まずは夜行バスで出発
いつの間にか完成してた新宿の新バスターミナル『バスタ』。夜行バスの予約を取って行ってみると、たくさんの発着場からひっきりなしにバスが発車していた。
22時25分発の上高地行きに乗り、翌朝5時20分に着く。
バスタはビルの上にあります。便利になったとは思う。
途中2回のトイレ休憩と、運転手さんの仮眠休憩を挟んで予定通り5時20分に着いた。
3列シートで隣がいなかったので快適に過ごせたが、いつもなら寝入ってすぐの時間帯だ(3時くらいまでは起きてるので)。
5時過ぎの上高地にはすでに多くの登山者がいた。
これからどこかに登る皆さん。登山者の朝は早い。
明るくなってきて登山者が増え、身支度を済ませて出発していく。だれもスーツなど着ていない。
みなさんちゃんとした登山用ウェアを着ています。
上高地で着替えた。
バスに乗ってる間は短パンTシャツだったが、上高地からはスーツを着て写真を撮りたく思い、着替えた。
『あれ?こんな時間にスーツの人が?』という視線を感じるので人がいない河原に向かった。
ザックを背負うと違和感が増す。右に流れてる川は梓川。
しかしだ、涸沢までとは言え山に登ることには違いない。その辺はちゃんと考えている。
下着はファイントラックのスキンメッシュを着ている。汗戻りがなく快適な下着だ。
これを着ていればシャツが汗で濡れても冷たく感じない。
靴は皮の登山靴。もう10年以上履いていて、足に馴染んでいる(そして臭い)。
買った時は10年以上履くことになるとは思わなかった。1回靴底を交換しているが、そろそろまた交換かな。
やや間違えた感があるのはサングラスだ。いつものスポーツタイプサングラスではおかしいと思い、普段使いのサングラスをしてきたら地上げ屋かなにかっぽくなってしまった。
理詰めで人を陥れそうな見た目である。
まぁ、スーツの素材と言えば毛とかそういうものなので、登山向きの服と言えなくもない。少なくとも綿ではない(登山に綿素材はNG)。厚みもあるので暖かい。
ワイシャツは綿20%とポリエステル80%の混合である。これもまぁまぁ使える。綿のTシャツとGパンよりは機能的にも優れている。
上高地は超いいところです。上に見えている橋が有名な河童橋。いや、食器とかは売ってませんよ。
登山にスーツは現代だとおかしいが、アルピニズム発祥の地、ヨーロッパではそんなに変でもない。
昔の登山家の写真や映像を見ると、スーツっぽい格好で長いピッケルを持ち、山に登っているのだ。
真ん中のオジサンは多分この格好で山に登る。フランスの山岳博物館の写真。映像でもスーツ登山の様子が残っていた。
現代のハイテク登山ウェアがGPSだとしたら、スーツでの登山というのは、紙の地図とコンパスのみで山に登る様なものである。クラシックスタイルの登山と言える。
以上、色々言い訳しつつ次のページへ。
まず河童橋で記念撮影
今回、写真は概ね三脚と自撮り棒で撮った。スーツで山に登り三脚で自分を撮影。どうしたって異様であろう。
たまに「なんでスーツなんですか?」と聞かれたので、手短に「仕事です」と答えておいた。ウソではない。
それでも上高地ならまだスーツ姿の人がいてもおかしくない。
思えば2009年以来である
普段、仕事は完全に家でしているのでスーツを着る機会はない。2009年にアプリ開発で食っていこうと思い立ち会社勤めを辞めて以来、まさか次の機会が上高地だったとは。
どこを地上げしようか考えている感じ。
地上げが上手く進まず沼を見つめる。
しかしアレだ、概ね半笑い
山ではすれ違う人に挨拶するのは普通で、「おはようございます」とか「こんにちは!」なんて言い合うのが常識になっている。
なので僕も挨拶をするのだが、イマイチ反応が悪く、かなりの割合で無視される。
山の人はいつからこんなに冷たくなったのか。
山はこんなに美しいのに。
上高地から7kmほど歩いて徳沢に着いた。まだ朝の8時。徳沢には徳沢園というお洒落な山小屋が建っている。
