特集 2017年12月5日

国際ロボット展は地獄っぽさがある

国際ロボット展は楽しいけど地獄っぽかった。
国際ロボット展は楽しいけど地獄っぽかった。
東京ビッグサイトで2年ごとに開催されている『国際ロボット展』という展示会がある。

要するに、産業用ロボットとかサービスロボットとか、そういった最新のロボットがいっぱい展示されている展示会だ。
で、こういうロボ系とか好きなので前回(2015年)にも見に行ったのだけど、その時にちょっと気になったことがあった。ロボのデモがなんか地獄っぽいのだ。

今年(12/1~4)はその辺りを改めて再確認しに行ったんだけど、やっばり地獄っぽかったので、ご報告したい。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

いいロボットがいっぱい見られる展示会

『国際ロボット展』なんて名称を聞くと、想像するのはだいたい下の写真のようなのがわさわさといるような感じではないだろうか。
なんか格好いいロボ。指がかなり人間っぽく動いてた。
なんか格好いいロボ。指がかなり人間っぽく動いてた。
受付嬢っぽいロボ。硬そうなぴっちり横分けヘアが若干怖い。
受付嬢っぽいロボ。硬そうなぴっちり横分けヘアが若干怖い。
あえて言わせてもらえれば、そんなのはアレだ。ロボット展の魅力のごく一部だ。

もちろんこういうサービス業に従事するようなロボは、そもそも人型で格好良かったりかわいく作られている。未来っぽさ満点だし、やはり「ロボ見たなー」という気分になれる。
人型のロボを展示してるブースはやっぱり人目を引く。
人型のロボを展示してるブースはやっぱり人目を引く。
でも、どちらかと言うと本当に見応えがあるのは産業用ロボット。工場で部品を組み立てたり運んだりする用のやつが面白いのだ。

基本的に組み立て系のロボは腕だけロボなのだが、いくつもの関節が人間にはできないような複雑な、かつ最適な動きでウネウネと動く様子は、見ていて見飽きることがない。
何枚も積まれた歯車を軽快に積み直すロボ。うまく穴にはまらない時はキュッキュッとこまめに歯車を回して調整するのがかわいい。
何枚も積まれた歯車を軽快に積み直すロボ。うまく穴にはまらない時はキュッキュッとこまめに歯車を回して調整するのがかわいい。
しかも、サービスロボットが進化するにつれてどんどん人間そっくりになっていくのに対して、こっちはとにかくメカメカしいのがいい。

ロボを人間っぽくするのもいいけど、やはり人間にできないような動きをしてくれた方が、より「あー、いいロボ見たな」という気持ちになれるのだ。
ただただ、1.7トンある車を高くまで持ち上げたりひっくり返したりするロボ。スーツ着たおじさんが「うおー、かっこいいー」と呟いちゃうぐらいのハイパワーっぷり。
ただただ、1.7トンある車を高くまで持ち上げたりひっくり返したりするロボ。スーツ着たおじさんが「うおー、かっこいいー」と呟いちゃうぐらいのハイパワーっぷり。
とにかく、いいロボを見たいならサービスロボットより産業用ロボットのブースがオススメだ。

ビッグサイトのあちこちで、うねうね、メカメカと動いている産業用ロボットのデモが見られるので、ぜひ実際に見てやって欲しい。

産業用ロボットのデモはやはり地獄っぽかった

しかし、だ。この産業用ロボの動作デモこそが、前回見に行った時に感じた地獄っぽさそのものだったのだ。

具体例で見せると、こんな感じだ。
亡者が穴にピンを差し込む端から、鬼がそれを抜いていく感じ
ロボットが回転する台座の穴に正確にピンを挿し込んでいくが、その横のロボがそれを抜いて台無しにするデモ。
これ、どう見ても賽の河原で石を積んでるのを鬼がガラガラッて崩していくやつだろう。

あまりの無限ループっぷりに、ピンを挿してるロボがかわいそうに見えてくる。つらい。それなのに、精密な動作があまりにも面白くて、つい見続けてしまうのである。正味のところ、このロボのデモはかぶりつきで無心になって5分以上見てた。面白いのにつらい。
多分だけど、社畜を量産しているブラック企業の社長とかが落ちる地獄ってこれだと思う。
こちらは、鬼無しのセルフ地獄だ。
ベルトコンベアから流れてくる荷物をパレットに積んでいき、荷物が無くなると今度はいま積んだ荷物を崩してどんどんベルトコンベアに流す。でもそれは結局自分のところに戻ってくるので、またそれを積む。
わー、地獄だ。しかも、いったん荷物が積み上がると、放心したようにそれをぼんやりと眺めて(いるように見える)確認してから、また動き出すのだ。本当につらい。
でも、正確にピタッと荷物を積み上げていくのが面白いから、こちらもどうしても見続けてしまうのである。
このロボも遠くから見て「あ、なんか地獄っぽいな」と思ったら案の定だった。
このロボも遠くから見て「あ、なんか地獄っぽいな」と思ったら案の定だった。
こちらのロボは、指一本でキーボードをタイピングするというデモをやっていたんだけど、見てるとやっぱり作業が地獄感がある。
ただただ、無限に「私はYuMiです」とだけ打ってはリターンキーを押す地獄。
ただただ同じ文章がモニター上で繰り返されてるのは、なんか「コンピューターの反乱」っぽい。でも人間用のキーボードをロボが繊細かつ精密に繰り返しタイピングできるというのが見せ所だから、これでいいのだ。

半日かけてスコップで穴を掘らされ、半日かけてそのまま埋め戻すという「無意味な単純作業」を繰り返す拷問があると聞いたことがあるが、それもロボがあれば全然平気だったろう。

一方、やってることは同じような無限ループなんだけど、あまり地獄感がないデモもあった。
なんか仲良しダンスを見てるみたいで、楽しい。
ロボが挿したピンをもう一方のロボが抜いていく、というループなんだけど、でもその役を交互にやってるからか、あまり辛そうな印象がない。むしろ仲良しロボットみたいな楽しさがある。
さらに、動画の最後の方ではロボ同士がカードをひらひらさせながら受け渡しをするんだけど、カードを受け取った方のロボが、相方が次に取りやすくなるように、カードを置いてから奥にスッと押し込む動作をするのだ。
地獄の中にもロボの優しさである。

とはいえ、やっぱり産業用ロボットは「失敗せず精密に同じ動作を繰り返す」のが大事なので、その実力を見せるには地獄みたいなデモが正しいし、それが面白いのだ。
実際、とある企業のブースでは、ライトセーバーを持ったロボたちが花柳社中みたいな踊りを見せるデモをやっていたが、あまりに芸達者すぎて逆に「これじゃないなー」と感じてしまった。
優雅に踊るロボ社中。
優雅に踊るロボ社中。

ロボットも地獄も何の関係も無いけど、来年1月13日に大阪ロフトプラスワン・ウエストで文房具のトークイベントをやります。
春以降に買っておくべき最新文房具の話とか、押したり回したりするスイッチが意味も無くいっぱいついてるボールペンの話とか、いろいろやりますので、関西在住の方、よかったら見に来てください。
ソエモンチョウ・ブングジャム
お客さんには、イベント応援用のボールペンも配布する予定。今からボールペン100本を改造します。
お客さんには、イベント応援用のボールペンも配布する予定。今からボールペン100本を改造します。
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