猫に小判、糠に釘、カップ麺のフタに顔
永井ミキジさんがデイリーポータルZに顔ジャケラーメンのコレクターとして登場したのが2007年。
参考 デイリーポータルZ:顔ジャケラーメン試食会
この頃にはコレクションは100枚くらいで顔ジャケブームは「第三次」まで来ていたという。言っては悪いがラーメンブームの一発ネタと受け取ることも可能だろう。あれから10年。一体どうなったのだろうか。
10年前の記事を書いたデイリーポータルZ編集部の古賀さんとミキジさんを訪ねた。
コレクターの永井ミキジさん。最近はC級スニーカー集めでも有名。本業はデザイナー
ぼくはずっとここにいるよ
大北:今でも頑張って食べてますか?
ミキジ:食べてますよ。今回あれから十年後っていう感じじゃないですか。皆さん今ご活躍されてますけど、僕はずっとまだここにいるっていう。
大北:(笑)
古賀:10年前のあそこに(笑)
ミキジ:僕はただただ3分待って蓋を開けてラーメン食べてる。ループっていうか。矢沢永吉じゃないですけどあんたらの10年、俺の3分みたいな(笑)
大北:ループものから抜け出てないんだ(笑)
ミキジ:みんなには安心してほしいんですよ。僕だけはここにいるからって。「昔集めてましたよね、カップラーメンのフタ」って言われるんですけど。今もだよって。
ラーメンを食べるのに「なんつッ亭の全員がなんでこんなに睨んでるのだろう」前回の記事でも紹介した名作
震災の町で売れ残る顔ジャケラーメン
大北:元々はラーメンパッケージに知らない人物が出てくるのおかしいだろってところなんですよね
ミキジ:そうです。ラーメン屋の知らない店主が睨んでるジャケットになるのはどういう意味があるのかと。10年前の記事でも書いてましたけど、なんつッ亭の全員がなんでこんなに睨んでるんだろうって思ったんですよ。
古賀:食欲とは逆方向ですよね
ミキジ:でも、やり続けてると色々気づくことあって。東北の震災があったとき、近所のスーパーを見に行ったら食材がほとんど売り切れてたのに、顔ジャケラーメンだけが全部残っていたとか。人は不安な時、顔ジャケラーメンは楽しめないんだなって。お化け屋敷と一緒で心に余裕がないと楽しめない。
大北:人間に余裕がある時のもの(笑)
ミキジ:やっぱカップヌードルとかマジメなの買いますよ
ミキジさんが「顔ジャケの中で一番良い」という理由はラーメンより前に顔が来ているから。ねじりはちまきはミキジさんが「天使系」と呼んでいるジャンル。こういうものは余裕があるときにこそ食べたい
顔ジャケ不毛の時代が来てミキジさんがパニックに
古賀:2007年の記事は第三次顔ジャケラーメンブームの時で「もう飽和してます」というところまで来てたんですよね
ミキジ:あのあと第五次顔ジャケラーメンブームまでいったんですけど、顔ジャケラーメンを語る上で重要だった?工場「十勝新津製麺株式会社」が2009年に社名を「株式会社とかち麺工房」にしたあと2014年に閉鎖したんですよ。
「これは氷結乾燥ブームが来て十勝新津製麺の社長さんですね」もう顔ジャケラーメンの工場の社長が出てきているという。
ミキジ:そこを買い取った渡辺製麺ってところが結婚式や同窓会の記念品であなたのオリジナルラーメンを作りますよってサービスはじめたりもしたんですが、それは僕もう無理じゃないですか。出席できないし(笑)。そのサービスも今年で終わるみたいですけど。それでとかち麺工房がなくなってから顔ジャケ不毛の期間に入って…
大北:顔ジャケ氷河期だ
ミキジ:顔ジャケ氷河期とともに僕がパニックになるという(笑)
古賀:(爆笑)精神の安定が
ミキジ:そう。精神の安定がなくなって僕がカップ麺以外の袋麺とかカレーとか顔があるものを全部買い始めたんですよ
大北:(笑)
2007年の記事を書いた古賀さん。終始笑いっぱなしでインタビューが行われました。
ミキジ:もう顔がないのやばい!と思って。食べたくないのに顔がついてる食材を買いはじめて
古賀:あっ、これもう『私が作りました』系のやつも買ってるじゃないですか! 精神が不安定になりすぎて(笑)
ミキジ:そうなんです。野菜の生産者とか、キリがないじゃないですか。でも今思うとあの時「私が作りました」の写真内で抱かれていた子供が大きくなって、新商品を抱きかかえて写ってるなっていうのがあるんですよ! 後を継いでる。あそこ攻めきれてなかったなって。
大北:子供が出てたらそれも買わないといけないんだ…
ミキジ:今後は買おうかなと…。あとはもう韃靼そばとか餃子と顔のあるもの全部買い始めて。
大北:本当に氷河期がやってきて人類がとる行動ですね(笑)
顔ジャケラーメンが不作となり「私が作りました」系のものに手を出し始めたミキジさん
お菓子に埋まってるうどん屋の店主。広義の顔ジャケラーメンである
ラーメンを離れていく顔ジャケ
ミキジ:もう、ただただ顔を求めていってんですよね。ぼく今パスタきてるなって思って。 海外は海外で顔ジャケラーメンがあるんですけど、まだ袋麺文化で。そうなってきたらパスタ結構やばいジャケあるぞってなって。パスタを今買うようにはしてるんですよ。これは絵なんですけど。
大北:あ、パスタのキャラクターも範囲に入ってきたんですね(笑)
広義の顔ジャケラーメンとして顔イラスト付き袋のパスタまで集め始めたミキジさん
ミキジ:やばいですよ今。こんなんもみんな見逃してるでしょ
大北:これは…味噌汁?
