特集 2017年4月27日

20年前に群馬県にあったドライブスルーのコンビニを調べてみた

今はなきドライブスルーコンビニシステムを再現してみました。
今はなきドライブスルーコンビニシステムを再現してみました。
群馬県館林市出身の夫が「20年くらい前、館林にドライブスルーのコンビニがあったんだよ」と言ってきました。

私は栃木県育ち。ドライブスルーコンビニなんて知りません。インターネットで調べたところ情報がほんの2行くらいしか出てこなくて驚きました。

ドライブスルーでコンビニが利用できるなんて便利じゃないか。なんで現代に無いのだろう。と思い調べることにしました。
1987年埼玉生まれの栃木育ち・群馬県在住。
週末は群馬の温泉を巡っています。
漫画やイラストを描いたり、それに付随した講師もたまにしております。(動画インタビュー)

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何も情報がない状態からのスタート

「まずはドライブスルーコンビニがあった場所に行ってみよう。場所は覚えているから」と夫の提案でドライブスルーコンビニがあった場所まで行きます。

ドライブスルーコンビニ跡地には丸亀製麺があった

かつてドライブスルーコンビニがあった館林市本町三丁目。今は丸亀製麺がありました。
かつてドライブスルーコンビニがあった館林市本町三丁目。今は丸亀製麺がありました。
丸亀製麺を見た私たちは「ここにドライブスルーコンビニがあったのか!」と胸が熱くなり興奮して車から降りて記念撮影を堪能しました。
記念撮影に興じ、丸亀製麺よりたぬきを写すことに精を出す私達。
記念撮影に興じ、丸亀製麺よりたぬきを写すことに精を出す私達。

記念撮影を楽しんだあとは図書館へ

かつてドライブスルーコンビニがあった場所は館林図書館に近いのでそのまま図書館に行きます。
かつてドライブスルーコンビニがあった場所は館林図書館に近いのでそのまま図書館に行きます。
図書館は撮影禁止なのでイラストでお届けします。

まず始めは図書館のリファレンスコーナーに行くはずでした。リファレンスコーナーで当時の新聞記事が検索できるからです。しかし、丸亀製麺で興奮した私たちはリファレンスコーナーのことをすっかり忘れて直接、郷土資料コーナーへいくのでした。

まさかの奇跡

興奮しながら「上毛新聞を見せてください!」と郷土資料コーナーの司書さんに言ったところ「何をお探しですか?」と質問されました。
図書館なので静かにはしゃぎました。
図書館なので静かにはしゃぎました。
「館林にあったドライブスルーのコンビニを調べています!」と元気に答えると「えー!懐かしい!私、利用してましたよ!」と司書さん。
さらに興奮してしまいました。
さらに興奮してしまいました。
「本当ですか?!当時のこと覚えていますか?」
と急遽司書さんに少し話を聞くことに。お仕事中なので5分くらいサクッとインタビューします。
ドライブスルーコンビニの名前って覚えていますか?
それが覚えてないんですよ、もうだいぶ前ですし半年くらいしかやっていなかったので。
半年ですか。何かドライブスルーコンビニについて覚えていることはありますか?
めずらしい牛乳が売っていました。お弁当が日替わりでそのお弁当がドライブスルーコンビニの目玉でした。それを買いに行っていましたね。
ドライブスルーで?
ドライブスルーで。当時はすごくめずらしい試みで、NHKのニュースでもやっていたんですよ。
全国区だったのですね! ドライブスルーコンビニの使い方って覚えていますか?
それが、全体的にもうあんまり覚えていないんですよね…。
なるほど。
私達の生活に馴染む前に閉店してしまったということなのでしょうか。

当時ドライブスルーコンビニを使っていた年代が今40代50代でインターネットに比較的馴染みがないというのも情報が出てこない要因なのでしょう。

奇跡その2

司書さんと話し終わった後「当時のオーナーさんの話が聞けたらいいよねー」と夫と話していると…
司書さんのポテンシャルがすごい。
司書さんのポテンシャルがすごい。
あ、知り合いですよ。連絡取りましょうか?
なんだこのラッキーは。私は今年いっぱいのラッキーを使ってしまった気がしました。怖い…でも嬉しい…司書さんすごい。
今、仕事中なので終わってからでいいですか?
いいですよ! むしろありがとうございます!
図書館が終わるまで過去の地図で調べ、ドライブスルーコンビニの名前が【ファームストア】だということが分かりました。
1998年3月発行の地図に載っていたので、そこから半年前くらいを遡れば当時の記事が見つかるというわけです(まだリファレンスコーナーの存在を失念しています)。

