しおりに対する想い
しおりが好きだ。思えば初めての引っ越しを友人に手伝ってもらうにあたり"引っ越しのしおり"を作成し配布したことがある。
禁止事項に「大幅な遅刻」と「些細なことでケンカ」と書いたところ、友人が大幅に遅刻した挙句それを理由にケンカしはじめ、とても効率的に禁止事項を破っていた。
さておき、義務教育を終えたひとであれば大体しおり特有のあのフォーマットをなんとなく思い浮かべられると思う。
義務教育がまだ始まっていない読者については「これからこんな学校行事があるのだなあ」と、予習になれば幸いだ。
最初に取り掛かったのは表紙。まずは出来上がったものをいくつか見てほしい。
ケース1.鬼退治の場合
班長は桃太郎
桃太郎の旅のしおりを勝手に作った(これについては中面も作ったのであとでご紹介します)。
いろんな修学旅行のしおりを眺めた結果掴んだ、”らしさ”を出すためのいくつかのポイントを紹介したい。
何にせよイラストが大事
もっとも大事なのは表紙のイラストだ。登場人物は笑顔、しかしはしゃぎすぎていないこと。修学のため、人間力を豊かにするための旅であるからして、その気持ちを一時も忘れてはいけない。
ちなみに筆者の高校では2つ上の先輩が”はしゃぎすぎた”ため、それ以降の年の修学旅行がなくなった。かなしい記憶だ。
イラストタッチも大切である。肝心なのは”学校の中でイラストが上手とされる生徒”が描くタッチを意識することだ。
目の描き方次第でだいぶ理想のタッチに近づく
決して下手すぎても、生徒として上手すぎても不自然になる。ちょうどいい落とし所のタッチを描きながら探っていこう。
紙は色上質紙一択
そして表紙を「色上質紙」に印刷すること。この表紙には「色上質 うぐいす」という薄いグリーンの紙を選んだ。これだけでグッとしおりっぽさが増す。
白黒でもある程度しおりっぽくはなるのだが、やはり色上質紙に印刷したい
この表紙作りが楽しいので調子に乗っていくつか作った。
ケース2.尾津中学校の場合
桃太郎と同じく4人パーティ(そういえば西遊記とかも4人組だ)
西洋を代表する冒険モノ、『オズの魔法使い』のドロシーたちの旅をしおりにした。
持ち物リストの「勇気」「頭脳」「心」が空白のまま進み、旅を終えた最後にみんなでチェックを入れて顔を見合わせうなずく、エンディング曲が流れる、という熱い展開が予想される。
中学校、高校のレイアウト傾向
先ほどの桃太郎のしおりではタイトル含めすべて生徒が書いたが、今回はイラストのみ生徒が描き、タイトルや名前記入欄などはワードで先生が打っている。
フォントはMS明朝、またはMSゴシックが王道
ざっと調べたところ、このパターンは中学校に多い、気がした。イラストのみが中学校、タイトル含むデザインが高校。覚えておこう(偏見かもしれない)。
ケース3.星野中学校の場合
いろんな星をめぐる旅
修学旅行は京都、奈良など複数の名所へ赴くことも多い。そんな物語はなかったかなと考えて作ってみたのが『星の王子様』の旅のしおりだ。
こういう複数箇所へ行く場合の鉄板の描き方が「各箇所を写真で撮った風に並べる」である。
写真が重なって置かれているイメージ。伝わるだろうか
ちょっと楽しくなってかわいくし過ぎてしまった気がする。星の王子様のイラストタッチを変えるともはや何者かわからなくなりそうなのでここは我慢だ。
ケース4.フレンズたちの旅の場合
今日もドッタンバッタン大騒ぎである
最後にもう一つ。近代の物語でも作ろうと思って描いたのが上の『けものフレンズ』のしおりだ。多分「ジャパリバスへの搭乗の仕方」というページがある。
主役の二人には制服を着てもらった。イラストも例の”イラストのうまい生徒”タッチに寄せていく。単純に描くのが楽しい。楽しい。
登場人物は相変わらず笑顔で、前向きである
余談だけど、これを描いた翌々日に偶然「サーバルちゃんを何も見ずに描け」という話題になったところめちゃくちゃ上手に描けてしまい気味悪がれた。
本文に入ろう
さて、表紙で充分筆者の心は満たされたが、先の通り桃太郎の鬼退治については本文も用意した。良かったらお付き合いください。
P1 実施要領 「はじめに」からはじめる
空いた隙間は適当なイラストで埋めよう
しおりは必ず「なぜ修学旅行を行うか」からはじまる。校長の名前でここが書かれることも多い。今回の場合は桃太郎のおじいさんだろうか。
宿泊地はホテルニュー鬼ヶ島である。美人鬼女将が切り盛りする老舗ホテルだ。(このテンションで6ページあります)
P2 持ち物リスト チェックボックスを設けよう
きびだんごだけは忘れてはいけない、あとはどうにかなる
持ち物リストはチェック式にする。それでも忘れる生徒は忘れる。鬼ヶ島は国外のためパスポートが必須だ。通貨は鬼ドルである。
P3-4 注意事項 頑張ってそれらしくしよう
注意事項を連ねていく
制作にあたっていろんな修学旅行のしおりを探して読んだところ、落書きをしないこと、撮影場所に注意すること、などという昔はなかっただろう注意事項が散見され「ほー」と思った。
風潮にあわせ修学旅行のしおりも変化を続けているのだ。
P5-6 日課表 決戦は月曜日
帰るまでが鬼退治です
鬼ヶ島まで遠かろうに、舟を誰かが漕いでいる描写を見たことがない。旅の詳細を詰めていくと些末なことが気になり始める。金銀財宝を持ち帰るのにあの小舟で大丈夫なのか。
この記事が公開される日がちょうど鬼退治の日なのだ。桃太郎たち、頑張っているかな。ここまで来ると勝手に彼らへの情が移る。
架空修学旅行のしおりを作った
さて、というわけで作ったしおりは以上であるが、
あれ、作った記憶のないしおりがある
なになに、注文の多い料理店…?なんだこの見たことのないしおりは。
あ、場所は近いな。
西洋料理の山猫軒か、決してご遠慮はいりませんと書かれている。
注意事項、髪をきちんとして履き物の泥を落としてください、帽子と外套をおとりください…
なんだか格調高い店のようだけどちょうどお腹も空いてきた頃だし、ちょっと行ってみようかな。
旅のしおりはやっぱり楽しい
旅に出なくてもしおりだけで充分に楽しかった。
自分の好きな小説、漫画で勝手に作っても愉快だと思う。表紙は色上質紙、それだけは忘れないでほしい。
めちゃくちゃ紙が余っている。たくさんしおりが作れる