林さんは牛乳が飲めない。

林「ミネラルがダメなんですよね、カッチカチになっちゃって」

牛乳でお腹がゴロゴロする、というのは聞いたことあるけどカチカチになるという話は初めて聞いた。牛乳を飲んだあとトイレに行くと「カンッ」という硬い音がするらしい。本当だろうか。
学び:アルコールが苦手なひともいるように牛乳が苦手なひともいる
そんなわけで林さんはひとりでビールを飲みます。本当は牛乳を飲みたいはずです
そんなわけで林さんはひとりでビールを飲みます。本当は牛乳を飲みたいはずです
飲めるメンバーでまずは一杯そのままいただく。
さすが銭湯で整えてきただけあって江ノ島さんのグラスが一瞬で空になった。通常ならビールの泡でできる白いひげ、今日はいつもと成分が異なる。
かけつけ一杯
かけつけ一杯
「うまい」「普通においしい」
そうなのだ、ここが居酒屋だという違和感さえ除けば牛乳はおいしい。

とは言え、
江ノ島「爽快感はないですね」
大丈夫です、スッキリした牛乳も用意しています。

酸味にあうぞ、我らが牛乳。

さあさっそく一品目の湯葉のサラダが運ばれてきた。
サラダを食べる
サラダを食べる
牛乳を飲む
牛乳を飲む
笑う
笑う
江ノ島「合う!おいしい!」
あっ、なんか気を使ってとかでなく普通においしそうだ。

江ノ島「ドレッシングに酸味があるんですけど、それがまろやかになって」

なるほど、食べてみると確かにおいしい。江ノ島さんの言う酸味というのもわかる。ドレッシングと、あとトマトも合うのだ。
そしてやっぱりなぜか笑ってしまう
そしてやっぱりなぜか笑ってしまう
続けて運ばれてきたのは鳥の刺身。
左端は卵黄をどうにかしたもの。牛乳と合わせるとスイーツみたいになる。本当です
左端は卵黄をどうにかしたもの。牛乳と合わせるとスイーツみたいになる。本当です
単純にこの料理自体がめちゃくちゃおいしそう。薄々お気付きのことだろう、そもそも”ちょっといい店”なのだ、ここ。
江ノ島「ささみうまい!合う!」
江ノ島「ささみうまい!合う!」
江ノ島さんが先陣を切ってどんどん箸を進めていく。出汁の強く効いたポン酢と牛乳の組み合わせは存外に良いようだ。

なんで酸味と合うのかなと考えたけれど、牛乳も発酵のさせ方によりヨーグルトのように酸味が強くなる。擬似的にその状態に近くなるのだろうか。

ともかく牛乳飲み、いい滑り出しである。
学び:牛乳は酸味とよく合う

にじみ出る朝めし感

開始から20分ほどしたところでライターのmegayaさんが到着した。
ここから”白い服のメガネ”が二人になりますが見分けてください
ここから”白い服のメガネ”が二人になりますが見分けてください
突発の残業を終えてからの合流である。仕事終わりに一杯、と言えば相場が決まっている。牛乳だ。とにかく料理と合わせて飲んでもらおう。

megaya「おいしい。おいしいんすけど…」
megaya「朝めし感、給食っぽさがありますよね」
megaya「朝めし感、給食っぽさがありますよね」
朝めし感、その言葉にみんなしっくり来たように頷く。確かに、なんだ、異様な健康さがある。

megaya「仕事終わりに、ヤッターというテンションにはならないですね」

そう、ヒトは居酒屋の扉を叩いた瞬間に身体が”アルコールを受け入れるフォルム”になってしまうのだ。でも牛乳だってカルシウムが豊富だったり、すごいんだ。

このあとみんなで少し朝ごはんと給食の話をした。
残業中のmegayaさんに送った、手酌で牛乳を飲むひとの写真
残業中のmegayaさんに送った、手酌で牛乳を飲むひとの写真
学び:朝めしっぽい

合う牛乳、合う料理

朝めし感に包まれながらも夜20時の食事は続く。
メンバーも揃ったところでどんどん牛乳を出していこう(ちなみにご好意で店舗の冷蔵庫までお借りし冷やしていただいた、ありがたすぎる)
メンバーも揃ったところでどんどん牛乳を出していこう(ちなみにご好意で店舗の冷蔵庫までお借りし冷やしていただいた、ありがたすぎる)
せっかくの機会なので今日は5種類の牛乳を用意している。乳脂肪分の低いもの、高いもの…ワインでもフルボディとか言うだろう。たぶんそういうのと同じだ。たぶんだ。

このあたりで牛乳飲みがだんだん見えてきた。どうやら”その料理に合う牛乳”というものがあるようなのだ。
それを決定付けたのが”きじのへしこ”。
本来は鯖などで作る塩、ぬかに漬けた郷土料理だ
本来は鯖などで作る塩、ぬかに漬けた郷土料理だ
きじのへしこは旨味の塊だ。店長が「いろんな鳥で試したけど、へしこはきじが一番。この為だけにきじを仕入れる」と言うだけある。

このへしこ、実は今まで飲んでいたわりとさっぱりめのものでは合わなかった。その味の主張の強さに牛乳が負けてしまうのだ。

一方で相性が良かったのがこの牛乳。
兵器、”クリーム層ができる いい牛乳”
兵器、”クリーム層ができる いい牛乳”
この日一番値段の高い牛乳。これが先程の牛乳より濃く、少し口に残る粘度が功を奏し、へしこに負けずそのまま昇華しあった。

逆に最初に食べたサラダはさっぱりした牛乳(乳脂肪分が低いもの)のほうが合うのだ。濃いものだと後味がすべて牛に持っていかれる。奥が深い、深いぞ牛乳道。
学び:味の薄いものにはさっぱりした牛乳。濃いものには濃い牛乳

