今回の調査依頼は「自動販売機販売店」について。自販機販売店って、つまり……
自動販売機を販売しているお店ってこと?
「自動販売機って買えるんだ!? 自販機も自動販売してたりして?」。そんなくだらないことを考えながら、くだんの「自販機販売店」についての情報をネットで探してみた。
赤字で「あらゆる自動販売機のニーズにお応えします」なんてある
これはとってもキニナル! ということで、早速訪問してみることに。
住所によると、どうやら「戸塚原宿」交差点にあるらしい
そんなお店あったっけ?
あ
あった!
自販機専門店の株式会社ピープル!
屋根の上の「自動販売機」が目印だ
店頭には自販機が……
所狭しと並んでいます
自販機で儲けたい人必見!
「自販機が買える」事実すらたった今知った自販機初心者のオカダ、自販機店「株式会社ピープル」と自販機って儲かるのという点などついて、ぜひ聞いてみたいところだ。個人的に街頭で発見した自販機「【街角自販機】」の写真も交えつつ、自販機の秘密に迫ろう。
迎えてくれたのは大川和光(おおかわ・かずみつ)代表
「弊社は1989(平成元)年に創業し、自販機の販売やリース、開発、改造などを中心に、自販機についてのさまざまなニーズにお応えしている会社です。飲料の自販機がメインではありますが、ほかにもご相談いただければ、どんなものでも販売できる自販機をご提案します」とのこと。
じ、自販機って、買ったり借りたりできるんですね!
「一般的な飲料の自販機は、中古、新品によって異なりますが1台25~50万円程度でご購入いただけます。現在、飲料自販機は飲料メーカーの無償貸与が中心ですが、中には個人のオーナーさんが、ご自身で販売機を購入されて運営されているものも。こうした、オーナーさま所有の自販機を“白ベン”といいます」
【街角自販機1】赤や青のブランドカラーに塗られたメーカーのベンダー(販売機)に対して
ブランドに縛られない、白いベンダーだから「白ベン」
メーカーから貸与されるベンダーでは販売機のメンテナンスや商品の補充をメーカーに任せられる反面、自販機のオーナー側で販売する商品や価格を決定することが難しい。さらに、売り上げ1本あたりのマージンも固定されており、思う通りの収入を得られないケースや、売り上げがよくないベンダーをメーカーの意向で引き上げられてしまうこともあるという。
「会社の敷地内など、メーカーの望む売り上げはなくとも、自販機設置が必要というシーンは多々あります。さらに、安価に仕入れた商品を安く販売するなどの工夫をして、少しでも売上をあげたいというオーナーさんは、“白ベン”を選択されるのです」
つまり、手間はかかるが儲かる可能性を秘めているのが「白ベン」なのだ。
【街角自販機2】なかには白くない「白ベン」もある
「株式会社ピープル」ではオーナーに希望のベンダーを販売、貸与するほか、商品を仕入れる問屋さんの紹介なども行っているという。「自販機で儲けたい!」なら要相談だ。
儲けるための秘訣とは?
もちろんオカダも「儲けたい!」、ので相談してみた。「実は、現在国内の飲料自販機は飽和状態にあり、コンビニの台頭もあって厳しい状況にあります。なかには大きな利益を挙げていらっしゃるオーナーさんもいらっしゃいますが、恵まれた立地条件と運営努力は必要ですよ」と大川代表。
たとえばこんな価格面での努力とか……
「昔は自販機を設置すると月に5000円ほどの電気代がかかったものですが、ヒートポンプ技術などの採用により、現行の自販機は電気代も月2000円ほどに抑えられています。売り上げについてはまちまちです。しかし、飲料自販機の売上は夏に伸びますから、夏に人出がある立地を選んで、あとは仕入れ価格を抑えたり、値引きで入れる本数を増やしたりなどの運営努力次第ですね」
なるほど、そういえば街の自販機からも、「これって運営努力?」な自販機を見出すことができそうだ。
【街角自販機3】運営努力とは、例えば「ふるさと名産特産品」と書かれたこの自販機
【街角自販機4】こうで
【街角自販機5】こーんな感じに並んで
【街角自販機6】ほかでは見られない商品が満載! つい買っちゃいそう
【街角自販機7】やけに山形推しなのは何か意味があるのかしらん?
