特集 2017年9月29日

東京の「大和西大寺」を探す

これが日本最高と言われているポイントワーク(でも収まりきらずこれでも一部)
これが日本最高と言われているポイントワーク(でも収まりきらずこれでも一部)
線路が好きだ。
なかでも、多数のポイントでぐちゃぐちゃに分岐しているような景色に興奮する。
そんな線路分岐好きの間で至高と言われているのが、奈良県にある近鉄の大和西大寺駅である。本当にこんなに必要なのか、というくらい多数のポイントが接続され、もううっとりしてしまうような光景を生み出している。

悔しい。東京にもこんな駅ないだろうか。
というわけで、大和西大寺に匹敵する駅を探しに出かけた。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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圧倒的実力の西の王者、大和西大寺

大和西大寺は、大阪方面と京都方面、奈良方面と橿原方面からやってきた複線の線路がX字型に合流、分岐する駅で、さらにその分岐の間に車両基地もあり、各方面からひっきりなしにやってくる列車が各方面へ次々と出発していく。
大阪と奈良、京都と吉野方面を結ぶ路線の交点という要所である
大和西大寺駅の詳細図
大和西大寺駅の詳細図
それら行き交う列車や車両基地に入る列車、出る列車を効率的に捌くため、このような複雑な線路配置になっているのだと思う。
このポイントを正確に切り替える仕事、1日で胃に穴が開きそう
このポイントを正確に切り替える仕事、1日で胃に穴が開きそう
ずっと見ていたくなる、ものすごい密度のポイント群。どこをどう通ってどこに行くのか目で追うだけで頭が軽くトランス状態になるような線路配置だ。線路好き、分岐好きの間では「日本一の駅」とも言われている。こんな駅を見ながらなら毎日の通勤も苦にならないだろう。ダイヤが乱れたりしたらもう大変だろうけど。
ひっきりなしに行き交う列車がぶつからないか見ていてハラハラする
ひっきりなしに行き交う列車がぶつからないか見ていてハラハラする
ほかの駅を知らないけれど、日本一と言われても納得の満足度である。でもちょっと悔しい。東京にも同じような迫力のある分岐の駅ないだろうか。
というわけで、同じような条件の駅をいくつかピックアップして見てまわった。

条件はほとんど同じ、相模大野

まずやって来たのは小田急線の相模大野駅。東京の、などと言いつついきなり神奈川県なのだけど許してほしい。都県境を越えて神奈川県に入って最初の駅なのだ。関東人が大阪と奈良の県境が分からないのと同じように、きっと言わなければ関西人も気づかないだろう。
新宿からきた路線が小田原と江ノ島方面に分岐する駅だ
相模大野駅の詳細図
相模大野駅の詳細図
大和西大寺駅と比べると入ってくる路線が1つ足りないけれど、分岐の間に車両基地があるという条件は同じ。複雑なポイントワークが見られるのではないか。
というわけでやって来ました
というわけでやって来ました
到着するなり、さっそく下り線ホームの小田原方面先端に行ってみた。
ちょっと遠いが、なかなか
ちょっと遠いが、なかなか
分岐駅らしい複雑なポイント配置が見えるけれど、ちょっと迫力不足か。しかしこれまでの経験上、「分岐していく方の線路」が正面に見える位置の方がポイントを味わえるのだ(どんな経験だ)。というわけで上り線ホームの端に行ってみた。
これはかなり良い!
これはかなり良い!
江ノ島方面に分岐するのはいちばん左端のカーブを描いている線路。そして車両基地に出入りするための分岐が左に左に渡っている。奥の方では基地内に向かって線路がどんどん分岐増殖。これはかなり良い!

