特集 2017年4月1日

無人島で滞在日数を掘られる木の気持ち

体験してみました。
体験してみました。
無人島に流れ着いた人間に、その滞在日数を掘られる木があるという。
今まで見たこともない生き物に印を付けられ、共に過ごす日々はどのようなものなのだろうか。
再現してみた。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:これが本当の「ショートケーキの日」だ


少し、羨ましいのだ。

話に聞いたのだが、人間が無人島(やけに人間目線の呼び方だが便宜上こう呼ぶ)に流れ着いた時の定番の行動があるらしい。
雨水をろ過して飲み水にしてみたり、火を起こそうと試行錯誤したり、といったものだ。
その中に「滞在日数を木に掘る」というものがある。
他の行動に比べて実用性に乏しい気もするが、そうして仲間がいない心細さを紛らわせているのだろう。
健気である。

それに木としては、生活を共にするパートナーとして選ばれたのかな、という優越感も少しありそうである。
人間に協力してもらい、再現してみた。

再現1.~ 出会い ~

まず、何と言っても人間が島に流れ着いた場面が必要だろう。
ザザーーーーー、ザザーーーーーー(波の音)
ザザーーーーー、ザザーーーーーー(波の音)
気がついた。
気がついた。
目が合う。
目が合う。
気がついた人間は、ここがどこなのか知りたいらしく、島中を探索し始めた。
帰ってきて、「無人島だぁ~」と言って頭を抱えている。
帰ってきて、「無人島だぁ~」と言って頭を抱えている。
ここで筆者は違和感を感じた。
私は私で、ここで楽しく暮らしてきのだ。
新参者がやってきて急に絶望されても「そういうものだから!」と声を荒げたくなってしまう。

想像してみてほしい。
あなたはラーメン屋で、色々な苦労がありながら長い間店を切り盛りしてきた。
そこに急にイタリア人がやってきて、店中を物色した挙句「パスタないのかよ~」と頭を抱えられてもこちらの知ったことではないのだ。

だいたい「無人島」という呼び方がすごく自分勝手だ。
そんなことを言ったら「無マンモス島」だし「無サーベルタイガー島」でもあるのだ。
サンリオピューロランドへ行って「なんだよ~ 無ディズニーランドかよ~」とは言わないだろう。

そういうことだぞ!
そういうことなのか?
よく分からないが自分のいる島がひどくがっかりされてしまった。
どうしよう…
どうしよう…

再現2.~ 共に暮らす ~

5年の月日が流れた。
出会いの印象は良くなかったかもしれないが、月日が経つにつれて人間もこの島の生活を受け入れたようであった。
木の実や魚を見つけてきては上手に火を起こして焼いて食べた。
器用な生き物だと思う。
感心してしまう。
毎日楽しそうですらある。
毎日楽しそうですらある。
そして、気になっていた「滞在日数を掘る」という行動も起こしてくれた。
掘るのはちょっと怖かったのでペンで書いてもらった。
掘るのはちょっと怖かったのでペンで書いてもらった。
必死で書いていた。
必死で書いていた。
一日一本掘り、これで5日を表すらしい。
一日一本掘り、これで5日を表すらしい。
少しくすぐったかった。
少しくすぐったかった。
やはり想像していた通り、なかなかいいものである。
人間にとっては理性を保つための工夫のひとつなのかもしれないが、木からすると、人間との大事な思い出である。
常々「文通」というものをしてみたかったのだが、そういう気持ちが満たされた感じがする。
人間とのコミュニケーションである。

再現3.~ 別れ ~

それでも仲間がいない環境で暮らすのは大変らしい。
元気がなくなっていくが、私は人間ではないし人間は木ではない。
分かり合える間柄ではないのだ。
海の方を見て「助けが来た!」と言ってはしゃいでいたが、
海の方を見て「助けが来た!」と言ってはしゃいでいたが、
見間違いだったらしい。落ち込んでいる。不憫だ。
見間違いだったらしい。落ち込んでいる。不憫だ。
上の写真は助けが来なかったパターンであるが、このような人間は助けが来て急に帰ってしまう場合が多いと聞いたことがある。
印をつけてもらって距離が縮まった気がしていたが、人間は第一に故郷に帰りたがっているし、そのために木にできることは何もない。
変に仲良くなってしまうのも困りものである。

このように、印をつけられること自体はいいものであるが気苦労も多い。
同様のケースに見舞われた際は、このことを頭の隅にでも置いて、情をかけすぎないように気をつけていただくといいかもしれない。
やたらと目が合う。
やたらと目が合う。

木になればいいと思う

どうしても助けが来なくて人間がかわいそうになったら、人間が木になればいいのだと思う。
どうしたらそうなるのかは分からないが、木の暮らしは楽だし教えられることもたくさんある。
木になればいいと思う。
こういうことだ。
こういうことだ。
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