オーナーの息子さんに電話取材

司書さんがオーナーの息子さんに連絡をとってくれました。
司書さんがオーナーの息子さんに連絡をとってくれました。
オーナーさんはもう亡くなられていて、オーナーの息子さんがインタビューに答えてくれます。ですが、息子さんも当時のことはあまり覚えていないとのことでした。
開店の日は覚えていますか?
もうあまり覚えていないんですよね、20年も前ですし…ただ父が存命の時、アメリカに行って見たドライブスルーコンビニが「これから日本でも流行るぞ!」と考えて始めたそうです。
アメリカが拠点でアメリカにはドライブスルーコンビニが国道沿いにあって一般的だったそうです。
アメリカにはたくさんあったんですね!
そうです。日本ではドライブスルー型のコンビニが無かったので、NHKのニュースで取り上げられました。
(司書さんと言ってること同じだ!)
全国区だったんですね。
はい。ただ、資本が住友で、経営にあたり条件が厳しくて続けることが困難になったようです。
条件…。
(言いよどみつつ)いろいろですね。
そうだったんですか。
条件と«やっぱり手にとって商品を選びたい»という消費者の意見が重なってしまい半年で閉店を決めたと思います。
たとえば同じサンドイッチ2つを比べても、具の入り具合などで個体差はありますしね。
例)同じサンドイッチなのに心なしか右のほうが美味しそう。
例)同じサンドイッチなのに心なしか右のほうが美味しそう。
なるべくおいしそうな方を買いたいです。
それで中身が直接見られない分、お弁当はなるべく群馬県産を使ってこだわっていました。
当時の資料はありますか?
いいえ、すべて処分してしまいました。特に必要と感じなかったので。
すべて、と言いますと?
写真や資料・チラシ・ノベルティグッズですね、ノベルティはマグネット・文房具などです。私は店に立っていなかったので情報はこれくらいです。
そうでしたか。ありがとうございました!
オーナーの息子さんにお礼を告げ、司書さんにもお礼を告げ館林図書館を後にしました。
まとめると

・ あまり当時のことを覚えていない。
・ NHKのニュースで全国区の放送。
・ 資料は全て無い。
・ (何らかの)条件が厳しかった。
・ 見ないで購入することが馴染まなかった。

今はインターネットで情報を発信・拡散できて情報を残すことが可能ですが、当時は新聞とテレビと駅で広告を出すか、チラシを配るくらいでしょうか。2人から話をきいた時点では【時代が追いつかなかった】が正直な感想です。

新聞を探し出すぞ!

生の声が聞けたのですが、まだわからないことがあります。
コンビニの外観とドライブスルーコンビニのシステムです。
高崎の図書館に行って調べます。
高崎の図書館に行って調べます。
今回はリファレンスコーナーを使いますよ!
リファレンスコーナーで「館林のドライブスルーコンビニの新聞記事はありますか?」と聞くと5件見つかりました。
その年月の新聞を出してもらいます。

今日は1人で調査です。新聞を出してもらって記事を確認できた時は感動して鼻がツーンとしてしまいました。
私の記憶ではなく他人の記憶を追跡するので、夫・館林図書館の司書さん・オーナーの息子さんの期待を背負っている感覚になっていたのです。
みんな!私、やったよ!と期待に答えられた満足感が全身を包みました。
みんな!私、やったよ!と期待に答えられた満足感が全身を包みました。

かつて群馬県館林市にあったドライブスルーコンビニの実態とは?

新聞記事5件を元にリスト化しました。
新聞は著作権の関係でインターネットにアップ出来ないので情報とイラストでお楽しみください。

お店情報

・ 正式名称はファームストア1号店。フロリダのファームストアーズ社との業務提携。住友商事が資本のフランチャイズ。
・ 群馬県館林市に1号店がオープンした。理由は車の保有率が高いから。
・ 店舗は約50㎡、敷地は約70㎡
・ 1997年7月21日~9月16日まで仮オープン
・ 1997年9月17日に正式オープン・営業時間は午前6時から深夜の午前0時まで。(約8ヶ月の運用)
・ 1998年3月8日に閉店・理由は本格的な店舗展開のデータを収集できたため。

システム

・ 窓口に車が来たら店員がメニュー表を客に渡す。客は店舗ウィンドウとメニュー表から商品を選択し注文。店員が店内で注文品を選び車へ持ってくる。客は車に乗ったままその場で精算。
・ 店は左右対称で一度に2台さばける仕組み。
・ 店員は午前中は1人・午後は2人。
・ 一台あたりの買い物時間は約75秒。
・ 扱う商品は700品ほど。

最後に外観ですが新聞は白黒で色はわかりません。ファームストアのファーム【農場】から「イメージカラーは赤かな?」と思ったのですが、セブンイレブン・セーブオン・サンクスと色がかぶるので差別化のためテーマカラーは緑にしてみました。
私が経営者ならそうすると思っての緑色です。
左右対称で1度に2台対応。
左右対称で1度に2台対応。

ドライブスルーコンビニを再現してみた

なぜドライブスルーコンビニが流行らなかったのか実際に自分で再現することにしました。【百聞は一見にしかず】です。
実際にやることで何か見えてくるものがあるかもしれません。

まずは制服

新聞を見て再現しました。
【ゆくゆくはガソリンスタンドと提携】と書いてあったのでガソリンスタンドに近い制服でした 。
コンビニには珍しい帽子です。ズボンは色がついていなかったので白ではないでしょうか。
コンビニには珍しい帽子です。ズボンは色がついていなかったので白ではないでしょうか。

メニュー表を再現!

