とくべつ企画:寿司と乗り物 2017年1月3日

タイでお寿司屋さんと「屋台」の寿司を食べ比べる

いろいろ違いすぎ!
いろいろ違いすぎ!
タイに行く機会があった。

寿司好きとしてはタイの寿司がどのようなものかチェックせねば、とお寿司屋さんを調べていたところ、なんと屋台でも寿司が並ぶという。

屋台で寿司…危険じゃないのか? でもすごく気になる。

というわけで、普通の寿司屋で出される寿司と屋台の寿司、ついでにスーパーで売られている寿司を食べ比べることにした。

これがもう、全く違って驚きましたよ。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

前の記事:水曜どうでしょう藤村D VS デイリーポータルZ ~説教まみれの2時間半~

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タイ第二の都市チェンマイ

訪れたのは、タイ北部にある都市チェンマイ。ホテルを除き、高いビルはほぼ無いが、スタバやセブンイレブンやATMがあちこちにあり、初めて海外に来る人でも快適に過ごせるようなまちである。
メインストリート。ここから少し離れると古い寺院が立ち並ぶエリアがあり、観光も楽しめる。
メインストリート。ここから少し離れると古い寺院が立ち並ぶエリアがあり、観光も楽しめる。
なんといっても物価が安いのがうれしい。日本の約1/3~1/5くらいの感覚だろうか。それならお寿司も思う存分に食べられる、と思うとつい顔が緩んでしまう。

目の前で握ってくれる「スシウマイ」

さて、まずは普通のお寿司屋さんにやってきた。

その名も「SUSHI UMAI」というお店。外にもテーブルが並ぶほどの繁盛ぷり。外国人観光客が多めだった。
良い名前だなあ
良い名前だなあ
待っているあいだにメニューをみると、寿司の他にうどんや蕎麦、お好み焼き、かつ丼など日本食が並んでいた。チェンマイで暮らすことになったら週に一度は来てしまいそうなラインナップだ。

店内にはいくつかテーブルが並び、奥に6人分のカウンター。私は運よく大将の前に座ることができた。
待っている間、フォアグラの巻きものや天ぷらが乗っているカレーなど見慣れないメニューを見つけてはニヤつく。
待っている間、フォアグラの巻きものや天ぷらが乗っているカレーなど見慣れないメニューを見つけてはニヤつく。
やはり日本食は高級なものとして扱われているようで、日本の寿司居酒屋と同じくらいの価格設定がされていた。しかしそもそもの仕入れ値を考えると仕方ないのかもしれない。
握り方を厳しくチェックする。寿司ポリスだ。
握り方を厳しくチェックする。寿司ポリスだ。

胸が熱くなる

若い大将が目の前で寿司を握ってくれた。右腕全体にタトゥーが入っており最初ギョッとしてしまったが、日本の寿司職人ときっちり同じ握り方である。魚をさばく姿やナプキンをつかって清潔に保つしぐさ。安心して見ていられる。

その姿を見ていたら、、急に感動して熱いものがこみあげてきてしまった。
手際よく握っていく大将。お見事!
手際よく握っていく大将。お見事!
ついさっきまで「カレー天ぷら」に薄笑いを浮かべていたのに、大将の鮮やかな握りにガツンときた。

外国人が握る所を私は初めて見るのだが、どこかでなめていた部分があるのだろう。緩慢な動きで、適当にギュッと押して切り身を乗せるだけかもしれない、と。しかしどうだ、シャリを優しく取り上げ、手早くネタをのせ握っている。彼は立派な寿司の伝道者の一人なのだ。

真剣に握る大将に心の中で謝罪した。
やってきた寿司セット(約2100円)。イヤッホウ!
やってきた寿司セット(約2100円)。イヤッホウ!
そんな大将が握る寿司がまずいわけもなく、たいへん美味しかった。あぶりを入れたサーモンは脂トロトロで海老もプリプリ。あなごに合わせたキュウリがまた嬉しいし、ワサビもピリリときいて大満足である。
うんまい!
うんまい!
ちょっと手の空いたスキに、大将にタイ語で美味しい! と伝えるととても喜んでくれた。

