特集 2016年12月12日

恥ずかしながら金目鯛のうまさを知りませんでした

伊豆稲取にて
伊豆稲取にて
これまでの人生損してた。 金目鯛はものすごくうまいということを、やっと最近知ったのだ。どうか笑ってやってほしい。

もうこれ以上、ぼくのように「金目鯛のうまさを知らずに大人になってしまう」不幸な人間を作り出すべきではない。社会全体の利益のために金目鯛のうまさについてここに書き残しておきたい。
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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2016年夏ぼくは金目鯛を知った

話は今年の夏にさかのぼる。この時のぼくは、仕事が増えてきていたし、さらに仕事がもっともっと増えそうな予兆もあった。フリーランス的には好況といえるのだろうが、意外と不安感の方が先に立つ。ちゃんとやれるのだろうか。一人でやっているので相談する人もいない。

真夜中にインターネットで「仕事 がんばる 方法」と検索する。すると表示されるのは、内容が完全に「無」の記事だ。この場合は検索ワードの方も「無」なのでしょうがないとも言えるが、ゾッとする。

でも何かちょっとでもトクなことが書いてあるかもしれないしなぁ……と思いながら、読むこと一時間。結論にたどり着いた。

そうだ、海を見に行こう。
海はネットの検索結果より良い
海はネットの検索結果より良い
そこで向かったのが静岡県の伊豆半島である。家から遠いところで、永遠に続く無意味な潮の満ち引きを見ていたら「仕事 がんばる 方法」についてはなぜか解決できた。(なんでだ?)
下田の駅前の回転寿司
下田の駅前の回転寿司
さて、その時にたまたま行ったのが下田の駅前の回転寿司屋だ。海の近くだからこんな回転寿司でも意外とおいしいんじゃないのかな、と思って行ったのだが
う…うまい
う…うまい
ものすごくうまい
ものすごくうまい


どれ食べてもうまい。中でも強烈なうまさだったのが金目鯛。サクッとしていて、脂がのっていて、後味にはキレがある。

そこで気が付いた。よく考えたら今までの人生で金目鯛を食べたことがない。この魚、こんなにうまかったんかい!!!

思うに、ぼくが金目鯛のうまさを知らなかったのは、インターネットのせいだ。「うまい 魚 どれ」と検索しても多分金目鯛情報はそうそう出てこないし、SNSでも「金目鯛が一番おいしい」と主張している人はいない。
伊東で食べた地魚握り一人前。全部うまいが金目がやはりとびぬけてうまい
伊東で食べた地魚握り一人前。全部うまいが金目がやはりとびぬけてうまい
伊東で食べたバラちらし。期待していなかったのだが金目鯛が入っていて狂喜した
伊東で食べたバラちらし。期待していなかったのだが金目鯛が入っていて狂喜した
伊豆に宿泊したのだが、もう頭の中は金目鯛のことでいっぱいである。財布に悲鳴を吐かせながら金目鯛を食べた。金目鯛が高級食材ということもあまりよく知っていなかった。この時あまり写真を撮っていないのが悔やまれるが、取材のつもりではなかったので仕方がない。

東京でも金目鯛が忘れられない

これは都内の立ち食い寿司屋
これは都内の立ち食い寿司屋
旅行から帰ってきても思い出すのは金目鯛のことばかりだ。都内の寿司屋に入って金目鯛を注文してしまう。ところが伊豆に食べたものにくらべると、身がフニャフニャしていて、そんなでもない。値段も伊豆よりもずっと高い。これだったらサーモン食べたほうがうまいかな……と思ってしまう。

ここでようやくぼくは理解した。やっぱり金目鯛は伊豆に行かなくちゃダメなんだ!

2016年秋ぼくはまた金目鯛に会いに来た

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あの伊豆での感動から数か月。取材で伊豆に来たついでに(「 “理想郷”が伊豆半島に存在した 」)稲取に来た。いや、どっちがどっちのついでかは何とも言えない。

稲取は伊豆の中でも金目鯛が有名なところだ。ここで採れた金目鯛は「稲取キンメ」というブランドにもなっている。
こぢんまりとしたお寿司屋さん
こぢんまりとしたお寿司屋さん
まず行ってみたのは「魚八」というお店。金目鯛の握り一人前を注文する。
サービス?で伊勢海老出てきた
サービス?で伊勢海老出てきた
ところが最初に出てきたのは伊勢海老だった。なんでも「今サービスでお寿司につける味噌汁に伊勢海老のアラを入れている。なのでまず先に伊勢海老のお造りを食べてほしい」とのこと。

えっ。稲取では、伊勢海老をそんな喫茶店のコーヒーについてくる豆かなんかみたいに扱っているんですか……?