ミキジ:見てくださいこのヒエラルキーを。寿司屋の味噌汁を売ってるから、味噌汁、寿司、店主の順番で来てるでしょ。最高でしょ。こんなの。こっちもお吸い物、うなぎ、あの店主の順なんです。名店の味巡りっていうシリーズ。
大北:(笑)
寿司屋の味噌汁は手前から「味噌汁」「寿司」「店主」の順で強調される。ここにはヒエラルキーが存在する
ミキジ:ちなみに今飲まれてるほうじ茶は僕の中で最大の接待ですから。これはダイソーなんですけど。
古賀:やばいですね。埋まってるもんねお茶にね
ミキジ:たしかこれまだ売ってるはず!と思って。さっき買ってきたんですよ。
顔ジャケラーメンから、思えば遠くにきた。「茶に埋まってる顔」である。取材に来た我々にこのお茶を出してくれたそうだ。気づくわけがない
ライセンスオーナー募集のチラシまで集め始めた。もはや食品ではない
顔ジャケラーメン界にスター不在の時代が到来
大北:顔ジャケラーメンはどんどん減ってるんですね
ミキジ:コストが高いのか売れなくなったのか減ってきてますね。サークルK・サンクスでよく買えたんですけどファミリーマートになっちゃったじゃないですか? 土壌自体なくなって来てるのかなっていうのと、後はもうラーメン屋が増えたからスターが前に出てきてくれない。
スター不在の折、顔ジャケラーメンならぬ寺ジャケうどん
大北:前回の記事では佐野実さんなどが
ミキジ:佐野実さんと、あと山岸一雄さんも亡くなりましたからね……寂しい
大北:どんどん死んでいく…
ミキジ:この前スーパーで佐野実ジャケのラーメンを見てびっくりして、死んでもなおジャケに登場するという…
大北:たかじんと同じだ! やしきたかじんは今大阪でキャラクターになって健在なんですよ
評論家とラーメン屋のコラボもの。明らかに写真が小さい。顔ジャケが縮小傾向にあることを示す一枚
ミキジ:あとはラーメン屋同士のコラボとか。ラーメン評論家とタッグとか。この石神秀幸さんのコラボ系も一時期よく出てたんですけどね。
大北:顔ジャケというより全身ですね
ミキジ:そうなんですよね。もっとドカーン!と欲しいんですよ。最近、全然前に出てきてくれなくて。あ、でもこれは良かったですね。これは相当良かった。僕もこの握手に両手を出したくなった
大北:ラーメンの淵から手が出てますね(笑)
古賀:ほんとだ、これはいいですね(笑)
ラーメンの淵に存在し、手がスープにつかろうとするコラボ
「やっぱり最近こんな感じで自分の背中(生き様)を見せるジャケが少ないんですよ」という理想的な一枚。男の生き様を見せる系が少なくなった理由を「単純に顔ジャケが当たり前になってきて、人生見せても売り上げにつながらないんじゃないですか」とミキジさんは分析する
顔ジャケの孫弟子が
僕が散々「おかげさま系」って言ってた代表的なカリスマ山岸一雄ブーム。時を経て大勝軒の本店が閉店するわけですよ。そしたら「ありがとう大勝軒」って言う寄せ書きが入ったのが出た。
大北:おかげさまからありがとうに……
「おかげさま系」と呼んでいた大勝軒カップ麺に「ありがとう」が登場
ミキジ:このあと少しありがとう大勝軒シリーズ出るんですよ。そこから弟子が山岸さんを使ってツーショットで登場するシリーズがちょくちょく出るんです。ここまではまあ愛があるじゃないですか。弟子だから俺を使って売れろよって。けどこれがだんだんおかしくなってくるんですよね。
もはや麺ではなく絆である。そして孫弟子が進化させた一杯
ミキジ:麺絆、麺に絆ですよ。店の名前でもないですよ。「山岸一雄継承の味わい孫弟子が進化させた」もう進化させてもうてるんですね。
大北:もうラーメンじゃなくて絆ですね!