約700種類を取扱っているそうなのでメニュー表は分厚いと考えました。
実際に作ってみました。全部で34ページです。自我が強くてぬっきぃストアにしました。
実際に作ってみました。全部で34ページです。自我が強くてぬっきぃストアにしました。
商品は架空。700種類考えるのは大変でしたので500種類ほど揃えております。
商品は架空。700種類考えるのは大変でしたので500種類ほど揃えております。
メニュー表を作っていて気付いたのですがコーヒー1つでもメーカーが数社ありますよね。
牛乳も200ml、500mlと大きさが違うし「注文するの面倒臭いのでは?」「メニューを読むのすら時間が掛かるのでは?」と懸念材料がいっぱい出てきました。

商品名を考えるのに精一杯になり値段を載せるのを忘れています。
全品300円になってしまいました。
全品300円になってしまいました。

受付はコチラです!

受付窓口はベランダです。
受付窓口はベランダです。
うちは社宅で1階しか空いていませんでした。「1階は虫が侵入するし嫌だなぁ」と思っていたのですがドライブスルーコンビニが再現できた今「1階に住んでいてよかった!」と思えました。

実際にドライブスルーをしてみる

コンビニで働いたことはありませんが精一杯頑張ります!目標は新聞に書いてあるとおり1グループ75秒です。
お客様はドライブスルーコンビニ情報提供者の夫です。
お客様が来ました!
お客様が来ました!
「こちらメニュー表です!」
「こちらメニュー表です!」
お客様が商品を選んでいます。あれ…この時間はどこにいるのが正解でしょうか?
お客様が商品を選んでいます。あれ…この時間はどこにいるのが正解でしょうか?
「え?こんなにあるの?時間掛かるな…」とお客様。
「え?こんなにあるの?時間掛かるな…」とお客様。
3分後。
「お決まりですか?」「まだです」
「お決まりですか?」「まだです」
午前中は店員1人なので向こう側にお客様がきたらてんてこ舞いになりそう。
さらに3分後
「あ?決まりました?」
「あ?決まりました?」
「鮭おにぎりと…エナジードリンクお願いします」

(6分悩んで2つか…)

「お客様のお会計は648円です!648円ご用意してお待ち下さい!」
注文が決まりました!
コンビニ(家)に入って注文品を持ってきます。お客様が心配そうに覗き込んでいました。
コンビニ(家)に入って注文品を持ってきます。お客様が心配そうに覗き込んでいました。
鮭おにぎりとエナジードリンクはちょうど家にありました。
「店で探してる間に帰っちゃう客もいるんだろうな」と頭によぎる。
かかった時間は約35秒です。
「おまたせ致しました!」
「おまたせ致しました!」
「商品はコチラになります!」
「商品はコチラになります!」
「お会計お願いします!」
「お会計お願いします!」
「648円丁度お預かりいたします!」
「648円丁度お預かりいたします!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
結局なんだかんだで10分かかりました。
今回は憶測での再現でしたが、実際にはもっとちゃんとしたノウハウがあると思います。

夫に感想を聞いてみました。

「車にずっと居るのは楽だけど、ちょっと面倒くさい、特にメニュー表が。あらかじめ買いたいものが決まっていたら便利かもしれない。」
だそうです。

実際にやってドライブスルーコンビニが流行らなかった理由がわかった気がします。
始めは「便利そう!」と考えていたのですが店員は700種類どこに何があるか把握しないといけないし、分厚いメニュー表を見るのは私も面倒です。

【時代が追いつかなかった】と中盤に書きましたが時代は追いつくことは無いかもしれません。とにかく手間が多いことに気づきました。

でも、ちょっとおもしろかったです。普通のコンビニより店員の運動量が多そう!

大切なことを教わった気がした

日本にドライブスルーコンビニは馴染まず半年ほどで閉店してしまいましたが、何人かの心にドライブスルーコンビニが残っているのは確かだと思います。
覚えてもらっているって嬉しいですよね。

デイリーポータルライターは群馬県出身がけっこういる

デイリーポータルZでは群馬県出身のライターさんが多いのでドライブスルーコンビニのことを聞いてみました。
・北村ヂンさん=当時は知らなかったが群馬のドライブスルー文化を調べる時にドライブスルーコンビニの存在を知った(前橋出身)
・ネッシーあやこさん=全く知らなかった(伊勢崎出身)
でした。
張り切りすぎてロゴまで作った。
張り切りすぎてロゴまで作った。

県内でもこんなに知名度が低いとは。
当時を覚えている人がいたら是非教えてください!
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