生つくねは牛乳に合わない。日本酒に合う

北向「そもそも居酒屋にもカルーアミルクとかあるし牛乳があっても違和感ないですよね」
megaya「見た目はカルピスサワーっぽい」

確かに!カルピスサワーは一番牛乳に近い市民権を得た居酒屋メニューだ。

牛乳飲みの正当性を説くメンバーの元に続いて運ばれてきたのは生つくねの石焼き。生食もできるというつくねを自分の頃合いで焼いて、食べる。
これがジュウと焼けるええ音とええ匂いがするんじゃ…
これがジュウと焼けるええ音とええ匂いがするんじゃ…
店長に「飲み物だと何が合いますか」と訊いたところ日本酒が合うとのこと。辛口がいいらしい。店長大変です、牛乳に辛口はありません。

林「じゃぁおれ日本酒にしよう」
ずるい
ずるい
素直に日本酒を頼んだ林さんはとても満足そうだ。

いいな!!牛乳をおいしいと思っているのも偽りない本心だけど、それでもそれは細い綱の上で振れながら成り立っている繊細なバランスだ。
我々が「パンで戦うならフランスパンかな~」「トーストして硬くしたら…」「防御力なら食パンも…」など必死に作戦を立てているところにキレッキレの日本刀で切りかかってくるようなものである。
その場でスッパスパと切られていく硬めのフランスパン。うまかろう、うまかろうて日本酒。
つくねはどの牛乳にも合わなかった
つくねはどの牛乳にも合わなかった
江ノ島さん曰く「食べ物が熱いと合わないのではないか」とのこと。
学び:熱い料理は合わないかもしれない

あれ、お腹がいっぱいになってきた。

だんだん牛乳飲みの真髄が掴めてきた頃、一同に異変が起こる。
なんか、お腹がいっぱいなのだ。
「一気に(満腹度が)0から6になりました」
「一気に(満腹度が)0から6になりました」
江ノ島さんのお腹が6になったらしい。6になる江ノ島さんなんて初めて見た。
ビールも腹が膨れると言うだろう。でもなんだかその発泡系の張りとは少し様子が違う。全体的に重たい。牛乳が胃の側面に張り付いたような、そんな重さだ。

この辺りから少しずつこのテーブルの飲食ペースが落ち始める。
学び:牛乳を飲むと6になる

でも美味しいものは美味しい

動きが鈍り始めた我々であったが、megayaさん江ノ島さんを中心に果敢に攻めの姿勢を貫く。その矢先、今日一番の発見があった。わさびが異様に牛乳に合うのだ。
わさび乗せ鳥刺し、きみがベストだ
わさび乗せ鳥刺し、きみがベストだ
「わさび、牛乳に合う!」「さっぱりする!」わさびがスッと抜けていくこの感じ、ちょっと楽しいので味わってほしい。ここまで読んだ読者の方だったらわかると思うが、わさびに合うのは「さっぱりした牛乳」だ。

冒頭で酸味が合うという話をしたが、それ以上に”辛味”との相性が良いらしい。続けて試したゆず胡椒も負けじと美味しかった。
学び:わさびや柚子胡椒がお手元にあったらぜひお試しください

店自慢の水炊きがまさかあんな料理に

最後に化学変化を起こした食べ物を紹介しよう。それが水炊きだ。
たっぷりコラーゲンとともに煮込まれた骨つきの鶏肉、つくね…
たっぷりコラーゲンとともに煮込まれた骨つきの鶏肉、つくね…
それを牛乳と合わせて食べると…

北向「クリームシチューだ」
megaya「…クリームシチューだ!」

そう、水炊き+牛乳=クリームシチューだったのだ。
新たな方程式にやおらテンションの上がる一同。いま振り返るとそこまで興奮するようなイベントだったかは定かではないが。

ひとしきり盛り上がるなかで、実は先ほどの「なんかお腹いっぱい事件」に続く異変がメンバーの身体の中で起こっていたことも綴らねばなるまい。
megaya「少しトイレ行ってきます」
megaya「少しトイレ行ってきます」
このあたりからそわそわと席を立つメンバーがチラホラいたのだ。何故かはあえて明言しないが…
北向「おれも行ってきます」
北向「おれも行ってきます」
林「北向さん2回目だな」
おなかがゴロゴロになるひとでも飲める牛乳
おなかがゴロゴロになるひとでも飲める牛乳
普段牛乳でおなかがゴロゴロになったことがなかったので完全に油断していたが、この量を飲むとハラハラすることがわかった。やっぱり自分の飲める量を把握しておく、ということが大事なのだ。

牛乳飲みはアリかナシか

我々のお腹の乱はさておき、いったんまとめに入ろう。筆者の天啓のもと行われた牛乳飲み。幾つかの知見を得たので以下にまとめる。

■牛乳飲みのいいところ
1.健康的である…この日飲んだ牛乳は3人で5リットル。お酒に比べ健康的なのは確かだ
2新たな発見がある…牛乳、料理それぞれいつもより味を意識して食べることができた

■牛乳飲みの改善点
1.お腹がいっぱいになる…普段の1.5倍くらいのペースで満腹になる
2.お腹がゴロゴロになる…日常的に飲む量では今までなんともなかったのでびっくりした

えー、こんな具合です。
お酒も牛乳もほどほどに飲むのが一番いいですね。

牛乳をたくさん飲んだ

結局この日は最後に日本酒を飲んで締めてしまった。つくねと合います、おいしかったです。

【取材協力】
はし田屋 渋谷店
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3丁目15−4
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