田舎寿司が集まる日曜市
高知に行くにあたって田舎寿司情報を集めた。
田舎寿司はお店で出すものではなく道の駅やスーパーでお惣菜として売られているそうだ。作る家によって味が違うらしい。B級グルメではなく、まっとうな郷土料理である。
そして田舎寿司がたくさん集まるのが高知市の中心地で毎週日曜日に開催されている日曜市だということもわかった。
日曜市。こんな感じの出店が1.3キロ続く
タイやベトナムの市のようである(ベトナム行ったことないけど)。
アジア人が市を作ると自然とこうなるのだろうか。
どの店も自分ちで作った農作物や食料品を並べている。道の駅で作った人の名前が書いてあるみかんやお惣菜が大好きなのだが、あれが1.3キロだ。日本一うれしい1.3キロである。
「とってもおいしいですよ」わかります!
絵本みたいに立派なカブ
生姜ひと山100円
壁紙にしたいまんじゅう
食べなくてもわかる、これぜったいうまいやつだ。
鳥も嬉しい
干物やちくわなどもあったがほとんどが山で採れたものだった。高知は海じゃなくて山なのかもしれない。
こんどはAirbnbでキッチン付きの家を借りてここで買ったものでごはんを作ろう。
あげたての芋を売ってる店があった
のどに詰まったのかと思ったら「う、うまい!」とのこと。(ものすごくうまかった)
ほかにもJRの忘れ物や骨董品、はちみつ、タヌキのあぶらなども売っていた。タヌキの油は買った。擦り傷に塗るといいらしいので次にすっ転ぶのが楽しみだ。
すっかり日曜市が楽しくてずっと書いてしまいそうになるが、もちろん田舎寿司も6軒ぐらいで売られていた。全部買った。
この日曜市で売っているものを見れば自然な寿司である。これだけ山の幸が充実していれば寿司はこうなるだろう。こんにゃくの寿司が貧乏くさいというのは偏った視点であった。
ではさっそくたんまり買った田舎寿司を食べたいと思う。そこらの公園で!
でもその前に日曜市の写真を2枚だけ。
こういう「いって有る」とか「よく咲く」ってマジックで書いてあるのがたまらない。文章で書いてあるのがいい。よく咲くんだろうなと疑いもなく思うのはなぜだろう。
田舎寿司のうまさ解説
この時点で買った田舎寿司は6パック(このあとに3パック買った)。
ネタはパックによって違うが、タケノコ、りゅうきゅう、しいたけ、こんにゃく、みょうが、ユズ、ゴボウ、ニンジンなどだった。
リュウキュウはフキのようなもので、後から調べたらハスイモという芋の茎だそうだ。
日差しが強すぎて色が飛び気味
12月だというのに高知は日差しが強すぎる。日陰は寒いが、日が当たっているところでは汗ばむぐらいである。実際にベンチで寝ながらスマホで映画を見ている若者がいた。
青森だったら死んでるぞ。
ダウン要らなかった。
ひとパックずつレビューすると膨大になるので田舎寿司9パックを食べて分かったことを書く。
1.シャリがうまい
酢飯ではあるがゆず酢である。ゆず酢とは酢とはいうものの、要はゆずを絞った果汁だ。だから酢を強くしてもむせることもなく、どんどんうまくなる。
地元のタクシーの運転手が「ゆず酢はハマる」と言っていたが、実際ゆず酢が強い田舎寿司がかなり好みだった。
そこに刻んだニンジンやユズが入っている
しかも、おいなりさんのシャリにはユズがはいってなかったりして、ネタごとにシャリを変えている家もあった。あらまーなんて丁寧な。
それでいてこのパックが150円だったりするのだ
150円!高知に生まれてこの寿司を土曜日の昼に食べたかった!王様のブランチ見ながら。
2.ネタ頼みではない
このうまいシャリの上に丁寧に加工されたネタがのっている。
シャリと柔らかさが同じになるように煮込んだタケノコ、無限にうまい汁が出てくるシイタケ、ドーパミン出るぐらいシャリシャリしてるミョウガ。
どれもシャリにぴったりだ。
柔らかいタケノコのなかにユズの効いたシャリ。軽くヘブン。
ふつうの海鮮寿司だとネタが目立ちすぎてシャリは脇役っぽいところがある。田舎寿司はネタとシャリが一体となってうまさスパイラルを起こしている。
パワーポイントで表現するとこのような差である
四番の外国人打者に頼りっきりの打線ではなく、まさに全員野球だ。醤油をかけなくてもいいことからそのバランスの良さがわかると思う。
思わず母方の祖父に似てしまううまさ
3.上品でやさしい味
まわりにいる高知出身者がみな大酒飲みで自由人ばかりなので、きっと高知の人は荒くれ者なんだろうという偏見を持っていた。
だけど田舎寿司はどれもやさしい味なのだ。ゆずがきいて上品である。
太巻きのなかのごぼうがもうホロッホロに炊いてあるわけですよ
このしいたけ寿司のアダムスキー型のようなかわいらしさ
ゴマが飾りじゃなくてちゃんと一味加えているところも偉い。ゴマ、いいぞ!
