特集 2016年9月1日

我が家の猫が20歳を迎えました

ハッピーバースディ、20歳
ハッピーバースディ、20歳
我が家で飼っている猫が20歳になった。昔の伝承では尻尾が割れて猫又になるといわれる年である。

いっそのこと本当に妖怪になって生き続けてほしいと思うのだが、残念ながらそういうわけにもいかないだろう。

かなりの高齢ということもあって最近は特に老化が顕著となり、いろいろと面倒を見なければならないことが多くなった。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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迷い猫を保護して20年

我が家に猫が来たのは私がまだ高校生だった頃の話だ。当時コンビニでアルバイトをしていたのだが、その勤務中ふと子猫が店内に迷い込んできた。

小さな体の割にすばしっこく、しばらく追い掛け回してなんとか捕まえることができたのだが、店の外を探しても母猫らしき姿はない。車の通りもそこそこあることだし、このまま野放しにしては死んでしまうかもしれない。私は家に連れて帰ることにした。

どうやら既に乳離れはしているようで、同僚から分けてもらったキャットフードをあげたらむしゃむしゃ食べた。家族には内緒のまま自室の段ボールで飼おうとしたのだが、翌日学校へ行ってる最中に母親に見つかったらしく、帰宅した時には既に名前が付けられていた。
子猫の写真はないが、2~3歳ぐらいの頃の写真が残っていた
子猫の写真はないが、2~3歳ぐらいの頃の写真が残っていた
この頃はまだ動くボールやおもちゃに夢中だった
この頃はまだ動くボールやおもちゃに夢中だった
獣医に連れていったところ、生後一ヶ月から二ヶ月ぐらいのメスであることが判明した。まるで毛玉のようなふわふわでころころな生き物であったが、その後すくすくと成長し、あっという間に立派なキジトラと相成った。
思えばたくましく成長したものである
思えばたくましく成長したものである
その猫人生は決して順風満帆なものではなく、生後一年ほどで大きな病気を患い生死の境をさまよったこともある。一ヶ月くらい入院していたのだが、その間はずっと腕に点滴の針を刺していたので、無事完治して退院してからも寝る時には右前脚を前に出したままにする癖が残っていたのを覚えている。
今ではその癖もすっかりなくなり、寝る時でも前脚をしまっている
今ではその癖もすっかりなくなり、寝る時でも前脚をしまっている

いつの間にかやってきた、二匹目の猫

なお、我が家にはもう一匹、オスの黒猫がいる。私が一人暮らしを始めて実家を離れた頃に妹が拾ってきた猫である。現在は15歳ぐらいになり、こちらもかなりの爺さん猫だ。
警戒心が強く、エサをねだる時以外はあまり近づいてこない猫だ
警戒心が強く、エサをねだる時以外はあまり近づいてこない猫だ
この猫は後ろ足が一本ない。我が家では飼い猫をある程度自由に外出させていたのだが、ある日、右後ろ足に酷い怪我を負った状態で帰ってきた。獣医によると車のタイヤに巻き込まれてしまったのではないかとのことで、やむなく膝下を切除することとなった。
自分では掻けないので、首周りを掻いてやると非常に喜ぶ
自分では掻けないので、首周りを掻いてやると非常に喜ぶ
キジトラの方は子猫の頃から一緒に暮らしていたこともあってとてもよく懐いてくれているのだが、こちらの黒猫は既にある程度成長していた野良猫を飼い猫にした為、野性味が強くあまり人には懐かない。

特に実家を離れていた私のことは恐怖の大魔王とでも思っているのか、抱きかかえただけで情けない声を漏らして失禁するという有様であった。もっとも、同居するようになった現在は多少慣れてくれたようで、腹が減った時には自ら近づいてくる。それでも抱きかかえると爪を立てて逃げようとするので困ったものだ。
猫はトイレの最中が一番イケメンである。無防備であると本能的に分かっており、真剣な顔つきになるのだろう
猫はトイレの最中が一番イケメンである。無防備であると本能的に分かっており、真剣な顔つきになるのだろう
ちなみに先住のキジトラは黒猫のことを蛇蝎のごとく嫌っており、もしちょっかいをかけられようものなら速攻で猫パンチを叩きこんで喉元に咬みつこうとする。やはり足が一本ないのは相当なハンディキャップになるようで、黒猫はただ尻尾を巻いて逃げるのみだ。
弱いのに気だけは強く、度々ちょっかいを出しては逆にやられている
弱いのに気だけは強く、度々ちょっかいを出しては逆にやられている

猫の老化とその介護

さて、キジトラに話を戻そう。若い頃に病気をしたこともあり、早めにお迎えが来てしまうのではないかと憂慮していたりもしたのだが、ありがたいことにこうして20年以上生きてくれている。

いまだ素早く走ることもあるし、跳躍力も衰えてはいない。ただ、やはりここ最近はだいぶ老け込んできた感じである。くりくりとしていた目はやや落ちくぼみ、どことなく目つきが悪く、怯えるような表情を見せることが多くなった。右目の視力が落ちているのか黒目の大きさが左右で異なり、若干斜視気味である。毛はバサバサでツヤがなく、白い毛も多い。まさしく老猫といった貫録のある風貌である。
昔はピンと張っていた自慢の髭も、今ではカールするようになった
昔はピンと張っていた自慢の髭も、今ではカールするようになった
肉体的な衰えのみならず、精神的な衰えもきているようだ。体力の低下を実感して弱気になっているのか、近くに誰かいないと心細くなるらしく、近所迷惑になりそうな甲高い大声でニャーオニャーオと鳴きわめく。

