特集 2018年7月18日

透明コーラを黒くすると普通のコーラの味になる

開けてはいけない扉を開いてしまったかもしれません…
開けてはいけない扉を開いてしまったかもしれません…
透明飲料が人気だ。オレンジやピーチなど一般的なジュースはことごとく透明にされているし、メロンソーダ(メロン+ソーダ)やミルクティー(ミルク+ティー)といった合わせ技系の飲み物も透明化が進んでいる。

最近ではついにコーラまで透明にされてしまった。「無茶しやがって…」という想いで試しに飲んでみると、なんだか普通のコーラとは違う気がする。やっぱりコーラは黒くあるべきだ。むしろこの透明コーラも黒くしてあげれば本来のコーラらしさを取り戻すのではないだろうか。

これはやらねばならない。透明飲料に色を付けて個性を取り戻さなければならない。

※この記事は2018年7月18日~19日のとくべつ企画「自由研究特集」のうちの1本です
1992年東京生まれ。普段は商品についてくるオマケとかを考えている会社員。好きな食べ物はちくわです。最近子どもが生まれたので「人間ってすごい」と本気で感じています。(動画インタビュー)

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準備するものは透明飲料と食紅、決めつけない気持ち

今回は5つの透明飲料に色を取り戻していきたい。
左から白桃ティー、ヨーグリーナ、オレンジ、コーラ、ノンアルコールビール
左から白桃ティー、ヨーグリーナ、オレンジ、コーラ、ノンアルコールビール
味に大きな影響が出ないよう色付けには食紅を使用
味に大きな影響が出ないよう色付けには食紅を使用
色によって味覚がどう変わるのかを確かめるわけだが、一人だけの味覚では信ぴょう性が薄くなるので検証は複数人で行った方がよいだろう。
左から編集部安藤さん、筆者、ライターの江ノ島さん、そして撮影係として編集部古賀さんにも参加してもらった。
左から編集部安藤さん、筆者、ライターの江ノ島さん、そして撮影係として編集部古賀さんにも参加してもらった。
安藤さんは新しいもの好きが影響し全ての透明飲料を飲んだことがあるとのことだったが、一方で江ノ島さんはどれも飲んだことがないという。透明飲料はオフィスでの飲みやすさから注目を集めているが、逆にあえて選ばないという人もいるようだ。

さて、準備は整った。果たして色によって味は変わるのだろうか。「色だけで味は変わらないはずだ」という決めつけは捨てて検証していこう。

エントリーNo.1 コーラ

透明な上にカロリーゼロ。ここには一体何が残っているというのか。
透明な上にカロリーゼロ。ここには一体何が残っているというのか。
まずは検証のきっかけにもなった透明コーラから色を付けていきたい。色を付ける前に透明な状態で味を確認してみよう。

(今泉)ん~やっぱりコーラとはちょっと違うような…

(江ノ島さん)コカ・コーラゼロを放置したような感じ。二日目の味。

(安藤さん)でも、これはコーラだと思いますよ。

(古賀さん)あ、コーラだ。でも江ノ島くんが言ってること分かるかも。1.5リットルとか容量の多いコーラって感じ。

どうやら人によって感じ方は違うが、普通のコーラより何となく気が抜けている感じを受ける人が多いようだ。
透明コーラの味を確認したところで、いよいよ食紅を投入
透明コーラの味を確認したところで、いよいよ食紅を投入
これまで食紅で飲み物に色を付けた経験がないので、どのくらい投入すれば良いのか全く分からないが、とりあえず黒の食紅をひとさじ分入れてみる。
衝撃の溶けなさ。南極の氷だってもっと溶けるぞ
衝撃の溶けなさ。南極の氷だってもっと溶けるぞ
飲み物に入れただけでは全然溶けなかったので慌ててかき混ぜるが、コーラには程遠いビジュアルだ。
これではただの炭酸入り墨汁である
これではただの炭酸入り墨汁である
このまま黒の食紅を足してもより墨汁感が増すだけだろう。そこで茶色の食紅を足してみるが汚さが増しただけ。ならば、と茶色の食紅だけでトライしたが、今度はただの錆びた水になってしまった。
茶色だけではコーラには程遠い
茶色だけではコーラには程遠い
しょっぱなから企画倒れの雰囲気が漂いだす。考えてみれば人類の叡智を集めて生み出された透明飲料に色を取り戻すなんて、それはもう神のやることだろう。一介の人間が手を出してはいけない行為だったのだ。

