特集 2017年6月20日

ポケットが19個あるパーカー

キンドルから常備薬まで入る
キンドルから常備薬まで入る
今年のはじめ、ツイッターで流れてきたパーカーの画像に釘付けになった。

見た目は普通のパーカーなのに裏がポケットだらけなのだ。19個のポケットがある。
名前は「着るバッグ」。パーカーじゃなくてバッグなのだ。

便利を通り過ぎて怪しさすら漂っている。
そりゃ買うでしょう。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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どう怪しいのかをご覧ください

これがその着るバッグ。一見まったく何の変哲もないパーカーだが
これがその着るバッグ。一見まったく何の変哲もないパーカーだが
広げると内側が全面ポケットである。その数19
広げると内側が全面ポケットである。その数19
この記事は広告ではなく、僕が買った服がとてもいいので自慢するために書いている。藤原ヒロシが「このジャケットが1枚あると便利」とインスタに書いているのと同じだ。ただちょっとポケットが多いだけだ。
名刺入れはもちろん
名刺入れはもちろん
歯ブラシまで収納
歯ブラシまで収納
パーカーでありながら名刺入れが入るのでビジネスの場でも問題なしである。「なんだパーカーなんぞで打ち合わせに来おって……名刺入れ!こいつできる!しかも歯ブラシまで!!!」という島耕作的な展開も可能だろう。
もそもそっと背中から
もそもそっと背中から
ティッシュも出てくる
ティッシュも出てくる
背景が新幹線なのはこのパーカーと小さいカバンだけで出張に行くからである。
さすがにこのパーカーには着替えは入らなかった。着替えなくてもよければこのパーカーだけで旅に出ることができるだろう。
フル装備状態のパーカー・ホテルにて
フル装備状態のパーカー・ホテルにて
ポケットにものがはいったままだと着るというか、装着するというイメージである。
ポケットにものがはいったままだと着るというか、装着するというイメージである。
着た瞬間、「ウェアラブルだ。ウェアラブル服!」と思ったが、服はもともとウェアラブルだった。しかし着るバッグなのでウェアラブルバッグでいいのか。

注目はキンドルとカメラの位置。横のポケットに重いものを入れると形がくずれてしまうため、斜め後ろのポケットがいいのだ。

なぜ知っているか。デザイナーに直接聞いたからである。

おもしろくてデザイナーにアポ取ってしまった

株式会社そごう・西武 佐藤大輔さん。着るバッグシリーズを作った人
株式会社そごう・西武 佐藤大輔さん。着るバッグシリーズを作った人
―――なにをどうしてこの商品を作ったんでしょうか?

「手ぶらで歩ける服ができないかなと思っいまして。このパーカーは犬の散歩を使うシーンとして想定しているんですが、リードで片手は奪われる、でも片手にはスマホがありますよね」

そうか、服のデザインもスマホで変わっていくのか。
二の腕のポケットにスマホが入る
二の腕のポケットにスマホが入る
サングラスを入れるポケットはなかで動かないように小さめに
サングラスを入れるポケットはなかで動かないように小さめに
ポケットはやわらかいメッシュ生地なので、スマホもサングラスもポケットに入れるだけできれいになるそうだ。

「第1弾のコートではメガネ拭きもつけていました」
メガネ拭きがゴムでつながっている
メガネ拭きがゴムでつながっている
話が前後してしまったが、僕が買った着るバッグはシリーズ第2弾の製品で、この前に女性用のトレンチコートが販売されている。
第1弾の着るバッグ・コート。コートとベストに分かれいててポケットの総数30
第1弾の着るバッグ・コート。コートとベストに分かれいててポケットの総数30
こちらはiPad miniまで入るポケット付きである。パーカーとこのコートで迷ったがコートは女性用だけだったので断念した。