ミキジ:絆でしょ。絆をラーメンにし始めたんですよいよいよ。で、続編でこれが出るんですよ。
ついには「進化」をこえて心の味を「アレンジ」してしまった一杯。絆は大丈夫なんだろうか
ミキジ:「山岸一雄の心の味を孫弟子がアレンジした一杯」っていう。進化まではなんかセーフな感じしたけど、もう味を変えてしまってるんですよ。いよいよもうやばいぞっていう。ほんと今すごいんすよ。これとかどうですか? もう顔ジャケ超えて、語っていこうっていうシリーズが出たんですよ。
「顔ジャケを超えて語り始めた」というシリーズ
ミキジ:いや、これもう顔出てないですけど買いだろうと思って。全種抑えてるんですよ。最初はラーメンの感想を言ってるんですよ。でも第3弾になって言うことなくなって聞き始めたっていう
第三弾になると語りが完全に質問になったという。シリーズはここで終わっているらしい
ミキジ:ヤバイ! 聞き始めた!って(笑) このシリーズきたなって。
大北:(爆笑)「一度は食べていただきたい◯◯」みたいなしゃべっちゃう商品名今ありますよね。文章でくるやつ
ミキジ:あります。ポエムもありますよ、ラーメンポエム。あ、これもそうですね。
ラーメンポエム「感謝の気持ちを込めて一杯一杯作るからおいしさが伝わるんです」相田みつを美術館にあってもおかしくはない一枚
心霊系の登場
ミキジ:あと心霊系って呼んでるんですけど、店主の生前の想いが出てるな、完全に写ってるなーっていうのがこれ
「店主の生前の想いが完全に写ってるな」心霊系と呼ばれる一枚。
心霊系最高峰の一枚。ラーメンの湯気から店主の想いが召喚される、今でもスーパーで買える一杯
古賀:これは湯気から湧いて出てきてる、この人が(笑)
ミキジ:完全に出てますよね。店主の想いが。テンション上がっていっぱい買いましたよ。スゴイなと思って。
大北:店名の煙に絡めてラーメンの湯気から。あ、つけ麺にも出てる! あんまり暖かくないやつにも
ミキジ:ラーメンに対しての想いがやっぱり出てるんですよね
つけ麺もある。つけ麺の湯気は少なそうだがそれでも出てきている
カップ麺から箱麺へのシフト
ミキジ:カップよりも箱麺の方に顔ジャケはシフトしてきてるんですよね。
古賀:箱麺てどこに売ってるんですか
ミキジ:高速道路のサービスエリアとか東京のお土産屋さんとか。すごく多いんですよ。ここに手を出したらヤバすぎるから気になるやつだけしか買わない。
顔ジャケはカップ麺があまり出なくなっていて箱の方にシフトしてきているらしい
古賀:顔がおかしい(笑)。でも青葉ですね一応
ミキジ:そうですね。角の方がもう情報なくてラーメン食べてる客が出てるだけなんですけど(笑)
お客さんが出ている。顔ジャケに比べて迫力がない。迫力が、とか言ってもそれは仕方ない。ただのお客さんだからだ
ミキジ:あともう親父の小言とかトイレに貼ってあるやつを軽く使っちゃったりとか
大北:これ既製品ですよね(笑)
古賀:この人が書いたわけじゃない
「店のトイレとかに貼ってるやつですよ」という親父の小言が写っている。これはもう既製品ではないか
ミキジ:あと炎がでかかったら買うようにしてて。
古賀:炎がでかかったら買う(笑)
ミキジ:一時期は顔ジャケも炎が見えたら味噌だと思え、っていう時期があって。
大北:(笑)
ミキジ:焦がし味噌っていうのがスゴイ流行って、たくさん出たんですよ炎=みそみたいな。
「炎がでかかったら買うようにしている」という。炎がでかいものは焦がしブーム時にたくさん出たらしい
サイドやシュリンクものが増えた
ミキジ:ラベルじゃなくサイドに顔が出るっていうパターンが出てきました。シュリンクのものも。でもサイドは保管しにくいし、僕はフタがメインなので。でもこのたいめいけんの人最高だなって思って買ってしまいますね。
顔ジャケはサイドにも進出してきているらしい。カップ麺のフタがメインなのでよほどのことがないと買わないとか。これは洋食界の名物店主。
セブンイレブンの蒙古タンメン中本カップ麺は顔がなくて油断していたが裏にあったタイプ。「あるわー!と思って、その後も疑って買ってたらたまに違うの出るんですよ。辛いの苦手なのに!」
海外物も集める
大北:これも台湾のやつなんですね
ミキジ:僕忍者映画も集めてるからすごい欲しくて、これは現地の子が日本に来るからって言うので買ってきて持ってきてもらったんですよ
台湾から買ってきてもらったという。忍者が顔ジャケに登場
大北:遠いのはだれかに買ってきてもらうんですか?
