特集 2016年6月28日

ルーペ専門店でよく見えるルーペを買う

よく見える…!この感動よ!
よく見える…!この感動よ!
専門店が好きだ。専門店はすごい。
何がすごいかって、専門のモノが大量にあるし、どれを買うか迷った時はお店の人に聞けばいくらでも詳しく教えてくれる。量販店にはないプロユースなやつもある。
なので、何か欲しいモノがある時は毎回「○○+専門店」という検索でお店を探すことにしている。
…という書き出しを、以前に「歯ブラシ専門店でいい歯ブラシを買う」という記事で使った。
で、今は細かい作業をする時用にルーペが欲しいのだ。
当然のように、僕は検索で見つけたルーペ専門店へ向かった。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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ルーペ専門店は錦糸町にあった

地球上の森羅万象すべてに専門店があるんじゃないか、というぐらい、専門店がある。
ルーペ専門店もたぶんあるはずだ、と半ば確信的に検索をかけたところ、スカイツリーのお膝元、錦糸町駅から徒歩数分のところにルーペ専門店『ルーペハウス』さんはあった。
堂々と「ルーペ専門店」って謳ってある安心感。ここならきっといいルーペがある。
堂々と「ルーペ専門店」って謳ってある安心感。ここならきっといいルーペがある。
…と、さも初めて見つけたみたいな書き方をしたが、そういえばこの店の前を何度か通ったことがある。(ここまで来てようやく思い出した)
その時も「へー、ルーペ専門店か」と思ったはずだが、まったく記憶に残ってなかった。
店内にはルーペしかない。この専門店っぽさがまず最高だ。
店内にはルーペしかない。この専門店っぽさがまず最高だ。
なぜなら、当時の僕は老眼じゃなかったから。
数年前の僕は、カッターで細かい切り出しをするのも、Nゲージのジオラマ用人形を改造するのも、まったく苦にならなかったから。
人間、その時々で自分に必要のある情報しか脳に残らないのである。

なので、腰痛ベルト専門店とか、おからの炊いたの専門店とかそういう店の情報は、必要になったその時に調べる事にしよう。今から検索してても忘れるだろうし。
図説:これが老眼だ!
図説:これが老眼だ!
さて、今の僕が求めているのは、細かい作業がしやすいルーペだ。
老眼じゃない人には理解できないだろうが、とにかく手元にピントが合わない。ぼやける。
遠くならばピントも合うが、見えてるものが小さすぎて見づらい(写真上)。
で、ルーペ(老眼鏡も同じ)さえあれば近くでピントが合うので、大きくくっきりと見えるわけだ(写真下)。

遠くても近くても同じように見える、という人は、その感覚を覚えておいた方が良い。
ある日急に「あっ、近くのものが見にくい!」と気付いた時のショックがより大きくて面白いから。
(僕は、デジカメの液晶画面がぼやけて見えなかった時に気がついた。)
ルーペハウスの寺崎さん。僕と同い年(43歳)なのに老眼じゃないとか。憎い。
ルーペハウスの寺崎さん。僕と同い年(43歳)なのに老眼じゃないとか。憎い。
さっそく、ルーペ専門店の方に僕の求めているステキなルーペを見つくろってもらおうと思ったのだが、それより先に聞きたい事がある。
なんでこんな狭いカテゴリ(失礼)の専門店をやっているのか、だ。

寺崎「もともとウチは、タバコのヤニ取りパイプを作っているメーカーなんです。ただ、タバコ業界はこれから禁煙運動も進むだろうし先行きがわからない。じゃあ、ルーペをやろう、ということになったんです」

「?????」

「タバコとは逆に、これから高齢化が進むと老眼鏡やルーペの需要が多くなるんじゃないかと踏んだんですね。ただ、ルーペってどこで売ってるかよくわからないし、実際に試してみないと見え方もわからない。それなら実店舗で専門店を作ろうということになったんです」
フレネルレンズって、薄い板状のレンズのこと。
フレネルレンズって、薄い板状のレンズのこと。
なるほど、そういわれてみれば見事な乗り換えである。
それにしたって、いきなりルーペってあまりにも方向性が違いすぎないか。

「実はフレネルレンズのメーカーさんから、販売をやらないかと言われたんですよ」

なるほど、理由はシンプルだった。

よく見えると、すごい快適

ちなみにフレネルレンズとは、普通のアクリル製凸レンズの表面をギザギザに削って板にしたもの(上写真参照)。
これでもちゃんと拡大して見えるし、なにより大きなレンズが軽くて安く作れる。視界がちょっとギザギザするけど。
フレネルレンズのスタンド型ルーペ。感動的に大きく見える。
フレネルレンズのスタンド型ルーペ。感動的に大きく見える。
「これはフレネルレンズをスタンド型にしたものです。手元で作業をするならこういうのが便利ですよ」