良いのだけどなんだかちょっと惜しい。いちばん左から右に渡っていくような分岐も(見た目的に)欲しいし、江ノ島方面に通じる線路が1本しか見えない。単線なのかと思って地図をよく見たら、上り線の線路は立体交差で渡っていた。

これがポイントで平面交差していれば!
相模大野駅の詳細図(修正版)
相模大野駅の詳細図(修正版)
太陽(大和西大寺)になれなかった木星のような駅、などと勝手な解釈をしつつ、次の駅に向かった。
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分岐マニア約束の地、西武デルタ地帯

続いてやって来たのは西武線の東村山駅。このあたりの西武線は東村山駅、小平駅、小川駅を頂点とする三角形に路線が敷かれ、その中にある萩山駅にも分岐や合流する路線があるという、西武帝国の中枢と言っても過言ではないエリアだ。
生まれてから西武しか知らずに生涯を終える人も多い土地である
東村山駅は西武新宿と国分寺から来る路線が南から、本川越と西武園から来る路線が北から乗り入れ、まさにX字型に路線が接続している。これは期待できる、と、まず北側のホーム端に行ってみたところ高架工事中でほとんど写真が撮れなかった。
この駅が高架化される予定があるとは知らなかった。複雑な路線配置がどうなるのか興味深い。
東村山駅の詳細図
東村山駅の詳細図
僕も生まれは西武沿線なので雰囲気が懐かしい
僕も生まれは西武沿線なので雰囲気が懐かしい
仕方がないのでホームを端から端まで歩き、西武新宿方面と国分寺方面が分かれる南側に行った。
あれ、これだけ…?
あれ、これだけ…?
南側はレールが右に左に行き来することもなく、妙にシンプルにまとめられていた。西武デルタの頂点を担う駅としては少し物足りないけれど、高架化工事の影響かも知れない。

そのまま西武線に乗って国分寺方面にひと駅南下し、小川駅のホームに降りた。ここは東村山と国分寺を結ぶ路線と、小平と拝島を結ぶ路線が平面交差する。
小川駅の詳細図
小川駅の詳細図
たぶんホームに降りたのは初めて
たぶんホームに降りたのは初めて
ホームの北側はそれほどポイントも多くなく、あまりいい写真が撮れなかった。
何をどう撮っていいか答えが出なかった
何をどう撮っていいか答えが出なかった
そこで、ふたたびホームを歩いて南の端へ。こちらも期待したほどではないけれど、真っ直ぐ伸びるレールに対して斜めに絡みつくレールがいくつかあって、なかなか楽しい光景だった。
大和西大寺度は20%といったところ
大和西大寺度は20%といったところ
平面交差の駅のわりにポイントワークがそれほど派手ではないのは、どの列車も行き先が同じで、合流してくる違う路線に乗り入れたりするダイヤがないのかも知れない。
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西武デルタの中に総本山が!

西武デルタの東の頂点を担う小平駅はかなりシンプルなY字分岐駅だった。のでここでは省略して、その小平駅と小川駅の間を結ぶ三角形の底辺の中間にある駅、萩山駅で降りた。ここはデルタの中にありながら、底辺を担う拝島線と、国分寺駅と西武遊園地駅を結ぶ西武多摩湖線が平面交差する駅。つまり小平から拝島に向かう列車は、小平~萩山~小川と、分岐や平面交差を何度も繰り返す。かなりカオスなルートだ。
萩山駅の詳細図
萩山駅の詳細図
なぜか少し親近感のある駅名
なぜか少し親近感のある駅名
まず東側の端に行ってみたところ、多摩湖線の線路がかなりの急カーブで合流していて驚いた。国分寺に向かう上り線はホームが終わるのを待てず途中から分岐するほどである。
こんな強引な線路の引きかた初めて見た
こんな強引な線路の引きかた初めて見た
続いて西の端に行ってみたところ、思わず息を飲んだ。
これは美しい線路配置!
これは美しい線路配置!
よく見てみればポイントはそれほど多くないものの、平行に並んだ3本の線路から2本の線路が斜めに分岐していて、たいへん美しい線路配置。分岐の間には車両基地、というほどでもないけれど小さな留置線があるのも心憎い。

