特集 2016年6月14日

築地ホンガンジーを作る

ただ、ダジャレを言いたいがために作った。
ただ、ダジャレを言いたいがために作った。
オーガンジーという布がある。
本願寺というお寺がある。
似てる。

今回言いたかったことは、これで全てである。
ただ、現物を作らずに言いたいことだけ言うのも誠意がないな…と思ったので、実際にオーガンジーで本願寺を作ってみた。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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築地本願寺はかっこいい

築地本願寺は、日本最大の卸売市場である築地市場から徒歩数分のところに建つ浄土真宗のお寺である。
で、この建物が非常にかっこいいのだ。
日本のお寺とは思えないビジュアル。
日本のお寺とは思えないビジュアル。
古代インド様式で建てられたこの本堂は、関東大震災後に、当時の浄土真宗本願寺派法主の大谷光瑞と親交のあった、帝大工学部の名誉教授 伊東忠太によって設計されたもの。
ちなみにこの大谷光瑞という人は、どえらく偉いお坊さんにして大正天皇の義理の兄で伯爵で冒険家で、インド探検中にお釈迦様ゆかりの謎の山「霊鷲山」を発見したりするような、むちゃくちゃ面白い人なのだ。(光瑞の生涯を描いた本は、伝記なのにほぼ冒険ファンタジー小説)
なるほど、こんな変なお寺を建立するのも頷ける。
大階段もかっこいい。
大階段もかっこいい。
外見だけでなく、中のあちこちにかっこいい牛や象の彫刻があったり、ステンドガラスで飾られた広間があったりと、なにかと見どころの多いお寺である。

で、これがオーガンジー。
適当に置いとくだけで素材集っぽい画になる布ナンバーワン。
適当に置いとくだけで素材集っぽい画になる布ナンバーワン。
薄くてサラサラに軽くて透けている生地だ。ウェディングドレスにも使われているあの布、というと想像がつくだろうか。
これで築地本願寺の模型を作ってみたいのだ。

スケスケ本願寺

さすがに生地だけでお寺の模型を作るのは難しそうなので、アクリルでフレームを作り、そこにオーガンジーを張っていく方式で進めてみよう。
レーザーカッターでスイスイ切り抜く。お金かかるけどラクだ。
レーザーカッターでスイスイ切り抜く。お金かかるけどラクだ。
なんとなく本願寺に見えるだろう、というレベルで描いた図面データでアクリル板を切り抜く。
手作業で曲面をきっちり切り抜ける気がしなかったので、時間貸しのレーザーカッターで一気に加工してもらった。

そこそこ値段のする厚めのアクリル板を、そこそこするレーザーカッター使用料を払って工作して、結果なにが得られるのか。考えても誰も幸せにならない。
この状態で、すでに本願寺っぽいシルエット。
この状態で、すでに本願寺っぽいシルエット。
次に、切り出したアクリルのフレームに両面テープを貼り、そこにオーガンジーを貼り付けていく。
深夜遅くまでオーガンジーを貼る。疲れて顔がゴリラっぽくなってる。あと目がしょぼしょぼする。
深夜遅くまでオーガンジーを貼る。疲れて顔がゴリラっぽくなってる。あと目がしょぼしょぼする。
この方法だと接着強度が得られず長持ちはしないだろうが、まぁ一回ちゃんとダジャレが言えればそれで気が済むのだ。
作業中、ずっと「網戸みたいだな」と思ってけど、横で見てた妻も同じこと思ってたらしい。
作業中、ずっと「網戸みたいだな」と思ってけど、横で見てた妻も同じこと思ってたらしい。
オーガンジーを貼ったパーツを二つアクリル棒でつないでブロック化。これを本願寺に必要な分だけ作って、最終的に連結すればカタチは出来上がりである。
両面テープに生地を押しつけた瞬間にポキッと接合部分が折れる。心も折れる。
両面テープに生地を押しつけた瞬間にポキッと接合部分が折れる。心も折れる。
最後に、側面から屋根にかけてオーガンジーを貼り付ければ、完成だ。
いや、側面に貼ってる最中に何度かフレームが接着部分からバラバラと分解したけど。半泣きで直したけど。
とにかく完成だ。

今だから言える

完成したので、堂々と言おう。
オーガンジーで築地本願寺を作ったら、ホンガンジーだ。
ホン
ホン
ガン
ガン
ジー。
ジー。
言えた。もう満足だ。ホンガンジー。

ところで、特徴的なあの屋根の辺りにな生地がピンと貼れていないので、どうにもゆるい。
ゆるふわホンガンジーである。
本家における鉄筋コンクリート造のどっしり感は出なかったが、まぁ、そもそも布だし。
親しみ易い21世紀の愛され寺と言うことで、納得してもらえるとありがたい。

実は、元の図面を描いた時点では側面や屋根にオーガンジーを貼る予定じゃなかったので、きちんと貼るような工夫はしていなかったのだ。
思いつきで作業すると、あとから「ゆるふわでもいいじゃないか」と無駄な言い訳をする手間がかかる。やはり工作は最初からきちんとプランを立てて行うのが良い。

作っている最中は網戸だと思っていたホンガンジーだが、出来上がりはほぼ蚊帳に。
これを人間が入れる大きさに拡大して作ったら、夏場に涼しい寝床として使えるかもしれない。
まさか伊東忠太(本願寺の設計者)も、自身の代表作と言われるお寺をダジャレにされた上にゆるふわだの蚊帳だの言われるとは思っていなかったろう。申し訳ないことである。
下からの図。やっぱり蚊帳テントだ。
下からの図。やっぱり蚊帳テントだ。
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