これがツルマメ
どうです、ダイズそっくりでしょう。
ツルマメは日本各地の草地、とくに湿ったところによく生えている。
散歩やサイクリングで注意しながら見ていれば、田畑や用水路で頻繁に見かける。珍しい雑草ではない。
これが花。色とデザインはダイズとほぼ同じ。
名前のとおり、ツルを伸ばしてひょろひょろと上に成長するツル植物だ。
「え、大豆はツル植物じゃないのに?」と思う人も多いだろう。しかし、あれも昔はツル植物だったのである。
今でも品種によってはツル状に成長する大豆もあり、ひょろひょろ巻き付いて成長する。(むかし育ててびっくりした)
現在、ほとんどの栽培ダイズが巻き付かないが、これは品種改良の結果だ。いやー、野菜の歴史っておもしろい。
自宅の近くに大群生地を発見!!
こんな河原の低地にはよく生えている
そんな楽しさに魅せられて、雑草野菜ハンターとして活動してきた僕だが、ツルマメは収穫のタイミングが合わず食べ逃してきた。
まあいつでも食べられるし、と気楽に構えていたのだが、昨年、別の調査で自宅付近の雑草を採取しているときに、運よくツルマメの大群生に出くわしたのである!
すごい! 山盛りでいくらでも取り放題!
ラッキーーッ!
これはすごいぞと大興奮して、手頃なサイズのものを次々ともぎ取り、一皿分ほど採ってきた。
サヤいっぱいに詰まる、食べごろのエダマメ!(雑草だけど)
こんなに艶やかでおいしそうな新鮮エダマメが、いくらでも採り放題なんて、夢ではないかとほっぺをつねってしまうほどの幸せだ。
すごい、すごいな、大自然! そのへんの河原!
帰りのコンビニでビールも買ってスタンバイOK。帰ってすぐにこの野生エダマメたちを塩ゆでにした。
ここで明かされるツルマメの欠点
と、ここまで散々盛り上げて書いてきたが。実はツルマメには大きな欠点がある。
じつは、大豆に比べて豆がものすごく小さいのだ。
←ツルマメのエダマメ 栽培大豆のエダマメ→
もう、栽培品種の大豆と比べると圧倒的に小さい。
だいたい長さで3分の1ぐらいなので、体積だと27分の1、ツルマメを20~30個集めてダイズ1個分にしかならない。
出来のいいミニチュアのようなサイズ差
エダマメの隅っこに入っている、生育不良の豆のようなサイズ、シルバニアファミリーが使ったらちょうどいいんじゃないかというぐらいだ。
このミニミニ豆、味は果たしてどうだろうか。
よく見ると緑も濃いし、「野生のうまみが凝縮!」みたいなことにならないだろうか。
味は、味は……(小さくて食べにくい)
味は、ひとことで言えば「旨みゼロ」だった。
苦くもないし、渋くも無いが、エダマメにある味のコクや溶け込むような旨みが全く無い。
無味無臭の固体をかみつぶして飲み込んでいるような味である。もしこれが居酒屋のお通しで出てきたら、秒速で勘定済まして帰る。
余ったツルマメ。山岡士郎も調理をあきらめるレベル。
どうりでエダマメそっくりなのに、収穫されないわけだ。
しかしこれであきらめる気はない。
もう少し季節が過ぎるのを待ち、つぎはこれをエダマメではなく大豆として収穫して、豆乳づくりに挑戦してみようと思う。
季節は11月になりました
前回、緑のエダマメを収穫したのが10月上旬。
1ヶ月たってすっかり草木も枯れ、ツルマメたちも茶色く熟してきた。
ちなみにツルマメのサヤは、熟して乾燥するとパルンッ!と裂けてはじけ飛ぶ。
さやはバネみたいに丸まって、豆を遠くまではじき飛ばす。こうして遠くまで仲間を増やす。
普段エダマメの皮として捨てている部分にもこんな意味があったなんて、神が全てに意味を持たせて生物を造形したという説も、あながち間違いではないのでは、とすら思える。
さて、体中イノコズチまみれになりながら、30分ほどかけて茶碗10分の1程度の豆を収穫することに成功した。
すくない! とにかく豆が小さいので集まらない。
これでもスーパーのレジ袋一杯分ぐらいは枝を集め回ったのだ。
本当はここから豆腐を作りたいが、量的にどうにも現実性が無いので、やはり豆乳を目標にして、豆をひと晩漬けてみた。
すると、なんということでしょう!
驚くぐらいに変化が無かったのです!!
変化なし! 変化なし!
せめてそこ、大豆の祖先なんだから、豆らしく普通にふくらめよ! と思うのだが、吸水したのは50粒に1粒ぐらいで、他の豆は愛想のない石粒状態のままだった。
吸水しない石粒豆。右がまれにある、比較的吸水した豆
野生の豆殻はこんなに堅牢なのか。
豆乳どころの話ではない。
作戦はあきらめ、ぼくは泣きながらこの豆たちを土に埋めた。
ふくらんでも失敗していたと思う
とはいえ、エダマメのときのあの旨みの無さから想像するに、ふくらんでも豆乳作戦は失敗していたのではないかと思う。
あの旨みは豊富に含まれたタンパク質と脂肪から来るんじゃないかと思うからだ。
この記事が公開されるころ、ツルマメは再び収穫期を迎える。今年は煎り豆にして、きな粉づくりにでも挑戦してみようかと思う。