ハードルが高い=時間がかかる
その海藻は「あらめ」だ。
関東育ちの私ははじめて見た。調べると三重の伊勢志摩や山形の飛島で採れる海藻らしい。
これは珍しいとひげをなぜ、そしてパッケージ裏の「お召し上がり方」を見てヒッとなった。
えっ、えっ
食べるまでに
・水で戻す(20分程度)
・ゆがく(20分弱)
・水にさらす(5~6時間…!)
・煮る(長時間)
この4工程ある。
特に水にさらす工程は5~6時間とあり、すべて終えて食べられるまでに半日かかることになる。
……忘れちゃわないのかな……それは。
水にさらしているあいだにあなたのことわたし忘れてしまいそう
ていねい国ではよくあるはなしなのだろう
分かっているのだ、ひごろ干ぶつや豆、玄米に山菜などを扱いなれている料理レベルの高い方にはこういった調理過程は当たり前のことだろう。
寝る間を使うなどしてきっと難なくスマートにこなすのだ。
……かっこいいなあもう! そういうことすっとやっちゃうかんじかっこいいなあ!
波よ聞いてくれ、料理ていねい派の方々がスマートにあらめを調理している、一方そのころ私は雑にレンジでなにか温め、しかもレンジがかかりきるのも待てずに半生で何かかじってるのだ。
ずぼらで雑でせっかちなのだ。
そんなせっかち国の住人のわたしにあらめは扱えますか、神よ。
神への畏れでクックドゥをフライパンに絞り出す手がふるえる。
一旦へんな形の遊具でも見て気を落ち着かそう
これは異文化の理解だ
神を畏れそしてレシピを検索すると、そんな干したあらめだが水で戻しただけで使っているレシピのほうがむしろ多いようだ。
パッケージの裏の例の表記はていねいの最端を行ったものなのかもしれない。
いわばていねい過激派勢力である。こちらのずぼらさが過激なのと同じように、あちらのていねいさもまた過激なのだ。
となれば必要なのはひとつ。対話である。
手をつなごう。異文化を理解しよう。
ということでパッケージどおりにやるぞ今日は! まずは水で戻す。20分くらい
もどった。確かにこれで煮ちゃえば食べられそう
しかし今日は本気でやるのでここから20分、米のとぎ汁で湯がく
ちなみに我が家は無洗米利用のため米はひごろとがずに軽く洗うだけだ。今日はこの日のために無洗米じゃないお米を買ってきてなんととぎ汁を用意した。とぎ汁マターで米を買うなどはじめてだ。
これが異文化理解…!
お湯をきったら水がずいぶん黒い。手応えあるなあく
あとは6時間水にさらす、たまに水もかえた
忘れないように鍋に張り紙をした
わー、きれい
あとは調味料をいれて煮る、長時間とあったが1時間くらいで勘弁してもらおう…
おおお
正直、それほど手をかけたとは感じなかった。考えてみればわかることだが、かかっているのは手ではなく圧倒的に「時間」だ。
まさに、せっかち国の住人として見たことのない世界だ。
UMAI
で、これが食べたらまあうまい。
あれだけ水だお湯だとつけ続けたにもかかわらずしっかりした歯ごたえがのこっていて、くさみやえぐみがなくすごくクリアに海の味がする。
山形の良いところでとれた海藻なのだからまず間違いないにきまっているのだが、それにしてもうまい。
これがていねいさの力か。徳が積まれた気分で満ちた。
ていねい国のみなさんは日頃こんなうまいものをたべているのデスね……。せっかち国からの旅行者としては驚くばかりだった。
正直、水でもどしただけでもこの素材だったらうまいだろうとは思うが、とぎ汁でゆでこぼし水にさらして水替えもしたていねいな時間と手ごたえは忘れないだろう。
貴重な体験をありがとう。
ていねい国のみなさんとつないだ手はかたく握られたのだった。
山形のスーパーではフタバの懐かし系アイス「サンフォルテ」がたくさん売られておりました