いっそのこと美味しい墨汁を作る企画にしてしまおうかという考えがよぎったところで、安藤さんが声をあげた。
(安藤さん)でも、これだいぶコーラになってきたと思うんだけど。

(古賀さん)ほんとだ!コーラになってきた!!
最初に作ったやつの泡が落ち着いてかなりコーラに近づいている
最初に作ったやつの泡が落ち着いてかなりコーラに近づいている
茶色がかった泡がコップに沿って残る感じがめちゃくちゃコーラっぽい。上から見てしまうと泥水感は拭えないのだが、横から見れば普通のコーラだと脳を勘違いさせるには十分なレベルだ。よかった、なんとかなった。ただ、問題は味である。
再現に時間がかかってしまったが、いよいよテイスティング
再現に時間がかかってしまったが、いよいよテイスティング
(今泉)これ、コーラだ!!

まさかと思うかもしれないが、色を付けただけで透明なコーラと味が全く違う。普通のコーラの味になっているのだ。多少印象が変わる程度かと思っていたけど、ここまではっきり違うともはや自分自身を信じられなくなる。読者の皆さんは「嘘でしょ」と思っているかもしれながい、僕自身が一番「嘘でしょ」と思っているので安心してほしい。
しかし安藤さんのこの表情が、本当に味が変わっていることを表している
しかし安藤さんのこの表情が、本当に味が変わっていることを表している
(安藤さん)ああ!コーラだ!!コーラになった!コーラになった!!

(江ノ島さん)全然違う!なんか深い味だ。

(安藤さん)(黒色の食紅を指さして)これコーラ味なんじゃないの??

茶色の食紅だけで色を付けたものも飲んでみたが、こちらはコーラではない。どうやら色によって味は確かに変わるようだ。
二つを飲み比べて思わず声に出して「びっくりした」と言ってしまう江ノ島さん
二つを飲み比べて思わず声に出して「びっくりした」と言ってしまう江ノ島さん
ここまで味が変わると、知ってはいけないことを知ってしまったような気持ちになる。コカ・コーラの成分は世界でも一握りの人間しか知らないと言われているが、その真実の一端を我々は垣間見てしまったのではないだろうか。もしこの撮影に参加しているメンバーと近日中に連絡がとれなくなったらそういうことだと思ってほしい。
コーラの結果:透明コーラを黒くすると普通のコーラになる
最初からすごい結果が出てしまったが、この調子で検証を進めていこう。
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エントリーNo.2 ノンアルコールビール

ディストピア感すら感じさせる未来の飲み物
ディストピア感すら感じさせる未来の飲み物
ノンアルコールビールの時点でビールの概念を揺るがしているのに、それをさらに透明にするという、存在をどこに規定すべきなのか全く分からない飲み物だ。

そんな掴みどころのない透明ノンアルコールビールをビールへと戻してあげるわけだが、ビールはいったい何色なのだろうか。考えても良く分からないので、とりあえず一番近そうな黄色にしてみる。
今度は先に食紅を入れる作戦
今度は先に食紅を入れる作戦
注いだそばから透明な水が黄色になっていくのは魔法っぽさがある
注いだそばから透明な水が黄色になっていくのは魔法っぽさがある
全くビールとは違う飲み物ができてしまった。完全にオロナミンCだ。
普段からノンアルコールビールを飲む安藤さんからテイスティング
普段からノンアルコールビールを飲む安藤さんからテイスティング
(安藤さん)んーーーこれは、、飲んだことのない味だ…

(今泉)なんだか分からない

(古賀さん)おっ…言葉を失うね

(江ノ島さん)でも味は違う!

