「何も入れない」人も6%いたが理由は様々
僕のこだわりとは、こうだ。
右前に現金、左前に家の鍵
現金を生でポケットに突っ込むのがかっこいい。ハタチぐらいの時に、そう勘違いして以降、財布を持ったことがない。家の鍵は左手で取り出し、左手で鍵穴に差し込む。
右後ろにSuica、左後ろに携帯電話
右利きなのでSuicaは右手でピッとやる。スマホは左手で持って右手で操作するので、左後ろがベストポジション。鞄を持っていても手ぶらでも布陣は同じだ。
たまたま、そこに入れているのではない。すべて、理にかなっているのだ。ならば、他の人はどうなんだろう。突然気になり始めたので、50人にアンケート調査を実施した(男性41人、女性9人から回答)。
「ズボンのポケット、どこに何を入れますか?」
こんな調査は誰もしたことがないのではないだろうか。結果は非常に興味深いものとなった。まず、「何も入れない」という人が3人いた。男性1人、女性2人である。
ポケットという便利な収納スペースを活用しない人も6%いた
「尻ポケットにスマホを入れていたら穴が空いたから」(30歳・男性・印刷業)、「何度かトイレポチャンを経験しているから」(34歳・女性・会社員)など、理由は様々だ。
とはいえ、印刷業の男性にもポケットにものを入れていた時代がある。
「小学生の頃、学校で飼っているニワトリが卵を産んだので、友達数人と持ち回りでポケットに入れて孵化させようとしたことがあります。でも、僕の担当日にうっかり割ってしまい、ショックでその後の記憶がありません」
今回、さすがに「卵」という回答はなかった。では、「入れる」と答えた人は何を入れているのか。
携帯電話、財布、鍵…
まあ、順当なところだろう。鍵には家の鍵、自転車や車の鍵などが該当する。カード類では、Suicaなどの交通系ICカートや金融機関のカード、コンビニのポイントカードなどをカードケースにまとめて入れている人が多かった。
レシートはなぜかいったん右前のポケットに入れます
続いて、場所ごとに入れているものを見てみよう。まずは、右前ポケット
1位は同率で携帯電話と鍵
鍵はわかる。しかし、携帯電話を入れると腿に当たって歩きづらいのでは?
「それが逆に安心するんです。何度か紛失して落ち込んだので、『あ、ちゃんとあるな』という実感が常にほしい」(20歳・男性・会社員)
右前にボールペン、右後ろにバンダナという女性もいた。
「仕事中はよくメモを取るので、一番取り出しやすい場所にボールペンを入れています」(22歳・女性・バリスタ)
バンダナは「ハンカチ代わりになるし、単に好きだから」
「結局あとで捨てるんですが、レシートはなぜかいったん右前のポケットに入れます。通勤中などにスマホで音楽を聴くのでイヤフォンは必須。これは左前ですね」(31歳・男性・編集者)
お釣りを右手でもらうため、レシートの収納も必然的に右前になるのだろう。
この日はサミットで牡蠣めし(548円)を購入している
「右前ポケットにSuicaと免許証、他のポケットは使いません。スマホは上着の胸ポケット。あ、今日スマホを落として画面を割ったばかりで泣きそうです」(29歳・男性・福祉)
操作時に指が痛いので職場の給湯室でラップフィルムを巻いた
試行錯誤の末にたどり着いたポケット収納の“完成形”
お次は左前ポケット。
携帯電話が鍵を引き離し、ハンカチが躍進する
「食事の時によくこぼすので、さっとハンカチを取り出して膝の上に置きます。右前ポケットにはカードケースですね」(44歳・男性・編集者)
後ろポケットには何も入れない
カードケースの中身はPASMO、nanaco、Ponta。ベルトに括り付けるようにしてから紛失騒ぎがなくなったそうだ。
「試行錯誤の末にたどり着いたポケット収納の“完成形”です。いやあ、ここまで来るのにずいぶん長い時間がかかりました」
熟練職人のようなセリフが飛び出した。
右後ろポケットの中でミニバターが爆発
一方で、右後ろポケットの事情はこうなった。携帯電話を抑えて財布が単独トップに躍り出している。
