どんなペットがユビキタスたりえるか
まず、中~大動物はだめだ。犬だって基本的に電車バス移動はNGだし、猫なんか尚のこと駄目だ。
だいたい仕事場の机の下で寝てるか、もう一匹の猫を追いかけ回すだけの猫。まったくユビキタスじゃない。
かといって、ハムスターとか小動物はどこに逃げ出すか分かったもんじゃないし、爬虫類なんかは外に連れ出すと怖がる人もいるから、よろしくない。
公共交通機関・飲食店OKで、逃げ出さなくて、周りから怖がられない。そんなペット、いるのか。
いました。これ。
熟考の結果、これならいいんじゃないかという結論に至ったのが『シーモンキー』だ。
シーモンキー、育ててみよう
シーモンキーと言えば、30代以上の世代ならだいたい学研の『科学』ふろくなんかでお馴染みの、ホウネンエビモドキ科に属する小型の甲殻類である。
一般的には塩水湖で生息しており、乾期になるとメスは「耐久卵」と呼ばれる乾燥した状態で休眠する卵を産む。
別途、人工海水の素も購入。汲み置き不要ですぐ水道水に使えるタイプ。便利。
で、シーモンキー飼育キットには、この耐久卵と海水の素、そしてエサ(クロレラ)が付属している。
今回はAmazonで購入したのだが、レビューを見ていると「海水のクオリティが生存率に大きく影響する」という書き込みがあったので、ちょっといい海水の素も一緒に買っておいた。
遙か昔に育てたはずなんだけど、全然憶えてない。新鮮な楽しみだ。
さっそく、いい海水に数十粒ぐらいの粉末のような卵を投入。
水分を吸った卵は休眠状態からもどって、24時間後にはもう孵化。元気だな、シーモンキー。
ちなみに耐久卵の休眠は、最強生物でおなじみクマムシが水不足に耐えるのと同じ仕組みらしい。へぇ。
この耐性のおかげで環境が激変しても絶滅せず、なんと1億年前から生き延び続けている“生きた化石”なのだ。
生後4日ぐらいのシーモンキー。細かいのが水槽でみちみち動いてる。かわいい。
孵化直後は小さすぎて「粒か!」みたいだったシーモンキーたち。
カメラで撮影するのも無理なぐらいだったのが、数日後には1㎜ほどのサイズになって、なんとか撮影もできるようになった。
生後10日のシーモンキー。かわいい。おまえはシーモンキーの「シモ一郎」と名付けよう。
そこからさらに一週間ほどすると、水槽に顔を近付けると肉眼でもなんとか独特のフォルムが視認できるぐらいのサイズ(2~3㎜)になった。
エサのスピルリナ(藻)をやると、嬉しそうに20本ぐらいの足をワシャシャシャと動かしているのが見えるのだ。こうなるともう、とてもかわいい。
よし、そろそろいいだろう。シーモンキーたちよ、一緒にお外に行こうか。
シーモンキーのユビキタス化
とはいえ、シーモンキーを自分のいるところにどこでも連れて行き、いつでも共にいるためにはどうしたらいいか。
とりあえず、水槽を持ち歩く方法から考えねばならない。
自作スノードームキット、ちょうど良さそうだ。
密閉できて、かつ、身につけられるぐらい小さい水槽ってなにか。
お土産なんかに良くあるスノードームあたりが、ちょうどいいんではないだろうか。
探すと、土台がネジ式になっている(開閉しやすい)自作スノードームキットが見つかった。
腕時計用のシリコンベルトを接着。この記事書いた時に使ったシリコン用接着剤が今回も役に立った。
装着!ウェアラブル水槽によるユビキタスシーモンキーの図。
あとは、これを常に身につけていられるように、土台に腕時計のベルトを接着するだけ。
簡単工作、ちょいちょいと作業時間10分で、シーモンキーたちと常に一緒にいられるウェアラブルな水槽の完成である。
書を捨てよ。シーモンキーと町に出よう
このウェアラブル丸水槽に人工海水を注いだら、元の飼育水槽からスポイトでシーモンキーたちを移動させるのだが、これもなかなか楽しい。
