特集 2017年6月11日

書き出し小説大賞 第124回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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うれしいお知らせ。当常連作家の義ん母氏がKINOBOOKSさん主催のショートショート大賞で見事大賞を射止めました!ショートショートとは言え書き出し小説からすれば大長編。冒頭のみのアイデアが、豊かな物語につながることを証明してくれました。とにもかくにもおめでとう!
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

自分との戦いでは膝蹴りが最も効く。
マークパン助
無職になった途端、オウムの返答が横柄になった。
morin
宇宙では虫の息も立派な動力だ。
ビールおかわり
手にドライバー?ええ、回すほうの。を、持った女が玄関にいます。
井沢
ズボンを下ろすと、香車が転がった。
あや幹部
空が泣きやむと、濡れた線路が震えはじめた。
東ことり
シュレディンガーは箱を抱えたまま動物病院へ駆け込んだ。
八重樫
それが不発弾であることをsiriが教えてくれた。
もんぜん
豪族系アイドルはネイルと荘園の手入れに余念がない。
Mch
気付かないふりをして、欠伸で感情を掻き消す。
エイキ
この豚足を使って挙手をすると決めた。
茂具田
三限目は先生の考えた盛り上がらないスポーツをやって汗をかいた。
ヘリコプター
雨上がりの蜘蛛の巣の美しさを祖母の優しさが引き裂いた。
あひる
星屑の詰まった火炎瓶は集団の頭上でキラキラと爆ぜた。
小夜子
人は眠っているあいだ、気付かないうちにクモを食べ、頭上をスケボーで越えられている。
くのゐち
神はまず口臭を創り、その原因を人類に委ねた。
義ん母
寸評●マークパン助氏「自分との戦い~」敵の痛みは己の痛み。傍目にはバカにしか見えない。●ビールおかわり氏「宇宙では~」重体患者が遠ざかる。●井沢氏「手にドライバー?」最初のひと言でバカが伝わる。●八重樫氏「シュレディンガー~」臨床の現場に論理を持ち込む。●Mch氏「豪族系アイドル~」ネイルと荘園という組み合わせが素敵。●茂具田氏「この豚足を~」いろいろあっての決意なのだろう。●くのゐち氏「人は眠っているあいだ~」ゴキブリに顔を這われるか、スケボーで越えられるか、あなたならどっち?●義ん母氏「神はまず~」無臭文化反対、口臭体臭は個性なり。

続いては規定部門。今回のテーマは『ガリガリ君』であった。読めば頭がキーーンとなるガリガリ作品をご賞味あれ。

書き出し規定部門・モチーフ「ガリガリ君」

夏の空を、ガリッと囓る。
紀野珍
ガリガリ君をかじりながら、開かない踏切を待っていた。
xissa
棒が片寄ったガリガリ君が、男のアリバイを崩した。
大伴
ガリガリ容疑者に反省の色は見えなかった。
八重樫
口論の後、溶けきったブルーマリンから当たり棒が浮かんできた。
g-udon
笑っているのか怒っているのか何かを誇っているのか、まるで読み取れなかった。
g-udon
今のって金縛り?と目覚めた私に下着姿の百合子がガリガリ君を差し出してきた。
小坂井大輔
ガリガリくんが一つ入っているコンビニ袋は、思ったより邪魔だった。
ランブルフィッシュ
知覚過敏を教えてくれるのはいつも君だった。
吉田髑髏
海を見たことがないという少女に、ガリガリ君は小さな嘘をついた。
大胆チラリズム
俺は吹雪の中を歩き続けた。右手のガリガリ君は四角いままだ。
suzukishika
「私を実写化したいというのはどういう意味なのでしょうか?」
suzukishika
加奈子は迷いつつ、Mr.GARIGARIと訳した。
みずいろいずみ
赤城乳業所有のスペースコロニーが金星近くにワープして来ると、付近の宇宙船が一斉にガリガリ君の買い付けにやって来た。
prefab
100人に聞いたら99人がクズだと言う男が死んだ。残りの1人が男の顔を撫でる。
正夢の3人目
コーナーに戻ったボクサーの口に、ガリガリ君を刺した。
ぴすとる
長い長い飲み会の果てに、ガリガリ君を想う。
xissa
ろくに食べたこともないくせに、ビジネスモデルとしてのガリガリ君を語る大人を、僕は信用しない。
Mch
銃口が指したガリガリ君を、指示通りに口へとはこんだ。
マークパン助
食べ終わった木の棒を、聖徳太子は、
ヨーヨー大会
我はガ行五人衆の一人、ガリガリ君である。
terayo
ガリガリ君の妹として育つのは、あらゆる女子にとって試練である。
墓石は使いかけの消しゴム、卒塔婆はガリガリ君の外れ棒。僕らは出鱈目な念仏を唱え続けていた。
muddom
僕等がビートルズに夢中になっていた頃、ガリガリ君だけは独りキンクスを聴いていた。
菅原 aka $UZY
第一声の「ガリガリ君」で、しりとりは終了した。
大伴
寸評●紀野珍氏「夏の空を、」今夏のメインコピーにしたい秀作。●大伴氏「棒の片寄った~」崩れるアイスとアリバイをうまいこと重ねている。●g-udon氏「笑っているのか~」たしかにあの表情はちょっと怖い。個人的には喜怒哀楽を越えたポジティブ面と解釈している。●小坂井大輔氏「今のって金縛り?」金縛りで読み手を引きつけ、同棲カップルの熱帯夜を微笑ましく描写した秀作。●suzukishika氏「俺は吹雪の中を~」アイス=溶けるのイメージが多い中、それを逆手にギャグの効いた作品に仕上げている。さすが北国在住の作者。●xissa氏「長い長い飲み会の果て~」店内の喧噪は遠ざかり、耳奥にガリガリ君のテーマがループする。●ヨーヨー大会「食べ終わった木の棒を~」おそらく胸の位置で構えたのだろう。句点以降の答えを想像させる作品。●菅原 aka $UZY氏「僕達がビートルズ~」たしかにビートルズがロッテや明治なら、赤城乳業はキンクスのポジションかもしれない。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「噂」
職場での噂、学校の噂、近所での噂、都市伝説、人が集まる場所で噂は自然発生する。そこには明らかな嘘もあるし、真実もある。もしかしたら噂は、人類最初の口承文学かもしれない。ウワサの作品を募集します。締め切りは6月23日、発表は6月25日を予定している。下記の投稿フォームから部門を選んで送っていただきたい。力作待ってます!
最終選考通過者

風馬牛/松っこ/まじいい/ぐるりん/イワモト/うにねこ/いがそ君/セッドあとむ/七世/ろくの/にら将軍ハルナ/チブル/苦労プリンセス/よた/もろみじょうゆ/雨の日は寝る/
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