特集 2017年5月13日

喫茶店にあるテーブルゲームの中を見せてもらった

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「昔ながらのレトロな喫茶店ってのはまだまだ横浜市内にはありますが、私の思い出の喫茶店というと、テーブルゲーム筐体を置いた喫茶店。そんなお店ってもう全滅してしまったのでしょうか?」という投稿が、でっちさんからはまれぽ.com編集部へとどいた。

レトロ喫茶店+テーブルゲーム筐体、全滅寸前の3店舗を紹介します。ブラウン管と電子音に再会するなら、即訪問をお勧めです。
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

前の記事:ケーキや豆腐、野菜、Tシャツの自販機が買える店があった


レトロな喫茶店がやっぱり楽しい

モーニングがお得で、ナポリタンのボリュームに驚き、ゆっくり本を読んだり、週末の計画を立てる。真空管のアンプから聞こえてくるロシアンピアニシズムに身を委ねて、日々のはかなきことをしばし忘れ、年代物のふんわりソファーに包まれる。
日常の生活からのショートトリップ体験ができ、消滅してほしくない昭和遺産の1つ。

そういえば、映画やドラマの中では物語の始まりは、いつも喫茶店から。例えば、松田優作や永瀬正敏、もしくは、ヒロシとトオルのビーバップ。
レトロ喫茶店と言えば、松田優作のこのセリフ。「コーヒー飲んだら行くから、あぁ」
レトロ喫茶店と言えば、松田優作のこのセリフ。「コーヒー飲んだら行くから、あぁ」
一方、テーブルゲーム筐体(きょうたい。以下テーブルゲーム)とは?なんだろう? 歴史を紐解く。

それはファミコンが登場する前、1976(昭和51)年のことで、ゲーム会社「タイトー」が、「ブロック崩しゲーム」を喫茶店などに納品するために、テーブルゲームを開発した。

2年後の1978(昭和53)年に同社から発売された「スペースインベーダー」ゲームが、全国的に大ヒット。全国の喫茶店という喫茶店にテーブルゲームが置かれ、両替した100円玉をテーブルつみ上げて「インベーダー」に興じる姿を見ることができた。
懐かしい! 当時流行したゲーム、パックマン!
懐かしい! 当時流行したゲーム、パックマン!
こちらもまた、消滅してほしくない昭和遺産の1つ。

というわけで、レトロ喫茶店とテーブルゲーム、2つの昭和遺産を求めて、横浜市内で調査を開始。インターネット、口コミなどさまざまな方法で情報収集をしたが、横浜市内で確認できたのは1軒のみ。

よって今回、はまれぽ調査エリア内から、テーブルゲームがあるレトロ喫茶店を厳選して3軒ご紹介。
(1)藤沢「ジュリアン」
テーブルゲームのあるレトロな喫茶店を求めて!

1軒目は、藤沢「喫茶ジュリアン」

藤沢駅北口から徒歩3分。ビックカメラ横の道を進み、右手の路地に入る。路地の奥には、以前はまれぽで紹介した、ラーメン「こぐま」があり、そのほかレトロな喫茶店が2軒並ぶ。
「喫茶ジュリアン」の看板と「占」の文字に引き寄せられて
「喫茶ジュリアン」の看板と「占」の文字に引き寄せられて
テーブルゲーム、まだあるかな?
テーブルゲーム、まだあるかな?
みっけ! テーブルゲーム! ホッ!
みっけ! テーブルゲーム! ホッ!
ワクワクとドキドキをミックスさせながら、お店に入る。訪問したのは、午前10時30分ごろ。午前8時からのモーニングは終わり、ランチまでのホッと一息な時間帯。

オーナーらしき女性はキッチン前のカウンターにいるお客さんと談笑している。スピーカーから聞こえてくるモダンジャズのボリュームが耳にやさしく、モアベター。オーナーに、テーブルゲームの話を聞く。
名前は「ママ」でお願い、顔アップは恥ずかしいからダメ
名前は「ママ」でお願い、顔アップは恥ずかしいからダメ
「テーブルゲームは30年前からあったかな。私の母がお店を切り盛りしていて、お店を譲りうけたのがそのころ。そのとき、ちょうど、テーブルゲームが、どこの喫茶店にもあって、ブームだったの」とママ。
太陽光とカーテンの光加減で、偶然カフェオレ色! いいね!
太陽光とカーテンの光加減で、偶然カフェオレ色! いいね!