宿泊、食事、キャンプなどを楽しめます。ソフトクリームが有名らしい。
徳沢園の水場で水を補給。なんだか周りの登山者がチラチラ見てヒソヒソ言ってたり、ちょっと近づいてきて、『やっぱりやめた』って感じで引き返したりする。いつもの山登りと雰囲気が違う。
暑いのでジャケットは脱いだ。
更に3kmくらい歩いて横尾山荘に到着。上高地から約10km、ここまでは散策路というか、観光地みたいなものだ。ここから登山が始まる。
横尾山荘。泊まったことはないがお風呂もあるらしい。
ここまでは大した登りもないのでスーツでも問題無かった。しかし、ここからは勾配が変わる。状況に応じて着替える予定である(登山ウェアは持って来ている)。
ここまで来るとさすがにスーツ姿が目立つ。
周りは100%登山者であり、登山ウェアで全身を固めている。
横尾の橋の前で記念撮影。ここまでの地上げが上手く行かず、ついに横尾まで来てしまった感じである。
まぁ、もうちょいこの格好で行こうかなって。
横尾からしばらくはスーツでも問題ない平らな道が続いた。さすが人気のコース、道がしっかり整備されている。
まだまだスーツで行けそう。
屏風岩が見えてきた
下の写真の奥にある絶壁が屏風岩。国内では最大級のクライミングスポットだ。記念撮影をしていても、思わず背筋が伸びる。
屏風岩を前に正装で記念撮影。いつか登りたいものである。
この辺から道が険しくなってきたので、とりあえず上だけ登山ウェアに変える事にした。
道が険しくなり、勾配も増した。ワイシャツやネクタイが邪魔なのでお着替え。
着替えると言っても、ワイシャツを登山用のTシャツに替えたくらいでズボンはそのままスラックスである。
でもこれが効果絶大だった。
普通の登山者に変身。
これまで挨拶しても無視だったり、道をを譲ってくれなかった皆さんが、ウソのように愛想が良くて道を譲ってくれるのだ。
気のせいと思うでしょう?違うんですよ。明らかにみんながやさしい。これまではなんだったのかという手の平返しである。
真ん中の巨大な壁が屏風岩。いいなぁ、登りたいなぁ。
ちょっと格好が変ってだけで、全然反応が違うのが面白くもあり、悲しくもある。
屏風岩を右に回り込んだ写真。この辺にもルートがあったりするんだろうか。岩が脆そうで怖い。
なかなかに山道でした
横尾までは全然平坦な散策路だったが、屏風岩が見える辺りから険し目の山道になり、本谷橋を過ぎた辺りで一気に傾斜が増した。
本谷橋。歩くとエライ勢いで揺れて楽しい。
ガラス細工のような清流。非常に冷たい。
急な登山道を登っていき、高度がグイグイ上がっていく。息が切れ、汗が流れる。Tシャツに着替えて良かった。
落石の多発地帯もあるので気は抜けない。
途中、大規模な崖崩れの跡があった。今年の6月に大崩落をして登山道が100mに渡って埋まったのだ。今でも気は抜けない。
人が通らない時間に崩れたのが幸いしたが、休日の昼間だったら大惨事だっただろう。こういう危険地帯は1秒でも早く抜けなくてはいけない。
崖崩れの跡を抜けると、いよいよ奥穂高が見えてきた。あの下が目的地の涸沢である。
中央に見えるピークが奥穂高。今回は登りません。
しかし最後の登りがちょっとキツかった。小屋が見えているのに全然着かないのだ。空気が澄んでいるので近く見えるが、実は遠かった。
涸沢の分岐。今回はまず涸沢ヒュッテに向かうので左へ。
岩が階段状に並べられている。登山道の整備をしてくれた関係者に感謝。ナナカマドが紅葉していた。
涸沢に到着
12時半、ようやく涸沢に着いた。上高地から16km、7時間だった。行こうと思えば更に上の穂高岳山荘まで行けそうな時間だが、今回はここまで。
涸沢ヒュッテはかなり立派な山小屋です。
最後に記念撮影
目的地の涸沢に着いたので早速記念撮影。テント場の方へ降りていき、三脚を立てた。
写真中央のピークが涸沢岳。左が奥穂高で右が北穂高。右端に写ってるのは涸沢小屋である。
