黄昏モールのプリクラマシン
中国には新しいモールが次々とできて、新しい店がどんどん登場している。逆に言うなら、古いモールは時間がとまり、相対的にどんどん時代に取り残される。そんな場所にほぼ絶滅したプリクラマシンがあると聞いた。
同行した「ニワカさん(仮名)」と一緒に、地方都市の地下モールにあるといわれるその店に向かうと…あった!
人の少ない地下モールで、10年以上には当たり前にあったプリクラを発見
プラスチックの椅子と謎の冊子と機械が並ぶその様は、十数年前と変わらないという。当時の学生らが駆け込んだプリクラ。産業遺産に指定したいくらいだ。
ニワカさん(仮名)が撮影にトライ。古いシステムに興味津々
このプリクラ、証明写真もこれで撮れるらしい。中国語では「証件相」かな。
プリクラも撮れるし、証明写真も撮れる。おまけにサンプルを見ると、写真サイズも自由に変更できるようだ。10年以上前の中国の製品としてはかなりハイテクではないか?
無数の魅惑のフレームたち
店番のおばちゃんがいた。おばちゃんに「撮りたい」というと、機械の使い方を教えてくれるのではなく、値段を教えてくれるというわけでもなく、まず積まれた本を見せられた。
つかれた冊子を見せられた。
メモをしていけという。だいたい10個くらいあればいいとか。ほうほう。
「これすごいっすね!」と笑顔のニワカさん
見ると無数のフレームがあった。
フレームそれぞれに番号が書いてあり、撮りたいフレームの番号を渡された紙切れに記していく。
おばちゃんによれば、指定する枚数は何枚でもよく、多ければ多いほどそれぞれの写真は小さくなるのだそうな。
しかもそのフレームが…想像をこえるものだった!これはいい!!
なんだか日本語がおかしい。シャレオツだ。
ファミ通の表紙も飾れるらしい。特集は「全部見せます!JJモデルのボディケア」
ブスタイルはかなり大胆だ。適当な日本語が作り出す奇跡だ!
「サツ ピリ」の手書きに圧倒されるが、隣の「ロリポヒルズ」も捨てがたい。
かわいい子猫DS2に時代を感じる。ニンテンドーDSだろうなあ。
中国で人気のワンピースも。しかしよくわからない。特にモイヨォ~。
「マッパ」から「最強てらっしゃい」までどれも甲乙つけがたい。
圧倒的に「ラーメン それじゃまたなのねー」が響く。
で、撮ってみた
無数にあるフレームの中からクールなフレームを10個選び、その数字が書かれたメモ帳をおばちゃんに渡す。
おばちゃんはキーのはずれたテンキーにその数字を打ち込んでいく。よくみると下にはインクジェットプリンター。パソコンのCRTモニターを鏡で反射させている。
プリクラはキラキラしているはずなのに、これはどこか裏道のような暗さのある不思議なプリクラ。
そんなことを考えていたら「準備ができた」と言われた。手渡されたボタンを押すと写真を撮影。不満であれば取消ボタンで撮り直しとのこと。
クロマキーになってて、カーテンをかぶるとフレームの絵以外が無色になる仕組みだとか。
ブレードランナーに出るようなディストピア感ある日本語も混ざるプリクラマシン。
下にはPCモニター、正面には鏡。ボタン類もものすごく年季が入っている。
おばちゃんが番号を入力してフレームを登録しパソコンから呼び出す。
最高の雑誌表紙を撮影するニワカさん。ノリノリである。
かくして撮り終わり、おばちゃんに伝えると、何かの作業のあと、下から1枚の印刷物が出てくる。写真だ。勝手に写真を配置してくれるらしい。
そのあとどこから出てきたのか、おじちゃんが出てきてカッターで写真を綺麗に切って袋詰めしてくれた。夫婦のコンビネーションをみた。
おばちゃんがプリンターから写真を取り出し、おじちゃんが切る。暖かい共同作業だ。
ニワカさん「超よかったですよ!」。特に「カツカツフテソト」がお気に入り。
難しいが残したいものがそこにあった
常に変化していると言われる中国で、時間がとまったプリクラを利用できた。年季の入り具合がすごかった。フレームも今となってはデザインできない粗さがあり、それがよかった。
なんでも昔オーナーが1万元で導入したそうだ。物価が何倍にもなったので、今でいえば2,3万元で、数か月分の収入で導入したのだろう。そして多くの人に利用された。
日本顔負けのキラキラしたプリクラや、自撮りに特化したスマホがある今も細々と生きている。わかっている人がやってきて、証明写真をとっていく。証明写真が安く撮れるからこそ生き残れるのかもしれない。
生き残ってほしいな。難しいとはわかっていても。