今回は金目鯛を食べに来たのだが、不意打ちの伊勢海老も当然うまい。フワっとした食感とクニュっとした食感がが一点の矛盾もなく合わさっている。
あぶった金目鯛の寿司8カン
あぶった金目鯛の寿司8カン
そして待ってました、金目鯛の寿司一人前。食べてみると、ネタがロングコートのようにヒラヒラと長くて、1カンごとに100%の満足感が押し寄せてくる。それが8回連続で、だ。あぶった方が金目鯛はおいしくなるというのも発見だ。こちらの方が刺身よりも味がよくわかる。
すげえアラ汁……
すげえアラ汁……
そして予告されていた味噌汁。伊勢海老と金目鯛のアラが入ったアラ汁だった。うまさの要素が多すぎて、完全に認識できる許容量を超えている。もはや何がどううまいのかよくわからない。すまん!

以上のメニューに瓶ビール1本をつけて、お会計が4,600円だった。自分のメモにはそう書いてある。しかし、これは安すぎてメモの間違いではなかったのではないか、という気がする。どうなっているんだろう……わからない……。

金目鯛のしゃぶしゃぶ

稲取は漁港以外には本当に何もない街
稲取は漁港以外には本当に何もない街
次の日も金目鯛を食べに行った。行ったお店は「網元料理徳造丸」。
金目鯛のしゃぶしゃぶ
金目鯛のしゃぶしゃぶ
ここは金目鯛をありとあらゆる調理法で料理してくれるお店だ。刺身や煮煮つけだけではなく、しゃぶしゃぶ、みそ焼き、みりん粕漬け焼き、西京焼き、てんぷら、フライ、燻製、なめろう、など、いろいろある。

その中で注文したのが、しゃぶしゃぶである。昨日あぶった金目鯛を食べて「金目鯛は半生の方がうまいのでは」と気づいた。
このピンク色を目に焼き付ける
このピンク色を目に焼き付ける
しゃぶしゃぶする前にもう一度よく鑑賞したい。きれいだな……金目鯛……。
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食べてみると「温かい刺身」という感じ。しかし、温かい刺身がこんなにうまいとはみんな知らないだろう(いや、こういう調理法があるということは、みんなひょっとしたら知っているのか?)。ほわっと口全体に味が広がってゆく。うううううまい。

一度味がわかると、しゃぶしゃぶをしている時間も幸せである。

昔、何かのまんがで拷問の方法を読んだことがある。それによると、対象に苦痛を与える前にゆっくりとカウントダウンをするそうだ。すると拷問の痛みに加えて、カウントダウンの間も苦痛を感じるようになるという。

例えがひどくて恐縮だが、金目鯛を湯にくぐらせている時間は、そのカウントダウンの幸せな方向のパターンだと思ってほしい。
金目鯛の煮付け
金目鯛の煮付け
金目鯛の煮付けを食べたことがなかった。この金目鯛、非常に分厚い切り方をされている。味付けはドンと濃い目なんだけど、魚自体の味とガッツリあっていてすごい。完全に火が通った金目鯛もうまい。
金目鯛のなめろう
金目鯛のなめろう
興味本位で金目鯛のなめろうも注文。なめろうといったらアジで作るものだとばかり思っていた。あっさりとした味付けになっていて、金目鯛にはこういう一面があったのか! と驚くことしきりである。

……ただ、これはふつうに刺身の方がうまいかも。 絶対に金目鯛の全てを知りたい! という真の金目鯛ファンにおすすめ。CDアルバムだけに入っていて、カラオケで歌うと嫌われる曲ってあるだろう。ああいう感じがする。

仕事を絶対がんばるぞ

金目鯛は高い。伊豆まで行くと割安にはなるけれど、やっぱり高級な食べ物だ。今回も散財したな~という気持ちが立ってくる。

だけども、また思い立った時に金目鯛を食べに行きたい。そのために仕事もがんばりたい。

記事の前半で書いたように今、本当に忙しくなってきたので、逆にもう薄っぺらいポジティブな言葉しか出てこなくなってくる。だけどこれが本音だ。
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