ビンが開きにくいと盛り上がりませんか
突然だが想像してみてほしい。
親しい友人の家に集まり飲み会をすることになって、料理の得意な者が簡単につまみを作ろうという時、ビンのフタが開かないと盛り上がりはしなかっただろうか。
開けようと必死な姿も面白いし、開けようとしている本人もなぜか笑ってしまう。
そのうちに力の強い人が張り切りだしたり、「輪ゴムを巻くといい」「温めるといい」とか妙な知識を突然披露してくる人が現れて、散々試行錯誤した末に思いがけないところで突然開いたりするのだ。
自然と拍手が起こる。
ビンのフタが開きにくいと盛り上がるのだ。
でも不便さが場を盛り上げるなんてちょっと信じられない気持ちもある。
僕は、知らないうちに自分の記憶を改ざんしているのだろうか。
確かめてみよう
確かめるために、まだ打ち解けてないんじゃないかという男女の集団に集まってもらった。
ニフティの新入社員のみなさんである。
入社してまだ3ヶ月ほど。
この集団が盛り上がれば、開けにくいビンはなかなかいい仕事をしたことになるんじゃなかろうか。
貴重なお昼休みに快く集まってくれたみなさん。ありがとうございます。
開けやすく細工したビン、開けにくく細工したビン、計5つを用意したので、みんなで開けてもらい、どれくらい盛り上がったか判定してもらう。
開けにくいビンの方が盛り上がったら、冒頭の話は正しい、ということになる。
パーティーには開けにくいビンが必須、という時代がやってくるのだ。
ビン1 普通のビン
普通のビンである。
まずは普通のビンをみんなで開けてもらう。
大きくて開けにくそうなピクルスのビンを用意してみた。
しかし買ってそのままのビンなので、どれくらい開けにくいかは筆者にも分からない。
果たして盛り上がるだろうか。
普段からビンが開かないことが多いという芦田さんの挑戦。開かない。
開かない!
ビンのフタが開かないのだ。
人工知能が将棋で人間に勝ち、自動運転の車がいよいよ実現可能に、というこの時代に、工場で生産され正しくチェックを受け、普通に市場に出回っていた、何の変哲も無いピクルスのビン、そのビンの、フタが、開かないのだ。
ココナッツの実を何とか割ろうとしていた原始の時代のDNAが騒ぐのだろうか。
ニフティの新入社員たちは盛り上がった。
みんなのアドバイスで色々開け方を試すがやはり開かない。そしてこの笑顔である。
キャッチボールをよくやっていたので握力には少し自信のある野原さん。開かない!
満を持して男性、増田さんの挑戦。開かない。増田さんの読みは「マスタ」だそうだ。
順番に回すが、もうみんな開かない。
みんな開かないのはちょっと困る。
開かない試行錯誤の盛り上がりもあるが、開いた瞬間の盛り上がりもきっとあるのだ。
そう思っていたところ、増田さんが動いた。
一人がビンをおさえ、もう一人がフタを回す作戦。
開かない!
ならばと瀬川さんが持っていたハンカチを滑り止めにして、
もう一度二人で回したら、
開いた!!
拍手。市販のビンのフタが開いて拍手。
今年のニフティの新入社員は、あまり仲がよくないんじゃないかと先輩に心配されているらしい。
「別にそんなことないのにねえ」
と待ち時間に話しているのを聞いたが、その通りだ。
先輩社員のみなさんに胸を張って言いたい。
今年のニフティの新入社員はこんなにも団結して、かたいビンのフタを開けることができるのだ。
何も心配することはない。
かたいビンのフタが開けられればだいたい大丈夫だ。
しかし普通のビンで盛り上がりすぎである。
素晴らしいグループだと思う。
「盛り上がりを5段階で言うと?」と聞いたら「3」とのこと。このあとを見据えて上にも下にも振れる値を出してくれた。ありがたい。
ビン2 開けやすいビン1号
では次だ。
次のビンを与える。
次のビンを出す。
「昼休みに開けにくいビンを持ってくる社外の知らない人」って、なんかすごく変だな、とこの写真を見て思った。
こちらである。
ドアや家具につけるクッションゴムをビンに貼った。
これでビンが握りやすく、開けやすくなったはずである。
そして開けやすいビンは、あまり盛り上がらないビンのはずだ。
果たしてどうだろうか。
開かない!
さっきの作戦を使う。開けやすい分、女子でもいけるのではないかという話になり、
開いた!やはり拍手。
開く瞬間は、突然「ポン!」という気持ちのいい音が響いてとても楽しい。
盛り上がりは「4」ということだった。
普通のビンより盛り上がってしまった。
次だ。いそいそと準備をする社外の知らない人。
ビン3 開けやすいビン2号
これだ。ビンにハンドルを付けた。
ハンドルを回そうとすると「ニチャ」という音がしてビンから剥がれる。
薄々気づいていたのだが、これはダメだ。
このビンは、男性二人が、ハンカチまで使ってやっと開けたビンなのだ。
接着剤でちょっと付けたようなハンドルが回るような優しいビンではないのだ。
みなさんに挑戦してもらうまでもないので、紹介にとどめた。
形はかわいかったので、次回があれば、ちゃんとハンドルをつける方法を考えたい。
ビン4 開けにくいビン1号
では、いよいよ開けにくいビンである。
いつも柱の陰からビンを持ってくる、なんか知らない人。
これだ。
我ながら「やってしまったか…」という感じがする。
「開けにくいと盛り上がる」という想いに取り付かれた筆者の善意がこじれにこじれて生まれた悲劇のビンである。
というかこれ、作っている時はピクルスのビンの開けにくさを知らなかったからこんなことを思い付けたのだ。
今となっては、こんなもの開けられるわけがないと思う。
果たして盛り上がるのだろうか。
普通に開けようとするとネジが刺さって痛い。増田さんはビンに対して積極的で嬉しい。
この後、このネジ引っ張ると取れるぞ、ということを気づかれてしまい、
みんなでネジを取っていくことに。
撮影前日の夜中の作業を思い出しています。
そしてつるっとなったビンを、奥さん、熊谷さんの「うつむきスタイル」ペアで、
開けました!