(安藤さん)やっぱり色で味が変わるのか?

透明の時とは確かに味が違うものの、ビールの味を感じることはできなかった。むしろこれまでに出会ったことのない味になってしまった。ビールっぽい味なのに色が完全にエナジードリンクなので、脳が混乱して「新しい味」と認識せざるをえなかったのかもしれない。
その後、黒と茶色を混ぜてギネスビールを目指したがビールの味を感じることはできなかった
その後、黒と茶色を混ぜてギネスビールを目指したがビールの味を感じることはできなかった
透明ノンアルコールビールの結果:色を変えてもビールの枠には入ってこない

エントリーNo.3 オレンジ

次はサントリー天然水 朝摘みオレンジ
次はサントリー天然水 朝摘みオレンジ
ここからは炭酸なしのジュースゾーンだ。まずそのまま飲んでみたが、全員一致で薄めのオレンジジュースという印象だった。これはストレートにオレンジ色にしていこう。
フタと同じ色になった。これは期待できる
フタと同じ色になった。これは期待できる
(今泉)ん…?あまり変わりないかも

(安藤さん)いや、より薄く感じる…

(古賀さん)色がついてるのに味がガンと来ないからそのギャップを感じるのか!

(安藤さん)「この色でこの味はないだろう」ということか

(古賀さん)透明の方はゴクゴク飲めちゃうけど、色付けた方はゴクゴク飲みたくない
今回検証した5種類の中で一番それっぽく色を再現できるので、味も近づくかと思っていたオレンジがまさかの空振りである。このオレンジ色ならもっとちゃんとオレンジの味がするはずだと脳が勝手に思い込んでしまったせいで、そのギャップに味覚がやられたのだ。透明飲料への色付け、思ったより奥が深いな。
そんな発見をしている傍ら、江ノ島さんは食紅のかたまりを飲み込んでしまい悶絶していた
そんな発見をしている傍ら、江ノ島さんは食紅のかたまりを飲み込んでしまい悶絶していた
せっかくなので黄色にもしてみた。
果たして印象は変わるのか
果たして印象は変わるのか
(今泉)まだこっちのほうがいい気がする

(安藤さん)うん、これなら違和感ない

(古賀さん)いやー私はやだなーちょっとやだなー
思わず前歯が出た古賀さん
思わず前歯が出た古賀さん
これは反応に違いが出た。色に対するイメージの違いなのかもしれない。ただどちらにせよオレンジは透明状態で既にかなりオレンジ度が高いため、下手に色をつけず透明のまま飲むのが一番なようだ。
透明オレンジの結果:オレンジ色にすると空振り感が強いので透明のままがよい
残るはあと2種類。次は満を持して「トロピカル味」の登場だ。
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エントリーNo.4 ピーチティー

オレンジに続きこちらもサントリー天然水シリーズ
オレンジに続きこちらもサントリー天然水シリーズ
こちらはかなり甘めで、強めに桃を感じる。すぐそこに桃がいるのだ。ティーの方は三歩下がって待っていて最後に出てくる。息の合ったコンビプレーだ。しかしよく考えたらピーチティーという飲み物がまずピンとこない。そこからさらに透明にするというのはもう二回転くらいしてしまっている。それについては皆さんからも声があがった。
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(安藤さん)よくこれ作ったね…!

