特集 2016年9月22日

消えゆく路上の「ガム跡」を追え

新旧の舗装の境界には、ガム跡の境界線がある
新旧の舗装の境界には、ガム跡の境界線がある
大阪駅周辺は、急速に再開発が進んでいる。次々に新しいビルが建ち、周辺の歩道も目まぐるしく変化していった。
それに伴い、あるものが人知れず姿を消している。路上に付いた「ガム跡」である。
1983年徳島県生まれ。大阪在住。散歩が趣味の組込エンジニア。エアコンの配管や室外機のある風景など、普段着の街を見るのが好き。日常的すぎて誰も気にしないようなモノに気付いていきたい。(動画インタビュー)

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そういえば最近、ガムを踏んでない

路上のガム跡は汚い。人通りの多い歩道には、まるで斑点のように黒いガム跡が付いている。
歩道に点々と付いている黒いもの。これがガム跡である
歩道に点々と付いている黒いもの。これがガム跡である
にわかに信じられないのだが、あんなにたくさんのガム跡が残るくらい、みんな道にガムを吐き捨てていたのだ。
落ちてるガムを思いっきり踏ん付けてしまって、泣きながら靴の裏を掃除した夜が私にもあったし、きっと皆さま方にもあるだろう。

しかし時代は移ろうもの。実感として、最近ではガムを捨てる人も少なくなったように思う。そういえば、もう随分長いことガムを踏んでない。

日本チューインガム協会の資料を見ると、ガムの生産量は2004年をピークにして、年々減少の一途を辿っているようだ。路上でガムを噛んでる人自体、かなり減っていることになる。

ガム跡の境界線

今回は、「私って前からガム跡に興味があって……ガム跡……いいよね」という展開ではない。単に大阪駅の周辺を歩いていると、いやがおうにもガム跡が目に入ってしまうのだ。興味がなくても、気になるじゃないか。
だってこんなにガム跡が付いてるんだもの
だってこんなにガム跡が付いてるんだもの
そんなガム跡をたどって歩いていると、いつしか境界線に達した
そんなガム跡をたどって歩いていると、いつしか境界線に達した
なんてことはない、昔からある歩道と、新しく舗装された歩道の境界線。そこを境に、ガム跡の分布が全く違っていることに気付いたのである。
左が新しい歩道で、右が昔からの歩道。矢印のラインに境界がある。2枚の画像をくっつけたみたいに見えるが、現地に行くと本当にこうなっていて、ガム跡密度の違いが一目瞭然なのだ
左が新しい歩道で、右が昔からの歩道。矢印のラインに境界がある。2枚の画像をくっつけたみたいに見えるが、現地に行くと本当にこうなっていて、ガム跡密度の違いが一目瞭然なのだ
これはすごいぞ、と思った。差が歴然である。

写真の場所は大阪駅北側(ヨドバシ梅田側)の歩道であり、再開発の記録によると2010~11年頃に舗装されたと思われる。とすると、この5年間ほとんどガム跡が付いてないことになる。
あまり気にしてなかったが、ここ数年のうちに舗装された歩道には全くガム跡がない
あまり気にしてなかったが、ここ数年のうちに舗装された歩道には全くガム跡がない
ガムを捨てる人が少なくなったのと同時に、掃除する技術も上がったのかもしれない。何にせよ、最近の歩道には驚くほどガム跡がないのだ。

ということは、早晩ガム跡は日本からなくなっていくのかもしれない。ガム跡は消えゆく文化……いや文化ではないかもしれないが、とにかく消えていく運命にあるのだ。

消えゆくガム跡を探して

ガム跡は消える。しかしガム跡を記録に残してる人なんて、ほとんどいないだろう。
私は謎の使命感に駆られて、大阪駅のまわりにあるガム跡を調査することにした。
まずは大阪駅の北側。いつも民族調の音楽を演奏してる人たちがいる一角は、有数のガム跡密集地帯である
まずは大阪駅の北側。いつも民族調の音楽を演奏してる人たちがいる一角は、有数のガム跡密集地帯である
足下を見れば、大量のガム跡がある。歩道の端(画面右)に行くほど多くなっているのを見ると、捨てる人の心理が透けて見える
足下を見れば、大量のガム跡がある。歩道の端(画面右)に行くほど多くなっているのを見ると、捨てる人の心理が透けて見える
そして大阪駅(ノースゲートビルディング)と歩道との間には、明確なガム跡ラインが存在していた
そして大阪駅(ノースゲートビルディング)と歩道との間には、明確なガム跡ラインが存在していた
ガム跡密度の比較ができるよう、足下のパノラマ写真を作ってみた。これを見ると、その差がよく分かるだろう
ガム跡密度の比較ができるよう、足下のパノラマ写真を作ってみた。これを見ると、その差がよく分かるだろう
それにしても、新しい舗装箇所は見事にキレイである。知らない間に、日本はガム跡のない新時代に突入していたのだ。もちろん喜ばしいことだと思う。