近所のたいやき屋が中身のあんこの区別をつけるためにゴマを入れていたが、そのたいやき屋に教えてあげたい。
圧巻だったのがこのユズの寿司
これは道の駅で買ったのだが、これがもうトロだった。
ユズの皮を煮込んでマーマレード一歩手前ぐらいの柔らかさになっているのだ。ユズのトロだ。
ちなみに道の駅で買った田舎寿司はラストひとつで、あとから来たお客さんが「あ、田舎寿司がない!」と言っていたのでたぶん地元ではiPhone用のヘッドホンぐらいの人気アイテムなのだと思う。
ユズのうまさで祖父からもどった(食べきれないのでホテルに持って帰ってきて食べている)
ついでに蒸し寿司
田舎寿司が上品だという話のついでに高知のもうひとつやさしい寿司を紹介したい。蒸し寿司だ。寿司を蒸してある。
一見、ちらし寿司のようだが温かい
下はすのこになっていて蒸せるようになっている。そしてごはんには甘辛いタレがしみている
もうこれが最高にやさしい味なのだ。高知の人は酒を飲むので食事は胃に負担の少ない優しいものになっているのかもしれない(旅先で勝手な解釈をするのって楽しいですよね)。
酒飲みを甘やかすいい町だ。
寿司屋の帰りに入った居酒屋のメニューもやさしい味だった。
イカ団子というのがふわっふわだった(居酒屋 大吉というお店にて)
のりもの編
お忘れかもしれないが、本稿は2017年正月特集「寿司と乗り物」である。田舎寿司だけではなく高知の乗り物も堪能してきた。
ごめんと言ってる路面電車である
とさでん交通の路面電車、後免町行の電車に「ごめん」と書いてあるのは子供向けの『鉄道おもしろ百科』的な本の3番目ぐらいに書いてあるネタだが、実際に「ごめん」と書いた電車が近づいてくるのは予想以上に面白かった。
後免町には謝っているような店が多くてそれもまた味わい深い。
auショップごめん
ごめん食堂
眼科もごめん
誰かに謝りたいときはこの写真を送ろう(左手に持ってるのは大量の田舎寿司)
ごめんがおかしいという小ネタだけではない。まだ路面電車のとっておきのネタがあるのだ。
日本一短い駅間
とさでん交通の一条橋駅と清和学園前駅のあいだは84mしかないのだ。日本一短い駅間である。そこにも行ってみよう。
もちろん寿司を食べながら
寿司食べながら移動しまーす、みたいな写真を撮るために出したこの鯖の寿司がうっかり人生で最高の鯖寿司だった。
ほっとくとまた寿司の話になってしまうのだが(この鯖の〆め具合が絶妙なのだ)、その日本一短い駅間に着いた。これまた予想を上回る短さである。
超広角のレンズを使ったわけではないのに1枚の写真に収まっちゃったよ。
電車が通過する様子は大興奮の動画でどうぞ
短さを伝えるためになんども乗ったり降りたりしたんだなということが伝われば幸いである。
ちなみに16両編成の東海道新幹線が約400mなので、この駅間の約5倍である。渋谷駅の横を通る246号の幅は約45m。あ、うっかり短い例を出してしまった。
カツオも食べてる
ここまでいっさいカツオに触れてなかったがしっかりかつおのたたきも食べている(よく1泊2日の取材でここまでいろんなものを食べたと思う)。
東京にいても週に2回ぐらいカツオを食べるぐらい好きです
こちらはタクシーの運転手おすすめのウツボのたたき
またこのウツボのたたきがゼラチンの塊のようなソフトな味なのだ。地元の辛い酒にあう(食通みたいなこと書いて恥ずかしいぞ!)
カツオとウツボを食べたのはひろめ市場という観光市場である。
うっかりゴミ箱を中心にしてしまったが、中心はフードコートになっている。
こういうところって観光客相手の客引きが激しかったりするのだが、高知は一切なかった。そのかわり(?)地元の人もたくさんフードコートで飲んでいるのだ。
ホテルでもらった観光案内に「たまたま隣になった人と会話が弾むかも!」と書いてあった。
確かに僕の隣にいたおじさんが話しかけてきてくれたのだが、酔っぱらってなに言ってるのかわからなかったのが最高だった。よく聞いたら「ゴミは置いておいても平気だよ」と親切だったのも最高だ。
土佐弁のコピーで競い合うビール2社
キリンが「たっすいがはいかん(薄いのはいかん)」という土佐弁のコピーで売上を伸ばしたという話は聞いていたが、アサヒも土佐弁のコピーになっていた。
高知に行かないと食べられないぜいたく
田舎寿司に対しての貧乏くさいというイメージは180度変わった。豊かでぜいたくな食べ物である。
地元で採れたものを地元の人が手の込んだ調理をして、その人から買える。いやはやこれはとんでもなくぜいたくなものですぞ。
いつのまにか美味しんぼの京極はんになってしまったが、田舎寿司はうまい。また行く。