セイタカアワダチソウの復習から
セイタカアワダチソウはどこにでも生えている。生えていない場所を見つけるのが難しいぐらいだ。
埋め立て地のお台場にも、もっさもさに生えている
そのおかげでずいぶん嫌われている。
・風流なススキのすみかを奪う
・他の植物に対する猛毒を土の中にまき散らす
・花粉症などアレルギーの原因になる
など、「初代・タチの悪い外来種」として評価はズタボロだ。
しかし僕はこの花が好きだ。
よく見て、花自体こんなにきれいなんだよ
お彼岸も終わった頃に一面に咲いていると、「秋だなあ……」と豊かな気持ちにさせてくれる。
さっき挙げたウワサも実は言いがかりに近いものが多いらしく、最近では見直しが進んで薬草として利用できるという報告もあるそうだ。
そして、その流れの中からアワダチソウで風呂を泡立てられるというメソッドが発見されたらしい。
黄緑色のつぼみを採集しよう
利用するのは咲く直前の黄緑色のつぼみの状態のもの。関東だと9月下旬ぐらいだろうか。ちょうどこの記事が公開される頃だ。
これをたくさん収穫して、秋の陽でよく干す。
僕のようにアパートで干していると、「あの部屋いったい何を始めた?」という雰囲気が生まれ始めるが、気にしない。
さて、干している間に大好きなこの草のことをもう少し弁護させてください
アワダチソウに対して炎上しすぎている
まずススキの群落を駆逐するという話だが、下の写真のとおり多くの場所で共存しているのが見られる。猛毒をまき散らすというのは誇張しすぎだ。
ススキとともに花を咲かすセイタカアワダチソウ。共存できます。
次に、花粉症の原因となるという話だが、キク科の植物の花粉は風で飛ばないので、花粉症の原因になるということはない。
本当の原因は同時期に花を咲かせる「ブタクサ」という別の草の花粉で、アワダチソウは無罪だったのだ。
しかし悪評のせいで、“ブタクサ”で画像検索をすると半分近くは本種の画像が表示される。
画像検索「ブタクサ」の結果。セイタカアワダチソウ出過ぎ。
ひどい。目立ちすぎたために有りもしない罪を着せられるという、安っぽい少女マンガみたいな展開だ。
魔女のように煮出して泡が立つ!
さて、完全に魔女の家の軒先にある物体となり果てた本種の花穂だが、続いて、これを熱湯に漬けてエキスを抽出するという、さらなる魔女的作業に進む。
「ヒヒヒ、泡立姫や……」
熱湯を注ぐとふわあぁんっ! と匂い立つキク科植物の香気がたまらない。香り的には明らかに薬草に属する側の植物だ。たっぷり数時間漬け込むと、こってりと茶色の汁が出る。
なんか体に塗ったらキノコか人面瘡でも出てきそうな液体ができあがったが、この液体、本当に泡立つんだろうか?と 試しに泡立て器を当てて見たら大変なことになった。
すごいすごい! チョコレートファウンテンもかくや、という勢いで底から底から無限にあふれ出るなめらかな泡! ちょっと拡大してみても、そのきめの細かさが良く分かる。
びっくりだ。
この液を風呂に入れてシャワーを降り注がせても引き続き元気良く泡立ちつづけ、すごいすごいと子供のように喜んでいるうちに、香気も素晴らしい「セイタカ泡立湯」の完成となった。
完成した「セイタカ泡立湯」。泡も香りもすばらしい!
ていうか何で泡立つの??
僕は理科の先生なので、最後にちょっとだけ原理を話そう。
泡を発生させているのは「サポニン」という花に含まれる物質で、泡立作用のあるタンパク質らしい。本種以外にもいろんな植物に含まれている物質だということだ。
そういえば乾燥大豆をひと晩漬けておいた水も、混ぜると泡立つので子供の頃に夢中で遊んだけど、思えばあれも同じ理由なんだろう。
というわけでセイタカアワダチソウが害悪雑草どころか、香り豊かな泡立湯になる最高の薬草であることが明らかになった。
空き地にいくらでも生えている雑草からこんなハピネスが得られるなんて、世界はなんと素晴らしいのだろう。
さあ今こそがシーズン! みんな空き地に出かけてセイタカアワダチソウを採集しに行こう!