「ほらほらシモ一郎シモ二郎、お出かけするぞ」
「おっ、シモ八子は元気がいいなぁ。スポイトで吸うからこっちおいで」
我ながら、なかなかのイチャイチャっぷりである。
この中に、うちのかわいいシモ一郎からシモ十七郎までが泳いでいます。
元の飼育水槽にはシモ一郎からシモだいたい四十五ぐらい郎までが泳いでいるのだが、あまり多くを密閉されたウェアラブル水槽に移すと、酸欠のおそれもある。今回は、ひとまず全体の1/3ほどのシモ兄弟たちと外出することにした。
いずれは酸素ポンプ付き水槽に改良して、兄弟姉妹全員とお散歩したいものである。
その他の装備も万全だぜ。
さらに、シーモンキーの食事はだいたい一日一回なのだが、お出かけが長時間化する可能性も考慮して、お弁当も持ち歩くことにした。
土台に貼り付けてあるのは、水溶性のカプセルである。この中に、エサであるスピルリナを一日分詰めてあるのだ。
耳かきをつかって少しずつカプセルにスピルリナを入れる。面倒だけど、かわいいシモちゃんたちのごはんだからね。
これなら、お出かけ中に食事の時間になったとしても、一旦丸水槽を開けて中にカプセルを投入するだけでOKだ。
よし、じゃあお外に行くぞ、シモたち。
シーモンキーといっしょ
さて、外に出てみると、これが思いの外楽しいのだ。
いや、楽しいだろうなとは思っていたんだけど、いつでもペットがそばにいるというのは、気分的にとてもいい。
手に水槽をくくりつけてるという馬鹿っぽさも、やってみるとほぼ気にならなかった。
文房具屋でシーモンキーといっしょに。「なんだ、シモ三郎はKUMの2穴鉛筆削りが気になるのかい?」
電車も乗れるよ!りんかい線とシーモンキーとわたくし。
どれぐらい楽しかったかというと、未だに地味に続けているポケモンGOを、せっかくレアポケモンが出るとウワサのお台場で一度も起動しなかったぐらいである。
いま「おれのモンスターボールでシーモン、ゲットだぜ」ってベタなのを書いて、あまりのベタさに恥ずかしくなって消して、再考の結果どうでも良くなってもう一回書いてみた。
たぶん彼らは、お台場の観覧車を見た世界初のシーモンキーだろう。
ただ、楽しいのだが、体力的には意外とつらい。
必要以上に水槽を揺らさないようにそっと歩いたり、あとは腕に300g(水槽容量300cc)の重りがくくりつけてあるわけで、水槽の土台が腕に食い込んで痛い。
ファニーな外見のわりには、結構な苦行である。
この日はカルカルでライター三土さんの『街角図鑑』出版記念イベントがあった。執筆者の一人でもあるライター伊藤さんが僕の腕とシーモンキーをすごい凝視してる。
こちらはイベントを見に来ていたライター小堺さん。ポーズをつけるよりも、うちのかわいいシーモンキーを愛でるべきだ。
「…これ、ずっと見ちゃいますね。かわいいわ」と、同じく見に来ていたライター西村さん。やはりペットを褒められると嬉しいのだ。
でも、いいのだ。ちょっとしんどいなー…と思って腕を見れば、そこにヒコヒコ、ヒコヒコ、と腕を動かして無心に泳ぐシーモンキーがいる。
かわいい。やすらぐ。ぼーっといつまでも見ていられる。
これは間違いなく、癒しだ。
ユビキタスシーモンキーは、常にそこにあるユビキタス癒しなのだ。
シーモンキー、うまく育てれば水槽の中で繁殖し、新しい世代が次々に生まれてくるという。なかなか育てがいのあるペットだ。
で、頭数が増えてきたら水槽を両手両足、さらにペンダントや携帯ストラップとして装着していくというのも考えられる。女性ならピアスなんかもいいかもしれない。
久しぶりにお会いしたイーストプレス堅田さんとも「これなんすか?」「ペットのシーモンキーですよ」と会話が弾む。喋りの苦手な人にもオススメだ。