おおおおお、見える。すげぇよく見える!
しかも、クリップ式で倍率の違うレンズに付け替えられる。便利。
しかも、クリップ式で倍率の違うレンズに付け替えられる。便利。
小学生の頃、虫眼鏡でバッタの足とか見て「大きく見える!」と喜んでいたが、でも冷静に考えたら、別にバッタの足を拡大して見たからといって何か良いことがあるわけじゃない。

でも、いま僕は手元が大きく見えることで、とにかく作業がしやすくなっている。
今までピントが合わない中で漠然と(直感で)この辺りかなー…とカッターで切っていた切り取り線が、くっきり見えるのだ。快適!ルーペ最高!
ドイツ製の高級スタンドルーペはさらに快適すぎて、超楽しくなってる。
ドイツ製の高級スタンドルーペはさらに快適すぎて、超楽しくなってる。
ドイツの精密機器メーカーWaldmann社が作ったスタンドルーペは、裏面にリング型のLEDライトがついており、やたらとモノが明るくくっきり見える。
レンズもフレネルではなく普通の凸レンズなので、視界がクリアだ。
あまりにもよく見えるので、バスのミニカーを意味もなく四方八方からがっつり見た。
あまりにもよく見えるので、バスのミニカーを意味もなく四方八方からがっつり見た。
スタンドアームを動かした時の追随性も良くて、「うわー、これ欲しい。これ買おう」と思って値段を見たら、69,090円だった。さすがに高い。

ちなみにこの手のアーム式のスタンドルーペ、工作などの作業用に使われる以外に、工場での検品や、まつげエクステをする人が愛用しているらしい。
なるほど、目元にこまかく毛を付け足していくあれは、なかなか精密作業だろう。
ヘッドルーペ、お店でも一番の売れ筋商品だとか。
ヘッドルーペ、お店でも一番の売れ筋商品だとか。
「スタンドルーペは、スタンド部が良いものだと値段が高くなりますね。きだてさんの使い方だと、ヘッドルーペもいいんじゃないでしょうか」

ヘッドルーペは、文字通り頭に装着するタイプのやつだ。
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ヘッドルーペがどれぐらい幸せアイテムだったか

オススメされるままに、定番の『メガビュー』というシリーズを装着させてもらった。
細かい基盤がちゃんと見える。地球上すべての老眼の人と、この幸せを共有したい。
細かい基盤がちゃんと見える。地球上すべての老眼の人と、この幸せを共有したい。
頭のベルトは、かなり自由に調節可能。
レンズも、1.7倍・2倍・2.5倍と付け替えられる。手元作業用だと1.7倍ぐらいが使いやすいでしょう、と寺崎さんに教えてもらってレンズを装着した。

なにこれ、すっごい快適。
小学4年生で近視になって、人生初の眼鏡をかけた時くらいの感動である。
世界、超クッキリしてんな!
実際、体感でこれぐらいクッキリ。これが快適というものだ。
実際、体感でこれぐらいクッキリ。これが快適というものだ。
1.7倍だと、僕が椅子に座った状態で、机の上から手元までかっちり拡大してピントが合う感じ。机の上に置いた細かい文字の説明書を読みながら基盤にはんだ付けをしたりとか、ぜんぜんイケる。針に糸を通すのだって余裕だぜ。
大きくくっきり見えるから、直感で工作をしなくていい。最高だ。
LED付きのタイプも試した。明るくてよく見えてとても嬉しい。
LED付きのタイプも試した。明るくてよく見えてとても嬉しい。
スタンドルーペの視界が広い感じも良かったが、ヘッドルーペはいちいち作業するところにルーペ位置を合わせなくていい。見たところがそのまま拡大される。
便利。僕が求めていたのは、これに違いない。
一方、見えるからどうした、ぐらいの表情の藤原くん。僕のテンションが一切理解できていない様子だ。正直ちょっとムッとした。
一方、見えるからどうした、ぐらいの表情の藤原くん。僕のテンションが一切理解できていない様子だ。正直ちょっとムッとした。
ちなみに、同行してもらっていた編集藤原くんにも試してもらったが、「ああ、大きく見えますね」というシンプルすぎる意見が出たに終わった。
見える人間には、この幸せが伝わらないのだ。
君、あれか。眼鏡かけてるクセに視力ブルジョアか。
確信した。6900円で幸せになれるなら安い。
確信した。6900円で幸せになれるなら安い。

