息子を公園デビューさせたい。しかし、公園には目には見えないヒエラルキーが存在するらしい。ママ友に間違った振る舞いをしたら最後、ハブられる。これは恐い。なんとかしなくては。そんなわけで作ったのがこちらである。
ヤン車っぽいおもちゃの車
ヤン車のいかつさを取り入れた意欲作である。これでママ友になめられないし、公園のヒエラルキーは我が家のもの。さっそく、制作過程を紹介させていただきたい。まず子供用のおもちゃの車を用意する。
それいけ!アンパンマン号
箱をあげただけでこのテンションである。
キャハキャハと夢中で遊んでいた。
息子よ、申し訳ない。この車はもうすぐヤン車になる。
そして、君がはじめてむかえる1歳の誕生日プレゼントになる。まずは、ロケットカウルをヤフオクで探す。モンキーやエイプなど小型のバイク用のものがサイズ的によさそうだ。しかし、本体と送料だけで15000円。
こちらが一撃で制作費を葬り去ったロケットカウルである。
おもちゃの車に貼られているアンパンマンのシールを剥がすために、洗剤を塗る。その後にサランラップをはって一晩置いておくとシールがきれいにはがれる。次に紙やすりで表面をざらざらにして塗料の食いつきをよくする。サフで下地を作ったら、マスキングで養生して、スプレーで色をつけて、クリアラッカーで仕上げる。最後にデザインしたシールをベタベタ貼って、各パーツを組み合わせるわけだが……工程がやたら多いので、GIFアニメでご覧ください。
走馬灯のようだ。
完成したのがこちらである。
椅子の布部分は、妻がミシンで作ってくれた。
マフラーは塩ビパイプ製。
ヘッドライトは、100均の押したら光るライト。
暴走族でおなじみの旭日章だが、なんで人気なのかわかった。デザイン的にカッコイイこともはもちろん、マスキングテープをビーっとそのまま貼って養生するだけでいいのでカンタンなのだ。しかも僕みたいに塗装が下手なヤツがやって塗装面が綺麗にはがれずビラビラになっても「味」にみえる。
ほら!ジャギジャギでも味になるのです!そうと言ってください。
シールに書かれている「さとく・さやかに・たくましく」は、通っていた高校の校訓である。
息子と対面させてみよう。
アンパンマン号の時は奇声を発しながら箱にまで興奮していた息子だったが、
息子よ、ヤン車だよ。
誕生日おめでとう。ヤン車だよ。
まだ話せないのに「なんで?」と顔面全体で表現している。
息子よ、でも見なさい。背もたれには、やなせたかしと書かれているんだよ。
アンパンマンの作者だ。自己犠牲の精神を作品に込めた偉大な人だよ。君はいまいちピンときていないけれど、制作費だけで30000円くらい使ってしまったし、制作期間にもまる3日くらいかかっているんだよ。そういう態度で接していると、
ちょっと慣れてきた。
はじめこそ不安そうだったが、慣れてくると楽しそうに遊びはじめた。ひと安心だ。車も気に入ってもらえたみたいなので、夜の街へと繰り出そう。夜の駐車場に置いてみると……
いかつい。息子を乗せてみよう。
夜の産婦人科の窓ガラス壊して回りそう。
一歳児でもこの威圧感。さすがのヤン車である。ちょっとテロップを入れてみよう。
全く違和感がない。
今すぐアカチャンホンポにパシリに行かなければいけない気がする。その晩、息子は興奮したのか、暗闇のベッドで1時間近く奇声を発してはしゃいでいた。やっぱり男の心をくすぐる何かがヤン車にはあるのだ。ヤン車のいかつさを手に入れた今、公園のヒエラルキーのてっぺんだって手にしたも同然である。
翌朝。公園へと急ぐ。かかってこいや!ママ友!
しかし、誰もいない。けたたましく鳴くセミしかいない。
しばし待つ。
誰もこない。
そうですよね。こんな台風が過ぎ去ってクソ熱い平日の朝(AM8:00)に子供を連れて公園なんてこないよね。
来ない。
汗を流しながら待っていると、警察官が自転車ですーっと通りかかった。警察官が二度見しているのをはじめてみた。怒られるのかな?と思ったが、怒り方も難しいようで、どこか不満げにあたりを自転車で巡回して去っていった。お勤めご苦労様です。そうこうしていると、
泣き出した。
いつもより泣き方がいかつい。
ごめんなさい、このお金だけは勘弁してください。今持っているのはクラスの給食費なんです。見逃してください。帰りましょう。
ごめんなさい、このお金だけは勘弁してください。今持っているのはクラスの給食費なんです。見逃してください。帰りましょう。
今回の記事では、子供用のおもちゃの車をヤン車にして公園のヒエラルキーのてっぺんをとろうとしたわけだが、そもそも近所にママ友がいないので、参戦させてもらえないという事態に気付いた。
でも、公園のてっぺんはとりました。
ヤン車って、武将の兜や鎧の意匠が入っている気がする。変わり兜っぽい。ああいう日本古来のなんだかよくわかんないけど強そうなデザインって、現役の製品にあまり引き継がれていないと思うので、彼等だけが正統な後継者なのではないだろうか(合体ロボのデザインとかもそうだろうか)。民族博物館に東南アジアの三輪タクシー「トゥクトゥク」が展示されていて「エンジンついてて近代的なものだし違和感あるけど、これも民族的な資料かー」と思ったのだが、いつの日かヤン車も博物館のコレクションに加わる気がする。何が言いたいのかといいますと、ヤン車かっこいいので一度作ってみたかったのです。満足です。迷惑かけた息子よ、ごめんなさい。