(古賀さん)ほんとだねぇ、何を考えてるんだろう。

(安藤さん)本当によく作った、なんでもつくるな飲料メーカー

(古賀さん)変態だよね、仕事としては

(江ノ島さん)なんでも透明にしていく変態

(古賀さん)うん、そういうタイプの変態

デイリーポータルZのライターが「変態」という言葉を使う時は最上級の褒め言葉なので、飲料メーカー各社には自信を持ってこれからも透明飲料を作り続けてもらいたい。

問題の着色はティーなので茶色にしていこうかと考えたが、茶色でどういう色になるかはコーラの時に勉強済みだ。あれでは到底ティーにはならなそうなので、いっそのこと桃のイメージにふって赤で色を付けることにしよう。
鮮やかな赤色。ピーチティーの色の正解はこれかもしれない。
鮮やかな赤色。ピーチティーの色の正解はこれかもしれない。
大いなる期待を込めていざテイスティング
大いなる期待を込めていざテイスティング
(今泉)あ、この色正解です

(江ノ島さん)これはもう正解

(安藤さん)かちっとはまってるかと言われるとどうかと思うけど、範囲には入っている

(古賀さん)うんうん、入ってる!入ってる!

(安藤さん)この色と味だったら売っていても大丈夫。でも桃の味ではないよね?

(今泉)うん、こういう味の何かになった

(古賀さん)トロピカルサマーブレンド味だ

なんと赤色にすることで、透明だった時にはあんなにそばにいた桃がどこかに行ってしまった。代わりに「トロピカル味」としか言えない味になっているのだ。なんならティーの味もいなくなってしまった。
!
しかし、そう考えると透明なのになぜ桃とティーを感じられたのか、ということになってくる。もしやパッケージの絵による先入観なのだろうか。

ああ、透明飲料の何を信じていいのか分からなくなってきた。
ひとつわかるのはこの赤く色をつけた飲み物が「トロピカル味」であるということ
ひとつわかるのはこの赤く色をつけた飲み物が「トロピカル味」であるということ
透明ピーチティーの結果:赤色が正解だがピーチティーではなく「トロピカル味」になる

エントリーNo.5 ヨーグリーナ

こちらは透明とは思えないほど強いヨーグルト味
こちらは透明とは思えないほど強いヨーグルト味
最後は透明乳酸菌飲料のヨーグリーナである。こちらはヨーグルトの濃厚な甘みと水の清涼感が融合したこれまでにない飲み物だ。似たようなものが他にないので、オンリーワンのポジションを確立していると言える。

本来は白にしたいところだが、食紅では白が再現できない。そこで、先ほど透明ピーチティーをトロピカル味へと変化させた赤を試してみたい。果たしてヨーグルトを乗り越えてトロピカルは出てくるのだろうか。飲んでみよう。
左がヨーグリーナ。同じ色にしてしまうと区別がつかない
左がヨーグリーナ。同じ色にしてしまうと区別がつかない
トロピカルの芽が息吹きそう

(安藤さん)ああ息吹いているね!!いるよ、いる!

(今泉)トロピくらいまでは出てきてる

(古賀さん)「おーい俺だ!トロピカルだ!ここにいるぞ!!」

(江ノ島さん)頑張ってー!トロピカル頑張ってー!!

(安藤さん)酸っぱさを1滴足してあげれば出てこれるよ。呼んだー!?って

色が変わるだけでこんなに違うかというくらい、トロピカルの息吹きを感じることができた。強烈なヨーグルトを乗り越えようともがくトロピカルの姿に応援せずにはいられない。

ちなみにこの後、透明オレンジでも赤色を試してみたが、こちらはトロピカルがドーン!と完全に出てきた。すぐに赤色の食紅を買って透明飲料からトロピカルを出してあげてほしい。
あー出てきた出てきた!
あー出てきた出てきた!
ヨーグリーナの結果:赤色にするとトロピカルの芽は息吹く

今回の検証のまとめは以下の通りだ。

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軽い気持ちではじめてしまったが、予想以上に多くの発見があった。その分、透明飲料って結局なんなんだ、という気持ちは増したような気もする。そのうち、透明ミネラルウオーターみたいな何周こじらせたか分からないものも出てくる気がしているので、これからも透明界隈をウォッチしていきたい。
全部緑色にして飲んでもみたが、劇的な変化はなかった
全部緑色にして飲んでもみたが、劇的な変化はなかった
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