【街角自販機8】こんな運営努力の方向性も……あり!?
ちなみに、楽に儲けたい方におすすめな自販機はこちら……
自動精米機だ
仕入れがいらない精米機は利益率が高くおすすめとのこと。実は「株式会社ピープル」本社前にも設置されている。
どんな自販機も開発? ピープルの底力
さて、「どんなものでも自動販売機で販売できる」とおっしゃった大川代表に、飲料自販機以外の自販機についても聞いてみよう。
「ドリンクベンダー以外では、最近は飲食店の食券を販売する券売機のニーズが高いですね。小規模な店舗では店主一人で調理から精算までを担当するところもあり、お金に触れた手で調理を行うリスクを避けられ、衛生面でもメリットが大きいと好評です」とのこと。
ずらり並んだ券売機たち
「さらに、お金のトラブルを避けられるうえ、時間帯やメニューごとの売上高も自動集計可能。飲食店のみならず、マッサージ店や理髪店、スポーツジムなどでも導入されるケースが増えています」とのこと。
届いたばかりの中古躯(く)体を
特別に見せていただいた
ボタン部分の裏側はこんな感じ
赤丸部が集金箱、矢印の部分に券を印字するロール紙が見える
そのほかの変わり種は? と尋ねると「野菜の自販機もニーズが高い商品ですし、当店ではオーダーメードの自販機を開発、改良することも行っています。これまで納品したものでは、洋菓子店のケーキの自販機や豆腐店の冷蔵豆腐自販機などもあります。これ以外にも、ご要望があればどんなものでも販売できる自販機を開発しますよ」と話してくれた。
よく見かけるこんな無電源ロッカー型は48万円ナリ
さらにこんなミニサイズは20万円台から!
どうやら、「株式会社ピープル」さんは、飲料やたばこなどの量産型自販機に改造を加えて、別の商品を販売できる自販機へと改造することもお得意らしい。自社内で設計までを手がけて鉄工所に加工を依頼したり、海外の工場に製造を発注したりしているとのことだ。
商品サイズ的に汎用性が高いというたばこ自販機
たばこの自販機には、免許証による年齢認証装置(上写真の赤丸)を追加することも可能だそうだ。
続いて、できたてほやほやの新製品を見せていただいた。
一見普通の冷凍庫だが……
開けると、ほら!
アイスクリームなどを販売できる自販機になる
携帯充電機。これも自販機といえば自販機
こちらはおしぼり供給機
おしぼり供給機は、お金はかからずボタンひとつで自動的に清潔なおしぼりを供給できる。
街に目を向けてみても、「変わり種」自販機は意外に多いもの。オカダがここ数週間で目にしただけでも……
【街角自販機9】おもちゃの自販機や
【街角自販機10】Tシャツの自販機
【街角自販機11】「だし」の自販機や
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ、サイクリングのメッカ「瀬戸内しまなみ海道」では……
【街角自販機12】自転車用タイヤチューブの自販機まであった
とにかく世の中いろんなものが自動で販売されていることに気づいた。
「某ファッションイベント時には自販機に見せかけた躯体の内部に販売スタッフが常駐し、手作業でTシャツを販売する、“非自動”販売機を作ったこともあります」と大川代表。
シュールです
「ご相談さえ受ければ、とにかくなんでも自動で販売できる方法を考えます。大手メーカーは大量に売れるものしか作りませんが、たとえ少量でも売れるものなら自販機を作るのが弊社。開発したら実用新案を取得し、月に数台ずつでも細々と売り続けます。ネット経由での注文が多いので、北は北海道から南は九州、さらに海外まで、弊社の手がけた自販機が活躍していますよ」と教えてくれた。
ちなみにそこのダンボール、「ロシア」「中国」とありますが?
