特集 2018年2月9日

下町の神社の節分はライブ会場のよう

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「下町の神社の節分」と聞いたらどんな印象を受けるだろうか。はじめに言ってしまおう、「ライブ会場」のようだった。
生まれも育ちも横浜。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。(動画インタビュー

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節分祭の掲示
節分祭の掲示
2月3日は「節分」だった。立春の前日である節分の日には、地方によって家庭で豆まきをしたり、恵方巻を食べたりして過ごされたのではないだろうか。節分の日には全国の神社や寺院で「節分祭」や「節分会」を実施している。大きいところだと、有名人などを招いて豆まきをするのをテレビで見たことがあるという人もいるだろう。

とはいえ、自分自身は今までそんなに節分という行事に対して積極的にかかわってきたわけではなく、1月のお正月、そして後に控えたバレンタインデーなどに比べると「ちょっと地味な行事」と思っていたのが正直なところだった。しかしそんな「地味」だと思っていた(失礼)節分が実は神社にとっては大事なお祭りで、「神社の行事の中でも3本の指に入るぐらいに忙しい」のだということだった。
神前に供えられた福豆
神前に供えられた福豆
そしてその話を聞くまで私は、「神社は節分が忙しい」という事実を全く知らなかった。実家の近くの神社の節分に行った記憶はないし、節分祭をやっているかどうかすら知らない。私は去年から節分など神社の繁忙期には知り合いの神社さんをお手伝いしているのだが、今年は改めて節分行事に密着してみることにした。

押上・高木神社

節分の舞台はこちら、高木神社さん
節分の舞台はこちら、高木神社さん
私の過去の記事でも度々登場している高木神社さん。東京・押上にある親族で経営している小さな神社で、御朱印やかわいい頒布品を目当てに遠方からの参拝も多い。

こちらのご祭神、高皇産靈神(タカミムスビ)は「縁結び」や「心願成就」「交渉・相談事がまとまる」などのご神徳があるとされ、御朱印きっかけで訪問して以降、記事がきっかけでお知り合いになり、今では繁忙期にお手伝いしたりこうして一緒に仕事をさせていただいたりしてることを考えると、こちらのご神徳すごいって勝手に思っているところだ。
アニメコラボもやっている、柔軟な神社なのだ
アニメコラボもやっている、柔軟な神社なのだ
ここの神社で個人的に自分が好きなところは、伝統的な場所だからといって保守的にならず柔軟なところだ。今年(2018年)は放送中のアニメとのコラボもやっていて、年末年始にはコラボグッズ目当ての参拝客も押し寄せた。昨今の御朱印ブームで若い女性の参拝客が増え、このアニメコラボでは若い男性の参拝客も増えたという。あらゆる年齢層の参拝客が訪れる。すごいな最強じゃないか。

さて、今回はそんな高木神社の節分に密着する。

1月某日――。

夜の神社ってちょっと怖いよね
夜の神社ってちょっと怖いよね
節分より1週間ほど前の1月後半、事前準備があると聞いて夜の高木神社にやってきた。時間は7時ごろ。神社は普段ならとっくに社務所を閉めている時間だが、神社の氏子の方々が集まって作業をしている。
段ボール20箱ぐらいのお菓子
段ボール20箱ぐらいのお菓子
目の前に広がる大量のお菓子。これは、節分祭で配るためのお菓子。そしてこれからお菓子の詰め作業をする。

「下町の小さい神社ではこんなにお菓子配ってるの……」と思ったわけだが、今年は土曜日ということで去年よりも人の出が予想されており、用意したお菓子は約1500個分。去年は1200個用意して、その時は家族だけで少しづつ当日までに準備をしたという。通常の仕事もあるし大変だ。
作業終了した
作業終了した
13人で2時間半くらいかけ、当日配るお菓子の準備は終わった。ああ、これで当日子どもたちの笑顔を見られる……。だが、私は去年も参加して知っている。節分のお菓子は子どもたちだけのものではないのだ。

