粉末ジュースを買いすぎる
粉末ジュースを知っているだろうか。粉を水に溶かすと果物風味のジュースになるという代物である。
これをワインに入れたら即席サングリアになるか…という実験をしたい。味は5種類あるので飲み比べをするのである。
箱で買ってしまった。
今回はアマゾンで買ったが、ドン・キホーテの駄菓子コーナーを覗いてみたらふつうに売られていた(しかも小分けで)。必要以上に買いすぎた。幸せの青い鳥パターンである。
材料を見る。果汁が使われていたりは、しない
中には粉が入っていて120ccの水をそそぐだけで完成する。
久しぶりに作ってみたら色がビビッドでおどろく。
左からオレンジ、メロン、イチゴ、グレープ、パイン
派手だ。なんというか、バブル期のスキーウェアのようなカラーリングである。
色のみならず、香料が放つ香りもすごい。オレンジというか「オレンジ味」のにおいがする。もはや現実のくだものを超越したヴァーチャルな「くだもの臭」。
VRヘッドセットをつけて「すごい、本物の女子高生の部屋にいるみたいだ!」といいながら実際には女子高生の部屋なんて人生で一度も行ったことのない、みたいにリアリティが現実を超えてしまっている。
風が吹き付けるような風味の強さ(荒川土手よりお送りしております)
飲んでみると鋭さを感じるくらいストレートな甘みだ。飴やかき氷のシロップ、あるいは解けた「アイスの実」を思い起こさせる。ブドウ糖と香料、色素が生み出した魔物という感じがする。そうか、こういう飲み物だったか。
ここまで風味が強ければワインに混ぜてもやっていけるポテンシャルも十分に持っていると言えそうだ。
ワインに粉ジュースを混ぜる
さてワインと混ぜてみよう。ワインは比較的よく飲むこれを用意した。
よく飲む理由:スクリューキャップ
ワインは詳しくないので、もしかしたらこの企画ならワインはこれだろうとか、サングリアだったらあれだろうとかあるかもしれない。ただこのワインは、ぼくがワインという密林のような世界でようやく掴んだ一本の木みたいなものなので、今回はこれで自信を持って挑みたい。
まずはオレンジ×赤ワイン
まずは赤ワインとオレンジから始めよう。水で作るときと同じように、120ccきっちりと計量して混ぜる。すこし緊張しながら、理科の実験のような手つきで混ぜていく。
粉末をグラスに出して
ワインを入れて混ぜる
水面に白い粉が膜を張っているがこれ以上は混ざらなかった。
混ぜるだけなのであっというまに出来上がった。さきほどジュースの色に驚いたが、赤ワインに混ぜてしまうと目立たないようだ。これがサングリアになっていたらすごい。
香る
ワインは香りを楽しむものだという。まずは鼻で一口、グラスの中に滞留した空気を吸いこむ。
オレンジだ…
見た目は赤ワインなのにオレンジの香りがした。もともとあったワインの香りは上書きされてしまっている。見えないけどそこにいるなんてトトロみたいである。
香りは粉ジュースの勝ち、味はどうだ
香りよりも重要な問題は味である。飲んでみよう。
すこし化学的なオレンジの刺激を感じつつ、甘みはサングリア程度になっている。すこし心配していたが、なんだ、ぜんぜんおいしい。
あたたかい日差しの中ワインをテイスティング。粉入ってるけど。
さて、これはサングリアなのか? ほんもののサングリアのような奥行きのある味わいはないものの、何かと聞かれたら「サングリア」と答えざるを得ない。
ニュアンスとしてはビールとホッピーの関係に近いかもしれない。うん。ホッピーだと思えばこういう感じも納得できるし、おすすめもできそうだ。
赤ワイン×オレンジ
★★★★☆
香りに驚く。柑橘系の味とワインの組み合わせは美味しい。
おいしさで採点してみるとこうなった。以下、他の味も飲み比べていく。
赤ワインと粉ジュースの組み合わせの評価がこちら。
赤ワイン×メロン
★☆☆☆☆
メロンの風味が勝っている。メロン風味ってこんなに強いのか。
赤ワイン×イチゴ
★★★☆☆