大将は日本には行ったことがないらしいが、おじさんがイギリスとアメリカに寿司レストランを持っていて、そこで修行をしたのち、10年ほどここで握っているという。
イカ(約200円)、フォアグラ(約480円)、エンガワ(約400円)。イカの上に乗ったのはショウガではなく柚子胡椒。これが品がありすごく合う
イカ(約200円)、フォアグラ(約480円)、エンガワ(約400円)。イカの上に乗ったのはショウガではなく柚子胡椒。これが品がありすごく合う
スパイシーサーモンロール(約780円)。寿司なのになぜかスパイシー。
スパイシーサーモンロール(約780円)。寿司なのになぜかスパイシー。
物価を考えるとやはりお値段ははるなあ、という印象だけど、異国の地で、寿司を愛する大将が握るお寿司を食べられることの幸せといったらない。

タイの寿司屋は「かける」作業が多い

やたら多いボトル。
やたら多いボトル。
ボトルが赤いとケチャップに見えるけど、甘ダレでした。
ボトルが赤いとケチャップに見えるけど、甘ダレでした。
日本と違った点として、マヨネーズやスパイシータレなど、寿司の上にかけたり、混ぜたりといった作業が多かったのが面白い。(そういえばサーモンにはマヨネーズがチョコンと乗っていた)その作業が多いためかより忙しそうであった。

さて、続いては屋台の寿司である。もう、丸っきり違う代物だった。
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ナイトバザールで寿司探し

チェンマイでは毎夜のようにナイトバザールというものが開かれている。衣類や雑貨などの土産ものや、その場で調理された食べ物など数えきれないほどの店が並んでいて、とても賑やかだ。

この日はちょうどサタデーナイトバザールという飲食店が多く出るバザールがやっていたのでそこへ向かった。
ノロノロとしか進めないほど賑やか。
ノロノロとしか進めないほど賑やか。
サタデーナイトバザールはけっこう広い区間で開かれていたのだけど、雑貨店と飲食店がしっかり分けられていて、割と簡単に寿司屋を見つけることができた。

22時をまわっていたからか、お寿司の数はちょっと寂しい感じだったが仕方ない。
やった、見つけました!
やった、見つけました!
これが屋台の寿司。ああ・・・生ものが無い! なるほどそういうことか。
これが屋台の寿司。ああ・・・生ものが無い! なるほどそういうことか。

屋台寿司のメインはカニカマととびっこ

実は来るまで、屋台の寿司でお腹が痛くなったらどうしよう、と恐れていた。一つは衛生面であるが、ちゃんと蓋をしてあるところに入れられていたのでだいぶ安心。

そして意外と涼しい気候とはいえ、外で生ものを扱うことに心配していた。しかし見てみたらその点も理解できた。生魚はほとんど使われていないのだ。
小さいトングと入れ物を渡され、自分でとっていく。楽しい!
小さいトングと入れ物を渡され、自分でとっていく。楽しい!
これは寿司だ! と自信をもって言えるのはボイルされたタコくらいで、あとはカニカマととびっことキュウリが、マヨネーズであえられたりチーズをのせたりして色んな形で使われている。ほか茎ワカメ、アボカド、貝ひもなどが使われていた。
はしゃいでたら店長がオマケしてくれた。優しい
はしゃいでたら店長がオマケしてくれた。優しい

価格はなんと1つ5バーツ!(約15円)

しかもなんと衝撃的な安さであった。1つ15円! 15円だ。確かにちゃんと握ってもないけど、世界にはこんな安い寿司もあるのだという事実に仰天である。
無くなってきたので補充する店主。製氷機みたいなので一気にシャリをかためる。
無くなってきたので補充する店主。製氷機みたいなので一気にシャリをかためる。
発泡スチロールからネタの入ったパックを取り出し、のせていく。これなら素人でもできるね。
発泡スチロールからネタの入ったパックを取り出し、のせていく。これなら素人でもできるね。

ガーン…酢飯じゃない!

安さで仰天していた私だが、口に入れた直後に脳天に稲妻がかけおりた。なんてこった、シャリが酢飯じゃないのだ!