ママは、サンドイッチに軽く塩を振る手を休め、「いや、うちは麻雀ゲームだけ。最初から。多いときは5台。当時はね、今となっては信じられない話かもしれないけど、あのテーブルは、順番待ちができて、人気のテーブルだったの。朝、店に来て、モーニングを頼んで、ランチを食べて、夕方までって。1日中テーブルを独占する不届きものもいたわ。あまり覚えていないけども、時間制にしたり、順番待ちにしたり…。当時は、すごく人気があったのよ」と丁寧に答えてくれる。
今はたまに常連さんがやるくらいかな
今はたまに常連さんがやるくらいかな
「今はね、テーブルゲームは2台。そのうち1台は故障しているから、店の奥の方に置いていて、テーブルとして利用。窓際の1台は、今も現役。でも、この1台も壊れたら、テーブルにするしかないわね」
きわめて良い風景
きわめて良い風景
店名は、ママのママが、19世紀のフランスの小説家スタンダールの『赤と黒』の主人公ジュリアン・ソレルから名付けたらしい。恋愛小説でもあるが、その背後には「少数の幸福な人」に向けたメッセージがあるという小説。そのメッセージは、ママがオーナーとなった現在も、喫茶ジュリアンに来た人に、そっと届いている。

最後に、広々とした店内の中央にある素敵なガラスケースをご紹介!
ペアージュースってなんざんしょ? キニナルよ
(2)横須賀「ミスティ」
2軒目は、京急線横須賀中央駅から徒歩2分、ジャズ喫茶「ミスティ」

駅を背にして、歩道橋広場をまっすぐ抜け、階段を下る。そのまま直進「松屋」を通過して、左側の飲食店が入るビルの地下1階。
地下へと続く階段の途中にあるショーウインドにロックオン
地下へと続く階段の途中にあるショーウインドにロックオン
かわいいキューブ型! でも現在は販売終了、残念無念
かわいいキューブ型! でも現在は販売終了、残念無念
扉の向こうへGO!
扉の向こうへGO!
お話を聞いたオーナーの小澤正俊(おざわ・まさとし)さん
お話を聞いたオーナーの小澤正俊(おざわ・まさとし)さん
店内に入りまずは挨拶。ナポリタンとコーヒーを注文して、お手隙になるまで待つことに。店内を見渡すと、ピンクの公衆電話越しにテーブルゲームを発見! 席に着くなり、早速ゲームを開始。
ピンクの公衆電話とテーブルゲームの歴史的ツーショット!?
ピンクの公衆電話とテーブルゲームの歴史的ツーショット!?
	そうそう1ゲーム100円だったね!
そうそう1ゲーム100円だったね!
	きたきた、このチープな電子音
きたきた、このチープな電子音
	あれれ、麻雀て、どうやるんだっけ!?
あれれ、麻雀て、どうやるんだっけ!?
ゲームのジャンルは麻雀。ゲームをやっていると、記憶の奥に眠っていたテーブルゲームで遊んでいた記憶が甦ってきた。インベーダー、パックマン、ゼビウス、ギャラクシアー…。なんか楽しい嬉しい恥ずかしい、という間に、注文していたナポリタン(700円)が到着。
	ナポリタン(700円)
ナポリタン(700円)
	このモチモチ感! 半端なし
このモチモチ感! 半端なし
ナポリタンは思った以上にボリュームあり。ウインナー、タマネギ、マッシュルームがケチャップと絶妙に絡み合っていて、激旨。いわゆる喫茶店風ナポリタンというよりは、がっつり食べたい時に行きたいトラットリア(定食屋さん)ナポリタン。

また、サラダとみそ汁がガッツリ系ナポリタンの味を和らげてくれる。オーナーのホスピリタリティーを食で感じることができ、幸せな気分に。
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(2)横須賀「ミスティ」
(つづき)
では、テーブルゲームの話をお伺いします。

「昔は映画館が入っていたビルの中に店はあり、私はそこで働いていたのですが、前のオーナーから移転のタイミングで引き継ぎました。そのころからテーブルゲームはあったから、30年くらいかな。

今はジャズ喫茶というよりは、いろいろなお客さんが気軽に入れるようにしています。仕事の合間にスケジュールを確認する営業の方、女性一人で来られる方も多いですよ。ご家族で来られる方もいらっしゃいますよ」とのこと。
店内中央には漫画本! と水槽!?
店内中央には漫画本! と水槽!?
「ゲームは2台。1台は壊れちゃって、遊ぶことはできません。毎日常連のお客さんが来て、1~2回はゲームをして遊んでいきます」

