特集 2016年7月4日

フライドポテトはもっと活躍できるはず

フライドポテト、お前はもっとやれるはず
フライドポテト、お前はもっとやれるはず
ジャガイモを切って揚げただけの料理、フライドポテト。単純でありふれた料理だけど、安定のうまさがある。
しかし、フライドポテトはいつも孤独だ。ハンバーガーとのセットやステーキの添え物となったとしても、あくまでポテトはポテト。他の料理と組み合わされるわけではない。

フライドポテトよ、君だって誰かとうまくやれるはず。活動範囲を広げてみたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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「ポテそば」の実体を求めて

フライドポテトはもっとみんなと仲良くできるはず。そんな風に思ったのは、以前あるそば屋のチェーンが「ポテそば」なるメニューを出したと聞いたことがきっかけだ。

フライドポテトが乗った日本そば、ポテそば。ありそうでなかった、と言うよりは、なさそうでなかったメニューだ。
暗闇で光を放つ富士そば
暗闇で光を放つ富士そば
実際に食べたいと思ってやってきたのは、富士そばの鶯谷店。

主に東京都内にたくさんの店を擁する富士そば。ネットで検索すると2015年の春ごろ、この店でポテそばを出していたことが確認できる。富士そばでもポテそばの扱いは、ごく限られた店舗だけのようだ。
目を凝らして見た分むなしい
目を凝らして見た分むなしい
しかし、券売機を見ると、ポテそばのボタンがないではないか。

どうやら既になくなってしまったらしい。やはりポテそばは、一時の悪ふざけのようなものだったのだろうか。確かに男子中学生が土曜の昼に思いつきで作ったような料理ではある。
言葉そのものが魅力的な「肉富士」
言葉そのものが魅力的な「肉富士」
なくなったとわかると、余計に食べたい愛しさが募るポテそば。ただ、この店では出さなくなってしまっても、日本そばとフライドポテトが両方ともメニューにある店に行けば、セルフポテそばはできるのではないか。

DIY感覚で作るポテそば

悩んだ末にやっと見つけた店
悩んだ末にやっと見つけた店
そう思いついてはみたものの、日本そばとフライドポテトを共にメニューに備える店は意外と思いつかない。

考えたり調べたりして行き当たったのは、日本そばをメインに据えて展開する和食ファミレス的な店、サガミだ。
そば屋で発見、フライドポテト
そば屋で発見、フライドポテト
やっと見つけたこの組み合わせ
やっと見つけたこの組み合わせ
看板にはそれっぽい書体で「和食めん処」と書いてあるが、メニューにはちゃっかりフライドポテトも載っている。居酒屋的な利用や子供連れのニーズとしてラインナップされているのだろう。

さあ、両方が到着したらDIYでポテそばだ。
見る者に笑顔をもたらすポテそば
見る者に笑顔をもたらすポテそば
日本そばにフライドポテトが乗った料理、ポテそば。目の前に現れると謎の存在感が際立ってくる。
そこにハーモニはあるのか
そこにハーモニはあるのか
あるね、これは
あるね、これは
やっぱりここは、そばとポテトを一緒に食べるべきなんだろう。麺を絡めて口に入れると……おお、うまいぞ、これ。

そばに足りない油分のコクと、ポテトに足りない水分とを、それぞれが補い合っている。組み合わせの妙がちゃんとある。

考えてみれば、定番のきつねそば・たぬきそば・天ぷらそばはいずれも揚げ物をそばに入れたもの。それがポテトになっただけだから、うまさが理屈としても納得できる。
フニャついてきたポテトがまたいい
フニャついてきたポテトがまたいい
揚げたてのカリカリ感とそばの食感とのコントラストもよいが、しばらく経ってつゆがし染みてからもうまい。これ、ちゃんとおいしいぞ。ビジュアルがなんとなくバカっぽいということを除けば、しっかり料理として成り立っていると思う。

意外な組み合わせだが活躍を確認できたポテそば。フライドポテトと他の食べ物との組み合わせも試してみたい。

アメリカと日本の合体を求めて

全て注文制の、回転しない回転寿司
全て注文制の、回転しない回転寿司
多様な組み合わせを求めてやってきたのは、回転寿司系の店。最近のこのタイプの店は、寿司に限らずやりたい放題と思えるほどいろんなメニューを揃えているからだ。
メニューのバラエティがすごい
メニューのバラエティがすごい
寿司とポテトも同時に食べられる
寿司とポテトも同時に食べられる
席のところに貼ってあるメニュー表も、寿司はどちらかと言うと目立たず、ケーキなどのデザート系などが目立つ。