ミキジ:勝手にみんな気を利かせて買ってきてくれるんですよ。わがまま言ったらあれなんですけど、俺は美味しいものが欲しいんですよ。 現地の。特産品とかもっと普通の
大北:カニを買ってきてっていう(笑)
ミキジ:そうなんですよ。カニカレーとか買ってきてくれても複雑なんですよ
「もっと調理が要るんじゃないか」というかにのみそ汁。前回も蟹ラーメンが出てきたがもう顔ジャケでなく蟹のみそ汁である
「これ宇宙戦艦ヤマト、アイドル、カレー、って並んでる。やっぱねすごいんですよ要素が」社会が冷静さを失った例
来るとこまで来ている顔ジャケラーメンの10年間
ミキジ:これすごくないですか。シーフードの海。ただの海だけ、木もなけりゃイルカもいない
大北:これ短絡的ですね(笑)
われわれは顔ジャケの10年を見に来たわけだが、完全に迷走していることがわかった。海とカレー。
ミキジ:そうなんですよ。もう気づかなくないですかこういうの。
大北:劇中劇みたいな感じですよね(笑)
古賀:芝居で出てくるやつだよね(笑)
ミキジ:(笑)本当なんてことないと思うんですけどやっぱやばいですよ
大北:このやばさに気づくっていうのはやっぱり顔ジャケラーメンは相当深いとこまでいってるんですね(笑)
この発売日にミキジさんは初めてアパホテルに泊まったという
情報を得るのに楽はできない
古賀:発売情報はどうやって知るんですか?
ミキジ:なんかニュースで。一応「ラーメン」っていうピュアなワードで調べるんですよ。地獄ですけどね。
大北:地獄(笑)
古賀:何万件っていう(笑)
ミキジ:楽したらダメなんです。顔ジャケラーメンなんて僕が作った言葉だから出ないんです。「ラーメン 新発売」とか「ラーメン 店主」とか地道に調べていくしかない
相撲型はけっこう出ているらしい。もしかしたらラーメンであることを忘れているのかもしれない
顔ジャケ以外のコレクション
大北:集めてる紙のものは顔ジャケラーメンだけですか?
ミキジ:色々とやってますね。最近は紙ものにシフトし始めてて。たとえば古くからだとガチャガチャの台紙とか。
最近だとヤフオクで出品者の叔父さんが集めてた古い紙の資料とか。そこにはなんか文化がやっぱりあって、そういうのが好きで
「大久保で顔ジャケラーメンだと思って気軽に買ったら微妙にポーズが違ってて、まだあるのかまだあるのかと買ってたら髪おろしてるのを発見したときはヒザから崩れ落ちた」という
古賀:マニアの方が亡くなって世に出てくることがありがちなんですか?
ミキジ:ありがちですね。だって、僕が死んだら僕の両親はこれすぐ捨てると思うんです
大北:(笑)
ミキジ:「生前は健康に気を使わずラーメンばっかり食べてる息子でした」って言ってこんなん速攻捨てて燃やされるんですよ(笑)
麺が顔になってるパターン。酉年だからだそうだが、翌年「酉年から戌年→鳥辛(から)ヌードル」というのが出たそうだ。どうしてそこまで干支にこだわるのか
ミキジ:ラーメンパッケージも集めてる人は当然いて。最終的には顔がないジャケットの方が価値が出るんですよね、もう絶対。普通のカップヌードルとか。こういう顔ジャケラーメンは絶対価値出ないですからね。
大北:顔ジャケ以外にも集めるのあるの大変ですね…
ミキジ:結構昔からガチャガチャの台紙とかファーストフードのおまけとかも集めてたけど、僕じゃなくてもいいものはガッツのある若い人がやればいいかなみたいなのはありますね。
僕はもうこれやっちゃったから、食べ続けるしかないかなって(笑)。インスタントラーメンがそんなに好きでないのに食べてるっていうのもイイじゃないですか(笑)
「これはお湯をぼくらにかけてくるという」そんなラーメンがあるのだろうか!
