10年ぶりの新小岩
新小岩は葛飾区最南端にある駅である。私が通っていた高校がその近くにあり、当時は毎日自転車で駅前を通っていた。帰りには駅前のマックや吉牛によくお世話になった、思い出のある地である。
高校を卒業後も一時バイトしに通っていたが、辞めてからは同窓会などで数回飲みに来たくらいでここ10年はとんと行かなくなってしまっていた。
高校とバイト時代を過ごした地だが、今やもうすっかり遠い存在。
駅前にはけっこう立派なアーケード商店街がある。ここに入るのは18年ぶりくらいか。
で、今回の目的地はこのルミエール商店街に入っているダイソーである。うろ覚えであるが、大学時代に地元の友人に誘われてバイトを始めたのだ。たしか20だか21歳くらいのことだ。
当時を振り返りながら歩いてみる。思い出せない事が多くてそのことにキュンとなる
商店街を歩いてみて、バイト先以外で私が記憶から呼び起せたのは高校時代たまに寄っていた古本屋さん、本屋さん、中古も置いているCDショップだった。だがどれも見事に無くなっていた。かわりにコンビニやドラッグストアが増え時代の流れを感じる。
ふと、バイト先であったダイソーも無くなってないか焦ったが、ちゃんと残っていた。
カツラ屋さんの隣。看板こんなに大きかったっけ…?
店内は写真撮影OK。ありがたい。
1000個誤発注事件について
誤発注事件が起きたのはバイトを始めてから数か月経った時のこと。商品の陳列・充填、レジ、サッカー(レジの横で袋詰めの手伝い)などに慣れたころ、店長からバラエティコーナーの発注を担当するように言われた。
パソコンの管理画面に入り、ダイソーで扱っている商品一覧から売れそうなものを選んで個数を入力し、注文するだけの簡単な作業である。
現在のバラエティーコーナー。当時の2倍くらいになってる。
私がバラエティー担当として面白グッズの中から真っ先に注文しようと思ったのは、お面だった。当時私は各国のお面を集めるという趣味があって、お面に興味を寄せていたからだ。
それに、すでに明石家さんまやアントニオ猪木といった有名人風お面が並んでいたし、パーティやお祭りに使えるから売れると思っていたのだ。
そして数種類のピエロのお面が詰め込まれたセットを10口発注した。多少多い気がしたが100個くらいなら売れるだろうと思った。だが、セットは10個じゃなくて100個単位だった。結果的に1000個のピエロのお面が詰まった、どでかい段ボールが店に届いた。悪夢のようだった。
箱を開けたらこんな感じである。(写真は当サイトのWebマスターが12年前に行った「ピエロナイト」イベント。当時読者だった私も実は写り込んでいる)
冷や汗をかいた。いくらなんでもそんなに売れないだろう。お面好きの当時の私でさえも種類別のピエロをせいぜい3個しか買わない。土下座しようかと思うくらい反省したし、相当怒られることを覚悟した。
でも当時の店長や仲間は許してくれた。ことあるごとにこの失敗をネタにされたが、笑い話にしてくれた。
せめて売れるようにとバラエティーコーナー以外の場所にもピエロのお面をたくさん飾りつけた。しかしびっくりするほど売れなかった。ピエロはどちらかというと怖がられる存在らしかった。結果、私のいる間に数枚売れたかどうだかくらいである。
今、そのピエロのお面は残っているか
18年もの歳月を経ているが、ヘタしたら残っているかもしれない。いざ、勇気をもって確認しよう。
ピエロのお面は完全に無くなっていた。売り切ることができたのだろうか。
くまなく探したが、私が発注したピエロのお面は一つも無かった。かわりにあったのは動物の可愛いお面がほとんど。
「皆で頑張って売るからね」
心の底からホッとした。私が1年ほどでやめることになった時、仲間たちに花束を渡されながら言われた「ピエロのお面は皆で頑張って売るからね」という温かい言葉を思い出す。
本当に売り切ったのか、他の店舗に回して協力してもらったのかは知る由もないが(当時働いていた人は見当たらなかった)、長年心に刺さっていたトゲが消えたようだった。
このマスク気になる。大量発注したい。
ピエロのお面が無くなっていることを確認したあとは、じっくりと店をまわった。
当時フィリピンの女性が大量買いしていたセクシーなパンティはひとつも無くなっていた。また、よく売れていた乾電池や固形石鹸の幅もぐっと狭くなっている。逆に当時は無かった植物や小型犬の服、オシャレな壁紙などのDIY商品を発見して変化を楽しんだ。
気づいたら4000円以上買い物をしていた。けっこう使った気がするがピエロのお面は40枚しか買えない額だ。トゲは抜けたけど恩義はまだ感じる。また来ないとな、と思った。
まだまだバイト話はある
私は他にも焼き肉屋、美術館、プリンターの店頭販売、病院事務、郵便局事務、クレジットカードなどの通知の封入、大学の掃除、ディスカウントショップ、ラーメン屋、交通量調査、パソコンショップのネット販売、TV番組の観覧、エキストラ、住宅地図調査、出版社などでアルバイトをやっていた。お面集め以外無趣味で飽き性だったのでかけ持ちや単発のものばかりやっていたのだ。
そんなフラフラとしたバイト生活をした先に、今は割とやりたい仕事につけている自分がいるからとても不思議だ。また別のバイトのエピソードがどこかで書けたらなと思う。