バス停のガム跡

ヨドバシ梅田を右手にして西へ進むと、JR高速バスターミナルがある
ヨドバシ梅田を右手にして西へ進むと、JR高速バスターミナルがある
ここも歩道が新しいため、境界線(矢印の箇所)がはっきりと出ていた
ここも歩道が新しいため、境界線(矢印の箇所)がはっきりと出ていた
バスターミナルというと、昔はガム跡のメッカだったと予想できる。待ち時間にガムを噛んで、乗車するときに捨てるのだ。
比較のため、先に大阪駅東側にある路線バス乗り場を見てみよう。
あれ? 意外とガム跡ないな……と思ったら、
あれ? 意外とガム跡ないな……と思ったら、
歩道から車道に降りる箇所に、山ほど跡が付いていた。なるほど、乗車時にガムを捨てるのでこうなるのか
歩道から車道に降りる箇所に、山ほど跡が付いていた。なるほど、乗車時にガムを捨てるのでこうなるのか
当たり前だけど、人間の行動に沿ってガム跡は作られる。現代の貝塚的な存在として、未来人の研究対象になるかもしれないなぁと、いま適当に考えた。

続いては、大阪駅の外周に沿って西側へと向かう。
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高架下で光るガム跡

駅の西側は高架下になっている。照明が暗いのでガム跡も見えにくいのだが、日が差す場所では反射して白っぽく光っていた。光るガム跡。
高架下ではガム跡が光る
高架下ではガム跡が光る
密度が高かったのは、梅三小路側へ渡る横断歩道の手前。人の流れが多いのと、信号待ちをしているときにガムを捨てる人が多かった、というのが理由ではないかと考えられる
密度が高かったのは、梅三小路側へ渡る横断歩道の手前。人の流れが多いのと、信号待ちをしているときにガムを捨てる人が多かった、というのが理由ではないかと考えられる
ここでは、歩道とJRの建物(大阪駅桜橋口)との間に、明確な境界線があった。またパノラマを作ったのでご覧いただきたい。
やはり歩道の端(画面上側)ほどガム跡が目立って見える
やはり歩道の端(画面上側)ほどガム跡が目立って見える
建物の中(大阪駅桜橋口)に入ると、さすがにキレイな状態に保たれていた。屋根がある場所では、やはりガムは捨てにくいのだろう
建物の中(大阪駅桜橋口)に入ると、さすがにキレイな状態に保たれていた。屋根がある場所では、やはりガムは捨てにくいのだろう

真新しい、大阪駅南側

そのまま大阪駅の南側(大丸梅田側)にまわる。こちらはまさに再開発の真っただ中であり、新しい歩道と古い歩道とが混在した空間になっていた。

目を引くのは、2011年にオープンしたサウスゲートビルディングにある、大阪駅中央南口の美しさである。
ここ5年の間、無数の人々が行き交ったとは思えないほど、地面がキレイだ
ここ5年の間、無数の人々が行き交ったとは思えないほど、地面がキレイだ
今までを地面を「キレイさ」という尺度で見たことはなかったが、他の汚い地面を見てまわってる最中だとよく分かるぞ、この美しさが
今までを地面を「キレイさ」という尺度で見たことはなかったが、他の汚い地面を見てまわってる最中だとよく分かるぞ、この美しさが
しかし、そんな美しいサウスゲートビルディングの敷地を一歩外れると、すぐにガム跡が姿を現す
しかし、そんな美しいサウスゲートビルディングの敷地を一歩外れると、すぐにガム跡が姿を現す
例によってパノラマでどうぞ
例によってパノラマでどうぞ
この古い舗装部分は絶賛工事中であり、近いうちになくなってもおかしくはない。大阪駅正面のガム跡を見るなら今しかない。急げ!

大阪駅東側に大ボス登場

大阪駅周辺をぐるりと一周してきたが、いよいよ最後の東側に差し掛かる。こちらの見所は何といっても、JR大阪駅御堂筋口と阪急とを結ぶ横断歩道だろう。
大阪のニュース映像によく登場する、御堂筋口の横断歩道
大阪のニュース映像によく登場する、御堂筋口の横断歩道
一目みた瞬間から、もうガム跡センサーが反応しまくりである。大阪駅の大ボスと言っても差し支えない、その密度
一目みた瞬間から、もうガム跡センサーが反応しまくりである。大阪駅の大ボスと言っても差し支えない、その密度
かなり明確な境界線が見て取れる。キレイな側は、いつ舗装されたのか定かではないが、全くガム跡が付いてない
かなり明確な境界線が見て取れる。キレイな側は、いつ舗装されたのか定かではないが、全くガム跡が付いてない
境界をパノラマでどうぞ。いやあ、壮観だ
境界をパノラマでどうぞ。いやあ、壮観だ
思うに、ガム跡の境界線は、文化の境界線でもあるのだ。

ガムを噛んで、そして吐き捨てるという古い文化。ガムの消費量が減ったり、マナーが向上したりした結果、ガム跡がなくなった新しい文化。
ガム跡の境界を観察する行為は、地層を見る感覚にも近い気がした。

積極的に観察するには汚いが、たまに気が向いたときに足下を観察してみるのも楽しい。いま見える光景が、数十年後にも同じように見られるとは限らないのだ。

今回は新旧の境界に注目したため、再開発が進む大阪駅周辺を見てまわった。
しかし、ガム跡の密度だけを追い求めるなら、「飲み屋街の近くにある信号付近」が最適である。実はその周辺の写真も撮ってはいるのだが……あまりにも見た目が汚いので、写真を載せるのはやめておきます。
記事中のパノラマは、複数の写真を手作業で貼り合わせた。スマホのパノラマ機能も試してみたものの、蛇みたいな写真を量産してしまう結果に。もう少し練習したら上手くできるようになるかも
記事中のパノラマは、複数の写真を手作業で貼り合わせた。スマホのパノラマ機能も試してみたものの、蛇みたいな写真を量産してしまう結果に。もう少し練習したら上手くできるようになるかも
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