特集 2016年8月10日

日本一やかましい祭りのやかましくなさがすごい

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三重県の桑名市で日本一やかましい祭りと言われる祭りがあるらしい。

どんなものかと行ってみたら確かにやかましかったし、全然やかましくなかったのがすごかった。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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午前二時にやかましいわけなくない?

日本一やかましいと言われている祭りは江戸時代から始まったといわれる石取祭である。祭りに出てくる山車の数が日本最大級だとか色々凄いらしい。

でも楽しそうな「賑やか」とかではなくネガティブな意味を感じる「やかましい」って一体どういうことなのか。そんなにやかましいなら少しは自重したらどうなのか。
やかましくなさがすごい。
やかましくなさがすごい。
ならば体感してやろうじゃないかとやってきたら完全に普通の住宅地で、完全なる静寂。
屋台から祭りがある様子は感じ取れるが静寂そのもの。
屋台から祭りがある様子は感じ取れるが静寂そのもの。
石取祭は八月第一週の土曜深夜から日曜深夜まで行われる祭りなのだが音を出していい時間が厳密に決まっており、太鼓や鉦(かね)が解禁される瞬間の「叩き出し」を楽しむのが“通”。

と書いてあったブログを読んで来てみたらこれである。
スマホのアプリで調べると17デシベル。「木の葉の触れ合う音」レベルだそうです。参考:騒音値の基準と目安
スマホのアプリで調べると17デシベル。「木の葉の触れ合う音」レベルだそうです。参考:騒音値の基準と目安
来たのは二度目の叩き出しで日曜の午前二時。ねむい中、レンタカーを借りて来てみたらこの状況。会話すらするのも気を遣う静けさである。

流石にこの時間にやかましくしたら絶対に怒られる。これは失敗した感が強い。

深夜の祭りの異世界感

あー、完全に来るタイミング間違えたな。と思いながら歩く。通を気取って来てみたけれど、俺、初めてだもんな。

自ら突っ込んでいった“通”への道だが、「ココの蕎麦は蕎麦ツユをつけずに食べるのが通なんだよ」って言われたら「うるせぇ蕎麦ツユつけさせろ」って思う。初めはわかりやすい美味しい所を通るべきだった。
すでに終わった後感がすごい。
すでに終わった後感がすごい。
そんなことを思っていたら祭車(石取祭では山車を祭車〈さいしゃ〉と呼ぶ)が現れた。

緻密な木彫やピッカピカの漆塗りで装飾された祭車は派手だけれど重厚で厳かな空気を発しており、めちゃめちゃかっこいい。そして深夜の住宅街に急に現れた違和感がすごい。
木彫のクオリティがハンパじゃなくて本当に溜息出る。はぁ、かっこいい…。
木彫のクオリティがハンパじゃなくて本当に溜息出る。はぁ、かっこいい…。
祭車、いいな…。と喜んでいたら祭りの中心地である神社に近づくと祭車だけでなく参加者も集まってくる。やっぱり祭車カッコいいぜぇ!!と興奮しながらバシャバシャ写真を撮る。
にわかに盛り上がる祭り感。
にわかに盛り上がる祭り感。
写真を撮る俺、意に介さず祭者を引っ張っていくハッピの人たち、かっこいい祭車。住宅街での深夜二時の出来事である。まったく現実感がない。
マジで祭車、本当にめちゃくちゃかっこ良くないですか!!!?!?!
マジで祭車、本当にめちゃくちゃかっこ良くないですか!!!?!?!
だって、自分たち以外はみんなハッピを着ていて、写真撮ってても全くこちらを見ないのだ。俺にしかこの現象が見えていないか、この人達には俺が見えてないかのどっちかしか無い。

って思っていたら「もっと近く寄って写真撮っていってよ」って言われて、(俺のこと見えるんですか!?)って思った。完全に幽霊の立場の発言である。
ここからが本領発揮であった。
ここからが本領発揮であった。
深夜の住宅街での不思議体験。それだけでちょっと満足しつつあったんだけれど、実際に音を出し始めてからのやかましさとやかましくなさがすごかった。

