特集 2016年6月15日

「日本一低い山」のぼり比べ

新世代の日本一低い山「日和山」

さて、最後はいよいよ、天保山を抜いて日本一低い山になったという「日和山」だ。ところ変わって、場所は東北・仙台にある。
車を使わずに日和山へ行くのは難しい。しかし、ここはぜひ苦労して公共交通機関と徒歩で行ってみてもらいたい。まずは仙台駅から電車で15分の「陸前高砂駅」へ
車を使わずに日和山へ行くのは難しい。しかし、ここはぜひ苦労して公共交通機関と徒歩で行ってみてもらいたい。まずは仙台駅から電車で15分の「陸前高砂駅」へ
そこから路線バスに乗り換え約5分、「中野新町」というバス停で下車(仙台駅から路線バスに乗るルートもある)
そこから路線バスに乗り換え約5分、「中野新町」というバス停で下車(仙台駅から路線バスに乗るルートもある)
この先は交通機関がないため、約5kmの道のりを徒歩で行くしかない
この先は交通機関がないため、約5kmの道のりを徒歩で行くしかない
進むにつれて、徐々に景色が変化してくる。電柱がやたら目立ってみえるほど、周囲に人工物がない
進むにつれて、徐々に景色が変化してくる。電柱がやたら目立ってみえるほど、周囲に人工物がない
荒野のような平地が延々と……。殺風景すぎて不安になってくる。空がこんなにも広く見える
荒野のような平地が延々と……。殺風景すぎて不安になってくる。空がこんなにも広く見える
なぜここまで何もないのかと言うと、実はこの辺り、震災の津波被害を受けた地域なのである。工事中の区画や、行き止まりになっている道も多い。元はどんな土地だったのだろう、どれくらい人が住んでたのかなあ、などと考えを巡らせているうちに、だんだんと海岸線に近づいてきた。
立ち枯れの木がやけにフォトジェニックで、いっそうの寂しさを誘う。スマホで現在地を確認しながら歩かないと、どこに向かってるのか分からなくなる
立ち枯れの木がやけにフォトジェニックで、いっそうの寂しさを誘う。スマホで現在地を確認しながら歩かないと、どこに向かってるのか分からなくなる
やがて道の果てに堤防が見えてきた。ここまで山の気配はまるでないのだが、
やがて道の果てに堤防が見えてきた。ここまで山の気配はまるでないのだが、
突如「日和山」の看板が出現。ついに着いたようだ
突如「日和山」の看板が出現。ついに着いたようだ
心の準備もできぬまま、いきなり登山口に差し掛かる。階段になっているので登りやすい
心の準備もできぬまま、いきなり登山口に差し掛かる。階段になっているので登りやすい
慎重に階段を登ること4歩。日和山の登頂に成功した
慎重に階段を登ること4歩。日和山の登頂に成功した
山頂からふもとを望む
山頂からふもとを望む
えーと。これは……。
自分のなかにある「山」の概念が音を立てて崩れていくのを感じた。これは間違いなく「日本一低い」という名前通りの山だ。圧倒されて言葉を失った。
とはいえ、果たしてこれは山なんだろうか(禁句)
とはいえ、果たしてこれは山なんだろうか(禁句)

日和山は日本一低いのか

なぜ最近になって、日和山が天保山を抜いて日本一低い山になったのか。それは、東日本大震災が影響している。もうお分かりかと思うが、津波で削られて低くなったのだ。
海が目の前にあるので、きっと津波をもろにかぶったのだろう
海が目の前にあるので、きっと津波をもろにかぶったのだろう
気になる標高は3メートルとのこと。しかし、周囲がなだらかに盛り上がっているので、ほとんど高さを感じさせない。実感としては、1メートルくらい。
かつては「日本で二番目に低い山」だった日和山は、「元祖・日本一低い山」を名乗っていた(天保山が地図に載る前は、日本一低い山だったため)。その名称は今も看板にひっそりと残っている
かつては「日本で二番目に低い山」だった日和山は、「元祖・日本一低い山」を名乗っていた(天保山が地図に載る前は、日本一低い山だったため)。その名称は今も看板にひっそりと残っている
事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、まさか「日本一低い」の称号が更新される日が来ようとは、誰も思ってなかっただろう。もともとは人工の山だけど、それが自然の力で日本一に成り上がった(成り下がった?)のだ。
他の「日本一低い山」である天保山や弁天山を見たあとなので、余計に感慨深いものがあった。

日和山は、名実ともに「日本一低い山」だ。他の山も「日本一低い山の一種」として敬う気持ちは変わらないが、日和山に心を揺すぶられたのは確かである。
日本一低い山・日和山(3m)
宮城県仙台市宮城野区蒲生
!

このほかにも、大阪府堺市に「一等三角点のある山としては日本一低い山」といわれる「蘇鉄山」があるらしい。未訪問なので、近いうちに訪れてみたい。

また、「低い山」にまつわるエピソードは、日本だけではない。『ウェールズの山』は、まさに低い山がテーマの、実話を元にした映画だ。
ストーリはこんなの。村自慢の「山」を測量してみたら、山と認定するにはわずかに高さが足りなかった。このままでは、おらが山が単なる「丘」になってしまう! その危機を脱するため、村人が山を盛るのである。人力で。

山を人工造成したり、山なのか丘なのかといったような話は、世界共通みたいだ。低山に興味を持った方は、ぜひ合わせてご鑑賞いただきたい。
土砂を積み上げてこの規模の山を作ったという天保山も、冷静に見るとすごい
土砂を積み上げてこの規模の山を作ったという天保山も、冷静に見るとすごい
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