感情を表に出すシーサーたち
シーサーは沖縄では一般的な魔除けで、個人宅や店舗、公共施設など沖縄県内ではそれこそどこに行っても屋根や門扉に鎮座する姿を見ることができる。
凜々しい顔をしている
シーサーはその厳つい顔で家屋などにマジムン(魔物)は入ってくるのを防ぐのだそうだが、最近は沖縄方言の「○○さー」という語尾にあわせて「おいシーサー」「たのシーサー」みたいなちょっとしたジョークとしてシーサーが使われている姿をよく見かける。以下の写真を見て頂きたい。
安全運転してほシーサー
でーじおいしーさー!
このシーサーはといえば
飲酒運転しないでほシーサー
写真にはないが、他にも「うれシーサー」とか「かなシーサー」みたいな感情を表す表現としてシーサーが使われているケースも結構な頻度で見る気がする。私はそれを見て常日頃から少しモヤモヤするのだが、本来魔除けで厳つい表情を作っているシーサーがこうも感情を表に出してよいものなのかと思う。やってくるマジムンだって厳つい顔には驚くだろうけど笑顔で「うれシーサー」とか言われたら歓迎されていると勘違いしてしまうのではないだろうか。
しかし、時代は21世紀。そろそろこの「うれシーサー」問題に終止符を打つべきである。ボタン一つでシーサーの感情を切り替えることができればいいんじゃないだろうか。
感情を切り替えられるシーサーを作ろう
というわけでまずはシーサーの感情を切り替える装置について考えてみる。
設計図
…ものすごい漠然としたメモ書きなのだが、スマホからボタンを押すとモーターが動いてシーサーの眉毛と目が動き普段の顔から笑ったり、怒ったりみたいなことを実現できるんじゃないか、というメモ書きである。書いていてよく分からなくなってきたので、とりあえず作ってみようと思う。
まずはベースとなるシーサーについてなのだが、
全身のシーサーよりは顔だけの「面シーサー」が加工しやすそうである。しかしながら当然シーサーは陶器製なので穴を開けたり中身になにか入れたりというのはハードルが高そうだ。
悩んで色々調べてみると、今は結構精巧なシーサーのペーパークラフトが売られているらしい。紙製ならばなんとかいけるんじゃないだろうか。
これがパーツ
説明書
このペーパークラフトはシリーズもので守礼門だったり、ヤンバルクイナだったり、進貢船だったりと色々な沖縄のあってかなりしっかりしたものがつくれるようだ。
パーツはハサミを使わずに取り出せるようになっているし、そこまで難易度は高くないとネットに書かれていたので軽い気持ちで作り始めたのだが、これが結構難しい。図解入りの説明書で丁寧に作り方が書いてあるのだが何度か心が折れかけた。
折れかけた心を鼓舞しながら作業を進めていくと、なんとなく顔っぽくなってきた。
ここまでくるとほぼほぼシーサーである。よかった。シーサー部分はなんとかなりそうだ。まだ目と耳と眉毛が取り付けられていないが、シーサー側はとりあえずここでストップ。動く部分に取りかかりたいと思う。
心臓部を作る
続いてシーサーを動かすための心臓部の制作である。
このあたりは割愛するが、簡単に説明すると左下の銀色のパーツがインターネットに接続して命令を受け取り、上の青いモーターが動くというしくみである。今はやりのIoTというやつだ。
操作するスマートフォン。こちらはBlynkといアプリを入れてボタンを設置している。このアプリを通じてさっきの心臓部に命令を出すことが可能なのだ。
ボタンは「うれシーサー」(喜)「いい加減にしてほシーサー」(怒)の2つを用意。途中まで「かなシーサー」(悲)というボタンも作っていたのだが、手に入れたモーターが180度しか回らないというハードウェア的な制約で実装が不可能だった。
適当な箱に
シーサーを配置
心臓部ができあがったので、シーサーとの接続の部分を、まずは適当な箱にシーサーを設置して…
白いシールに
目を書く
最後に目玉に表情を入れる。ノーマルな状態と表情が変わった状態の目を作って、目玉にぺたり。
これで完成。ここまで地味な制作の様子を長々ご説明したわけなのだが、正直皆さんそんなに興味がないかと思う。もう少し待って頂きたい。次からがこの記事のメインで最大の山場である。
これが未来のシーサーの形だ
さて、完成した「ボタンひとつで感情を切り替えられるシーサー」。どんなものか実際に見て頂こう。
通常は普通のシーサーとして、マジムンをブロック。しかし、スマホのボタンひとつで
「いい加減にしてほシーサー」
と目と眉毛が動いて表情を変えることが可能に。これにより普段はマジムンを撃退。友人などの来客の際には「うれシーサー」に切り替え、しつこいセールスには「いい加減にしてほシーサー」で怒りを表現、といった細かいケアが可能になったわけである。シーサー部分とボタンのスマートフォンはWifi接続なので、Wifiさえ繋がれば地球の裏側からでもシーサーの表情を変えることが可能である。まさにシーサー革命、これがきっと21世紀のシーサーなんじゃないだろうか。
というわけで未来のシーサー、いかがだっただろうか。何も考えずに作った割にはそれなりものができて満足しているのだが、場当たり的な工作なのでその場感がすごいものになってしまった。
前に倒れるから机にガムテでとめてた
バランスが悪すぎてすぐ前面に倒れてくるのである。このあたりの工作力がどうやったら身につくのか。最近の悩みである。
なんでもモーターで動かすとそれなりに面白い
今回はモーターでシーサーの目を眉毛を動かしたわけだが、モーターで普段動かないものが動くと不思議と笑えてくる。
以前同じような仕組みで沖縄の魔除けの「石敢當」を表札に切り替えるということもやったので興味のある方は
こちらも見て頂きたい。シーサーや石敢當以外でもまた何か動かして見たいと思う。