深夜二時のやかましさが尋常じゃない

神社の中で神事をしている。
神社の中で神事をしている。
非日常的な体験に、それだけでフワフワしていたのだけれど年一の行事であるハッピ勢にはこれからが本番なので意気込みが違う。
今か今かと待ち構える。
今か今かと待ち構える。
神社の中で神事を行っていて、それが終わって合図があれば鉦(かね)や太鼓を叩いていいというしきたりで、ハッピ勢は今か今かと待ちわびる。

こんな静かな中で騒ぎ出すの…?とまだ半信半疑な自分には信じがたい状況である。流石にそこまでやかましくしないだろうと思っていたら合図が来て、ハッピ勢がダッシュで祭車に駆けつける。

響き渡る鉦に轟く太鼓。えっ、マジでこんな音量で太鼓と鉦を打ち鳴らすの!?まじかよ!?
深夜二時に鳴り響く、カーンカン、ドンドコドンドコという轟音。確かにこれはやかましい。
振りかぶる構えで分かる、全力っぷり。
振りかぶる構えで分かる、全力っぷり。
音が大きいということもあるし、太鼓と鉦の音だけで歌やメロディはなく轟音が鳴り続けるので「やかましい!!」という感じがものすごい。

この祭りがラップバトルに出たら「お前の演奏にゃフロウがねぇ(演奏が単純だぞ!)」ってdisられると思う。

深夜二時のやかましく無さがすごい

子は耳を塞ぐし、犬は音におびえる。
子は耳を塞ぐし、犬は音におびえる。
耳をつんざく轟音を深夜に立てる。それも恐ろしいのがこの祭車が街中を練り歩くのだ。逃げ場はない。
アプリのせいか、スマホ本体のせいか、84デシベル以上は絶対に表示されなかった。壊れてんじゃねーの。
アプリのせいか、スマホ本体のせいか、84デシベル以上は絶対に表示されなかった。壊れてんじゃねーの。
スマホで音量を計測してみたら常に80デシベル以上を計測。目安としては「うるさくて我慢できない 例:麻雀牌をかき混ぜる音(1m)」らしいが、体感としてはもっとやかましかった様に思う。
やかましさをあなたの家の前まで配達!
やかましさをあなたの家の前まで配達!
豪華に装飾された三輪の車が太鼓を連打しながら街中を走り回る。まるでリアルなマッドマックス怒りのデスロード。それが夜中に爆音上演。これは何かが狂っている。

そして爆音に漬かって同じリズムの繰り返しを聞いていると頭がボーッとしてきて何も考えられなくなっていく。すべてがゆるりと狂っていく…!なんだこの祭りは!?
とびだし坊やはなぜ疑問系なのか
とびだし坊やはなぜ疑問系なのか
楽しさが徐々にわかってきた感覚はあるが、深夜に家の近くでされたらたまらないだろう。そう思って見物に来ていた人に聞いてみた

俺「このお祭りって周りの人怒ったりしないんですか?」

地元の人「えっ!?なにって!?」

爆音で会話が成り立たない。

俺「(大声で)このお祭りって周りの人怒ったりしないんですか!?」

地元の人「えっ、それは、やかましいから?」

えっ、そこを疑問に思うの!?そこしかなくない!?

