連続写真で世界観を伝えたい
理想の集合写真の失敗はこのような流れである。
「集合写真撮ろうぜ」「セルフタイマーセットしたから」
「……………」「…………」
「…………」「動いてなくね?」
「ちょっとキンちゃん見てこいよ」「おれ?」
「セットしたと思うんだけどなー」「ほんとかよー」
「あれー」「ちゃんと見ろよー」
「あ、ここ押すのか。点滅し始めた」「もどって、キンちゃんもどれよ」
「早く!」 「おっとっとっとっと…」
どーん
「あ、ドローン!」「え、なになに?」
パシャ
これだ。こういう写真が撮りたかったのだ。ほのぼのしている。
いい年したおっさんが集まって、これまでのキャリアとか経験がいっさい生きてない全員あわせてIQ30ぐらいの行動をしているのがいい。
撮影のようす(How to be ほのぼの)
「『早く!』『おっとっとっとっと…』」の写真で僕の腕が堂々と入っているが、すべて僕が現場で指示して撮った写真である。いっさい動きを感じない時間が止まった写真になっているのはそのせいだ。
「じゃあキンさんはここで寝転んでください。そして片足を上げる。」
僕は演出に徹して、出演も撮影もしていない。
これが良かった。自分も入ると絵が確認できないし、撮影するとモデルの身体に直接触れてポーズを変えることもできない。
「カラスヤさんはもう一歩前に出てください。長嶋さんは気にしないキャラ設定なのでピースのままで」
キャラクター設定もできている(他人には一切伝わらないが)。自分の頭のなかにできあがっている映像を作っていく作業である。映画監督ってこんな感じなのだろうか。とても楽しい。
「心配しつつ、ピザも気になるので顔の向きはこっち」
役者の頭をぐいっと回しながら、転ぶ役のキンさんは無理な姿勢のままでぷるぷる震えている。その真剣さを意気に感じる。この失敗した集合写真、失敗するわけにはいかない。
分かりにくい決意をあらたにした。
こういう表情でお願いします、みずから演技指導をしているところ
配置とポーズを決めて、自分がはけて写真を撮る。
うっかり集合写真というほのぼのワールドがカメラのなかに現れてゆく。高校時代、友達が3人しかいなかった過去が改ざんされてゆく。
現実を変えよう
この手法でいろんな写真が撮れそうだ。
・地面においたビールをとろうとしたらモグラだった(モグラはヘルメットにサングラス)
・池に落ちた友達を助けて人工呼吸したら口から水をぴゅーっと吹き出してその上に魚。その魚が新種で通りかかった学者が驚く
・お弁当にたかろうとするスカイフィッシュを箸で捕まえた一部始終
アニメGIFにしたらネットでシェアされそうである。興奮してきた!
撮影協力(敬称略)
駒林・滝川(秋田書店)
岩沢卓
西村まさゆき
カラスヤサトシ
長嶋有
キンマサタカ