特集 2016年8月22日

初めての夏フェス参戦で薪を40kgかついだ

二宮金次郎になれる夏フェスに参戦した
二宮金次郎になれる夏フェスに参戦した
今年も夏フェスが盛り上がっている。ツイッターを見ればフジロックだ! サマソニだ! と盛り上がるタイムライン。僕もご多分に洩れず、今年はとある夏フェスに参戦した。東京都檜原村で開催された「薪(まき)フェス」である。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

サマソニと同日に行われる「薪フェス」

8月20日、21日、東京・大阪の2会場で夏フェス・サマーソニック、通称「サマソニ」が開催された。そして、その裏で「薪フェス」も開催された。おそらくフェスと名の付くものの中では最も小規模、しかしながらエキサイティングなイベントである。その熱い夏の一日をご覧いただこう。
当日は夏休みらしい青空が広がっていた
当日は夏休みらしい青空が広がっていた
前日の20日は大気が不安定になり、激しい雨が降った関東地方。だが、翌21日はそれが嘘のように晴れ渡り、絶好の夏フェス日和である。

バスに乗り向かったのは、檜原村。島しょ部を除けば東京で唯一の「村」である。車窓には田舎の夏休みっぽい、のどかな景色が映る。
ギャル2人組もフェス参戦者であろうか
ギャル2人組もフェス参戦者であろうか
最寄り駅からバスで30分。交通の便が悪いところでやるところも夏フェスっぽい。ともあれ、会場の檜原小学校に到着した。前日の雨でグラウンドはぬかるんでいるが、少しでも歩きやすいようにと固く踏み鳴らした細い道が整備されていた。ホスピタリティが高い。
丸太のアプローチが薪フェスへの入口
丸太のアプローチが薪フェスへの入口
じつは薪フェスは村の夏祭り「払沢の滝 ふるさと夏まつり」のプログラムのひとつである。滝のライトアップや花火大会など華々しいラインナップのなか、なにゆえ薪フェスが催されることになったのか気になる。わざわざやってるイベントのほうが地味ではないか。
毎年恒例「払沢の滝 ふるさと夏祭り」。ポスターに薪フェスの文字はないが
毎年恒例「払沢の滝 ふるさと夏祭り」。ポスターに薪フェスの文字はないが
「薪フェス」やってた。のぼりがかわいい
「薪フェス」やってた。のぼりがかわいい
メインステージ(盆踊りなどをやるステージ)からやや離れた一角に薪フェスのステージはある。フジロックでいうところの「ROOKIE A GO-GO」だろうか(オーディションで選出されたルーキー達による小さなステージ、らしい)。
受付を済ませフェスっぽいタグをもらうと、より気分が盛り上がる
受付を済ませフェスっぽいタグをもらうと、より気分が盛り上がる

薪フェスの体験型アトラクション

では、薪フェスのアトラクションを紹介していこう。
昔ながらの木こり気分が味わえる、本格「薪割り体験」
昔ながらの木こり気分が味わえる、本格「薪割り体験」
ハラハラドキドキ、エキサイティングな「チェーンソー体験」
ハラハラドキドキ、エキサイティングな「チェーンソー体験」
プロユースの本格チェーンソーを使用
プロユースの本格チェーンソーを使用
フェスっぽいおしゃれギャルも注目
フェスっぽいおしゃれギャルも注目
子どもに人気。薪で作ろう「ネイチャーウッドクラフト体験」
子どもに人気。薪で作ろう「ネイチャーウッドクラフト体験」

メインは「二宮金次郎チャレンジ」

どれも楽しそうなのだが、なんといっても一番の目玉はこれ。そう、「二宮金次郎チャレンジ」である。
薪フェスにおけるヘッドライナー的なやつ
薪フェスにおけるヘッドライナー的なやつ
道徳・勤勉の化身こと二宮金次郎。寸暇を惜しんで勉学に勤しみ、薪を背負いながら書物に没頭した金次郎よろしく、薪を背負いながら本を読むという競技(?)である。

「君はいくつ背負えるか?」挑発的なキャッチコピーが闘志をかきたてる。
薪の重量は2種類。20kgの部と40kgの部がある
薪の重量は2種類。20kgの部と40kgの部がある
なるほど、これは素晴らしい。薪を背負いながら本を読む大変さを味わうことで金次郎の勤勉さを身をもって体感するとともに、歩きスマホが社会問題化する現代人に対する警鐘でもあるに違いない。
いや、たんなるノリっす(スタッフの佐田さん)
いや、たんなるノリっす(スタッフの佐田さん)
なるほど、深読みしすぎていたようだ。ただ楽しいからやる。フェスとはそういうものだった。