使い道の分からないポケットを聞こう

せっかく作った人に会ったのだ。いろいろ聞きたいことがある。まず袖口の小さなポケット。ここには何を入れればいいだろう。
右の袖だけにある
右の袖だけにある
「これはスイカを入れて…」
「こうやって改札を通るのです」
「こうやって改札を通るのです」
まさかのSUICA入れである。この取材、そごう・西武の広報担当者も同席していたのだが、広報担当者も「まさか!」と言っていた。

次は襟にあるマジックテープつきのフチである。
襟っぽいが内側である。しかもパーカーだし
襟っぽいが内側である。しかもパーカーだし
「こうしてヘッドホンを通します」
「こうしてヘッドホンを通します」
「いまやヘッドホンはたいてい何本もっているし、これで1本はパーカーに一体化しておけます」

あ、入れてみたらここにぴったり!という感覚はまるでパズルである。しかしパズルでいいのだろうか。

「説明書はつけているんですがポケットすべてを網羅すると伝えたい事が多すぎるので、イヤホンジャックなどは端折ってます。だから買ってもこれなに?ってわからないところはあると思う(笑)。」
でも
「ライフスタイルにあわせて必要なものを必要なところに入れてくれればと思ってます」

とのことなので、ここにライトニングケーブルやかんぴょうを入れてもいいだろう。

ちなみにこのパーカー、着るバッグシリーズのなかでいちばん売れているそうだ。たぶん子どものころ引き出しがたくさんついている筆箱を持っていた元男の子が飛びついていると思う。
ちなみにこの取材も手ぶらで行った
ちなみにこの取材も手ぶらで行った
しかしそごう・西武が入っている麹町のオフィスビルに手ぶらで入るのは完全に間違って入って来た人だった。

さて、着るバッグでの旅に戻ろう。

ポケットから全部出てくるのがおかしい

実際に着るバッグを装着して歩いていると、必要なものがすべて服から出てくるのが新鮮である。
ポケットを探って探しているちょっとした間が完全にドラえもんだ。
変わった看板を見つけたら…………………
変わった看板を見つけたら…………………
カメラ!
カメラ!
鼻がむずっとしたら………
鼻がむずっとしたら………
ティッシュ!
ティッシュ!
あたりまえのものしか出さないドラえもんだ。
ドデカミンを飲んだら…………
ドデカミンを飲んだら…………
パーカーに収納!のつもりが間違えて歯ブラシ出したところ
パーカーに収納!のつもりが間違えて歯ブラシ出したところ
慣れてないので意外なものが出てくることもある。新しい四次元ポケットを手に入れたドラえもんもこんなだった気がする。

このパーカーで服を買いに行ったのだが、上着を預かった店の人が歯ブラシ入ってるじゃないですか!と驚いていた。
背中のポケットには常備薬とモバイルバッテリーである
背中のポケットには常備薬とモバイルバッテリーである
これはデザイナーの佐藤さんに教えてもらった使い方である。

「取り出ししやすいものは前面、ほとんど出し入れしないもの・守りたいものは後ろがいいです。ただし冷たいものを後ろに入れると腰が冷えるのでおすすめしません。冬はカイロがいいです」

カイロはいい。冬が楽しみである。

人のためにポケットから物を出すと宮沢賢治っぽさすら出てくる。
胃が痛いという仲間がいれば
胃が痛いという仲間がいれば
胃薬を差し出し
胃薬を差し出し
iPhoneのバッテリーが切れ掛かっている仲間がいれば
iPhoneのバッテリーが切れ掛かっている仲間がいれば
ケーブルを差し出す
ケーブルを差し出す

仲間がいて嬉しい

こういうデイリーの企画で作るような服が市販されている(しかもそごう・西武という百貨店でだ!)のが嬉しくなってしまった。

しかも、重みで服の形が崩れないようにポケットの底を少し上にするなど、おかしいのにちゃんとしているのだ。
アメリカ出張中、パスポート入れるのに大いに役立った
アメリカ出張中、パスポート入れるのに大いに役立った


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