まずは外観をチェック
はじめにも挙げた通り、このお寿司屋さんは大きな通りから1本入ったところにあり全貌が確認できていなかったため、まずは外観のチェックから。
すごく高いお寿司屋さんだったらどうしよう。
大きな通りから見える「メキシコ寿し」の看板。
看板をよく見るとメキシコ寿しの説明が書かれているが、「アボガド メキシコ産果物」「カルネ 豚肉を焼きます」など、見ても詳細が伝わってこない。
勇気を出して、お店の前へ行ってみよう。
お店の名前は「寿し宗(すしそう)」さん。立派な佇まいだ。
「あめ降りです 書いても雨に濡れ直ぐに消える 消えたら止めます嫌なあめ」
「月日の流れは速い、そして低い雲の流れも早い。今日は雨降りです。気をつけないと風邪を引きます治りにくい今の風邪、要注意」
ところどころに達筆で書かれた案内板がある。が、いずれもお店の営業内容とは全く関係のない模様。
ちなみにこの取材の3日後、わたしは風邪を引きましたが、マジで治りにくいので皆さんも気をつけてください。
案内板に誘われ玄関まで来たので、いざ入店。
ご主人とご対面
大概こういう尖ったメニューを出しているお店は、オーナーがちょっと変わってる人だったりする。
あ~、なんか変なこと聞いて怒られたら嫌だなぁ…と内心思いつつ、アポイントを取ってしまったので意を決して入ると、店主の佐次本 英人さんが優しい笑顔で出迎えてくれた。
こちらが店主の佐次本さん。優しそうな人で安心した。
早速話を聞いてみよう。
そもそも「メキシコ寿し」とは何なのか。なぜ、「メキシコ寿し」というのか。メキシコと一体どんな関係があるのか…。
何から聞こうか迷っていると、佐次本さんは慣れた口調で、わたしが聞きたかったことを順に説明してくれた。
というのも、寿し宗さんは「メキシコ寿し」が珍しいということで、度々テレビに取り上げられているのだ。
(秘密のケ○ミンshowで取り上げられた際は、“島田市民はみんな食べている”という紹介と共にオンエアされたせいで、放送後「わたしは食べていません!!」というクレーム電話が入ったそうだ。もう苦笑いするしかない。)
「メキシコ寿し」とは何ぞや
そもそも「メキシコ寿し」とは何なのか。
「メキシコ寿司」とは、アボガド、カルネ(本来の意味は牛肉だが、ここでは豚肉)、カマロン(エビ)、チレ(唐辛子の一種)など、メキシコ料理でよく使われる素材をネタにして、佐次本さんが作ったオリジナルのお寿司だった。
回転寿司が流行り、今は様々なネタのお寿司が登場しているが、寿し宗さんはこの「メキシコ寿し」を約50年前から提供しているため、日本でアボカド料理を提供し始めたのも恐らく寿し宗さんが初めてだということだ。
これが噂の「メキシコ寿し」だー!!
でも、なぜメキシコ?
「メキシコ寿し」の正体はわかったが、なぜメキシコなのか。
フランスでもなく、イタリアでもなく、アンティグア・バーブーダでもないのだ。
その理由は、初代店主で、佐次本さんのお父さんである宗平(そうへい)さんが教えてくれた。
初代店主の宗平さん。笑顔が素敵。
宗平さんのお話によると、名古屋で公務員として働いていた宗平さんは、ずっと「外国へ行ってみたい」という気持ちがあったそうだ。
そんな思いを持ちながら暮らしていると、知り合いの直木賞作家・城山三郎さんがメキシコでの仕事を紹介してくれ(知り合いに直木賞作家がいることがまずすごい)、その話に乗ってメキシコ行きを決めたとのこと。
メキシコではとある立派な人の身辺警護を仕事としてやっていたが、元々宗平さんの弟さん2人が寿司職人をやっていたことから、「メキシコの人にも寿司を食べてもらいたい」と思ったことがきっかけで、メキシコで寿司作りを始めたそうだ。
しかし、メキシコには寿司を食べる文化はもちろんのこと、生魚を食べる習慣すら無かったため、流通の多いアボガドやカルネを使って寿司を作った。
それを今度は日本へ持ち帰り、日本人の口に合うように再度練り直して誕生したのが、今の「メキシコ寿し」だったのだ!!
