特集 2017年2月4日

鬼瓦スカートの提案

鬼onハンガー。
鬼onハンガー。
鬼で記事を、と持ちかけられ、何か工作をしようと考えた。鬼×ツクリモノ、で真っ先に思い浮かんだのが「鬼瓦」だ。我々集合住宅住まいには遠い憧憬の存在、鬼瓦。そんなアイツをあしらって、こんなファッションを考えてみた。

※この記事はとくべつ企画「鬼」の1本です。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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建築系ファッション

さらっと書いたが「鬼瓦×ファッション」って何なんだ、とお思いの諸兄に説明すると、こうだ。

鬼瓦とは、棟の端っこにまたがって周囲を睥睨し、飾りとしての他、厄を退散させる役目を持っている。

図にすると、こうだ。
パックマンじゃなくて鬼瓦。
パックマンじゃなくて鬼瓦。
鬼瓦が屋根にまたがり、裾が大きく開いて三角形の破風(はふ)が現れる。これ、スカートに見えないだろうか。

十分に説明できたと思うので、早速制作に入る。

まずは、バックル的に鬼瓦を配置するため、軽い素材でモノを作ろう。さまざまな鬼瓦のエッセンスを拾って、オレ的鬼瓦のラフを描き、推敲する。
初めて一から鬼瓦を作るのだ。人生っていろいろなことが起こるね。
初めて一から鬼瓦を作るのだ。人生っていろいろなことが起こるね。
軽い素材ということで、家にあったスタイロフォームを寄せ集めて使おう。断熱材に使われる素材だが、発泡スチロールより細かい造型がしやすい。スチロールカッターでも容易に切れる。
今回2番目くらいに楽しい作業。
今回2番目くらいに楽しい作業。
いきなりひと固まりのスタイロに一から彫刻していく能力がないので、元の絵を分解し、パーツごとに切り出す。できあがりは平面的になるが、彫刻素人でもそれなりな感じにできあがると思うのだ。
それぞれのパーツごとに、できる限りの凹凸をつけていく。
それぞれのパーツごとに、できる限りの凹凸をつけていく。
途中で組んでみる。しまった、福笑いしとけばよかった!
途中で組んでみる。しまった、福笑いしとけばよかった!
スチロールが溶けない接着剤で、組んでいく。
スチロールが溶けない接着剤で、組んでいく。
家庭用穴埋めパテでスキマを埋めていく。工事的な楽しさがある。
家庭用穴埋めパテでスキマを埋めていく。工事的な楽しさがある。
鬼瓦色って何だ!と悩みながらも、まずはリッチシルバーで彩色。
鬼瓦色って何だ!と悩みながらも、まずはリッチシルバーで彩色。
リッチシルバーでは少々輝き過ぎたので、黒+シルバーで全部塗りなおした。

やっと鬼瓦バックルができあがって大変満足だが、まだ全体の半分もできてないのだった。スカート部分は未知の領域が果てしなく広がっている。屋根瓦1枚1枚、縫い付けていくつもりだし、破風の部分も設計がまた茫漠としている。