さて、ニノキンチャレンジであるが、想像以上に過酷な競技であった。特に40kgの薪ともなれば、かついで立ち上がるだけでもひと苦労なのだ。
うひゃあ、もちあがんねえ! 最初は誰もがその重量におののく
うひゃあ、もちあがんねえ! 最初は誰もがその重量におののく
ぐぬぬぬぬ…腹筋、背筋、全ての筋肉を総動員して上体を起こし
ぐぬぬぬぬ…腹筋、背筋、全ての筋肉を総動員して上体を起こし
薪を起こしたらひと休みしてパワーを蓄え
薪を起こしたらひと休みしてパワーを蓄え
そこからぐぐぐぐっと前傾して
そこからぐぐぐぐっと前傾して
ぬおおおおおおおっ!と立ち上がる
ぬおおおおおおおっ!と立ち上がる
こうしたプロセスを経て二宮金次郎は完成する
こうしたプロセスを経て二宮金次郎は完成する
それにしても金次郎、こんなの担いで山道を歩き、平然と本まで読んでいたのか。知性派のイメージが先行していたが、じつはとんだマッチョだったんだな(実際、大男だったらしいです)。
そこから会場を一周するまでがプレイ。「よっ!金次郎!」の声援が飛ぶ
そこから会場を一周するまでがプレイ。「よっ!金次郎!」の声援が飛ぶ
筆者も体験したが、3歩でギブアップ。金次郎パイセン、パネェっす。
筆者も体験したが、3歩でギブアップ。金次郎パイセン、パネェっす。
ひとりで立ち上がれるチャレンジャーは稀。人々の善意の上に成り立つ金次郎
ひとりで立ち上がれるチャレンジャーは稀。人々の善意の上に成り立つ金次郎
勤勉そうな彼は筆者主観によるベスト金次郎
勤勉そうな彼は筆者主観によるベスト金次郎
女金次郎
女金次郎
屈強金次郎など、様々な金次郎が登場し大いに盛り上がったのであった
屈強金次郎など、様々な金次郎が登場し大いに盛り上がったのであった

なぜ薪フェス?

このようにとても楽しそうなイベントではあるのだが、なぜ薪に絞ったフェスを開催するに至ったのか? 主催者の「東京チェンソーズ」に聞いてみた。
「東京チェンソーズ」は奥多摩地方を拠点とする林業会社
「東京チェンソーズ」は奥多摩地方を拠点とする林業会社
「東京チェンソーズ」。名前だけ聞くとどんな猟奇的な集団なんだと思ってしまうが、彼らは檜原村をフィールドに活動する林業会社。山を愛し、東京の木を愛する現代の「きこり集団」である。

10年前に結成し、平均年齢30代のメンバー9人で活動。林業の若き担い手として期待されている。
東京チェンソーズ代表の青木亮輔さん。50歳以上の就業者が多いなか、若きリーダーとして林業再興に尽力している
東京チェンソーズ代表の青木亮輔さん。50歳以上の就業者が多いなか、若きリーダーとして林業再興に尽力している
「薪フェスの目的は地元の木に親しんでもらい、国産材の良さや林業について知ってもらうきっかけを作ることです」

江戸時代から林業が盛んだった檜原村からPRの依頼を受け、3年前からスタートしたそうだ。

林業を盛り上げたい

聞けば日本で使われている木材はそのほとんどが海外からの輸出品。木材の「国内需給率」は3割にも満たないという。檜原村をはじめ全国の山々には良質な国産材の原料となる木々が豊富に茂っているのに、これではあまりにもったいない。
みっしりと茂る木々。その資源は十分に活用されていないという
みっしりと茂る木々。その資源は十分に活用されていないという
木材は苗木を植えてからおよそ50年で「商品」になるそうだ。全国の山々には50年前、先人たちが子孫のためにと植えた木々が伐期を迎えているが、担い手不足で放置され「死んだ森」と化しているケースも少なくない。

林業とはただ木を切って運び出すにとどまらず、間伐、枝打ち、下刈りなどの「山造り」を丁寧に行うことで、生態系にとってあるべき姿に維持する役割もある。林業の復興は、動植物が豊かに息づく美しい山を守ることにもつながる。
檜原村では一般向けに薪の販売もしている。1パレット(約350kg)で6000円
檜原村では一般向けに薪の販売もしている。1パレット(約350kg)で6000円
林業を盛り上げるためにも「食える仕事」にしていきたいと青木さんたちは言う。そのためには国産材をPRして需要を喚起し、東京の木で家を建て、家具を造り、生活の場へ届けていくことが必要だ。薪フェスの楽しい催しの裏には、林業に生きる男たちの想いがあった。パネェとか言ってる場合ではない。
薪割りも
薪割りも
チェーンソーも
チェーンソーも
二宮金次郎も、全てが林業の明日へとつながっている
二宮金次郎も、全てが林業の明日へとつながっている
かくして「薪フェス」というトリッキーな催しには、林業にかける若者たちの熱き想いが込められていた。

東京チェンソーズは現在、東京都などから複数の山の管理を任されているそうだ。村道沿いの草刈りからスタートし、それこそ二宮金次郎的な地道さで少しずつ信頼を勝ち得ていったという。そんな彼らのこれからの歩みを、心から応援したい。

薪フェス、ぜひ来年も!

そのときツイッターのタイムラインには、サマソニ参戦中の知人よりメイヤーホーソーンに興奮する投稿が流れた。

しかし、羨ましくなどない。こっちの「チェーンソーン」だって超盛り上がっている。初めての夏フェスで、最高の思い出ができた。
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