壁に囲まれたバチカンに建つサン・ピエトロ大聖堂のように、西武線に囲まれたデルタの中には美しい分岐が設置されていた。

地下の大分岐、小竹向原

今回いくつかピックアップした中で唯一、衛星画像でもストリートビューでも確認できなかったけれど、すごい分岐ワークがあるに違いない東京メトロ有楽町線の小竹向原駅に来た。なぜ確認できなかったかと言うと地下鉄だからだ。
地下鉄に限らずこんな忙しい駅そうそうない
有楽町線は、東武東上線と接続している和光市、西武池袋線と接続している練馬から来た線路がここで合流し池袋方面に伸びているのだけど、池袋から新木場方面に向かう有楽町線と、渋谷で東急東横線に接続する副都心線がこの小竹向原で分岐しているのだ。
小竹向原駅の詳細図
小竹向原駅の詳細図
開通した長閑なころから知っているのでここまでの出世に感慨深い
開通した長閑なころから知っているのでここまでの出世に感慨深い
しかも行き先はどちらのパターンもある。つまり和光市から来た列車も練馬から来た列車も、新木場方面にも渋谷方面にも行くのだ。逆もまた然り。しかもダイヤは朝の8時台で1時間に最大36本という超過密ぶり。人知れない板橋区の地下にこんな濃密な空間があったのだ。ここまでの分岐駅は東京の地下鉄では珍しいと思う。

というわけで仰々しい説明を書いてきたけれど、実際の分岐っぷりはどうなんだ、と思ってホームの先端からトンネルの暗闇に向かってカメラを向けた。
かっこいいが全貌はいまひとつ掴めず
かっこいいが全貌はいまひとつ掴めず
実はこのトンネル内には、隣駅までの間に6本の線路が平行に走っていて、それぞれの間を行き来できるように多くの分岐が配置されているらしいのだけど、壁があったりして全景を見渡すことはできなかった。

かなりのポテンシャルを秘めていそうなだけに少し残念。
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ついに理想郷を見つけた

最後に選んだのは京成線の京成高砂駅である。ここは上野から来て船橋や津田沼を経由しながら成田に向かう京成の本線と、都営浅草線から続く押上線が合流し、成田空港に直行する北総線と金町に向かう金町線が分岐するターミナルだ。しかも隣接して車両基地がある。単純な要素としては大和西大寺駅以上なのだ。期待が高まる。
下町のターミナル駅
京成高砂駅の詳細図
京成高砂駅の詳細図
これは期待できるかも!
これは期待できるかも!
ホームの先端から見ると、車両基地に向かって数え切れないくらいのポイントが連なっていた。これはすごい。
目隠しで連れてこられたら大和西大寺と思ってしまうかも
目隠しで連れてこられたら大和西大寺と思ってしまうかも
しかしホーム先端にある太い柱が邪魔で全景が見えない。そこですぐ先を通る踏切に行ってみた。
うおお
うおお
これはかなりの大和西大寺!
これはかなりの大和西大寺!
100%とまでは言わないけど87%くらい大和西大寺と言えるのでは
100%とまでは言わないけど87%くらい大和西大寺と言えるのでは
目の前に広がる無数のポイント。四方をレールに囲まれる幸福。踏切の上からの光景は本家の大和西大寺でも味わえない。ここはどこに出しても恥ずかしくない大和西大寺と言えると思う。
もう1本車両基地寄りを通る踏切の景色もすごい
もう1本車両基地寄りを通る踏切の景色もすごい
前も後ろも分岐だらけの理想郷をついに見つけた
前も後ろも分岐だらけの理想郷をついに見つけた
最後にもういちど、この日に見てきた線路の画像を並べて記事を締めたい。
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みんなの心に大和西大寺

確信はないけれど、誰しも心の中に1つくらい記憶に残る線路の景色があるのではないか。分岐があってもなくても、ポイントが多くても少なくても、それがあなたの心の大和西大寺であり、大和西大寺に貴賤はないのだ。
とりあえず東京に住んでいる僕は大和西大寺が見たくなったら京成高砂に行くことにします。
ここが大和西大寺という人もいるだろう
ここが大和西大寺という人もいるだろう
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