盛り上がりは2、厳しい評価となった。
ネジを外す作業が単調だし、どうせすぐ外すのに付けた意味が分からない、というところが原因みたいである。
ならば、最後のビンである。
最後のビンは本当に開けにくい。
自分でもどうかと思うくらい意地悪なビンを用意してきてしまった。
自分の城に近づいてくる勇者に手下を放つ魔王みたいな気持ちになってきている。
ビン5 開けにくいビン2号
これだ。
これが本日一番開けにくいビンだ。
実はこのビン、ラベルを剥がしてツヤツヤに磨いて、
ハンドクリームを、
塗っているのだ…!
研修中の新入社員を集めて、ものすごく開けにくいビンを開けさせようとしている社外の知らない人。
かたいビンを前に「私ハンドクリーム塗っちゃったから」と他の人に開けてもらおうとする女の子がいるだろう。
このビンを前にして、そういう言い訳は通用しないのだ。
人類は平等に、ハンドクリームを介してビンと対峙することになる。
何も細工していないビンがあれだけかたかったのだ。
こんなことしてしまったらもう開かないかもしれない。
奥さんの挑戦。開かない。奥さんはその苗字からしばしば「wife」を連想されてしまい、色々大変だという。
ビンが開かないと「回す方向、こっちで合ってる?」という質問が何回も出る。
かたすぎて、ビンを締める方向に回してるんじゃないかと思っちゃうほどなのだ。
熊谷さん。何と水球の世代別日本代表候補だったということだが、かたいビンには関係ないみたいである。開かない。
やはり正面から挑んでも開きそうにない。
みんな手についたハンドクリームを伸ばしながら呆然としている。
しかし諦めたわけではないようだった。
みんなで相談する。
熊谷さんがティッシュを持ってきた。
ティッシュ越しに増田さんがビンを支え、瀬川さんのハンカチ越しに、フタを回す作戦。
開かない!
今までのようにはいかないみたいである。
他にビンが開けやすくなるコツは知らないかと聞いたところ、芦田さんが「フタのところをスプーンとかで叩くといいらしい」と教えてくれた。
やはりそういうの、知ってる人が現れるのだ。
とりあえず増田さんが拳で叩いてみる。効果があるか分からないが。
増田さんはこのあと「温めるといいらしい」と聞いて、シャツの下にビンを入れて温めていた。
効果があったかは分からなかった。
万策尽きたか…と思われたが、あとはもうパワーで開けるしかないと、増田さん熊谷さんが最後の力を振り絞った。
でも開かない!
なんかすごい!涙でそう!
かたいビンを開けようと頑張る姿は、なぜこんなにも応援したくなるのか。
見入っていると一緒にフタを回しているような気持ちになるのだ。
ビデオデッキとかパソコンとかの最初の設定をしてくれるお父さんを、後ろでじっと見ていた幼少期を思い出した。
「気合が足りないんだよ」と瀬川さんが動く。もうみんな真剣である。
このまま開かなかったら、なんて言って解散すればいいんだろうか。
せっかく集まってくれたみなさんを消化不良のまま帰すのは申し訳ない。
なんてことを今更考えていたその時…!
開いた!!
おなじみの「ポン!」という音がしてビンが開いた。
瀬川さんの気合で開いたのだ。
驚きと達成感でこの日一番の拍手が起きた。
いや、これはもう、みんなの力である。
最初の試行錯誤から、フタのところにエネルギーが溜まっていき、フィナーレまでビンを導いたのである。
みんなおめでとう!
卒業だ!
盛り上がりは「5」をいただいた。
ビンが開きにくいと盛り上がる
5つのビンを試したが、結果をまとめると下の画像のようになる。
開けにくさと盛り上がりをまとめました。
こうして振り返ると、ちゃんと「開けにくいビン」として機能したのは、ハンドクリームを塗ったビンだけだったような気もする。
つまり、ビンが開きにくいと盛り上がるのだ。
これからは結婚式や合コン、キャンプ、同窓会など至る所で、開けにくいビンをみんなで開けてほしい。
こんなにピースフルでハートウォーミングなアトラクションはなかなかないと思う。
研修みたいだった
新入社員のみなさんにやってもらったら、研修の一番最初にやる、仲良くなるためのオリエンテーションみたいになってしまった。
新入社員が集まってやると、鬼ごっこでもジグソーパズルでも、何でもオリエンテーションみたいになるのかもしれない。
「オリエンテーション」の意味はいまいち分かっていませんが。
社員でも何でもない人の指導のもと、オリエンテーションしたことになる。