今でこそ外国にも様々なSUSHI Restaurantがあるが、これを約50年前にやっていたというのだから驚きである。
店内に本場メキシコの風が吹き荒れる!!
一通り話を聞かせてくれると、宗平さんはあるものを見せてくれるとお店の奥へ消えていった。
少し待っていると、なんと本場メキシコの民族衣装を着て登場してくれたのだ!!
ソンブレロ(帽子)とサラッペ(ショール)を身につけた宗平さん。かっこいい!!
わたしの分も持ってきてくれた。お母さんに着せてもらう。
おう…結構重たいぞ。本場の重みだ。
リトルワールドで撮ったかのような写真だが、まぎれもなく島田市のお寿司屋さんである。
この後「スカートだしお嬢さんが着てみれば」と、お祝い事でよく登場する楽団の衣装も持ってきてくれたが、無理に履いて破いてしまったら取り返しがつかないので履かなかった。
メキシコ寿し、実食
衣装を着てはしゃいでいる内に、佐次本さんと板前の贄田 マンザノ 貴志 フランシスコさんが「メキシコ寿し」を作ってくれた。
彩りも鮮やかで美味しそう。早速いただこう。
まずはアボガドから
んん~~~
うまい!!!!!!
なめらかな歯ざわりと、アボガドのまったりとした味わいが口いっぱいに広がる。
これは女子が大好きな味だわ。
ちなみに、この絶妙な熟し加減を出すために、あえて若いアボガドを仕入れ、ある熟成方法を使って熟しているそうだ。この熟成方法は教えるとみんなおいしいアボガドを食べられるようになり売上が落ちるため、教えるのはNGとのこと。余計知りたい!!
お次はカマロン(エビ)。茹でたエビの上には、マヨネーズと唐辛子が乗っている。
ムフゥ~…これもうまい!!!見た目は辛そうだけど、マヨネーズとあいまって絶妙なまろやかさ~
おいしくて箸がどんどん進む。次はチレ巻き(ピーマンを辛く炒めて巻いたもの)。
何これうま過ぎ~~~!!!27年間生きてきた中で一番うまいピーマンだ~~~!!!
他のネタに比べると正直一見地味に見えたチレ巻きだったかが、食べてみると衝撃のうまさ!!
ピーマンというとお肉と一緒に炒めたりお肉と一緒に炒めたりして食べる(それしか思いつかない)、いわば“サブ”の素材かと思っていたが、チレ巻きを食べた瞬間お肉やお魚と同じ“メイン”の立ち位置に完璧に変わった。
今までピーマン舐めてたわ…ピーマン様すみませんでした。
これはぜひ食べてほしい逸品だ。
わたしの顔ばっかりで申し訳ないのでお寿司の写真に切り替える。豚肉を焼いてあなごのタレにつけたカルネも甘じょっぱくて最強においしかった!!!
メキシコ料理もあるよ
寿し宗さんには「メキシコ寿し」の他、「タコス」や「アカプルコサラダ」など、メキシコの一品料理もある。
せっかくなのでそちらもいただくことにした。
タコス。The メキシコ料理。
いつも思うのだが、タコスを食べ方の正解がわからない(そのままかぶりつくと中身がボロボロ出てしまう)ので佐次本さんに聞いたところ、中身が出るのは気にせずガブッといくのが正解だそうだ。
アカプルコサラダ。アカプルコといのは100万ドルの夜景で有名な、メキシコの地名。
全部ひとりでいただいた。
(こいつめっちゃ食べるやん…)
(衣装着させなくて正解だったかも…)
(ビックリするわ…) ※日本人とメキシコ人のハーフの贄田 マンザノ 貴志 フランシスコさん
メキシコは関係ないがレビューサイトに「たまご焼きがうまい」という書き込みがあったので、たまご焼きもいただいた。確かにちょうどいい甘さでめちゃうまだった。
寿し宗さんが提供する「メキシコ寿し」は、ただの色モノではなく、長い長い歴史と佐次本さんの情熱がこもった逸品だった。
取材前に手に入れば被って行こうと思っていたメキシコのプロレスラー・ミルマスカラスの覆面が、取材後に手に入った。
いらない。
~今回伺ったお店~
寿し宗(すしそう)さん
住所:〒428-0007 静岡県島田市島894-3
電話:0547-46-2216
営業時間:昼11:00~14:00 夜16:00~22:00 水曜日定休