特集 2016年9月8日

赤ちゃんには鼻毛がない、は本当か

生まれたての赤ちゃんには鼻毛がない、らしい。
生まれたての赤ちゃんには鼻毛がない、らしい。
鼻毛にまつわるお仕事をしていた時に雑学を集めていたら、その中のひとつにこれがあった。
しかし、ネット上を調べてみたところ、検証画像が(ほぼ)落ちていなかった。実際はどうなのだろう。
すると、妻から報告があった。
父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:庵野作品によく出てくる、プロトンビームが放ちたい


「赤ちゃんができたみたい」
「赤ちゃんができたみたい」
これはチャンス!確かめてみなければ……
これはチャンス!確かめてみなければ……

赤ちゃんの鼻毛の有無がわかるまでの200日

お腹のなかの赤ちゃんはスクスクと育った。
妻から、「今、300グラム」とか「500グラムになった」と言われても今いちピンとこなかったが、 家にいる亀とだいたい同じ重さだと思うと、そのでかさにビビる。
こんなサイズの生き物がお腹の中にいたら、そりゃ大変だ。
こんなサイズの生き物がお腹の中にいたら、そりゃ大変だ。
妻は出産予定日の1ヶ月前くらいから、実家に帰った。
僕はといえば、家にひとり残り、仕事をしたり工作をしたりしていた。
寂しい週末工作
寂しい週末工作

予定日の一週間前

妻から「ちょっとはやいけれど、もしかしたらそろそろ来るかも……」と連絡があった。
急いで妻の実家に行く。
その夜、妻は、珍しく焼肉を食べに行きたいと言い、むしゃむしゃたいらげ、その後、花火大会にもいきたいと言った。
うっめぇええ
うっめぇええ
きっれぇええ
きっれぇええ
花火がうちあがったら、写真をバシバシ撮りまくっていた。
「三脚がほしい……」と本腰を入れ撮り始めたので、おいおい、大丈夫かと思っていたら、「ちょっと痛みがきたかも」と言い出した。
「もしかしてこれが陣痛……」
「もしかしてこれが陣痛……」
病院に相談したら、「一度見せに来てください」と言われ、寝巻きのまま病院まで行ったら、そのまま入院となった。

その晩。妻はウンウン唸っていたが、僕はといえば睡魔に勝てずグーグー寝てしまった。
朝があけると、診察のため処置室に呼ばれた。
朝があけると、診察のため処置室に呼ばれた。
しまった、寝巻きがドクロのTシャツだ。
しまった、寝巻きがドクロのTシャツだ。
病院に最も適さないTシャツを着てきてしまった。
「お父さんは立会いされるんですねー」と言われ、「は、はい」と答える。でも、こわい。立会いにはトラウマがあるのだ。

中学生の時、飼っていた犬が病気になり、動物病院に入院した。
「手術中、病院で待っていていいですか?」とたずねたら、「いいですよ」と言ってもらえた。
当日。病院の受付に行ったら、なぜか手術室まで連れていかれた。
どうやらお医者さんは、僕が「手術室で立会いたい人」と勘違いしていたようだ。手術台の上には、開腹された愛犬がいた。
ウェンディイィ
ウェンディイィ
無事元気になったからいいものの、あれは怖かった。
今回はどうだろうか。不安がつのる。