「世界には自国内で自販機を製造していない国もたくさんあります。そうした国に、中古の自販機の輸出も行っているんです。みなさんがご近所で愛用されていた自販機が、海を渡った海外でさらなる活躍をしているかもしれませんよ」
へぇええええええ!(驚)
すべては弁当自動販売機開発から始まった
「どんなものでも自販機で売って見せます」と、とにかく頼もしい大川代表。一体全体どういう経緯で自販機の道へと進んだのか、その生い立ちがキニナッてきた。
大川代表にお話を伺うと「私の父は化学の研究員だったんです」。ほほう。
「父が開発したプラスティック混抄紙(こんしょうし)が、自販機の道へと進むきっかけを与えてくれました。プラスティック混抄紙というのは、パルプに樹脂を混ぜた紙なのですが、これを何かに利用できないかと考えた時に、“弁当箱”というのが浮かびました」
「そこから、このプラスティック混抄紙の容器に入れた弁当を販売する自動販売機の開発に携わり、これが日本万国博覧会、いわゆる大阪万博のバックヤードなどでも採用されることになったんです」
1970(昭和45)年の、こーんにーちーはー♪
このプラスティック混抄紙の容器を使った弁当自販機は、大阪万博だけでなく、沖縄海洋博や、東海汽船の船内などでも採用されたという。しかし、その後の需要は伸び悩み、販売中止に追い込まれる。大川代表は自販機ディーラー勤務などを転々としたのちに、自身の会社を立ち上げるに至ったのだという。
「当時はまだ飲料メーカーが自販機拡充に向けて盛んだった時代。全国に登録制のフリースタッフを確保して、自販機設置用の土地を見つけては、それをメーカーに紹介して、紹介料を得たりしていました。その後、全国的に自販機も飽和状態となり、メーカーが新規設置に消極的になると、いわゆる“白ベン”の販売、貸与や自販機開発が業務の主流となってきたのです」と当時を振り返る。
【街角自販機13】京急線ホームではなんと、自撮りができる飲料自販機も登場
「VENDORPHOTO」(ベンダーフォト)機能がついたこの自販機では、飲料を購入すると内蔵のカメラで写真を撮ることができる。オリジナル背景5種が選べ、撮影した画像は、スマートフォンアプリ「LINE」で受け取れるという。需要があるかは不明だが、なんだかすごい。
こんなバラエティー豊かな自販機が次々登場している昨今だが、飲料自販機自体の需要は低下しつつあるらしい。
しばらく前に「
うどん・そば」のレトロな自販機が話題となっていたが、大川代表が自販機道に入ったのは、自販機業界がまさにそうした食への展開を広げていた昭和50年代。今ではコンビニの隆盛におされて廃れつつあるいわゆる「自販機フーズ」が、大川代表をこの業界へと導いたのだ。
【街角自販機14】カップラーメンの自販機も、最近はあまり見かけないような・・・
取材を終えて
知れば知るほど広く、深い自販機業界の世界。いまでは自販機でお茶や食券を買うという行為は当たり前すぎて意識しないが、子どものころはとにかくあのボタンが押したくて押したくて、憧れの存在だったものだと懐かしく思い出した。
自販機そのものの販売は、もちろん自動ではなく手動だ。それどころか「株式会社ピープル」では、既存の自販機に加工を施して、手作りで全く新しい形の自販機に生まれ変わらせている。素晴らしいクリエーションの現場までも垣間見ることができた。
「株式会社ピープル」は、「こんな自販機があったらいいのに」を叶えてくれる、強い味方だ。何か「自販機で売れたらいいな♪」なものをお持ちの向きは、ぜひ一度ご相談あれ!
終わり
取材協力
株式会社ピープル
住所/横浜市戸塚区原宿4-3-5
電話/0120-089-174
http://www.jidouhanbaiki.co.jp/