「そうだ! 中身を見てみますか?」と言って、テーブルゲームの方へ。
慣れた手つきでここをいじると…
慣れた手つきでここをいじると…
オープン
オープン
ゲーム機の寿命のカギを握る配線(弱々しい)
ゲーム機の寿命のカギを握る配線(弱々しい)
「ヤフオクなど、テーブルゲームを手に入れようと思えば手に入るらしいけど、前調べたとき20万円くらいしていたかな。ピンキリだろうけどもね。もう使命じゃないけども、最後の1台は壊しちゃいけないと思って、大切にメンテナンスをして守っています。常連さんの顔を思い浮かべながらね」とオーナーの小澤さん。
ジャズ喫茶+テーブルゲーム! SO COOL(激渋)!
ジャズ喫茶+テーブルゲーム! SO COOL(激渋)!
(3)弘明寺
「喫茶 モカ」
最後に紹介するのは、今回の調査で唯一発見できた横浜市内のテーブルゲームのあるレトロ喫茶店。横浜市営地下鉄ブルーライン弘明寺駅から徒歩1分、鎌倉街道沿いにある一軒長屋のちょうど中央部に位置する「喫茶モカ」だ。
キニナル店舗が、ほかにも数件あり!
キニナル店舗が、ほかにも数件あり!
	緑のビニール屋根と歩道の黄色と相まって
緑のビニール屋根と歩道の黄色と相まって
	トロピカーナ!! しかも懐かしのペプシの看板を発見!
トロピカーナ!! しかも懐かしのペプシの看板を発見!
それでは早速店内へ。オーナーの話を聞く前に、しばし珈琲タイム。
	アイス・ホット共に300円なり
アイス・ホット共に300円なり
やがて、カウンターからオーナーが出て来て、一番奥の座席に座る。店内のモニターでは、カンフー映画が流れている。ブルース・リーか、キョンシーか。酔拳の指先を見ながら、時の流れに身を任せ、取材開始。
	店主の亀田さん、御年83歳
店主の亀田さん、御年83歳
「こちらにテーブルゲームがあると聞いたんですが?」

「ゲームあるよ。ちょっと前までは、電気がついたんだけど、今はダメ。テーブル替わり。電源指してみてもうんともすんともいわないよ」

とはいうものの、店内を見渡すが、どこにもゲーム機がない。
	赤いパイプ椅子がレトロビューティー
赤いパイプ椅子がレトロビューティー
「なにやってんの。君の使っているテーブルがゲームだよ、テーブルクロスをめくってみてよ」と笑いながら、オーナーが教えてくれる。

「えっ!、本当ですか?」

「本当だよ、それだよ」
	あった、あった! 恥ずかしい!
あった、あった! 恥ずかしい!
	使い込まれたSPACE WAR(スペースウォー)
使い込まれたSPACE WAR(スペースウォー)
「電源入れてみてもいいですか?」

「入れてみてもいいけども、だからさっきから言ってんだろう、電源入っても付かないって。ちょっと、前までは使えてたんだけどもね」

「いや、すみません。どうしても『スペースウォー』の画像をはまれぽ読者に見せたくて、付かないとは分かっているんですけども諦め切れなくて。ダメもとでいいでしょうか?」
	どうだ!
どうだ!
	スイッチボタンを見つけるも、電源付かず
スイッチボタンを見つけるも、電源付かず
「やっぱり珍しいかね。先だっても君みたいな人が来て、何度も何度もやっていたよ。やっぱり、うんともすんともいわなくてさ、残念だけども」
	スペースウォーは、もう終了したのだ
スペースウォーは、もう終了したのだ
「30年前は、そいつで、月に20万ほど売上があったよ。2台あって、店の外にまで行列もできていた。あのころは、景気も良かったしな」

「1956(昭和31)年にお店を始めたんだ。当時は、喫茶店ではなくミルクホールという名前だったかな。中華街の闇市でケーキを仕入れてさ、コーヒーやジュースなど、一時はアルコールも取り扱うことがあったかな。昭和40年~昭和50年ごろね。そしてバブルのころは大変でさ、何を出しても商売は上手くいってな。私も若かったから、午前9時から午後11時ころまで店を開けていたよ」
	もう何年も前から値段は変わってないよ
もう何年も前から値段は変わってないよ
「当時は、趣味のバイクや釣り仲間たち、近所の店主たちなどのたまり場になって、1日中、お客さんが途切れることなかったよ。今は、もう、午後5時には店閉めるし、ふらふらいい加減だけど、昔はね」

「もう閉店しようかなとは思っているんだけども、主治医が、健康のため続けなさいって。健康にいいから、ボケ防止になるからってね」と、マスターは笑って話してくれた。
	60年以上鎌倉街道をみつめてきたマスター
60年以上鎌倉街道をみつめてきたマスター
「でも、私も、こうやって君たちや昔からの仲間やお嬢ちゃんたちが懐かしがって、『このまま続けてください』て、言ってくれるから嬉しくて、辞めるわけにはいかないなと。まあ、ふらふら、自分の体調に聞きながら、店を開けているんだよ」とマスター。

「また来てよ」
「もちろんです。いろいろ、横浜のことを教えてください」

「来るときは、電話をちょうだいな。いつまで続けるか分らんしな。お客さんが来なかったら、営業日でもお休みにすることもあるからね。常連には、お店に来るときは電話をかけて、と言ってるからさ」

取材を終えて

テーブルゲームが置いてあるレトロ喫茶店は、キニナル投稿者の言うように全滅寸前だった。探されている方がいらっしゃるのであれば、すぐに、訪問をされた方が良い。

店舗が閉店する可能性もあるが、一番の問題はテーブルゲームの寿命が差し迫り、待ったなし、ということだ。きっと、どのお店も素敵な店主が笑顔をもって、迎えてくれます。ぜひ、ブラウン管の光と電子音、そして、懐かしいあの記憶に…! 再会訪問をオススメします!
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