節分当日

2月3日。晴れてよかった
2月3日。晴れてよかった
晴れたうえに風もあまりなく、天候に恵まれた。神社に入ったのは8時半頃だったが、その頃にはもう既に参拝客の姿をチラホラ見かけた。豆まき自体は15時から。それまでは、というとずっと社務所での対応のお手伝いや授与品の準備をしていた。
授与品の準備風景
授与品の準備風景
節分の日には当日限定の書置きの御朱印を当日までに高木神社の神職の方々が相当な数を準備していた。朝準備されていた御朱印を確認して、「今日は書置きのみだしこれだけの準備があるし、混乱はないだろう」と安心しきっていたのだが完全に油断だった。
当日のお昼までに用意していた御朱印が尽きそうになり、社務所はばたばたしていた
当日のお昼までに用意していた御朱印が尽きそうになり、社務所はばたばたしていた
当日は朝9時からお手伝いをしたが、御朱印を求める方の列は途切れず続き、お昼頃には準備していた御朱印が尽きそうになるという事態に。豆まきの時間は参拝客の安全のために社務所を閉めるのだが、これがなかなか閉められず豆まきの開始時間近くまで対応することになった。

豆まき開始

境内は混雑するので消防や警察も出動する
境内は混雑するので消防や警察も出動する
そして豆まきがはじまる。壇上に上がって豆まきをするのは年男・年女のみなさんや近隣の会社の方々など。豆まきといっても、まくのは豆だけじゃない。というか集まった参拝客の目当ては豆よりもお菓子。細長いものが宙を舞っているなーと思ったらプリングルスだった時は驚いた。
人ごみの中から突き出す手や袋やカゴ!
人ごみの中から突き出す手や袋やカゴ!
豆まきがはじまるともう大変。みなさんなんか集めるためのカゴとか大きい袋とか持ってるし、人ごみの中から手と袋が飛び出していてさながらライブ会場のような熱気。写真を見返していてクーラーボックスがあることに気付いたときは笑ってしまった。
GIFでもどうぞ。宙を舞うお菓子や袋!
GIFでもどうぞ。宙を舞うお菓子や袋!
撒かれるお菓子に合わせて動く人波。これ、撒く側も楽しそうだなあ
撒かれるお菓子に合わせて動く人波。これ、撒く側も楽しそうだなあ
最後の方のターンではお菓子手渡ししたりする。なので前方に陣取れるとつよい。
最後の方のターンではお菓子手渡ししたりする。なので前方に陣取れるとつよい。
豆まきする人たちがアイドルのように大人気! 年齢関係なく「おにーさんこっち!」「お姉さん後ろよろしくー」などの声があちらこちらから飛んでくる。節分、雅楽もしてるしフェスだこれ。
みなさんいろいろな袋を持ってきていて実にカラフルである
みなさんいろいろな袋を持ってきていて実にカラフルである
神社でこうして配られるお菓子には、みなさん福を授かることを期待しているからこその熱気なのである。今年は例年より若い参拝客が多いそうだ。
豪快にまかれるお菓子
豪快にまかれるお菓子
そして地面に落ちるともう大変、落ちたお菓子を巡って争奪戦。よく、マンガとかのバーゲン会場の描写を「こんなのねーよ」と思っていたわけなんだけど、まさにそんな感じ。

お年を召したおばあさまが、豆まきが始まったとたんに腰を伸ばし元気にお菓子をキャッチしているのを見て、この国はまだまだ元気だなーと思っていた。
お菓子撒いた後は配ります!
お菓子撒いた後は配ります!
最後は来てくれた方々に、この間準備した1500個のお菓子を配る。写真は、お菓子に人が集まりすぎてamazonの申し子みたいになっている神職。
節分、全然地味じゃない!
節分、全然地味じゃない!
用意した1500個のお菓子は、ほぼ全部配ることができた。

その後は社務所での対応に戻ったが、神社の方々は御朱印の準備と直会(なおらい:祭祀の最後に、神事に参加したもので神酒や神饌を食する行事)の対応に……と壮絶な一日だった。

全国どこの神社もこんな感じなわけではないとは思うが、下町の節分の神社の空気感が伝われば幸いである。 節分、参加してみると楽しいぞ! 

ここには私の知らない節分があった

節分おつかれさまでした
節分おつかれさまでした
「節分」というものを知っている気でいたが、そこで体験したのは全然違うものだった。
今回のような節分などお祭りを通して下町の元気さを目の当たりにすると、日本っていいなあ……という気持ちになる。神社や寺院の行事を通して季節を知ることができるのってなかなか幸せなことだ。そんな機会をくれた高木神社さんに感謝。

■取材協力
高木神社
鎮座地:東京都墨田区押上2-37-9
電話:03-3611-3459
URL:http://takagi-jinjya.com/
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