協力してくれるのは写真家の青山裕企さん
青山裕企さんは最近「ネコとフトモモ」という写真集を出した。
猫と太ももだなんて鬼に金棒みたいな組み合わせじゃん、と思ったがそれだけではないという。
関係のないふたつのものを掛け合わせることで意外な効果を発揮する、という狙いもあるのだと教えてくれた。
(すごく売れて欲しい、とも言っていた)
わー(「ネコとフトモモ」より)
あらー(「ネコとフトモモ」より)
掛け合わせのマジックがあれば、一見「かわいい」に関係のないものも違って見えるかもしれない。
正月に会った従兄弟みたいな写真になったが写真家の青山裕企さん(売れっ子)
スクールガール・コンプレックスなど、これまでに50冊の写真集を出版している。その写真家に挑戦してもらうモチーフはこちら。
おじさん、ACアダプター、腹筋ローラー、そろばん、ピッチャー、緩衝材、女性モデル(anjuさん、mccさん)
女性モデルがいるが、あくまでも主役は「おじさん、ACアダプター、腹筋ローラー、そろばん、ピッチャー」である。モデルはそれらを引き立てるために来てもらった。
掛け算の後者のほうだ。
主役はあくまでもこちら
ピッチャーはかわいくなるか
まずはピッチャーである。ラーメン屋やカレー屋のテーブルの上に置いてあるあれだ。
対峙して構想を練る青山さん
モデルと向き合うこと1分弱、イメージが固まった青山さんが撮りはじめた。最初は立てて、その次に寝かした。アングルを変えるために自ら庭に降りる。
情熱大陸のナレーションが聴こえてきそう
無機物とはいえポージングが大事だという。
「上から撮るとかわいくなるし、下から撮るとエロくなります」
いいことを教えてもらった。
ピッチャーには水を掛け合わせてみる
ポットに水を垂らしたらとき、青山さんから「おおーっ」という声が漏れた。これは期待が持てる。
このようにして撮られたピッチャーの写真がこちら。
………ピッチャーが青山さんの写真の世界に入ってしまった。最後の写真はまるで「ふう」と一息ついているように見える。
「注ぎ口のツンとしているところがいいですね」と青山さん、「僕、ペンギンが好きなので」とのこと。
あ、ペンギンですか。僕は少年誌のグラビアを想像していたが黙っていた。
次はおじさんである
次のモチーフはおじさん。おじさんに何かを掛け合わせてかわいくして欲しい。
おじさんとして元上司の鶴久さんを召喚した
鶴久さんはおじさんのなかでもかわいいほうではないかと思っていたのだが、青山さんも撮りながら「かわいい」と言っていた。
やっぱり写真家として撮りながらそういうこと言うんですか?と聞くと
「ふだんは言わないです。でも本当に思ったときは漏れ出ますね」
とのこと。
本気だ!
「萌え袖」のポーズを撮る元上司
袖が長くて手が入っているこの状態を「萌え袖」というそうだ。
またひとついいことを知った。
10年ぐらい前、デイリーポータルZが人件費使いすぎだと会社に指摘されていっしょに対策を考えた相手がいま萌えポーズをとっている。
「………これが、あたし?」(キャプション勝手に書きました)
おじさんには梱包材を掛け合わせていました
この陰影だけでもやばいのだが、青山さんの作品はこちらだ。
今回の記事は僕も読んでいるみなさんもこれまで刺激されてこなかった部分の脳を刺激されていると思う。
最後のはダフトパンクではなく、受話器である。
急遽、部屋にあった固定電話も使ったのだ。
若い読者は固定電話に馴染みがないと思うが、こうやって使うこともできることを覚えて欲しい。
腹筋ローラー
次のモチーフは腹筋ローラーである。持ってきたもの全部を撮るのではなくて、撮れそうな物を撮ろうと話していたが、ノってきた青山さんが次々にチャレンジしている。
モノボケ状態である。
構想を練る姿の大御所感(大御所なんだけど)
「わかった!」と青山さん。絵が見えたらしい。「穴だ」
穴?
腹筋ローラーの穴から覗いている写真である。穴から覗いたようなドキッとする写真になっているに違いない。
写真はこちら
穴から見えるのは横たわるおじさんだ。
腹筋ローラー×おじさん、って二重にずれて手がかりのないことになってないだろうか。
でもドキッとしてしまったこの気持ちにどう折り合いをつけていいのかわからない。
そろばん
そろばんは女性モデルと組み合わせることにした。モデルのanjuさんに足にそろばんを挟んでもらった。
青山さんはモデルに触れない
このようにして撮られたそろばんのかわいい写真がこれ。
そろばん教室のポスターがこれだったら1万人ぐらい生徒があつまりそうである。
青山さんも「これで1冊できるかも」と満足げである。
ネコとフトモモの次が「ソロバンとフトモモ」に決まった瞬間である。
2枚目の写真をよく見るとふとももにそろばんの跡がある。そろばんは見えないが、そこにあった痕跡が見えるのだ。
ニュートリノも実物を見ることはできないので、その痕跡を測定するのだという。つまりこれがニュートリノだ(ざっくり)。
最後はACアダプター
「ACアダプターは簡単」と青山さん。
すでにイメージができているらしく、ふたりのモデルの足にコードを巻きつけていく(アシスタントが)。
巻きつける位置にこだわりがある
絵が見えたか
ACアダプターは僕のノートパソコン用の巨大なものである。ニンテンドーDS 3台分ぐらいの重さがある。
かわいさのかけらもないアダプターを敢えて持ってきた。
そのごついアダプターがこうなった。
思わず無機物に嫉妬する写真である。
嫉妬しながら思い出したが、今回の企画趣旨はこういうことであった。これでよかったのだ。
おまけ・ソラリーマン
青山さんはソラリーマンという宙に浮いているサラリーマン写真も撮っている。(
こちら)
せっかくなので鶴久さんで撮ってもらうことにした。企画の趣旨とはぜんぜん違うのだが、盛り上がったその場の流れである。
こんな抜けのいい場所に来たら飛んでみたくもなる
ちょっと原稿後半がドキドキする写真が多かったので宙に浮く元上司で落ち着きを取り戻してもらえれば幸いである。
掛け合わせマジック
企画は掛け合わせだと言われている。ありふれたもの同士の珍しい組み合わせが新鮮さを産む。ペリーがパワポを使ったり、タキシードでハイキングに行ったり。
写真も掛け合わせがあれば無機物だっておじさんだってハッとする写真になる。
僕も写真が平凡になって困ったときは積極的にふとももに挟んでいきたい。