ありではあるけど、首をひねるかんじ。
赤ワイン×グレープ
★★★★☆
スイートワインを感じる味わいになった。
赤ワイン×パイン
★★★★★
甘みとパイン味の酸味がワインとあう。
オススメはパイン
オススメはパイン、時点でオレンジ、グレープだ。
リアルパインジュースはそんなに飲まない
パインジュースだけ飲むとパインアメのようなあの味なので、赤ワインに混ぜてみてもおいしいかった。サングリアとは違うかもしれないが、爽やかな甘味が合う。そもそもパイン味が好きなのかもしれない。
グレープもいい。ぶどうからできているワインにグレープを足すとどうなるかと思ったが、味が濃くなっスイートワイン風になった(あくまで”風”)。ぶどうジュースの駄菓子然とした風味も、ワインに入れるとじゃっかんシリアスになる。
逆にメロンは香りも味も主張が強すぎてワインが負けるほどで、だめだった
白ワインの色の変わり具合
赤ワインとおなじ「バランス」というワインの白
続いて白ワインに粉ジュースを入れてみる。色が薄いのでビジュアル面で変化がありそうであるが、案の定…。
だいぶ変わった
粉ジュースの方に染められてしまった。暗闇においておいたら光りそうだ。
これで香り、見た目ともに粉ジュースに取られてしまった形だが、味はどうか。
オレンジ
★★★★★
オレンジの風味が効いて爽やかなワインになった。チューハイ?という気も。
イチゴ
★★★☆☆
イチゴの主張が強い。シロップの味。
メロン
★★☆☆☆
赤ワインのときと同様、こちらもメロンの風味は強い。なぜかリアルゴールドを思い起こさせた。
グレープ
★★★★★
ジュースのようで飲みやすい。
パイン
★★★★★
爽やかになった。もともと飲みやすい白ワインなのでチューハイのようになってしまった。おもしろい。
白ワインはチューハイのようになる
白ワインと粉ジュースの組み合わせは飲みやすく、全体的にジュースやチューハイっぽくなった。サングリアを求めて出航したはずが、チューハイという新大陸にたどり着いてしまった。とにかくワインと粉ジュースの力のバランスでいうと、粉ジュースが勝っている。
おすすめは、オレンジかグレープだろうか。
ロゼ
全体的に飲みやすかったために赤ワインより点数が高くなっているが、もともとサングリアが念頭にあったことを考えるとおもしろみに欠けるかなあという気もする。白ワインをチューハイにしてどうするのか。
と、書いたところで焼酎に粉ジュースを入れて飲むことを思いついた。しかし、このままやると泥酔してしまいそうなので、またいつかやってみよう。粉はたくさんある。
白ワインに粉ジュースを全種類混ぜたらこうなった
ちなみにあまった「白ワイン×ジュース」を全部混ぜたらミックスジュース味になるかと思ってやってみたが、なんとスポーツドリンクやエナジードリンクのような「無果汁」の味になった。互いに持ち味を打ち消し合ったようだ。知見である。
おまけ:おつまみも駄菓子の組み合わせに
ところで、おつまみも駄菓子を絡めたものにしようと思い、「モロッコヨーグル」を生ハムで巻いたものを用意してみた。
ヨーグルト風味のお菓子、モロッコヨーグル(のでかいやつ)
生ハムを広げて、モロッコヨーグルを中に入れ、巻く。
完成 生ハムヨーグル
味はどうかというと、モロッコヨーグルのケミカルっぽい甘みと生ハムの生臭い塩気がたがいに否定の弁証法を唱えていた。まずさが背骨にひびいた。
もしぼく以外にこの料理をひらめいた人がいたとしたら、同じ轍を踏まないようここに記す。
ワインに粉ジュースを混ぜるのはなかなかイケることがわかった。香りがジュースになってしまうのがおもしろい。粉ジュースさえ手に入れれば気軽にできるちょい足しだ。
「いやいや、本物のサングリアのほうがおいしいに決まってる」なんて言わないで欲しい。有用性の水準を超えた先に至高の世界が待っているかもしれないのだから。
たくさん作ってしまったので我が家の冷蔵庫にケミカルサングリアが沢山ある。サングリア宮殿だ。