ソーマトロープとは
ソーマトロープというものをご存知だろうか。
Wikipediaには「玩具の一種である。 円板やカードの両面に絵を描き、2本の紐を取り付ける。 紐を両側から持って素早く振り回すと、円板が回転することで両面の絵が交互に見え、残像現象によって1つの画像に見える。」と長い説明がある。
が、ようするにこういうものだ。
形としてはこんな感じ
こういうのである。鳥が鳥かごに入って見えるだろう。
口で説明すると難しいが、見れば分かる通り、裏と表の2枚絵のアニメーションということだ。ああ知ってる人も多いだろう。
表に鳥、裏に鳥かごのイラストが描いてあって、回転させると鳥が鳥かごに入っているように見える、という意匠は有名だろう。
Tシャツにするとどうなるか
さて、ここにこんなTシャツがある。
表に鳥(鳥なんだろうか)
裏面は鳥かごになっている
こんなサイズ感になっております
ソーマトロープTシャツである。イラストは当サイトで活躍する漫画家・イラストレーターのクリハラタカシさんによるもの。かわいい。
実際に動かさなくても、デザインだけみれば「ああ、ソーマトロープのパロディだよね」ということで了承が得られそうだ。
ここでお知らせしておきたいのだが、このTシャツはデイリーポータルZ友の会の松コース会員に送ったグッズである(詳細は後述する)。言わないで進むと、何これ?となりそうなのでこのタイミングで宣言しておいた。
「え、デイリーポータルZ友の会って何?」という方はこちらから
果たしてこの大きさでもソーマトロープとして機能するのだろうか。機能するとしたら、どのようなコツが必要なのか。実験して確かめたい。
ホワイトボードに貼る
身近なところで回転するものといえばホワイトボードである。まずは、ホワイトボードに貼り付けて回転させてみたい。
表と裏で、回転したときに位置が合うように調整して貼り付ける。
貼り付けて
回す。どうだろうか。
回す作業をしていると確認できないので、編集部の橋田さんに観察する役として来てもらった。
う~ん
橋田さんに聞くと、見えない、とのこと。回転速度が足りないらしい。冒頭に示したおもちゃのように高速回転させる必要がある。
もうすこし頑張ってみよう。今度は少し回転を速めてみる。やりすぎると壊れそうなので、気をつける必要がある。
うお~~~
少し早回しにしたGIFアニメに「うお~~~」とキャプションを付けたくなってしまうのは何故だろうか。
回しながら「どうですか~?」と聞くと、橋田さんは目を細めている。それで「見える気がする」というのだが、どうも気を使っているような感じである。これで成功にするのでは気持ちが悪い。
「これは失敗なので、次に行きましょう」と僕は言った。
棒につけて回す
続いては、板に棒をつけてTシャツを回せるようにした。
出で立ちは安っぽい祭りのようだが、これは立派な実験である。
公園にやってきた。暑い。昼が近い時間だったので、公園で休憩している人もいるがこれで休憩になるのかと疑問だ。
カメラの設定も強い日差しのせいで狂う。オートにしていたはずのISO感度がなぜか3200になっていた。カメラも暑がっている。
風が強い。持ち上げて回すのは難しい。
回転の軸を示してるのだが、ヒップホップな感じになった
板を持ち上げて回してみると、どうも軸がぶれるので重なって見えないらしい。風が吹いているせいもあるだろう。軸を地面に立てて回してみると、これは悪くないようだ。
これなら行けそうだ
そ~れ クルクル~~
橋田さんにどうか尋ねると、長い沈黙のあとに「……見える」と答えた。かなり目を細めて見ているようが、それが日差しのせいかわからない。
Tシャツなので着てみる
さっきから板に貼り付けて回転させていたが、これはTシャツであった。素直に着てみよう。
素直に着てみた
それ~
どうだろう、鳥は鳥かごに入ったか。ジャッジの橋田さんの意見を伺う。
見えるような気がした瞬間もあった
なんとなく見える…ような…ということであった。
ただ条件が複数あり、背筋を伸ばし回転の軸に気をつけた上で、途中で目をつむり脳内で合成するとかすかに見えたきがする瞬間が訪れるとのことだった。それって見えていると言うのだろうか。暑いからはやく終わらせたいのだろうか。
率直に意見を聞くと、まず前提として、この方法だとスピードが足りてないそうだ。
秘密兵器バランスボード
高速回転の秘密兵器として、バランスボードというものも用意した。駒のように下が出っ張っている板だ。バランスを取りながら乗る器具なのだが、うまくすると回転することができるのである。
これがコマのように回転する。期待がかかるバランスボード
ここまで原始的過ぎたがここに来てようやく文明みたいなものがやってきたと個人的には思っている。これは期待したいところだ。
では行きます。
あっあっ
これはムリ
どうやっても腰が引けるし、肝心の回転が続かなかったので、秘密道具は秘密のままにした。
ぶら下がり回転
最後に編み出したのが、木の棒をぶら下げて、それに捕まって回転するという手法だ。最後まで技術が原始的で申し訳ない。
柱にこういう棒を吊り下げます
こんなものだろうか。
試しにぶら下がってみると、Tシャツにシワができてしまってイラストが見えない。裾をテープで留めた。
新しいファッションの予感が少しだけした
そーれ
……おえー
これが見えないだけならまだいいのだが、回転によってすこぶる気持ちが悪くなる。たった2,3回転でこの有様なので、圧倒的だ。この熱い夏の日差しの中ではなおさらである。
一応、ジャッジに聞くと「軸がズレてて鳥かごに入っているようには見えない」ということだった。そうか。
以上、「人はそんな簡単に回転できない」ということのあらましである。なんの教訓も生み出さないジャスト・ファクツという感じだ。
ただ、その副産物として「効率的に気持ち悪くなる器具」を作りだしてしまった。そしてその最初の餌食になったのは開発者である僕自身である。まるでギロチンを発明したギヨタン氏のようである。
……と書こうとして調べたらギヨタン氏はギロチンを発明をしてないし、ギロチンによって処刑もされていなかったらしいので手の施しようがない。
この記事で使われたTシャツは、7月に会員だった人向けのグッズです。これから入会される方にはまた別のものが毎月送られてきます。
この記事を読んで分かる通り、これはこういうデザインなだけなのでで「もしかしたらすごい速さで回転したらソーマトロープみたく残像みたいに見える?」などとはゆめゆめ思わないでください。
わかりやすく後述した。