上高地での地上げに失敗し、いよいよ涸沢にメガソーラーを建設しに来てしまった感じである。
このあと「なんでスーツなんですか?」って聞かれたので「メガソーラーの営業です」って言ったら本気でビックリしてる人がいて、こっちがハラハラした。
コマネチで表現しているのは、涸沢のカール地形である。ここは昔氷河があり、氷河が谷を深く削ったのだ。
これで一応今回の目的は達成した。
『絶景の中でスーツを来て写真を撮る』というテーマからすれば、そりゃ奥穂高にでも登って撮るのが良いのかも知れないが、ぼちぼちで登ってこられるのはここまで。
ここから先は本当に命がけの世界になるので、涸沢をゴールとしました。
左に見える岩峰が北穂高。この辺が一般登山者が登れる最も難しい登山エリアである(実は登った事はない)。
ひと仕事終えたのでビールとおでん
さて、お疲れ様って事でビールとおでんである。新橋的この組み合わせ、涸沢になるとセットで1400円する。
おでん6種と生ビール。1400円だが、冷静に考えれば高くはない。だって、ここ山の上だよ。
くっそ美味い。下界で飲むビールの数倍美味いので、むしろお得である。
涸沢でスーツ。どうしたって異様であるが、たまにこういう人もいるのだろう、山小屋の人は特に珍しくもない風だった。
写真はソロで飲んでた男性に撮ってもらいました。
なぜか囲まれた
写真を撮ってもらった男性とビールを飲みながら、『なぜスーツなのか』を説明していると、他のグループからも人が集まってきて、次々に説明を求められた。
涸沢ヒュッテのテラスには結構な人がいました。
登山道を歩いている時は結構冷遇されたが、会話をして事情が分かれば単なる山好きの同志である。普通に受け入れられ、暖かく向かい入れられた。
コミュニケーションって大事である。会話は重要だ。
最終的にはこうなった。
蛇足を書く
以上で記事のテーマは消化したが、蛇足を承知で色々書くので気が向いた方だけ読んでいただきたい。
今回、穂高に登るワケではないのでヘルメットやロープなどは持って来ていないが、『スーツ』という余計な荷物があり、しかもテント泊なので装備を色々軽いものにした。
テントはモンベルのシングルウォールのシェルター(フライシートがない。モンベルは『テントではない』と言っている)。軽くてコンパクトだが悪天候には弱い。色々問題があるせいか廃盤になってしまい、現在はアウトレット扱いで売られている。
火器も小型。25gしかない小型のバーナーと、110g缶のガス。ガスは重さを量って必要な分だけ持って来た。
夕食はレトルトの中華丼と豚汁。コッヘルはチタンの軽量コッヘル。
ふざけているように見えて、それなりに気を使っているんですよ。
次のページでは、道中に見た綺麗なものを紹介します。
水が綺麗
上高地から明神辺りは、とにかく小川や池などの水辺が気持ちいい。散策目当てなら大正池なんかも巡ると良いだろう。
明神の辺りの池。底から水が湧いている。
透明な流れに揺れる、鮮やかな水草。
頭みたいな草や池に生える木々。
ここまで綺麗な川が本州にあるとは。
魚も丸見え。
キノコや粘菌が可愛い
原生林の倒木は菌類の世界である。
美味しそうな謎の茸。
これも美味しそうだが食べられるのだろうか。なお、動植物の採取は禁止されています。
可愛い茸。
ビッシリ生えているなにかの茸。
茸?
これは茸。
粘菌っぽいなにか。
上高地と涸沢は良いぞ
上高地って冬に1回、夏に2回しか行ったことがないけど非常に良いところだと思う。山に登らずにキャンプ目当てで行っても楽しいと思う。なんなら帝国ホテルもある。横尾までなら高尾山のハイキングと気分的には変わらない。
上高地のお土産物屋さんでは、14時を過ぎると弁当が半額になります。これは半額で550円でした。
涸沢も、登山エリアなのにリゾートっぽさがあり、景色も良くていい場所だった。人気があるのもうなずける。次回はちゃんと奥穂高や北穂高に登りたいなぁと思いました。