しょうがないので構ってやりにいくと、「なんでもっと早く来なかったんだ!」といわんばかりに物凄い怖い顔付きで抗議してくる。それは、まるで幼児退行のようである。
鳴き声がしたので様子を見に行くと、なぜか洗濯カゴに入っていてギョッとした。普段しない猫の行動を見ると驚くものだ
鳴き声がしたので様子を見に行くと、なぜか洗濯カゴに入っていてギョッとした。普段しない猫の行動を見ると驚くものだ
とはいえ常にそのような状態というわけではなく、活動するのは朝と夕方ぐらいなもので一日の大半は寝て過ごしている。あまりに身動きせず眠りこけているので、じっと見つめて胸が上下していることを確認し、ホッと胸をなで下ろす日々である。
ほぼ一日中寝続けているものだから、時折心配になる
ほぼ一日中寝続けているものだから、時折心配になる
食事にも気を遣ってやる必要がある。歯が弱っているのでカリカリを噛み砕くことができず、丸飲みしてしまう為に未消化のまま吐いてしまうことが多々あるのだ。カリカリにジェル状のフードを混ぜて柔らかくするなど、食べやすくさせてやらねばならない。
カリカリの上に柔らかいフードをかけて食べやすくしてやる
カリカリの上に柔らかいフードをかけて食べやすくしてやる
ただ、このキジトラは小さい頃からカリカリしか食べさせてこなかった為、ウェットフードをあまり好きではないようである。特に時間が経ったものは見向きもしなくなるので、エサを欲しがったらその都度やる必要がある。

昔はテキトーな量のカリカリを皿に盛っておいて、あとは猫の好きな時に食べさせていただけに、エサの管理がやや煩雑になった感じだ。
普通に20歳向けの商品があるあたり、今や20年以上生きる猫は珍しくないのだろう
普通に20歳向けの商品があるあたり、今や20年以上生きる猫は珍しくないのだろう
また黒猫の方も健康に爆弾を抱えている。以前より腎臓の機能がよろしくなく、尿路結石ができやすい体質なのだ。症状が悪くなるとご飯を食べなくなるので、その都度獣医に駆け込んで治療してもらうということを繰り返していた。

ただそれだとどうしても対応が後手後手になってしまうので、最近は水分を多く与えて結石を予防するようにしている。具体的には、主食のキャットフードを食べさせる前に、副食のキャットフードを水で薄めて与えている。
フレーク状のキャットフードを結構な量の水で薄める
フレーク状のキャットフードを結構な量の水で薄める
うまみが濃厚らしく、これだけ薄めても皿を舐めるくらいによく食べる
うまみが濃厚らしく、これだけ薄めても皿を舐めるくらいによく食べる
副食で水分を摂らせたら今度は主食だ。主食のキャットフードもまた普通のものではなく、腎臓病を患う猫用のものを与えている。

腎臓サポートのキャットフードはドライタイプとウェットタイプがあるのだが、この黒猫はウェットの方が好みのようだ。ただお値段が多少かさむので、節約の為にドライフードも混ぜて食べさせている。
腎臓病の猫のための食事療法食である
腎臓病の猫のための食事療法食である
ドライフードだけだと食べないので、ウェットフードを覆う感じで与えてやる
ドライフードだけだと食べないので、ウェットフードを覆う感じで与えてやる
また食事療法と併せて「皮下輸液療法」も行っている。これは猫の皮膚の下に輸液(点滴に使われるものと同じリンゲル液)を注入するというもので、獣医から指導を受けた後、自宅で1日おきに100mlずつ入れるようにしている。

人間と違って猫などの動物はラクダのこぶのように水分を溜めることができ、必要に応じて吸収されるとのことだ。血管に注入する点滴と違って短時間に多くの輸液を入れることができ、100ml入れるのにかかる時間は10分程度である。
輸液、チューブ、針の三点セット。最初はおっかなびっくりだったが、もう慣れたものだ
輸液、チューブ、針の三点セット。最初はおっかなびっくりだったが、もう慣れたものだ
黒猫は首を掻いてやればおとなしくなるので、案外楽なものである
黒猫は首を掻いてやればおとなしくなるので、案外楽なものである
食事療法と輸液により常に水分を与え続けることで、幸いにも症状が悪化することはなくなった。腎臓病は高齢の猫につきものとのことで、このような介護が必要な猫は少なくないのだろう。

また20歳になったキジトラの方も、最近になって暑さにバテたのかあまりエサを食べなくなり、獣医と相談して黒猫と同様に輸液を与えるようになった。
こちらは逃げようとするので、首根っこをつかんでおとなしくさせる
こちらは逃げようとするので、首根っこをつかんでおとなしくさせる
輸液を注入した後はエサを欲しがるようになり、これでホッと一安心だ。血糖値が微増することで食欲が刺激されるのだろうか、原理はよく分からないが、まぁ、快方に向かっているようで何よりである。

健やかなる晩節を

猫を拾ってきて20年。ずっと娘のようにかわいがってきたが、いつしか介護が必要な婆さん猫になった。人間と同様、猫もまた年を取ると色々な面で老いが滲み出てくるものである。とはいえ、この程度の介護であればむしろ望むところだ。

昔と比べて現在は食事や医療の向上により猫の寿命は延びているのだろうが、それでも何十年と生き続ける猫は存在しない。うちの猫もそう遠くないうちにお迎えがくるのだろうが、一年一月でも長く生きて欲しいと思う。最期の時には私に拾われて良かったと思ってくれるよう、できる限りお世話してあげたいものですな。
まだまだ長生きしてくださいな
まだまだ長生きしてくださいな
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