並べるだけで世界が変わる
「ブルーシートや白い布の上に物を並べると押収品みたいに見える」とはどういうことか。
まずこちらをご覧頂きたい。
違法薬物である。
いや、違法薬物ではない。だが税関で押収された違法薬物のように見える。一体そんなものがどこで手に入るというのか。
実際はホットケーキの材料なのだ。
ホットケーキの材料を白い布の上に並べただけである。加えて横に「税関」と書かれた名札を設置するだけでこのように押収品に見えてしまうのである。
袋を裏返したり、卵と牛乳を隠したりとじゃっかんの工夫はしたものの、なかなかの様相である。ドキッとしてしまうではないか。
牛乳と卵のおかげで無罪。
ホットケーキの材料が違法薬物に見えたから一体なんなんだという思いが心中に去来するが、それは置いておこう。今はこの道がどこへ行き着くのかを問う時ではない。ひたすら進め。このドキドキを楽しめ。
さて、横に税関らしさをアップさせるため、横に職員ぽい服を着て立たせたらどうなるだろうか。
バイトの警備員ではない
セキュリティ・オブ・チャイナ
実際押収品の後ろで職員が立っているようなシーンは見たことがないわけだが、より厳重に取り締まられているみたいで良い。
「サイバー犯罪対策課・西新宿捜査本部」という、なにか言っているようでなにも言っていない所属は気に入っている。
アメリカのキャンディが麻薬に
続いて、アメリカみやげのチューイングキャンディを並べてみた。舶来品のほうが税関の押収物っぽいだろう。
アメリカみやげがこんなことに。
ただのお菓子が一気に押収品に見えてきた。どう見ても危ない薬である。樹脂?樹脂なのか?(キャンディです。)
ただパッケージおもて面が派手なので一般流通している感じが出てしまう。裏返してみるとさらに本格的になった。
数が減ったのは間違えて1個食べちゃったからです。
末端価格!
完全に大麻樹脂である。キャンディが一瞬で大麻樹脂に……、ドキドキする(大麻樹脂がどんなものかはよく知らない)。
ちなみにこのキャンディは船便で届いたせいか、べとべとに溶けており、袋ごと食(は)むしかない。
割り箸は袋詰の注射器
続いて弁当屋の割り箸も、白い布の上に並べるとご覧のとおり。
どうですか
袋に入った注射器のようである。覚せい剤がらみの犯罪映像で見るアレである。
注射器が並んだ映像を見たことがない人には単に割り箸が並べられてるだけにしか見えないかもしれないという不安もある。
柿の種はほんとの種子に?
パッケージングされていないものはどうだろうか。ここで、柿の種を綺麗になれべてみよう。植物の種って飛行機で勝手に持ってきちゃいけないらしいし。
ならべればなんでもいいのかと思ったが、柿の種はご覧のとおり。
これはちょっとなんの犯罪なのかが思いつかない。ただ、柿の種が通常よりはるかに植物の種のように見える。理科の研究っぽいせいだろうか。
犯罪性が増すかについては疑問ではあるものの、「柿の種ってどこが種なのかなあ?(どうみても煎餅だ)」という日常的批判に対してのアンサーにはなったと思われる。
カレーの材料は事情が違った
続いてカレーの材料を並べてみよう。
事件性はありそうだけど……?
なにかの事件性はあるだろう。でもそれは税関の押収品というよりは、万引きして捕まってカバンの中から出されたもののように見える。頭のなかに浮かんでくる光景は税関や警察署ではなく、スーパーのバックヤードである。
もしかしたら袋を外したら検疫にひっかかったように見えるかも?と思いやってみる。
……なんだろう。
万引き後のスーパーのバックヤード感はだいぶ減った。だが、何かがちがう。「料理の材料」あるいは「少食のゴリラ」である。
どうやら同じものが揃っていないと、押収品っぽさが出ないようだ。ここからは犯罪の匂いがしない。
最後はダイナミックに
ここまでは「机の上」かつ「白い布」でやってみたが、やはりよく見るのは床の上に敷かれたブルーシートではないか。拳銃とか下着とかが並んでいるやつである。
並べるなら同じものがずらっと揃っているのがいい。ちょうどいいものが手に入ったので、やってみよう。
この時点で押収したものっぽい
箱の中身はタブレットである。
自由に使っていい旧型のタブレットが会社の倉庫にたくさんあったそうなので借りてきた。
なぜタブレットがたくさんあったのかの事情については深い闇の中に包まれているが、使えるものは使わせてもらおう。
量がたくさんなので、広げられるところまでダンボールを運ぶ。
焦らないほうがいい。
並べていく。いよいよ本格的になってきた。数が数なので、箱から開けて並べるだけでも時間がかかる。人手をあつめてみんなで作業することに。税関や警察の人もこういう風にやっているのだろうか。
はしから順番に並べる
制服を着ている方がふざけて見えるのはなんでだ。
並べるだけなら簡単なのだが、作業をしているうちに列を揃えてきちんと並べないと行けないような気がしてきた。
列がバラバラのままでは、犯罪を撲滅するための威厳が失われてしまうではないか。タブレットをブルーシートに並べているだけなのに、正義の心に火が灯る。こうして公権力きどりがうまれるのか。
おお、壮観
こまかく位置調整をして、すっかり綺麗に並べられた。かなりの押収品っぽさが出ている。これには我々アナーキーな自警団も大満足。
きっとインターネットを使ったサイバー犯罪だろう。こんなにタブレットを使うなんて恐ろしい。でもそれがブルーシートに並べられているということは「撲滅済み」ということだ。
サイバー犯罪、撲滅!
ものを並べただけなのに、正義の心に小さな火が灯った。正義セラピーだ。
悪の組織だったら裏切り者の首を並べてるかもしれない。それはそれでノウハウがあるのかもしれないが、さすがにきつい。
それに引き換え正義側はこんなに簡単になれる。なるなら正義である。
ものを並べて正義になろう
このほか会社のデスクの上のものと財布の中身を全部並べてみたのだが、それはうまくいかなかった。同じものが大量に揃ってないとだめらしい。それがある程度金目の物だとより良い。
何かいいものが大量に手に入ったときの記念写真は、ブルーシートの上に並べて撮ることをおすすめしたい。