魂を抜かれたチキンに光を
かくいう私もふだんサラダチキンをそのままパクパク食べている。おいしいのだが、どこか「栄養」を摂っている気になってしまう。
加工前の状態の「鶏ムネ肉」として肉売り場に並んでいたら、ソテーやナゲットなど華やかに彩られた料理になるという運命もあったかもしれないだろう。
パッケージに「サラダやおつまみに」と書かれていて、なんというか、肉に本来あった威厳みたいなものは剥奪されている。
やはりきちんと調理してもう一花咲かせたいという思いがある。よくてバンバンジー、なんてはもう飽き飽きだろう。
今回ばかりはダイエットにぴったりと言われがちなサラダチキンも、高カロリーも辞さない覚悟で行ってもらいたい。
ソテーしてみる
既に火が通っているサラダチキンだが、まずはソテーにしてみたい。それもバターたっぷりで。
先日、ふだんは油をきっちり絞って食べていたツナ缶を油をたっぷりなまま食べてみたところ格段に美味しかった。同じようにサラダチキンも油を与えてやったら喜ぶだろう。
コショウをたっぷりふりかける
バターは20gで丸ごと焼く。セクシーだ。
ニンニク醤油をかける
サラダチキンのソテー(385kcal)
あっという間に完成した。
あらかじめ茹でられているサラダチキンなので、焼き加減が適当でいい。普通のムネ肉だったら下ごしらえが必要だろう。そもそもこの厚さだと焼くのが難しいかもしれない。
カロリーは385kcal。もともとが200kcal程度(サラダチキンとしては高めだ)なので、2倍程度になっている計算だ。
それにしてもバターの香りがたまらない。食べてみる。
はむ
そこにはバターの油分をまとってイキイキとしたサラダチキンの姿があった。予想通りの美味しさだ。
もともと塩味がついてるので少々味が濃い目だが、ご飯と一緒なら最高だ。たぶんご飯のおかずにサラダチキンを食べる人は少ないだろう。大きな変貌である。
ただ、焼いているうちにチキンの中の水分が抜けてしまったのか、食感はすこし硬い感じがした。小さくしながら食べるのがいいかもしれない。
パサつくのでほぐして食べたほうがいい
グラタンにする
つづいてサラダチキンをグラタンにしてやろう。
サラダチキン的にも焼かれるところまでは想定の範囲内かもしれないが、まさかグラタンとは思ってなかろう。その、まさかである。
サラダチキンを玉ねぎと炒める
グラタンの素みたいなものが売られていたのでそれを素直に使う
最後までまるごとのままのサラダチキン
チーズもたっぷり入れた。これ以上入れたらピザになってしまう(ならない)。
サラダチキンのグラタン(506kcal)
まさか、と思ったグラタンもあっという間にできた。これも火加減を全然気にしなくていいサラダチキンの恩恵である。下ごしらえなしなので出来上がりもはやい。
あとはソテーのときのように固くなっていないといいのだが。食べてみよう。
うまー
チーズとソースで包まれていたせいだろうか、やわらかくなっているではないか。ソテーのときと雲泥の差だ。元の状態よりもやわらかいかもしれない。
グラタンのチキンは味がしないことがあるが、サラダチキンを使うことで塩味もばっちりだ。当然チーズともあうし抜群においしい。もうサラダチキンじゃない、グラタンチキンだ。
ついにサラダチキンが本来持っていた色彩を取り戻した感じがする。冴えないサラリーマンが実は偉い人だった、みたいな発見だ。静かなるドンだ。
やわらかくなっててうれしい
フライにしてタルタルソースをかける
「栄養」と化していたサラダチキンがみるみる料理としての命を取り戻しす感じが楽しい。いつからそんな悪い夢を見ていたのだろう、という気持ちだ。
普段はダイエットに最適と言われているサラダチキンに、もっと殻を破ってもらいたい。
次はフライにしてタルタルソースをかけてやろう。チキン南蛮風である。
チーズを詰め込んでやろう
揚げる。油が足りなかったので浴びせかける。
ぜったいにおいしい
出来上がった。
繰り返しになるが火加減が適当でいいのは、ふだん揚げ物なんてしない僕にとって最高である。しかもこの厚さよ。このままでも絶対おいしいはずだ。
だが我々は先に進もう。タルタルソースをかけるのだ。
レシピを見ながら手作りする。「え、こんなにマヨネーズ使うの!?」と思っていたら…
単純に作りすぎだった
なのでたっぷりめにかけてやる
サラダチキン南蛮の完成だ(甘酢は忘れたが)。
我々はサラダチキンがどんな形になっても立派にやっていけることを、ほぼ確信している。だからもうちょっと挑戦してもいいのではないか。
行けー!!
行ったーー!!!(758kcal)
カレーのトッピングにした。見た目の訴求力はばっちりである。
さらに我々は、普段はサラダに添えられているチキンが今はカレーに添えられているという事実に興奮することができる。すでにいつものヘルシーさとは無縁だ。
では食べてみよう。
うまい。そして胸焼け確定。
これも正解であった。牙を抜かれた獅子が、再び牙を剥いた。抜かれたのは乳歯だったのだ。
唯一の懸念であった肉の硬さは、全然OK。というかむしろやわらかかった。中に挟んだチーズがジューシーにしてくれたせいかもしれない。
肉の味が薄くなりがちなチキンカツだが、これもサラダチキンの塩味が効いていて感動的に問題解決している。
カツ加えてカレー、タルタルソースの組み合わせである。高校生が夏休みとかに食べるやつだろう。タルタルチキンカツカレー、夏の季語にどうだろうか。
野生を取り戻せ
脂分をうまく補うことでサラダチキンの野生が目を覚ました。サラダという名前に囚われすぎていたのである。
生の鶏ムネ肉より遥かに値は張るので思い切らないと使えないかもしれないが、ときには違った姿を見て驚きたいものである。