特集 2016年7月19日

「金玉落しの谷」のルーツをあばく

なぜこの名前がついた…?
なぜこの名前がついた…?
先日「女体の森」というなんとも艶めかしい名前のスポットを見つけ、神主さんに由来を聞き記事にしたが、近所にもうひとつさらに気になる名前のスポットを見つけてしまった。

その名も、「金玉落しの谷」。

取材依頼の電話をするにも口にすることをためらう名前で躊躇したが、地元でもあまり知られていない隠れ気になりスポット(語呂が悪い)だったので、勇気を出して行ってみた。
1988年静岡生まれ・静岡在住。平日は制作会社勤務、休日は大体浜名湖にいる。
ダイエット目的でマラソンに挑戦するが、練習後温泉に入り、美味しいものをたらふく食べるというサイクルを繰り返しているため、半年で10kg近く太る。

前の記事:座ってる二宮金次郎ってどうなの!?七代目子孫に直撃取材


道のりが険し過ぎた

「金玉落しの谷」は静岡県菊川市にある「横地城跡自然公園」という公園の中にあるらしい。初めて行く場所なのであらかじめGoogleマップで場所を調べたらこんな感じだった。
行き方が全然わからない
仕方ないので、とりあえず行けるところまで行こうと向かってみたら…
予想以上に険しい道のりだった
予想以上に険しい道のりだった
対向車が来たら一発でアウトだ。というか、実際来てしまったのでアウトだった。

この時はまだ写真を撮る余裕もあったが、この後さらに道は狭まり、本当にたどり着けるのかかなり不安になった。

着いた~!

不安を抱えつつも折り返して戻ることもできないのでひたすら進み続けていたところ、ついに公園らしき場所に着いた。
着いた~!たぶんここで合ってるはず
着いた~!たぶんここで合ってるはず
しばらくして、今回「金玉落しの谷」についてお話を聞かせていただけることになった、横地城跡運営協議会長の鈴木勝章さんとも合流できた。
左が鈴木さん。右も鈴木
左が鈴木さん。右も鈴木
ちなみに、この記事を見て「金玉落しの谷に行ってみよう!」と思った方のために書いておくと、先ほど“しばらくして~合流できた”と書いたが、この“しばらく”の間に

合っているか不安になってキョロキョロする

小さな遊歩道を発見する

歩いて進んでみる

行きの道のりが嘘かと思うくらいあっという間に山のふもとに出る

綺麗に整備された駐車場に着く

メインの入口はこちらだと気付く

鈴木さんと合流し、行きに車で登ってきた道は超険しい裏道だと知る

苦笑い

という行程が入っているので、皆さまにおかれましてはぜひメイン入口から「金玉落しの谷」を目指していただきたい。

早速「金玉落しの谷」へ

鈴木さんと無事合流できたところで、早速目的の「金玉落しの谷」を見に行くことにした。

数年前は道も整備されていなかったそうだが、鈴木さんはじめ公園を管理されている皆さんの努力の甲斐あって、今は普段着でも気軽に散歩に来られるくらい綺麗になっている。
マイナスイオンたっぷり
マイナスイオンたっぷり
途中セニアカーで山道を散歩中のおじいちゃんともすれ違った。セニアカーの馬力ってすごいんですね。

5分ほど歩いたところで、「金玉落しの谷」に到着!
ばっちり「金玉落しの谷」と書いてある!
ばっちり「金玉落しの谷」と書いてある!
結構な傾斜。まさに「谷」
結構な傾斜。まさに「谷」

なぜ「金玉落し」?