そんなに食べたくないけど食べ続けた人が開発した「カップ麺を美味しく食べるコツ」
大北:カップラーメンはそのまま食べてるんですか
ミキジ:飽きないための試行錯誤はすごいですね。 まずポット使ってたんですけど、ヤカンで沸点までカンカンにしたお湯を注ぐとか。味全然違いますよ。ポットだと100℃いかないから。
もっと熱くしようと思ってとろみつけたり。トッピング入れたりとか、あとは冬場とかベランダで薄着で食べてますね。あさま山荘事件のカップヌードルじゃないですけど、外で食べたらおいしくなるかなと思って。
箸で持ち上げてかきまぜるのを3倍くらいやると味がかわってくるらしい
ミキジ:他に、10分どん兵衛じゃないですけど、思ってる3倍かき混ぜるのがいい。麺を箸で持って2,3回バシャーって持ち上げるじゃないですか。あれを必要以上にかき混ぜてるととろみが出てくるんすよ。なんでかわかんないですけど味変わりますよ。
焼きそばも湯切りやるじゃないですか。あれも一回じゃなくて、もう一回お湯入れて二度洗いして食ったら味変わるんですよ。胸焼けがしなくなる。油がよく切れるんですかね。二度洗いソース焼きそばはぼく皆さんにお勧めしてるんです。
大北:ソース焼きそば二回湯切りするのは丁寧な暮らしですね(笑)
そうめんではあるが「いつか振り向いてくれるんじゃないか」といって買っていくらしい。というのも…
「当時デイリーポータルでは"後ろ向きだけど"としか紹介してなかったやつなんですけどこれが後に…」
「翌年これが出たんですけど、このフリーターのやつについに彼女できたんですよ(笑)」ストーリーが生まれた!
なぜ顔ジャケを僕に頼まないのか
大北:メーカーからのコンタクトあったりするんですか?
ミキジ:全くないですね。参考意見をとかそういうのも全くない。これだけね、インスタントラーメンを食べてるにも関わらず、そんなに好きじゃないっていう俯瞰からも見れてるのにダメなんですよ。
一番知ってるんですよ僕が。売れる法則を。頭に巻くタオルの太さ、ヒゲの形、Tシャツの色、ラーメンの角度、こんだけデータベースがあるのに。でもそんな仕事は来ないから感覚がおかしくなってて。
「独創的なラーメンの店主の腕組みは左手が上」とか見えてきてるんですよ。でもまだデータとしては量が少ないからずっとそれは統計を取ってて
古賀:腕組み占いだ(笑)
大北:ミキジさんの努力と日々の鍛錬はほんとにすごいですね(笑)
「前回の記事の時ら辺になんつっ亭がラーメン風呂をユネッサンでやってたんです」あのときからすでに時代はおかしくなっていたのだ。そこから10年である
ミキジ:単純に顔ジャケラーメンっていうのが知られてないっていうのがありますけどね
古賀:ああ!あるな!という感覚ありますけどね
ミキジ:そうですね。一回知った後はずっと顔ジャケだなって思うからその人の価値観変わるっていうのはありますねー
南洋に取り残された日本兵に思わず敬礼!
10年はすごい。この他にも話は山盛りで、たとえばミキジさんがYouTuberをおもしろく思えるまで何年も観続けたりした話だとか。
とにかくミキジさんの日々の鍛錬がすごいのだ。これがコレクターというやつかと恐れ入る。
「我々はミキジさんのコレクションのおいしいところだけ掠め取っていくわけじゃないですか。全部出しちゃっていいんですか?」とミキジさんに聞くと、それはもう全部出しちゃってくださいという。
他のコレクションにしてもミキジさんは一番になりたいわけじゃなく、ただおもしろいから集めているという。せめてメーカーの方には顔ジャケラーメンのデザインをミキジさんに発注していただき、そして世界中に散らばったそれをミキジさんが自分でまた集める夢のような未来が来ることを願うばかりである。
ミキジさん顔ジャケラーメン話しすぎてて「これ見せてこれ話してっていう落語みたいな30分のセットがある」という。伝統芸能の域