専門店のルーペいろいろ

この時点で、僕の中では「ヘッドルーペを買って取材終了でいいや」ぐらいの満足度である。
しかし、老眼でもなくルーペに興味もないはずの視力ブルジョアこと藤原くんが、ルーペハウス店内のあちこちで「へぇ、色んなルーペがありますね」と写真を撮っている。
なるほど、さっきまでは自分用のルーペ探しに必死だったが、落ち着いてみると確かにルーペもバラエティ豊かだな。
ザ・ベーシックな手持ち型ルーペも
ザ・ベーシックな手持ち型ルーペも
例えば品質的な話で言うと、一見すると同じようなガラスレンズの手持ち型ルーペでも、よく見ると明確な差があるという。

「斜め横から見ていただけるとわかりますよ」
左が白、右が青。お分かりいただけただろうか。
左が白、右が青。お分かりいただけただろうか。
レンズのフチ(金属フレームとレンズの境目)が白いのと、青いのがあるのだ。
これ、青い方は普通のガラスで、白い方は光学ガラスというもの。
ガラスは透明に見えるがそこそこ不純物が混じっていて、それがフチでは青く見えたりする。対して光学ガラスはレンズを作る用に不純物を取り除いて作られたものなので、透明度が高い。
つまり、白ガラスのルーペの方が高級品というわけだ。
(正直、低倍率のルーペだと差はほとんど分からなかったけど)

あと、ベタに変わりダネ系も豊富に揃っていた。
よくスーパーの催事コーナーでやってる、アイデア商品フェアでお馴染みのヤツだ。
ルーペ付きトゲ抜き。そもそも最近トゲって刺さらないしな。
ルーペ付きトゲ抜き。そもそも最近トゲって刺さらないしな。
ルーペ付き爪切り。なんか珍マシンっぽいフォルムが好きだ。
ルーペ付き爪切り。なんか珍マシンっぽいフォルムが好きだ。
そもそも爪切りをする時にルーペで拡大する必要あるのか?と思ったが、寺崎さん曰く、老眼が進むと爪を切るのにもピントが合わなくて怖くなるので、お年寄りが喜んで買って行かれるらしい。

しまった。藤原くんを「視力ブルジョア」となじっておきながら、僕もまだまだブルジョア側だったようだ。
「かき過ぎに注意」の警告。わかる。
「かき過ぎに注意」の警告。わかる。
LEDとルーペ付きの耳かきは、もちろん自分で使う用ではなく、他人にやってもらう用だ。
ただでさえ他人の耳をかくのは面白いのに、こんなルーペがついてて拡大しながらかけるとか、ちょっとしたアトラクションだろう。
そりゃ「かき過ぎに注意」って警告するわ。
おもしろメガネかと思ったら、オペラグラス。ちょっとサイバーでかっこいい。
おもしろメガネかと思ったら、オペラグラス。ちょっとサイバーでかっこいい。
これは、眼鏡タイプのオペラグラス。
倍率は2.1倍と低めだが、ハンズフリーでつかえるのがありがたい。
僕の好きな宝塚歌劇の4コマ漫画で、宝塚ファンが「ご贔屓に拍手を送りたいけど、しっかり見たいからオペラグラスも手放せない」と嘆くシーンがあったが、これで解決はしないだろうか。ヅカファンの人、ぜひ試して欲しい。

早くももう一個買おうかと悩むレベルで使ってる。次はLEDライト付き。
早くももう一個買おうかと悩むレベルで使ってる。次はLEDライト付き。
で、実際にヘッドルーペを買って帰ってどうなったかというと、もう使いまくりなのだ。
文房具関連の記事で使う紙工作で、印刷の薄い折り線をはっきり視認しながら折り。Nゲージジオラマ用の小さな人形を削ってポーズを変え。
正直、もうヘッドルーペ無しでこれらの工作をする気にならないぐらいである。
こういうのを使ってしまうと「自分が老眼だと認めてしまうようでイヤだ」という気持ちは分かるが、ちょっとでも見えにくいと思っているなら、使おう、ルーペ。快適だもの。

取材協力:ルーペハウス
住所:東京都墨田区錦糸3-9-6
電話:03-3626-1531
営業時間:日・祭日を除く10:00~18:00
あと、ルーペとか虫眼鏡は登場しないけど、そんな感じの懐かしい文房具ばかり集めた本を出しました。よろしければこちらもぜひ。
表紙の一部を10倍ルーペで拡大したもの
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