いくつか試した「ポテト+X」、だんだんおすすめ度を上げる順番で紹介してみよう。
ネタとしてのフィット感はある
ネタとしてのフィット感はある
そういう順番で最初に登場させてしまうのは申し訳ないのだが、まずは「ポテ寿司」。「ポテそば」以上にクエスチョンが飛び交う名前だ。

その名の通り、握り寿司のネタを取り払い、代わりにフライドポテトを鎮座させたもの。アメリカあたりじゃウケそうだ。
どこまでもなじまない2人に戸惑う
どこまでもなじまない2人に戸惑う
「ポテ軍艦」で少しは改善か
「ポテ軍艦」で少しは改善か
そう思って食べてみたものの、なんと言ったらよいものか。ネタであるポテトとしゃりとの融和がない。口の中で一緒になっているはずなのに、ハーモニーを奏でることなく「ポテトとごはんを一緒に食べたらこうなるよね」という以上の感想を持ちづらい。

海苔の香りが間を取り持つのか、まだ「ポテ軍艦」の方が若干おすすめできるか。いずれにしても別にまずくはないが、一体感もない。
そばでの実績を生かせるか、ポテうどん
そばでの実績を生かせるか、ポテうどん
続いては「ポテうどん」。ポテそばがおいしかった分、これらもうまいだろうと思っていたのだが、そばに比べると合わない。

麺のモチモチ感がポテトの食感とマッチしないように思えた。そう考えると、ポテそばは生まれるべくして生まれたメニューのようにも思えてくる。
これはまあ大丈夫でしょ
これはまあ大丈夫でしょ
お次は「味噌ポテ汁」。この辺からはちゃんとおすすめできる組み合わせになってくる。

味噌汁の具としてワカメや豆腐ほどメジャーではないが、ジャガイモはそもそも挙げられるものの1つだろう。それを揚げてから入れているわけで、合わないはずはない。これはあり。

そして一番のおすすめはこれだ。
ウエハースの地位を奪うポテト
ウエハースの地位を奪うポテト
「ポテアイス」である。アイスにウエハースが添えられているのを見かけることがあるが、そのポジションにポテトがいるわけだ。「昔からここにいました」と言いたげでもあるようにこなれている。
先入観なしで食べたい
先入観なしで食べたい
ディップして食べてもよし
ディップして食べてもよし
一緒に口に入れると、ポテトのカリカリとアイスのやわらかく冷たい食感とがちゃんと合う。ポテトの塩気もアクセントと効いているようだ。

そして、先にアイスが溶けて口の中からなくなると、前に出てくるポテトの風味。甘いものとしょっぱいものを交互に食べると止まらなくなることがあるが、そういうシステムが組み込まれているようにも思える。

進化していたポテそば

さて、記事の冒頭では出会うことができなかった、富士そばのポテそば。過去に出していた鶯谷店、今回の取材では扱いがなかったが、よくよく調べると別の店舗では現在も出していることがわかった。
別店舗で再会したい
別店舗で再会したい
やって来たのは、富士そば津田沼店。東京の枠を飛び出し、ポテそばは千葉に出現しているらしい。
冷たくされた上にひねりを加えられてる
冷たくされた上にひねりを加えられてる
券売機にあったのは、「冷トルネードポテトそば」。冷やされている上に、トルネードだ。

知らずに順番に券売機のメニューの並びを見ていたら、「冷し山菜、冷トルネードポテト……???」となるネーミング。何言ってんだ感がパワーアップしている。

食券をカウンターに出すと、厨房内の店員さんがオーダーを通すときも「冷やしトルネード!」とトルネード。
おしゃれになったフライドポテト
おしゃれになったフライドポテト
やってきた実物も、約束通りにトルネード。ポテトをらせん状にカットする機械があるらしく、それを使って切ったポテトを揚げたものが乗っているわけだ。

ポテトだけのやつなら夜店で見たことがあるが、そばに乗せちゃうのは思いつかなかった。
衣がついててカリカリ度向上
衣がついててカリカリ度向上
あ
連なったポテトは衣がついているタイプ。クリスピー感とつゆが染みこむ余地と、その両方が通常のフライドポテトより高い。トルネードは名前の迫力だけでなく、衣をつけやすいのかもしれない。そのかいあって、カリカリ&ジュワーがはっきり伝わってくる。

「冷トルネードポテトそば」、小学生が考えた必殺技のようにも思えるが、これはうまいやつだぞ。

油断できない富士そばの独自展開
油断できない富士そばの独自展開
食べ方としては既に完結してると思っていたフライドポテト。未知のハーモニーを求めた試みには、新しい発見があった。そばやアイスは一度試す価値がある。

最後に紹介したメニュー、店の掲示によると津田沼店限定らしい。富士そばはチェーンでもプリンを出す店があったりするように、独自展開があるので注意が必要だ。
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