ひたすら煽る昭和エロ本文字
その本というのが、カストリ出版の『昭和エロ本描き文字コレクション』。
タイトル通り、昭和30年ごろのエロ雑誌『漫画Q』で記事タイトルに使われていた手描き文字ばかりを集めた本である。
こういった雰囲気の描き文字は、もともと戦後すぐぐらいから出たカストリ雑誌(芸能ゴシップや性風俗記事メインのエロ雑誌全般のこと)から始まって、昭和50年代まではあちこちの出版物で使われていたようだ。
なので、昭和40年代後半生まれの僕も、この描き文字を見たら「あっ、エロ本っぽい!」と認識する。
流通の関係でAmazonでは買えないので、出版社のサイトから直接に通販してもらった。
で、この『漫画Q』で文字を描いていたのは、橋本慎一さんという方。
昭和4年生まれで87歳。現役の手描き文字職人とのこと。
この橋本慎一さんの描く文字が面白い面白い。
テキスト自体、「情事を愛するからアイ・ジョージ」とか「最新流行・ズビズビ夫婦のお遊び集」といった感じの下世話パワーワードだけで構成されているので、読んでいて飽きることがない。
が、それが活きてくるのも、やはり描き文字の腕力あってこそなのだ。
「愛と憎しみ」という文字の、ガチに愛と憎しみ溢れてる感。
橋本さんの描く文字は、“整ったバランス”とか“クリアなデザイン”とか、そういう美しさはまったく無くて、ただひたすら腕力でガチャガチャ言わせてる感じ。
とにかくワーッて騒がしくして、煽ったら煽っただけ勝ち、みたいな価値観の文字なのだ。で、それが下世話なワードと組み合わさることによってうまく機能しているんじゃないか。
そういや、WEB記事のタイトルもとにかく煽った方がいいって聞くし、昭和エロ本描き文字で2017年の記事タイトルを描くってどうだろう。
やってみよう、WEB記事描き文字メソッド
ということで、まずは2chまとめサイトから引っ張ってきたタイトルを、それっぽく描いてみた。
なんとなく興味は惹かれれる気がする。
特に意味もなく、まとめサイトの一覧から目についた記事を取り上げてみたのだが、描いているうちにどんどん気になって、記事を読みに行ってしまった。
(悲報と言うほどデカくなかった)
というか、たぶん普通にしていたらタイトルだけ見て「ふーん」で済ますぐらいの記事だと思うんだけど、それでも読みに行ってしまう辺り、それなりに煽れているのかも。
気がついたら受験生みたいな格好で3時間ぐらいひたすら文字描いてた。
ちなみに描き方は、本の中から「わー、これいい味が出てるなー」という描き文字を見つけたら、ひたすらそれっぽい雰囲気が出るように描く、というだけ。
漢字のこのハライの部分はこうなるのか、とか、ひらがなの先端は全部尖らせる、とか、そういうポイントを探して自分の文字に落とし込む作業は、穴埋めパズルのようで面白い。
クックパッドの記事から。
さっき「記事タイトルは目についたやつから選んだ」と書いたが、実はもうちょっとポイントがあって、なんとなく「描いたらエロそうな雰囲気が出そうな記事」を恣意的に選んでいる。
上のやつは、「めんつゆ」と「ちゃんこ」がエロくなりそうだったから選んだ。
あと、あまり下揃えできちっと揃えると描き文字感が出ないので、ちょっと踊らせてみた。
うん、ちょっとずつ雰囲気が出てきた気もする。
こちらもクックパッドから。「ビニール」と「ひとくち」がエロそうで選んだ。
これはだいぶ雰囲気が出たと思う。
もうクックパッドは完全にエロ本化できる。「海老とブロッコリーのコク旨炒め」とか「残ったご飯で白玉だんご風」でも、いくらでもエロ本に変えてやるぜ。
あと、実はひとつ、描いている途中で気がついた大きな昭和エロ文字ポイントがあった。
上の直線揃えはエロくない。下のように文字の並びがうねったり歪んだりしてるのがエロい。
途中までは補助線を引いて文字列が傾かないようにしていたのだが、ふと補助線無しで描いてみたら途端にエロ本っぽさがアップしたのである。
つまり文字がガタガタと踊ってる上に並びが傾いているのこそが、エロ本っぽさなのだ。
ヤフーニュースから。日馬富士の欠場もエロ本風になる。
ここまで来るともうだいたいなんでもエロ本になることは分かった。
この記事を読みに行っても絶対日馬富士の写真しか載ってないのは分かっているけど、それでも何か期待してリンクを踏んでしまいそうだ。
まだ漢字かな混じり文章しか試してないが、いずれ数字もエロ本風に描けるようになったら、日経平均株価とかもエロ本風に描いてみたい。
意外とエロ本風にならないのが「短い単語」である。
ある程度文章の長さがないと、歪みやうねりが出せず、エロ本っぽさが出ない…ということなのかもしれない。
映画のタイトルで言うと、できれば「難波金融伝ミナミの帝王 トイチの身代金」ぐらいあると頼もしい。
ミナミの帝王シリーズはエロ本文字に向く、という気付きである。
この冬のあの話題作は、短すぎてあまりエロ本っぽくならなかった。