ひとり、できあがってしまった鬼瓦が、心なしか不安そうにこちらを見ている。
いったん広告です

スカートの中の○○

全然この先どうなるかわからないので、とりあえず手持ちのスカートを元に、白い地の布に型を描いてみる。
瓦も配置して、番号をつけた。余談だが大きな布を広げると必ず犬が乗ってきて作業が滞る。
瓦も配置して、番号をつけた。余談だが大きな布を広げると必ず犬が乗ってきて作業が滞る。
上の布を切って型紙にし、瓦用の別布を切り出す。
上の布を切って型紙にし、瓦用の別布を切り出す。
18枚×前後左右の身ごろ4つ分、それに軒瓦(軒先の瓦)用パーツ26枚で98枚切り出した。うへぇ。
18枚×前後左右の身ごろ4つ分、それに軒瓦(軒先の瓦)用パーツ26枚で98枚切り出した。うへぇ。
とにかく進めるしかあるまい・・・。
とにかく進めるしかあるまい・・・。
パーツ全部の端っこを処理。どひゃぁ。
パーツ全部の端っこを処理。どひゃぁ。
人間はミトコンドリアに支配されているというが、今の私は瓦に命令されているかのように、瓦をひたすら増殖させるのであった。
地の白布にやっと縫いつける段階。
地の白布にやっと縫いつける段階。
実際の瓦屋根のように、下から重ねていくこと4身ごろ分。重ねに重ねた。試しに足を通すと、もうゴワゴワでごわす。
スカートだけで自立する勢い。
スカートだけで自立する勢い。
破風の部分はボックスプリーツのようなやり方で制作。このあたり、時間がなさすぎて写真撮ってなかった。いかに瓦たちに追い込まれたか、察していただきたい。

苦労の果てに出来上がったのがこちら、ドーン!
フリルスカートに見えなくもない。瓦フリルという新しくも古式ゆかしいジャンル。
フリルスカートに見えなくもない。瓦フリルという新しくも古式ゆかしいジャンル。
魔除けたる鬼瓦を前面に大きく配したデザインは、ふりかかる災厄を間違いなく振り払ってくれるはずだ、いろいろな意味で。
TPOに猛然と挑んでいくスタイル。
TPOに猛然と挑んでいくスタイル。
ぜひ福田平八郎氏の「雨」を想いながら見てほしい。
ぜひ福田平八郎氏の「雨」を想いながら見てほしい。
裾をはだけば、トップには金色に輝く懸魚!
裾をはだけば、トップには金色に輝く懸魚!
プリーツ内に隠れていた「懸魚(げぎょ)」とは、棟木の先を隠すために懸けられる飾り板のこと。建築の本で見て以来、懸魚を見つけては悦に入っている。「蟇股(かえるまた)」とともに、寺社などで必ず探してしまうアイテムだ。蟇股の話は、またいつか。

この懸魚を、ぜひあしらってみたかった。今回の裏テーマである。「げぎょ」って言ってみたかった。
履いてみると意外と違和感がな・・・くはないか。
履いてみると意外と違和感がな・・・くはないか。
開けばゲギョ!破風の上のゲギョ。
開けばゲギョ!破風の上のゲギョ。
特集:建築系ブランドで攻める
特集:建築系ブランドで攻める
チラ見せゲギョ!表情も鬼瓦に合わせてコーディネートして★
チラ見せゲギョ!表情も鬼瓦に合わせてコーディネートして★
ゲギョってるね~。

瓦を載せたせいでかなり重めなスカートになったが、屋根とは本来それでいいのだ。

鬼瓦スカートで、この秋冬は魔除け系・重めコーデを完成させよう。

まとめ

スキルがなくてタイトスカートのようになってしまったが、本当はもっとAラインのシルエットが望ましかった。

その前に、よく考えたらあまり節分に関係なかったかもしれない。

【告知その1】

今日明日、京都で行われる「布博」内の「ブローチ博」に乙幡の主宰する「妄想工作所」製品も出展いたしております(※本人は参りません)。
3月25日・26日には東京でも出展いたします。

布博 in 京都
http://textilefabrics.jp/
開催日時:2017年2月4日(土)、5日(日)
入場料:500円
会場:京都市勧業館みやこめっせ
京都市左京区岡崎成勝寺町9-1
東西線東山駅より徒歩8分

【告知その2】

「またつま」がまたまた開催ですよ!
日頃出品を考えている方、今度こそいかがか!

『片桐仁×乙幡啓子のまた、つまらぬものを作ってしまったvol6~渋谷交差点編~』

【開催日】2017年3月3(金)
【開演時間】open:18時30分 start:19時
【チケット代】前売り 2800円(当日要ワンオーダー) 当日 3300円(当日要ワンオーダー)
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