日本人として、これを寿司と言っていいのだろうか…?! 私の中で眠っていた寿司ポリスが目を覚ました。
え、酢飯じゃない…と一瞬止まってしまった。
え、酢飯じゃない…と一瞬止まってしまった。

「口の中が可愛い」

まあいいか。と寿司ポリスはまたまぶたを閉じ寝始めた。

一瞬止まったあとの次の感想が「口の中が可愛い」だったからである。二まわりほど小さい寿司がコロコロと口の中で転げる感じがとてもかわいいのだ。それに、多用されているマヨネーズの酸味がちょうどいい寿司もある。いつもの寿司とちがってこれはこれで面白い。
これは可愛い!
これは可愛い!
写真だと分かりにくいけど全体的に二回りくらい小さい(追加で作ってくれた海老とサーモン。ちゃんと寿司ぽいのがあってよかった)
写真だと分かりにくいけど全体的に二回りくらい小さい(追加で作ってくれた海老とサーモン。ちゃんと寿司ぽいのがあってよかった)
大胆に使われたとびっこにマヨネーズとチーズをのせたもの。もはやツマミだな。
大胆に使われたとびっこにマヨネーズとチーズをのせたもの。もはやツマミだな。

タイの屋台寿司はツマミ

私が屋台寿司を可愛い可愛いと連呼していると、店主は「小さーい。だから安ーい」と笑って教えてくれた。

そうだったのか。寿司は味やサイズを変えながら世界に自由に羽ばたいているのである。物足りなさはあるけれど、ツマミだと思えば美味しくいただける。

結局9つ食べて、約135円。信じられない価格である。

さて、最後はスーパーの寿司。果たして値段はいかほどなのか? そしてシャリには酢が入っているのか?
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パッケージタイプと選ぶタイプ

翌日、少し大きめのスーパーへ向かった。さすがにコンビニや小さめのスーパーでは寿司は扱ってなかったのだ。

そこにはきちんと寿司コーナーが設けられていた。しかも二か所に。
パッケージタイプ。ひとつだいたい200バーツ(約600円)と高め。日本とそんなに変わらないかも?
パッケージタイプ。ひとつだいたい200バーツ(約600円)と高め。日本とそんなに変わらないかも?
もうひとつは自分でネタが選べる形式。ケースの右半分はネタだけが並んでいるのだが、カニカマが圧倒的に多かった。好きだなあ
もうひとつは自分でネタが選べる形式。ケースの右半分はネタだけが並んでいるのだが、カニカマが圧倒的に多かった。好きだなあ
だいたい1個30~40バーツ。最後だからと全部1個ずつ購入。
だいたい1個30~40バーツ。最後だからと全部1個ずつ購入。
ケースをのぞくと、屋台と似たようなラインナップだった。外で売っているから生魚が少ないのではなく、それが基本なのかもしれない。

お値段は屋台と比べて6倍もアップしてしまった。そのかわり大きさは日本と似たようなサイズだし、玉子やホッキガイなんかがあった。

食べるスペースがないので外で開けた。
おまけにカニカマを二本もつけてくれた。
おまけにカニカマを二本もつけてくれた。
基本的には今日もカニカマととびっこ尽くし、という感じで昨日ほどの感動は無くなっていた。あえて言うなら、小さいビニールにくるまれている醤油とワサビが変わってるな、くらいだ。

酢飯か否か

残るはご飯に酢が混ざっているかどうかが問題だ。

昨日は見た目の可愛さと安さに寿司ポリスも目をつむったけど、今日はそうはいかない。はっきり言って寿司はネタよりもシャリの方が肝心である。ネタだけなら刺し身でいい。

酢よ、どうかどうか、入っていてくれ…!
酢、入ってませんでした。
酢、入ってませんでした。
願いはむなしく打ち砕かれた。どうしたんだ一体。タイにはトムヤンクンスープという素晴らしい酸っぱ料理があるというのに、酢飯は苦手な人が多いのだろうか?

言葉が分からないし国際問題に発展しかねないので今日は引き下がるが、寿司ポリスは悲しい。チェンマイはとてもとても良い所だったけど、それだけが心残りだった。

最後に、チェンマイで見つけた小ネタを。

タイには寿司の写真が載ってるスナックがある

海苔味と書かれた袋。海苔=寿司なのだろうか。
海苔味と書かれた袋。海苔=寿司なのだろうか。
鉄火巻きかと思ったらカニカマバージョン。
鉄火巻きかと思ったらカニカマバージョン。

タイの寿司は、カニカマととびっこに頼りすぎ

という訳で、今回の潜入調査では、タイの寿司はカニカマととびっこに占領されてしまっていることが判明した(寿司屋のぞく)。さらに酢飯ではなく冷たいごはんにネタを乗っけるのだ。

いや、別に私は構わない。重要なのは、どんな形であれ寿司が世界中に愛され、広まっているという事実。その喜びを大いに噛みしめようじゃないか。
寿司ポリスは世界の平和な寿司を願ってます。
寿司ポリスは世界の平和な寿司を願ってます。
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