ティッシュを入れる人はいないという発見も
冒頭で述べたように、僕はここにSuicaを入れている。同意見の方もいた。
「右前に小銭、右後ろにSuicaですね。レジや改札でのアクションを考えると、これがベストでしょう」(48歳・男性・会社員)
スーパーで銀杏(398円)をご購入
右後ろポケットに苦い思い出がある人もいた。
「飛行機の機内でもらったミニバターを何気なく入れておいたら、気圧の変化のせいかポケットの中で爆発したことがあります、後処理が大変でした」(50歳・男性・営業職)
ご本人から送られてきたイメージ写真
この方はアンケートの前ポケットの欄に「たまに手をいれる」と書いてきたお茶目さんだ。でも、間違ってはいない。
また、右後ろのポケットを「ゴミ箱」代わりに使っている人もいた。
「レシートとか紙くずはそこに入れるかな。あと、トイレのエアータオルを基本的に信用していないのでハンカチは必ず左前ポケットに入れています」(46歳・男性・会社員)
すぐに鼻水が出るのでティッシュも必携
左上の粉薬のようなものは何かと聞いたら、「最近、怒りっぽくなったので飲んでいます」とのこと。
効果は「よくわからない」そうです
右後ろのポケットはカラー剤で汚れる確率が高い
最後に、左後ろポケット。
ダントツで携帯電話が多い
左手で取り出して、右手で操作する。皆さん、そうなのだ。と思いきや、スピード重視派のこんな意見もあった。
「右後ろにSuicaが入った財布、左後ろにスマホです。左利きなので最初は持ち替えて左手でクリックしていましたが、だんだん進化して今は左手で持って左手で操作できるようになった」(40歳・男性・ゲーム制作)
天皇賞のキタサンブラック単勝は2.4倍なので140円儲かった
ちなみに、「その他」はレシート、リップクリーム、点鼻薬、ヘアカラー用の手袋などを指す。
「唇が異常に乾く体質なので、リップクリームがないと生きていけません」(30歳・男性・広告代理店)
リップのポジションは右前ポケット
「鼻が詰まると日本酒の香りがわからなくなるので必須アイテムです」(32歳・男性・日本酒BAR店長)と語るのは、代官山のおしゃれ角打ち「未来日本酒店」の寺田さん。
燗をつける寺田さんの左前ポケットには
わりと大きめの点鼻薬が入っている
仕事柄、こんな悩みも聞かれた。
「終業後にいつもヘアカラー用の手袋を右後ろのポケットに入れたまま帰宅してしまいます。そこだけカラー剤で汚れる確率が高い」(37歳・男性・美容師)
小銭が右前、左前、左後の3カ所から出てきた
ここで、面白いことに気付いた。「その他」の収納率は右前18%、左前17%、右後ろ12%と徐々に減ってゆき、左後ろではついに0%になる。計算してみると、ポジション別の活用率はほぼ同じだ、
どこも平均的に人気を博している
しかし、「その他」というマイナーなアイテムが左後ろのポケットに入れられることはない。今後の研究の進展が待たれる。
ところで、今回の調査は「皆さん、それぞれのポケットに入れるものを決めているのでは」という前提で実施した。その仮説は当たった。しかし、一人だけ自由すぎるスタイルを貫く人物がいた。
「いろいろ突っ込みますが、どこに何というのは決めていません。逆に、なんでみんな決めてるのかがわかんないすね」(39歳・男性・編集者)
小銭が右前、左前、左後ろの3カ所から出てきた
すべて取り出してもポケットの膨らみは残ったまま
とはいえ、帰宅した時に家の鍵を探すのに毎回手間取るというから、彼にとっては自由に生きるための修行なのかもしれない。
「第5」のポケットに1円玉を入れるという提案
4つのポケットについて検証してきた。しかし、最後に「第5のポケット」についても触れておきたい。右前ポケットの中にある小さなアレだ。
「1円玉をたまに拾うんですが、第5のポケットにそっと入れています。レジで1円足りないことがよくあって、そういう時に出すと満足感が大きい」(41歳・男性・自由業)