地元の人「生まれた時から聞いとるから怒るとかそういうもんじゃないわねぇ」

そういうものなのか。と思って他の人にも聞いてみてビックリしたのが「えっ、やかましいからって怒るの!?」ってまた言われたことだ。
日曜深夜の叩き出しは一時間弱くらいで終わっておりました。
日曜深夜の叩き出しは一時間弱くらいで終わっておりました。
「一年に一回やからまぁエエやないの」とか「そういう土地に住んでるんやから」「ある程度大らかやないとやってられんよ」などと言って桑名の方々は祭りを温かく見守っている。

やかましくない…!日本一やかましい祭りに対する桑名の人たちのやかましくなさがすごい…!日中の様子はどうなのかまた夕方に見に来てみた。

予想外に祭り

いやぁー、深夜は妙なものを見たなぁ。と思いながらもう一回来てみたら全然景色が違ってビックリした。
えっ、マジで!?
えっ、マジで!?
人がめちゃめちゃ多い!昨日とは同じ祭り、同じ場所だとは思えないくらいに人出がすごい。
人だかりよ
人だかりよ
そして祭車も大人気。人だかりで写真はおろか近づくことも出来ないレベル。深夜はあんなに近づけたのに!という嫉妬のような、寂しさのような感情と、仲よかった人がスターになったような嬉しさもある。

やかましいだけだったのに、こんなに人気になるものなのか。いや、祭者とか、ハッピ勢とかカッコいいけどさ。

お祭りとして普通に楽しい

地元の駄菓子屋が頑張ってお祭り感を盛り上げる。
地元の駄菓子屋が頑張ってお祭り感を盛り上げる。
そして深夜じゃなければ露店が出ていて、商店街もお祭りなのだ。
その手は桑名の焼き蛤。
その手は桑名の焼き蛤。
二個セット630円だけど、残り一個しか無いから250円でいいよ!って言われた蛤超うまい
二個セット630円だけど、残り一個しか無いから250円でいいよ!って言われた蛤超うまい
駄菓子屋さんはお菓子でクジをやって、佃煮屋さんが蛤を焼く。テキ屋で食べる焼きそばもいいけれど、地元が見えるお祭りはまた格別である。
習字の題材で「知人の家と書いてみましょう~」って言われたら何度か聞き直すと思う。「えっ、知人の家って書くんですか?なぜ?!」ってなる。
習字の題材で「知人の家と書いてみましょう~」って言われたら何度か聞き直すと思う。「えっ、知人の家って書くんですか?なぜ?!」ってなる。
桑名のゆるキャラ、ゆめはまちゃんのお部屋がどうにも応接室。ゆるキャラも大変なんだろうなぁと想像させる。
桑名のゆるキャラ、ゆめはまちゃんのお部屋がどうにも応接室。ゆるキャラも大変なんだろうなぁと想像させる。

本当にお祭りっていいですねぇ

肝心の祭車の方もバッチリとやかましく、装飾もカッコいいのだが、深夜とは全く違う。
太鼓と鉦を叩きながら歌い踊る。
太鼓と鉦を叩きながら歌い踊る。
深夜と違ってすごく楽しそうなのだ。厳かに執り行っていた感じのする深夜に比べて、ワイワイと晴れ舞台に立つ感じで太鼓や鉦を叩いている。
足取りがルンルンしてる。
足取りがルンルンしてる。
深夜には起きていられなかったんであろう子供も頑張って太鼓を叩いていたりと和気あいあいとしている。
祭車ごとに補給係がいて、それにビール一杯詰まっててすごく羨ましかった。
祭車ごとに補給係がいて、それにビール一杯詰まっててすごく羨ましかった。
おそらく昔は深夜にやっていたような神事であったのが、なんだかんだあってこの規模の祭になったんだと思うと、祭の成り立ちというか変遷を見ているようで楽しかった。やっぱり通は叩き出しから行くべきだ。

日本一やかましい祭りはホントに日本一やかましいと思う。知らんけど。それよりも桑名の人々のやかましくなさに驚いた。

深夜に街中でやかましくすることに加えて、参加者のためにお家の一階を集会所に改造しちゃってたり、祭車の倉庫のためだけの建物を用意したりとこの祭りに懸ける情熱と手間とお金が尋常じゃない。

極論、やらなくていい事にこれだけ情熱を燃やして地域を代表して、住民をつなげるものになっている。祭って、凄いですね。
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