お医者さんは「う~ん、もうちょっと様子みないとあれかね~」と首をかしげて部屋を出ていった。
すると看護師さんから、「よかったらこれどうぞ」とサザエさんを渡された。
いくら、国民的人気漫画といえど、今読む度胸はない。
いくら、国民的人気漫画といえど、今読む度胸はない。
部屋に取り残されて数時間が経過。
妻は時折おとずれる陣痛に苦しんでいる。不安だ。
「ちょっと状況が悪い時は不安がらせないように、はっきり伝えない」みたいなルールがあるのかもしれない。
はっきり言われるのも嫌だけど、濁されるのも怖い。
すると、ものすごい高齢のおばあちゃん助産師さんが来た。」おばあちゃんは、「この数値やったら、そのままいけるんやない?」と一言漏らした。
うっかり口がすべった?
うっかり口がすべった?
後から聞いた話によると、帝王切開の瀬戸際だったらしい。
妻の陣痛の周期は徐々に短くなり、出産へとなだれ込んだ。
ふーっ、ふーっと、大きく息を吐き出す妻。
ふーっ、ふーっと、大きく息を吐き出す妻。
どんどん激しくなる妻の息づかい。
「がんばる、がんばる」と言っている。
もうがんばってんじゃん。これ以上なにをがんばることがあるんだ。
なんとかしてサザエさん。
なんとかしてサザエさん。
すると、「赤ちゃんの頭、さわれましたよー」と助産師さん。
我が子よ、そこにいるのか……
我が子よ、そこにいるのか……
すると、妻は「がんばれ、がんばれ」と言い出した。
がんばれ、がんばれ。
がんばれ、がんばれ。
最初は、自分自身を励ましているのかと思っていた。
けれど、違った。生まれてくる我が子を応援しているのだ。
あぁ、そうか。僕なんかよりもずっとずっと先に、妻はお母さんになっていたのだ。
赤ちゃんを産む時の痛みは、鼻からスイカ出すぐらいとか言われているけれど、そんな時、我が子にでもがんばれってよう言わんなと、この空間で唯一がんばってない人間は心の底から思った。

頭が出てからは一瞬だった。
助産師さんに抱かれた赤ちゃんは、ひと呼吸おいて「ホェエ……」と泣いた。
ホェエ……
ホェエ……
思い描いていた赤ちゃんの泣き声とはちょっと違った。人間というか小動物みたいな音だった。泣き声というか、鳴き声っぽい。
赤ちゃんを受け取る妻。
赤ちゃんを受け取る妻。
赤ちゃんは、もともとずっとそこにいたみたいにすっぽりと妻の手におさまっている。なんかいつもにも増して妻が大きく見えた。これが母の力か。
妻から「写真を撮って」とカメラを渡されていたけれど、ブレブレになった。
その後いろいろ処置があるとのことで、僕は部屋を出された。
じわ~
じわ~
病室で待っている間、緊張がほどけてきて、じわ~と脳に快楽物質が溶け出してくるのがわかった。

考えることは山ほどあった。まだ名前も決まっていないし、それに……それに……鼻毛の有無も確認していない。

本題に戻ります

はい、脱線してしまいました。
本記事の主題は、「赤ちゃんの鼻毛」です。
主題である、赤ちゃんの鼻毛ですが……
ありませんでした!
ありませんでした!
ありませんでしたー!
ありませんでしたー!

愛しの我が子

生まれたことを伝えると「立会いどうだった?」と聞かれることが多い。
その場はなんか適当なことをいってお茶を濁してしまうけれど、恥ずかしながら、わたくし、感動してしまいました。
「さみしくなったら、おヘソを見よう。」という名作キャッチコピーがある。
当たり前のことだけれど、地球上にいる全ての人間は、みんなみんな、こんなしんどくてやばい体験の末、生み出されているのだ。
「なんで人を殺してはいけないの?」みたいなことを聞いてくる中学生がいたら、今度からボッコボコの半殺しにしようと思う。

何日かして、妻におばあちゃん助産師さん(80歳を超えているらしい!)がおっぱいマッサージをしてくれたらしい。

おばあちゃん助産師さんは、「ゴッドハンド」の異名を持っているらしく、妻がちょっと施術してもらったら、おっぱいがドババーっと出て、おばあちゃんのめがねにも飛んでしまったらしい。
「すみません……」と妻が謝ると、「いつものことだから」とおばあちゃん。
「いつものことだから」
「いつものことだから」
「院長先生に、水中ゴーグル買ってあげよっかって言われてるんだよね」と眼鏡も拭かず、さっそうと部屋をあとにしたそうです。
かっこよすぎる。

今は、息子と、そして鼻毛の成育を見守っていきたい所存です。
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