確かに「金玉落しの谷」はあった。でもなぜ、「金玉落し」というのだろうか?鈴木さんにルーツを教えていただいた。

永享10年(西暦1438年)、12代横地城主の横地太郎長泰が兵士を引き連れ箱根の山岳戦へ参戦した際、横地軍の兵士は険しい山岳戦を戦いぬけるほどの体力が無く、長泰も含め多くの戦死者を出してしまったそうだ。

その体力の無さ、足腰の弱さを嘆いた横地家は、戦いの後城の敷地内にある谷を利用し、ある訓練を行うようになった。

その訓練こそが、「金玉落し」だ。

訓練の内容はこうだ。訓練に参加する兵士は谷底に膝をつき待機し、太鼓の合図を待つ。太鼓の合図と同時に山の上から“木の玉”が落とされるので、兵士はその木の玉を探し、拾い、山の上まで駆け上る。見事木の玉を持って山の上まで上ってこられた兵士は褒美がもらえる。

鈴木さんいわく、この“木の玉”がきのたま→きんのたま→きんたまと変化して「金玉落しの谷」と言われるようになったのではないか、ということだ。(元々落とした玉が“金の玉”だったという説もある。「金玉落しの谷」含め、横地城に関する研究はまだまだ始まったばかりだそうだ。)

めちゃめちゃしっかりした由来だった。
「金玉」という名前に惹かれて来た自分が小学生の男子レベルだったと気づき、正直恥ずかしくなった。

真面目そうな顔して聞いてますが、この時もう割と恥ずかしかった
真面目そうな顔して聞いてますが、この時もう割と恥ずかしかった
横地城跡公園では毎年春に桜祭りが開催されており、祭りの際は子どもたちを集めて金玉落しの訓練を模したイベントもやっているそうだ。

実際の谷は相当険しいので、ちょっとした高さのあるところから金に塗ったサッカーボール転がし、拾った子はご褒美をあげているそう。すごく楽しそう!混じりたい!
イベントの様子の写真は残念ながら無いが、こちらは桜祭りの様子。子どもたちはたくさんいるので、この後転がすんだと思う
イベントの様子の写真は残念ながら無いが、こちらは桜祭りの様子。子どもたちはたくさんいるので、この後転がすんだと思う
そんな訓練を思いついた横地氏がどんな人だったのか、また、訓練の詳細がわかる資料などがあればぜひ見てみたいと思ったのだが、先ほども少しふれたように、横地家や横地城、「金玉落しの谷」に関する研究はまだあまり進んでいないそうだ。

これから研究が進んで歴史がさらに明らかになったら、改めて訪れてみたい。

横地城、見晴らし最高!

「金玉落しの谷」のルーツをお聞きした後、鈴木さんが「せっかくなので」と横地城が建っていた跡に案内してくれた。
横地城跡目指して山を登る
横地城跡目指して山を登る
さらに登る(ロングパンツ&スニーカー推薦)
さらに登る(ロングパンツ&スニーカー推薦)
着いた~!見晴らしが良くて気持ちいい!曇ってるけど!
着いた~!見晴らしが良くて気持ちいい!曇ってるけど!
天気がいいと、雄大な遠州灘も見えるとのこと。約700年前に横地氏もこの場所から同じ景色を見ていたと思うと感慨深い。
あっちはね~、粟ヶ岳(近隣で有名な山)が見えるよ~。曇ってて見えないけど!の図
あっちはね~、粟ヶ岳(近隣で有名な山)が見えるよ~。曇ってて見えないけど!の図
今回も名前が気になり現地に訪れてみたが、詳しく話を聞いてみるとそれぞれに長い歴史があり、そのような名前がついた深い理由もある。

あなたも気になるスポットを見つけたら、ぜひルーツを探ってみてほしい。

英語で書くとかっこいい

帰り際、横地城跡公園内の案内板を見つけた。

日本語のスポット名の下に英語でもスポット名が書かれていたのだが、英語だと「金玉落しの谷」もなんだかかっこよく見えて、英語ずるいと思った。
金玉落しの下の膝つき谷もおすすめ
金玉落しの下の膝つき谷もおすすめ
~今回伺った場所~

横地城跡公園
所在地:〒439-0022 菊川市東横地

~取材協力~
横地城跡運営協議会長 鈴木勝章さん
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